児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

電子計算機とは何か?

 ところで、「電子計算機」って何なの?
 各罪ごとに決めてとのこと。
 電子計算機損壊業務妨害事件では、「パチンコ台」は違うという判例がある。(福岡高等裁判所判決平成12年9月21日)
 不正アクセス罪の場合、アナログ計算機は含まれるのか?
 通信機能は必須。 

「コンピュータ犯罪等に関する刑法一部改正(注釈)」成文堂P16
三 電子計算機
「電子計算機」は、コンピュータと同義であり、自動的に計算やデータ処理をおこなう電子装置のことである。現在の三つの主な分類としては、ディジタル計算機(数の形で表示されたデータに演算をはどこすことのできるもの)、アナログ計算機(ある物理量を用いて表現された数に算術演算をほどこすように設計されたもの)およびハイプリード計算機(アナログとディジタルの計算が組み合わされている計算機)がある。
(中略)
刑法において電子計算機の定義を設けなかった理由は、電子計算機についての一般的な理解がすでに定着しているとみとめられるからであり、さらに具体的には、各構成要件においてその対象となるべき電子計算機の範囲が適切に決まることになるからであるという理由による。

福岡高等裁判所判決平成12年9月21日
電子計算機損壊等業務妨害罪にいう「業務に使用する電子計算機」とは、それ自体が自動的に情報処理を行う装置として一定の独立性をもって業務に用いられているもの、すなわち、それ自体が情報を集積してこれを処理し、あるいは、外部からの情報を採り入れながらこれに対応してある程度複雑、高度もしくは広範な業務を制御するような機能を備えたものであることを要するものというべきであり、そのような性能、実態を備えている電子計算機をいうものと解するのが相当である。立法担当者の解説にも、刑法二三四条の二にいう業務妨害罪との関係では、自動販売機に組み込まれたマイクロコンピューターは、販売機としての機能を高めるための部品にとどまるものであって、同条の電子計算機には当たらないとされ、これに該当しないものの例示とされているが、この点にも右の趣旨をうかがうことができる。そうすると、本件パチンコ遊技台の電子計算機部分は、前記のとおり、一定の作業をあらかじめロムに書き込まれているプログラムどおりに動作させるにとどまり、その内容も比較的単純なもので、あくまでも当該機械の動作を制御するにとどまるものであり、ましてや、パチンコ営業に関する情報を集積して事務処理をしたり、複雑、高度な業務の制御をするといえるような機能、実態を備えているとはいえないものであって、結局、自動販売機の電子計算機部分と同様に、個々のパチンコ遊技台の機能を向上させる部品の役割を果たしているにすぎないと認められるから、刑法二三四条の二にいう「業務に使用する電子計算機」にはいまだ該当しないと解するのが相当である(ちなみに、自動販売機も、CPU、ラム、ロム等から構成される電子計算機部分を含み、あらかじめ一定の条件が生じたらそれに沿った結果を生じさせる機能、すなわち、入金と商品の選定が行われれば、入金額を識別した上、その商品の入れてある部分のレバーを作動させ商品を取り出し目に送り込むとともに、釣り銭を正確に返却するという販売機能の重要な部分を制御するものとしてロムの情報が構成され、CPUで操作して指令を出すという仕組みであり、その限りで自動販売機における販売業務を機能的に制御しているといえるものであるが、その内容はそれほど複雑、高度といえるものではない上、その機能の及ぷ範囲はいずれも当該機械に局限されているものであり、本件パチンコ遊技台の電子計算機部分をこれと比較しても、両者の間に本質的な差異があるとはいい難い。)。

通達をみると、
「当該電子計算機」は、一定の独立性が要件ですね。

警察庁生活安全局長通達H12.1.21
イ特定電子計算機
「電気通信回線」とは、電気通信を行うために設定される回線のことであり、有線に限定されるものではなく、無線も含まれる。「電気通信回線に接続している」とは、電気通信が可能な状態に構成されていることを指す。
「電子計算機」とは、コンピュータのことである。本法においては、一定の独立性を有するものに限られ、各種機器に内蔵されているマイクロ・コンピュータは含まれない。

不正アクセスの禁止法Q&A上警察公論2000.1
選択肢( 3) ファイア・ウォールにより一定のIP アドレスが入力された場合に利用制限が解除される特定電子計算機にIP アドレスを偽ってアクセスすれば,不正アクセス行為罪が成立する。
( 3) 誤り。IP アドレスは,インターネット上のコンピュータを識別するためにコンピュータに付された符号であり,不正アクセス禁止法の識別符号には該当しない。したがって,アクセス制御機能により特定利用が制限されていないので, 不正アクセス行為罪には該当しない。

これは意外。

法律のひろば'99No.12不正アクセス行為の禁止等に関する法律 檜垣重臣
また、セキュリティ・ホールを攻撃する
ものだけでなく、アクセス管理者がアクセ
ス制御機能に係るパスワード・ファイルか
ら削除し忘れている、既に利用権者ではな
くなった者に付されていたID・パスワー
ド(利用権者に付されたものではないため、
識別符号には該当しない。) や、第三者が
無断でパスワード・ファイルに追加したI
D・パスワードを入力する行為も第二号に
該当する