「児童ポルノかつわいせつ図画」ではなく、「児童ポルノ3本とわいせつ図画5本」を売った場合です。
「わいせつ」の方が立証容易(年齢の鑑定不要)なので、わいせつ図画罪が先行して起訴されることがあります。
奥村弁護士が弁護人ですが、起訴状が手許にありませんが、こんな感じ。
当初訴因
2 H11.12.04販売 児童ポルノ+わいせつ図画
4 H11.12.13販売 わいせつ図画訴因変更
1 H11.11.23販売 児童ポルノ+わいせつ図画
2 H11.12.04販売 児童ポルノ+わいせつ図画
3 H11.12.11販売 児童ポルノ+わいせつ図画
4 H11.12.13販売 児童ポルノ+わいせつ図画
5 H12.01.13販売 わいせつ図画
判決は児童ポルノ包括一罪説
判決大阪地裁H13.2.21
犯罪事実
1 H11.11.23販売 児童ポルノ+わいせつ図画
2 H11.12.04販売 児童ポルノ+わいせつ図画
3 H11.12.11販売 児童ポルノ+わいせつ図画
4 H11.12.13販売 児童ポルノ+わいせつ図画
5 H12.01.13販売 わいせつ図画
第三 訴因変更の可否について
弁護人は、児童ポルノ販売罪については、被撮影者たる個々の児童の権利が保護法益であり、被撮影者ごとに犯罪が成立するところ、当初の起訴状訴因の事実(判示二、四の販売事実)と六月一六日付け訴因変更請求書記載の事実(判示一ないし五の販売事実) は公訴事実の同一性を欠くから訴因変更を許可されるべきではなかつた旨主張する。
しかし、児童ポルノ販売罪は、被撮影者である児童ごとに犯罪が成立するものではなく、基本的には、児童ポルノ販売行為を基準に罪数が判断されるうえ、本件のような形態の事案については、販売の日時、場所、相手方、販売対象のビデオテープが異なつても全体として包括一罪と解すぺきであるから、当初の訴因と変更請求された訴因との公訴事実は同一であり、前記弁護人の主張は採用できない。科刑上一罪の処理
刑法五四条一項前段、一〇条( 一罪として刑の重い児童ポルノ販売罪の刑で処断)
現在の奥村説は、
奥村説H16.12.30
児童ポルノ販売罪相互については併合罪として、判示1〜4は同時に起訴されたわいせつ図画罪と観念的競合となり、各々1罪。
さらに、1〜5のわいせつ図画罪の部分は、まとめて、包括ないし単純一罪となる。
結局、1〜5の各事実は一罪であるわいせつ図画罪に串刺しにされて、全体として1罪。
この事件では訴因変更は適法となる。