児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「福岡家判平成12年12月6日」の謎

 最近、法務省の実務家が児童ポルノ・児童買春の論文書いてくれないので寂しいです。

警察学論集56巻2号児童買春・ポルノ法の施行状況、児童の性的搾取等を防止するための国際的動向 島戸純
5)なお、観念的競合と解した場合の処断刑について、児童買春周旋を業とした罪(児童買春・ポルノ法第5条第2項)については懲役刑と罰金刑との必要的併科とされているのに対し、児童福祉法第34条第1項第6号違反による第60条第1項の罪については懲役刑と罰金刑とは併科することができないため、一罪として重い児童福祉法第60条第1項の罪により処断するとなると、罰金刑を併科することができないという不都合が生じる。そこで、福岡家判平成12年12月6日(公刊物未登載)は、「観念的競合の処理について、刑法第54条第1項を合理的に解釈すると、軽い刑に罰金刑が併科されている場合には、重い刑により処断するとともに罰金刑を併科することが相当である。」としており、前記東京高判平成13年12月28日も、児童福祉法第0条第1項の罪の懲役刑及び児童買春・ポルノ法第5条第2項の罪に定められている罰金刑を併科するとした。

という論文があるのですが、福岡家裁の判決は、

福岡家裁H12.2.21
福岡家裁H12.8.28
福岡家裁H12.10.23
福岡家裁H12.12.18
福岡家裁H13.1.22

なので、「福岡家判平成12年12月6日」は存在しない。
 島戸検事に問い合わせても、福岡地検に問い合わせても、福岡家裁に問い合わせても見つからなかったんですが、小倉支部にありました。
 どうして訂正しないんでしょうかね。

福岡家裁小倉支部H12.12.6
ヘルス経営
児童をヘルス嬢として雇い入れ
1遊客に児童買春の相手として引き合わせ 性交類似行為させ
2遊客に児童買春の相手として引き合わせ 性交類似行為させ
もって業として児童買春周旋+淫行

法令適用
業として周旋は包括一罪
淫行も包括一罪
重い淫行罪で処断
罰金は周旋罪のそれ
なお刑法54条1を合理的に解釈すると、軽い刑に罰金が併科されている場合には重い刑で処断するとともに、罰金刑を併科できる児童買春周旋罪の罰金を併科できる