児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

執行猶予中の事件で逮捕され、保釈中に逮捕された

 保釈取らなければ逮捕はないわけで、弁護人はショックでしょう。
 保釈どうする?
 大昔、こんなん事情で意味ないから取り消してもらったことがあります。

住居侵入容疑 元警官を逮捕 下着盗み目的
2010.10.02 読売新聞
 被告は3月、北九州市内の女子高生に対する強制わいせつ容疑で逮捕され懲
戒免職になった。福岡地裁小倉支部から懲役2年、執行猶予3年の判決を受け
たが、執行猶予中の8月、福岡市の書店で女子大生のスカートをのぞいたとし
て逮捕、起訴され、9月9日に保釈されていた。

埼玉県青少年健全育成条例の「当該青少年の年齢を知らないことを理由として、第28条及び第29条の規定による処罰を免れることができない。ただし、当該青少年の年齢を知らないことに過失がないときは、この限りでない。」

 淫行について「通常可能な年齢確認が適切に尽くされている」というのは、口頭確認ではなく、公的な身分証明書ですかね。運転免許証を偽造した場合は、公文書だし、手も込んでるし、偽造した方が重罪だと。紙の学生証程度だと写真張り替えも容易だから、だめなんでしょうね。解説も自治体によってまちまちです。

埼玉県青少年健全育成条例の解説
(解説〉
1 本条は、次の違反があった場合の過失処罰を規定したもので、当該青少年の年齢を知らないことに過失がないときのほかは、条例第28条から司第29条までの規定による処罰を免れることはできないと規定している。
2 ただし書きの「過失がないとさJとは、社会通念に照して、通常可能な年齢確認が適切に尽くされているか否かによって判断されると解する。

鹿児島県青少年保護育成条例の淫行と刑法の性犯罪との関係

 法律優先のようです。

鹿児島県青少年保護育成条例の解説
6 青少年の性行為に係る関連法令としては,刑法,児護福祉法及び売春防止法があるが,本条は,これらの法令で規定されていない青少年を相手とするいん行及びわいせつ行為を禁止しようとするものである。
すなわち
(1)刑法で,暴行,脅迫等をもってする性行為等については,処罰の対象としているが. 13歳以上の者に対して暴行,脅迫等を伴わないでいん行又はわいせつ行為を行うことは,処罰の対象となっていない。
(2)児童福祉法(第34条第1項第6号)では, 「児童(18歳未満)に(第3者と)いん行をさせる行為」は,処罰の対象となっているが. 18歳未満の青少年を相手としていん行又はわいせつ行為をした者は処罰の対象となっていない。
(3 )売春防止法では. 「売春のための公然勧誘(第5条)」「売春の周旋をする行為(第6条)」「困惑,脅迫,暴行等による売春(第7条)」については処罰の対象となっているが、これらによらない売春(双方の合意があり,公然たる勧誘又は周旋のない売春)については処罰の対象となっていない。

滋賀県青少年の健全育成に関する条例は強姦罪・強制わいせつ罪の告訴がないときに適用される。

 「性犯罪の告訴無いこと」という消極的訴訟条件が青少年条例違反罪の構成要件になってるんですか?

滋賀県青少年の健全育成に関する条例の手引き
6. 本条は、刑法をはじめ関係法令だけでは規制できない部分を青少年の保護、健全な育成という面から取り上げて規定したものである。
(1) 13歳未満の婦女に対する強制わいせつ、強姦は刑法と重複することになるが、刑法は親告罪であるのに対し、本条では、告訴の有無は関わない。
(2) 児童福祉法で禁止する「児童に淫行をさせる行為Jは、児童をして他人と淫行させることであり、本条の規定は、行為者自らが青少年を相手方としてみだらな性行為をすることを禁止しているものである。
(3) 売春防止法は、売春すること、または売春の相手方となることを禁止しているが処罰規定を設けていない訓示規定である。
(4)児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律は、18歳未満の者に対し、対賞を供与し、または供与を約束して、性交等を行うことを禁止処罰しているが、対償を伴わない「いん行又はわいせつな行為」の処罰規定はない。

プロバイダの刑事責任

 岡山南警察が検挙したようです。
 全国初というのは疑問で、兵庫県警が社長を逮捕して起訴猶予になった事案がありました。
 

http://mainichi.jp/area/okayama/news/20101001ddlk33040530000c.html
逮捕容疑は今年2月から6月にかけて、同社が運営する携帯電話用アダルトサイトで、投稿された児童ポルノ画像を利用者が閲覧できる状態にしたとされる。同社は八つのアダルトサイトを運営し、どれか一つに投稿された画像がほかのサイトに反映されるシステムを作っていたという。

http://www.sanyo.oni.co.jp/news_s/news/d/2010093013200483/
5人の逮捕容疑は、同社が管理する複数の携帯電話のサイトで、投稿者からアップロードされた児童ポルノの画像データを不特定多数のネット利用者が閲覧できる状態にし、公然と陳列した疑いなど。
 同署によると、容疑者は「サイトにアップロードされたのは間違いない」と話している。

 文献は検索でヒットします。
http://www.google.co.jp/search?sourceid=navclient&hl=ja&ie=UTF-8&rlz=1T4GFRE_jaJP369JP369&q=%e3%83%97%e3%83%ad%e3%83%90%e3%82%a4%e3%83%80%e3%80%80%e5%88%91%e4%ba%8b%e8%b2%ac%e4%bb%bb

 判決だけ羅列した拙稿があります。

プロバイダの刑事責任--名古屋高裁平成19.7.6と東京高裁平成16.6.23
The criminal responsibility of a provider: Nagoya High Court (6th July, 2007) ; Tokyo High Court (23rd June, 2004)
奥村徹

 プロバイダ業界は、民事責任についてプロバイダ責任制限法で手当をしましたが、刑事については手当てしてないので、刑法総論(共犯・不作為犯)がそのまま適用される状況です。いつでもプロバイダの刑事責任を問える判例状況にありましたが、業界としては危機感が乏しいと思いました。

秋田県青少年の健全育成と環境浄化に関する条例と性犯罪

 これは法律優先なんでしょうね。

秋田県青少年の健全育成と環境浄化に関する条例の解説(S53年11月)
 〔要  旨〕
  本条は、青少年に対してみだらな性行為又はわいせつな行為をしたり、わいせつな行為をさせることを禁ずるものであるほか、これらの行為を教え、見せることを禁ずる旨を規定したものである。
 〔解  脱〕
1 本条は、刑法の規定による「暴行」、「脅迫」、「心神喪失」、「抗拒不能」等を伴わない少年に対するみだらな性行為(いん行)又はわいせつ行為、すなわち刑法をはじめ関係実定法令だけでは規制できない部分を、青少年の保護という面からとりあげて規制したものである。
2 「何人」とは、県民はもとより旅行者、滞在者等現に本県内にいるすべての自然人を指し、性別、年令を問わない。もっとも、行為者が青少年である場合には、第二十九条の規定により免責されることになる。
3 「みだらな性行為」とは、「いん行」と同義で、一般社会人からみて不純とされる性行為をいい、結婚を前提としない単なる欲望を満たすため、あるいは好奇心からのみ行う性行為がこれにあたる。いわゆる売春行為も含まれる。
 又、不純であるかどうかは、あくまでも社会通念上判断されるべきものである。
  本項に関しては次のような判例がある。
 一 「みだらな性行為」とは、社会通念上反倫理的なものとして非難に価する性交または性交類似行為を指称し、人格的交流を前提とする性交渉はこれにあたらない。
   それではどのような行為を反倫理的、従って「みだらな」ものと評価するかというのに、例えば売春、対償を得ることがなくとも全く行きずりの者を相手方とする性交渉、あるいは多数人を相手方としまたはこれらを互いに相手方とする乱交のような人格の結びつきを媒介としない性交渉はこれにあたるものと解すのを相当とする。
   (新潟家裁長岡支部決定 昭四〇・七・)
 二 本条の構成条件は、青少年の精神的、知的な未熟さや情緒的な不安定に乗じたような形態における、つまり誘惑、威迫、立場利用、欺圀あるいは困惑、自棄につけこむ等の手段を講じて青少年を自己の性的行為の相手方とせしめたような場合のみを指すものと解すべきである。(旭川家裁決定 昭四一・七・二八)
4 「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激興奮させたり、その露骨な表現によって健全な常識を有する一般社会人に対し、性的しゅう恥心や嫌悪の情をおこさせる行為をいう。
刑法第一七四条、第一七六条等にいう「わいせつ」と同義である。
又、現にしゅう恥、嫌悪の情をおこさせたことを必要としない。このような情をおこさせる性質の行為であれば、これにあたる。
5 第二項の「わいせつな行為をさせる」とは、児童福祉法第三十四条第一項第六号に規定する「児童に淫行させる行為」の「させる行為」と同義で、青少年を直接又は間接に強制してわいせつ行為をさせる場合のみならず、青少年に対して利害得失を説明してわいせつ行為をするよう示唆、暗示したり、わいせつ行為をするにつきその手段、便
 宜を供与したような場合も含まれる。
6 第三項の「教え」とは、みだらな性行為又はわいせつな行為に関する知識を与えることをいい、その方法のいかんを問わない。
  例えば、青少年に対してこれらの行為の写真、図画、雑誌、映画フィルム、スライドフィルム等を見せる行為はこれにあたる場合がある。
  単なるわい談等の一般的な漠然としたものではなく、具体的、直接的に教えることである。
  「見せ」とは、みだらな性行為又はわいせつな行為を直接見せることをいう。従って、図書、映画、有線テレビ等の媒体を通して見せることは、これに該当しない。