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未現像フィルムの判例があって、わいせつ図画販売・頒布・所持罪の客体にはなっても、陳列罪の客体にはなりません。
名古屋高裁昭和55年3月4日
高等裁判所刑事裁判速報集602号
刑事裁判月報12巻3号74頁
しかしながら、そもそも刑法一七五条後段所定のわいせつ図画等販売目的所持罪の立法趣旨にかんがみるとき、同罪の対象とされるわいせつ図画等のわいせつ性は、必ずしも、当該物を所持する際に、その物自体にそれが顕在することを必要とするものではなく、その際視覚によつてこれを認識することが可能でなくても、なんらかの技術的操作を経ることによつてその物に潜在するわいせつ性を、認識し得る程度に顕在化させることが社会通念上可能であると認められる限り、当該物は同罪の客体となるわいせつ図画等に該当するものと解すべく、これを本件についてみるに、原審記録中の関係証拠に、当審における事実取調べの結果をも総合すると、被告人らは、本件未現像カラーフイルムを未現像のまま販売する意図で所持していたものではないのであつて、現像・編集の段階を経て映写用八ミリカラーフイルムとして完成した後、これを販売する目的のもとに所持する間、これに先立ち発覚検挙されたため、結局、未現像のまま右フイルムは領置されるに至り、被告人らは、わいせつ一六ミリ未現像カラーフイルムを所持したとして訴追されたものと認められ、右認定に反する証拠はないから、右事実関係にある本件においては、もともと、販売を受ける不特定多数人のもとでわいせつ性を顕在化させることを予定して、ことさらわいせつ性を潜在させたままの状態で一般に販売される物件を所持した場合とはやや事案を異にするが、未現像カラーフイルムのわいせつ性を顕在化させる技術的操作、すなわちカラーフイルムの現像が、少なくとも本件被告人らにとつて、当時すこぶる容易であつたことは関係証拠に照らして明らかであるのみならず・・・