児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童福祉法や児童ポルノ・児童買春法と成年擬制(民法753条)

 児童が婚姻していれば、「児童」ではなくなるのではないか?というご質問。
 しかし、児童福祉法児童ポルノ・児童買春法は「未成年」という定義ではなく、年齢を明示した特別規定が置かれていますから(児童福祉法3条、児童ポルノ・児童買春法2条)、成年擬制の適用を受けず、結局、児童福祉法児童ポルノ・児童買春法の趣旨として、婚姻した児童を「児童」に含めるかという観点から議論されなければならないと思います。

 で、どうなんだということですが、
 同法等は性的関係における児童の未熟さに注目した児童保護法であって、婚姻したからといって、このような意味で成熟することはないから、婚姻した児童も「児童」に含まれる。
 そもそも民法753条も経済的単位としての夫婦に着目した規定であり、児童が健全に成長する権利には影響がない。
というのが、穏当なんでしょうね。

 反対説としては、「婚姻したから、完全な性的自己決定権がある」「婚姻した児童は「児童」に含まれない。」という考え方もあると思います。


参考情報
http://houseikyoku.sangiin.go.jp/column/column049.htm
もっとも、この擬制の効果は、私法上の関係にとどまります。
 例えば、未成年者飲酒禁止法未成年者喫煙禁止法では、「満二十歳ニ至ラサル者」は飲酒や喫煙は禁止されていますが、婚姻したからといって、これが許されるわけではありません。

民法
第753条〔婚姻による成年化〕
未成年者が婚姻をしたときは、これによつて成年に達したものとみなす。

児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
第2条(定義)
この法律において「児童」とは、十八歳に満たない者をいう。

児童福祉法
第4条〔児童〕
この法律で、児童とは、満十八歳に満たない者をいい、児童を左のように分ける。
一 乳児 満一歳に満たない者
二 幼児 満一歳から、小学校就学の始期に達するまでの者
三 少年 小学校就学の始期から、満十八歳に達するまでの者



大阪高等裁判所決定/昭和62年(け)第9号
昭和62年10月2日
二 同二の主張について
所論は、民法七五三条の「未成年者が婚姻をしたときは、これによつて成年に達したものとみなす。」旨の規定は、刑事訴訟には適用がないと解すべきであるので、被告人が婚姻をしたとしても、未成年者である限り、その母である甲野春子に法定代理人としての上訴権が認められるべきであるという。
しかし、刑事訴訟法三五三条の法定代理人の意義は、民法の定めるところによると解すべきであり、民法七五三条の立法趣旨からして、刑事訴訟において、被告人が婚姻をしても、なお未成年者として取り扱うべき特別の理由もないので、所論は失当というべきである。


大阪高等裁判所決定/昭和52年(く)第25号
昭和52年3月31日
記録によれば、本件抗告を申し立てたI・Y子は少年の母であり、同付添人弁護士〇山〇洋は原決定後の昭和五二年三月二八日右I・Y子によつて選任されたものであつて、少年法三二条は保護処分の決定に対し抗告を申し立て得る者を保護処分を受けた少年、その法定代理人および付添人に限つているところ、ここに法定代理人とは、民法上の法定代理人、すなわち親権者および後見人をいうが、少年は昭和五一年八月二六日M・N子と婚姻の届出をなしていて民法七五三条により成年に達したものとみなされ、もはや親権(後見に服する余地はなくなつているから(同法八一八条一項、八三八条一号)I・Y子は少年の法定代理人とはいえないし、実父母といえども親権を有しない者は法定代理人ではないから抗告権を有しないといわざるを得ず(最判昭和二六年四月一〇日刑集五巻五号八二〇頁、最決昭和三〇年四月一一日形集九巻四号八三六頁参照)、I・Y子の本件抗告申立は不適法といわなければならない。かつまた、ここに少年のため独立して抗告をなし得る付添人は、原審における付添人をいい、原決定後に選任された付添人は独立しては抗告をすることができず、弁護士〇山〇洋の本件抗告をI・Y子の任意代理人としてなしたものと解しても、右にみたようにI・Y子自身に抗告権が認められない以上右〇山〇洋の本件抗告もまた不適法といわなければならない(最決昭和四四年九月四日刑集二三巻九号一〇八五頁参照)。結局本件各抗告の手続が規定に違反したことに帰する。よつて、少年法三三条一項、少年審判規則五〇条により本件各抗告を棄却することとし主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 矢島好信 裁判官 吉田治正 朝岡智幸)