児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

希薄な被害者意識 女子中高生売春あっせん事件・仙台

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040918-00000009-khk-toh
児童福祉法淫行罪で家裁にも起訴されているようです。

 こんなこと言わせたらだめじゃん、弁護人殿。
 「被害児童の将来に大変な被害を与えてしまいました」って教えて言わせないと。逮捕勾留されても、いまだに学習していないことがバレバレ。

加藤被告も、地裁の公判に先立ち行われた仙台家裁の審理で、「女の子は金をもらえてうれしいし、男もいい思いをする。(被害者が存在せず)罪悪感はあまりなかった」と性モラルの低下を象徴する証言をしている。

少女らに被害意識は比較的薄く、性を食い物にする大人から少女らを守る法の趣旨との間にギャップが生じている。

なんて書かれていますが、そもそも児童買春・条例淫行罪等の被害というのは、痛い・辛い・悔しいという一時的感情ではありませんから、被害者意識なんてないんですよ。そこで量刑決めがちですけど。
 被害児童を法廷で尋問してもアッケラカンとしたものですが、それで当たり前。

 そもそも警戒感もない。段取り通りに事が済めば被害感情はない。

弁護人 それから,相手の年齢とかあるいは容姿,見た目ですね,についてあなたのほうは何か希望を言わなかったですか。
証人 いえ,言ってないです。
弁護人 それは,だれでもよかったということですか。
証人 はい。
弁護人 例えば,だれかに紹介して,行ってみたら,とんでもない年寄りの人だったり,あるいはでぶだったり,はげだったりしたらどうするんですか。
証人 ・・・別に,同じようにやってます。
弁護人 別に関係ないということですか。
証人 はい。
弁護人 相手の人が怖い人だったり,あるいは約束どおりお金を払ってくれない人だったり,そういう気持ちはなかったですか。
証人 それは,ほかの友達もやってて,ちやんともらえてたし,その人の友達やったから,多分ちやんともらえると思ってました。
弁護人 お金の面は信用するとして,あるいはあなたを車に乗してどこかへ連れていってしまうとか,そういう人が出てくるという気持ちはなかったんですか。
証人 なかったです。

 そういう被害感情がない被害者らを対象として、そこに付け込む犯罪であって、被害意識がないから被害が深刻・広汎になるわけです。

 被害感情があったとしても後から植えつけられたか、不払い・脅迫によるものです。
 ですから、刑事訴訟においても、被害児童の健全育成に与えた影響によって、量刑すべきです。これは難しいです。だから裁判所が被害感情に頼ってしまうのです。
 
 裁判官に、本来量刑事情として評価すべきものを見せて、評価すべきでないものを見せないという意味で、児童買春・条例淫行罪などの被害者調書の被害感情部分は、不同意にすべき場合が多いです。
 そこの部分の検察官立証として、被害者尋問が行われたとしても

弁護人 本件の児童買春行為が終わったときに、何か非道いことをされたとか、犯罪被害にあったという感想はありましたか?
証人 ありませんでした
弁護人 段取り通り援助交際が終わって、証人の手にはお金がもらえて、それを遊びに使えて、happyだったということでいいですか
証人 そうです。

って言いますし、さらに、

弁護人 援助交際することについては、善いことか悪いことか?
証人  悪いことだと思います
弁護人 今回の件でだれかに怒られたか?
証人  警察と、お母さんと・・・
弁護人 どういうことをいわれたのか?
証人 ・・・・・・
弁護人 それで、証人も反省しているということか?
証人  そうです。
弁護人 被告人だけを責めることはできないわけですね。
証人  そうです。

といってもらえればbetter。
 証人に警戒感がないから、こういう言葉を引き出すのは簡単です。

 もっとも、弁護人が被害弁償・示談に成功した場合は、
   被害弁償を受取ったので、
   被告人の処分については、寛大な処分にしてあげてください
という一文が入ることが多いです。
 保護法益的にみるとおかしいのですが、実際問題として、裁判所は「被害感情」を重視するので、現実的な対応になっています。

 被害の把握は刑事裁判時点では困難なこと、一時の謝罪や弁償で回復できるものではないこと、治療については専門機関を利用すべき事については、弁護人から説明した上で、被告人が現時点でできることといえばこれしかないという趣旨で被害弁償・謝罪を行っています。