児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童ポルノのwebサーバー蔵置の擬律

 改正前から、公然陳列罪か、製造罪か、頒布罪かという疑義がありました。

インターネット上の児童ポルノの擬律 / 奥村 徹
情報処理学会研究報告. 2003(17) [2003.2.22]

1 公然陳列罪構成
2 製造罪構成 
 そんな馬鹿なと思いきや、裁判例もあって、実刑になっています。

前橋地裁H131227調書判決
被告人は(当時16年)と(当時16年)がいずれも18歳に満たない児童であることを知りながら,インターネット上のホームページあ掲示板に公然陳列する目的をもって,平成13年9月17日ころから同年10月1日ころまでの間、被告人方等において,上記児童らを相手とする性交又は性交類似行為の場面等をデジタルカメラで撮影した上,これをパーソナルコンピュータを使用して記憶,蔵置させた画像を加工,編集するなどして上記ホームぺ−ジのサーバーコンピュータに送信して記憶,蔵置させ,よって,児童を相手とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態等を視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノ画像データ10画像を製造したものである。

3 販売罪構成(旧法)
 奈良地裁H14.11.26 webサイトから有償でダウンロードさせる方法を「児童ポルノ販売」とした事例 

4 提供罪構成
 改正されても、さらに、サーバーを相手にする提供罪の余地があるという。

島戸「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」研修676
「提供」とは,当該児童ポルノ又は電磁的記録その他の記録を相手方において利用し得べき状態に置く法律上・事実上の一切の行為をいう(刑法第163条の4,薬物四法による資金等提供,売春防止法第8条,第11条,第13条における「提供」と同義である。)。
具体的には,児童のポルノを内容とする電磁的記録を電子メールで相手方に送信し,プロバイダ内の相手方の受信箱に入れる行為,ホームページにアップロードする行為(もっともこの場合,公然陳列罪と一罪の関係に立つことが考えられる。)等がこれに当たる。

島戸「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」警察学論集57-08
罪   数
Webサーバーのコンピュータのハードディスクに児童ポルノの画像データ(電磁的記録)を記憶・蔵置させて不特定多数の者がそのデータの画像を認識できる状態を設定した場合(当該ハードディスクにアクセス可能な状態にした場合)、当該コンピュータのハードディスクが、児童ポルノを内容とする電磁的記録に係る記録媒体に該当し、児童ポルノの公然陳列罪が成立する(最判平成13年7月16日刑集55巻5号317頁参照)。
その際、不特定多数の者が、当該画像データを閲覧するために、当該ハードディスクにアクセスして、その児童ポルノの画像データを自己のコンピュータにダウンロードした場合に、当該不特定多数の者の行為を介して、同人らのコンピュータに児童ポルノを内容とする画像データを提供したこととして、児童ポルノを内容とする電磁的記録の提供罪が成立するか否かについては、様々な考え方があり得るところであるが、混合包括一罪として児童ポルノの公然陳列罪一罪の法定刑の範囲内で処理されることになると考えられる。

 ということは、web掲載は、提供罪、製造罪、公然陳列罪が成立し得て、どれでもいいんですか?
 web掲載という典型的な行為類型に3つも犯罪が出てきて、「そのうちどれか」というのは、情け無いですよね。
 これを、公然陳列を使わないことにすると、公然陳列罪の出番がなくなるから、、やっぱり陳列罪じゃないかとおもうんですけど。