児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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被周旋者(児童買春犯)に児童の年令認識がない場合の児童買春周旋罪の成否

 静岡家裁H16.5.7は肯定説で実刑判決。
 東京高裁H15. 5.19は否定説。

 立法時には議論されていないと記憶していますが、どうですかね?児童保護の必要性・取締りの徹底からすれば肯定説。疑わしきは被告人の利益の原則で行けば否定説。
 周旋罪は周旋行為だけで既遂になるし、周旋罪既遂時に被周旋者が年齢認識なくても、対償供与の約束・対償供与時点で年令認識が備われば買春罪は成立するのだから、周旋罪の要件として被周旋者の年令認識を要求するのは、どうなんでしょうか?

しかし、お客が年令認識あるかどうかなんてわからないし、構成要件要素とすると、それについての周旋犯人の認識も問題になる?それとも処罰条件なの?
 刑法学者に聞きたい。

警察学論集56巻10号P212白濱検事は否定説。
しかし、前述の処罰根拠からしても、児童買春の周旋として処罰することが必要な事案は、犯罪として成立しうる「児童買春」を助長する事案であって、これ以外の場合には、児童・成人を問わず周旋した場合の売春周旋罪として処罰すれば足りる事案も考えられるし、周旋者が児童に対し直接又は間接の影響力を及ぼして淫行をさせることから児童の保護を図る必要がある事案については、児童淫行罪の成立も考えられるところであって、格段の不合理が生ずるものではないと考えられる。
なお、年齢の認識が不要であるという考え方によると、年齢認識の点だけでなく、被周旋者が周旋の対象となる行為のうちどこまでの認識が必要となるかがあいまいとなり、被周旋者が対象行為をまったく認識していなくても、周旋者自身が周旋行為を認識していさえすれば周旋罪が成立することにもなりかねず、周旋目的勧誘との区別が困難になるとの指摘も考えられる。
刑事判例研究(371)1.児童福祉法第34条第1項第6号の罪(児童に淫行をさせる罪)と売春防止法第10条第1項の罪(売春をさせることを内容とする契約をした罪)との罪数関係 2.いわゆる児童買春等処罰法の児童買春周旋罪について、被周旋者において買春の相手方が児童であることの認識を要するとした例(東京高等裁判所平成15.5.19判決(公刊物未登載))
著者名 白濱清貴
誌名等 警察学論集 [ISSN:02876345] (警察大学校 立花書房) 56(10) 2003.10 p212〜224


警察庁執務資料
3 児童買春周旋の罪(第5条)
(1)行為
児童買春の周旋をすること。
「児童買春の周旋」とは、児童買春をしようとする者とその相手方となろうとする児童との間に立って児童買春が行われるように仲介することをいう。
第3中2(2)も参照すること。なお、売春防止法第6条の「周旋」と基本的に同義である。
(2)既遂時期
本罪は、児童買春をしようとする者とその相手方となろうとする児童の依頼又は承諾に基づき、両者を引き合わせるなど、両者の間で児童買春が行われるように仲介する行為をすることによって成立し、かつ既遂に達する。引き合わせ行為等が行われた以上、両者の間で児童買春の条件がすべて確定していなくても、また、両者間で最終的に児童買春が行われなかったとしても、本罪が成立する。


http://courtdomino2.courts.go.jp/Kshanrei.nsf/webview/2C209B6F749FDC1C49256DB800064803/?OpenDocument
事件番号  :平成15(う)103号
事件名   :児童福祉法違反,売春防止法違反,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
裁判年月日 :H15. 5.19
裁判所名  :東京高等裁判所
部     :第1刑事部
結果    :破棄自判
原審裁判所名:横浜家庭裁判所
第3 職権による判断
職権により調査すると,原判決は,罪となるべき事実において,本件公訴事実2及び同3と同旨の事実を認定し,児童淫行罪及び売春周旋罪のほかに児童買春等処罰法5条の罪(以下,便宜的に「児童買春周旋罪」という。)の成立を認め,これらを科刑上の一罪として取り扱い,児童淫行罪の懲役刑及び児童買春周旋罪(同法5条2項)の罰金刑で処断することとして,被告人を懲役1年2月及び罰金50万円に処したことが明らかである。
 【要旨1】ところで,児童買春周旋罪が成立するためには,周旋行為がなされた時点で,被周旋者において被害児童が18歳未満の者であることを認識している必要があると解するのが相当である。すなわち,児童買春周旋罪は,児童買春をしようとする者とその相手方となる児童の双方からの依頼又は承諾に基づき,両者の間に立って児童買春が行われるように仲介する行為をすることによって成立するものであり,このような行為は児童買春を助長し,拡大するものであることに照らし,懲役刑と罰金刑を併科して厳しく処罰することとしたものである。このような児童買春の周旋の意義や児童買春周旋罪の趣旨に照らすと,同罪は,被周旋者において児童買春をするとの認識を有していること,すなわち,当該児童が18歳未満の者であるとの認識をも有していることを前提にしていると解されるのである。実質的に考えても,被周旋者に児童買春をするとの認識がある場合と,被周旋者が前記のような児童の年齢についての認識を欠く結果,児童買春をするとの認識を有していない場合とでは,児童買春の規制という観点からは悪質性に差異があると考えられる。もっとも,このように解することについては,客観的には児童の権利が著しく侵害されているのに,周旋者が児童の年齢を18歳以上であると偽ることにより児童買春周旋罪の適用を免れることになって妥当ではないとの批判も考えられるが,このような場合でも周旋者を児童淫行罪や売春周旋罪により処罰をすることが可能であるし(なお,児童の年齢や外見によっては,そもそも18歳以上であると偽ることが困難な場合も考えられる。),前記のような児童買春の周旋の意義や児童買春の規制という観点からすると,被周旋者において,前記のような児童の年齢についての認識を有しているか否かは,やはり無視することができない事情である。