児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

永井先生の個人的法益一元説で上告理由・控訴理由を補充しよう。

 本物は格調高く書いてますよ。
 何件かありますが、「以下同文」。

 弁護人が苦しまぎれにあみだした「児童ポルノ個人的法益説」が、苦節6年、石橋を叩いていくような緻密な学説で追認されて、「個人的法益一元説」と命名されたのだから、嬉しいよ。
 児童ポルノ罪が重いこと・これからも重くなること緻密になることを説明するには、「個人的法益一元説」しかないですよ。「社会的風潮」なんて反射的利益です。

最高裁判所第 小法廷御中
弁護人 弁護士 奥村 徹

上告理由補充書(1月25日付)

 弁護人の主張はかねがね児童ポルノ個人的法益説であるところ、児童ポルノ罪の保護法益について、個人的法益一元説が妥当であり、二元説は不当であるとする論文(永井善之「サイバー・ポルノ規制と刑法・児童ポルノ法の改正」大阪経済大学法学研究所紀要)に接したので補充する。

永井善之「サイバー・ポルノ規制と刑法・児童ポルノ法の改正」
児童ポルノ規制にあっては、わいせつ物規制と比較した場合、客体たるポルノの性描写要件がわいせつ性を必要とせず非常に緩やかであること、規制対象行為類型の範囲・種類が相当に広範であること、さらに、その違反に対する法定刑がより峻厳であること、これの諸点からして、憲法上の表現の自由保障(憲法二一条)に対してもより広範にわたる制約であること、が認められる。その規制のこのような峻厳性に照らしても、児童ポルノ規制の法益としては、個人的法益とともに、およそ児童を性的対象とみることのない健全な社会風潮・生活環境などといった社会的法益をも並列的に認めること(個人的法益・社会的法益二元説)さえも妥当ではなく、それは被写体児童に係る個人的法益に尽きると解されるべきように思われる (個人的法益一元説)。

 理由が説得的である。さすが学者である。
 弁護人の児童ポルノ個人的法益説も苦節6年を数え、年季が入っている。弁護人は事件ごとに都合のいい理屈を唱えているだけだと思われがちだが、奇しくも学者の研究結果と一致し、「個人的法益一元説」と命名されたのである。
以上
添付資料
永井善之「サイバー・ポルノ規制と刑法・児童ポルノ法の改正」大阪経済大学法学研究所紀要200412.