刑法学会の量刑法の報告を聞きに行って、小島透会員の統計処理の手法を興味深く聞きました。
こういう手法です。量刑の分布からあるべき法定刑を示そうとされている。
刑事司法の運用に対する法定刑変更の効果--統計データから見た法定刑変更と量刑等の関係 法律時報78(4) (通号 968) / ページ98〜103
自由刑の実態と量刑判断 : 統計データから見たわが国における自由刑の科刑状況とその検討 岡山理科大学紀要.
http://op00.lib.ous.ac.jp/cgi-bin/limedio/limewwwopac/page?sessionId=20060529.0045;sessionSeq=157;sessionLang=jpn;sessionCode=jis;issueid=161785;tocid=0;pageseq=35;sessionId=20060529.0045
http://op00.lib.ous.ac.jp/cgi-bin/limedio/limewwwopac/page?issueid=148036;page=65
暇ができたら児童ポルノ・児童買春・児童福祉法違反の閲覧結果を統計処理してみようかと思いました。
ご報告の中でわいせつ図画の罰金刑もH3改正でさっと上昇して50万円で高止まりというデータがありました。
第175条(わいせつ物頒布等)
わいせつな文書、図画その他の物を頒布し、販売し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役又は二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処する。販売の目的でこれらの物を所持した者も、同様とする。
こういう内容。
http://op00.lib.ous.ac.jp/cgi-bin/limedio/limewwwopac/page?sessionId=20060529.0047;sessionSeq=3453;sessionLang=jpn;sessionCode=jis;issueid=148036;tocid=0;pageseq=76;sessionId=20060529.0047
http://op00.lib.ous.ac.jp/cgi-bin/limedio/limewwwopac/page?sessionId=20060529.0047;sessionSeq=3495;sessionLang=jpn;sessionCode=jis;issueid=148036;tocid=0;pageseq=77;sessionId=20060529.0047
これは法定刑というより略式命令の上限で線引きされた結果。
改正前の刑訴法
第461条〔略式命令〕
簡易裁判所は、検察官の請求により、その管轄に属する事件について、公判前、略式命令で、五十万円以下の罰金又は科料を科することができる。この場合には、刑の執行猶予をし、没収を科し、その他付随の処分をすることができる。
罰金50万円より少し悪質な事例はどうなるかというと、地裁に公判請求されて懲役(執行猶予)となる。これは統計がある。
地裁の弁護人が「罰金相当」と弁論しても、「罰金相当の事件とは到底思えない」と判示され、懲役刑が選択される。「罰金80万円」「罰金100万円」という判決はめったにない。
とすると、刑法175条の罰金刑の上限は、実体法で250万円とされていても、訴訟法で50万円とされているのと同じであって、51万〜250万円という法定刑は機能していない。
児童ポルノ・児童買春でも同じ。罰金は300万円まであっても、罰金なら50万円まで、それ以上は公判請求されて懲役。罰金60万、100万という判決はない。
第4条(児童買春)
児童買春をした者は、五年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
略式の上限が、事実上罰金刑の上限となる。それ以上の罰金額はほとんど意味がない。アナウンス効果・一般予防程度か?
選択刑で高額な罰金を法定する場合、これ知って立法してるんですかね?