児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

本判決は,児童淫行罪と児童ポルノ製造罪のそれぞれに該当する行為が観念的競合の関係にあるとの弁護人の主張に対し,併合罪に立つことを表明したものである(東京高裁判決速報3409号)

 最決が先に来たので転説しました。

東京高裁速報番号3409号
児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に濁する法律違反
(平成21年(う) 4 8 8号平成21年10月14日、
東京高等裁判所第9刑事部控訴棄却
判示事項
本判決は,児童淫行罪と児童ポルノ製造罪のそれぞれに該当する行為が観念的競合の関係にあるとの弁護人の主張に対し,併合罪に立つことを表明したものである。
裁判要旨
児童淫行罪と児童ポルノ製造罪とは併合第の関係、にある。


備考
児童淫行罪と児童ポルノ製造罪の罪数関係については,児童ポルノ製造罪の対象となる行為が淫行自体に限らないこともあって,観念的競合説と併合罪説とが半ばし,検察官の起訴もそれぞれの説に従うものがあるが,本判決は,両罪が観念的競合に当たると最も考えやすい,いわゆる「ハメ撮り」行為についてもこれが併合罪になることを明らかにしたものであり,今後の実務の参考になるものである。

岩手県青少年のための環境浄化に関する条例と性犯罪

 法律優先

岩手県青少年のための環境浄化に関する条例の解説(S55年3月
2 しかし、1に掲げる刑法その他の法律で罪に当たらない行為でも、青少年の心身に悪影響を及ぼし、あるいは性的に堕落させ、青少年の人格形成に大きな障害となることになりかねない。
本条は、刑法その他の法律で規制されない青少年に対する性的背徳行為について、青少年の健全育成という趣旨から規制を加えるものである。

岩手県青少年のための環境浄化に関する条例「第18条の規定に違反した者は、青少年であることを知らないことを理由として第l項文は第2項の規定による処罰を免れるととができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。


 「えと」でいいんですか?
 この解説の記載は実務と離れてますので信用しない方がいいです。

岩手県青少年のための環境浄化に関する条例の解説(S55年3月

5 第4項の規定は、青少年に対して、みだらな性行為若しくはわいせつな行為をした者又はわいせつな行為をさせた者は、相手が青少年である乙とを知らなかったという理由で処罰を免れることを妨ぐため、設けた規定であって、相手が青少年である乙とを知らなかった場合であっても処罰を免れない乙ととしたものである。

「過失のない時」とは、青少年に年齢、生年月日、えと等を尋ね、又は運転免許証、身分証明書等の提出を求める等、客観的に妥当な確認措置をとったにもかかわらず、青少年自身が年齢を偽り、又は虚偽の証明書を提出する等、行為者の側に過失がないと認められる場合をいい、過失がないことの証明は、違法行為をした者が行うことを要するものである。

刺青は医療行為(東京地判H2.3.9)

 地裁レベル。
 包括一罪。

東京地方裁判所判決平成2年3月9日
判例時報1370号159頁
 (罪となるべき事実)
 被告人は、医師の免許がないのに、別紙犯罪事実一覧表記載のとおり、昭和六三年四月七日ころから平成元年四月二四日ころまでの間、東京都港区店内もしくは東京都渋谷区《番地略》所在の渋谷店内において、前後一二回にわたり、同表客氏名欄記載のA他九名に対し、あざ、しみ等を目立ちづらくする目的で、局所麻酔剤キシロカイン注射液を同表身体の部位欄記載の部位に同表行為内容欄記載のように塗布したり、注射したりし、さらには、注射器もしくは針を使用して右治療部位に色素を注入する等の行為をなし、もって医業をなしたものである。
(証拠の標目)《略》
(争点に対する判断)
 弁護人は、被告人が行った判示行為のうち、局所麻酔剤の塗布及び注射並びに注射器による色素注入がいずれも医師法に違反する行為であることは争わないものの、針による色素注入行為は、美容を目的とし、人体に対する危険性が高いとはいえない行為であって、すでに社会内に業種として広まっており、しかも、類似行為といえる入れ墨は社会的に容認ないし黙認されていることからすると、社会的に相当性を有する行為であるから、違法性はない旨主張するので、この点について当裁判所の判断を述べる。
 前掲関係証拠によれば、以下の事実が認められる。
 被告人は、人の皮膚に針を用いて色素を注入する行為(以下、「本件行為」という。)をなしたのであるが、これは、専ら美容を目的として、色素を付着させた針を細い棒の先あるいは電動器具に固定し、これを人の皮膚に多数回刺して色素を埋め込んでいく方法でなされたものであり、本件行為を施すことにより、色素を一定期間皮膚内に定着させ、化粧をしなくても皮膚、眉、唇等の色合いを外見上美しく見せようとするものであり、また、あざやしみ等皮膚の病変を目立ちづらくしようとするものとしてなされたものである。本件行為は、数年前からアートメイクとか消えない化粧などと通称されて、多数の業者により雑誌等に宣伝を繰り返されてきているものである。
 ところで、人の皮膚は、その表面から、表皮、真皮、皮下組織の三層から構成されているが、表皮は部位により、また、個人差により異なるとはいえ、その厚さは〇・一ないし〇・三ミリと極めて薄いため、本件行為を施すと、針の先端を表皮内に止めることは技術的に不可能であり、少なくとも真皮内にまで針が到達し、その部分まで皮膚を損傷させるため出血を伴うことになる。これは、一定期間色素が
落ちないという本件行為の目的を達するためにも、新陳代謝により約一か月で脱落してしまう表皮に色素を入れるのでは意味をなさないことからも当然である。
 そして、本件は、正常な皮膚ではなく、いずれも皮膚が病変しているあざ、しみ、火傷跡に本件行為を施したものであって、その際にはいずれの客にも相当の出血があり、行為後は炎症がみられるという正常な皮膚に対するものより一層深刻な損傷を与えた反面、色素の定着が不安定なために行為前とそれほどの相違がない状態に復してしまったり、あるいは、色素の注入が均一ではないために色素がむらになって目立ち、かえって見苦しくなるという結果に終わっており、前記のようにあざ等を目立たなくするというアートメイク本来の目的はほとんど達成されていないものである。
 以上の事実を前提にして、さらに前掲証拠により本件行為の違法性につき判断する。
医師法にいう医業とは、反復継続して医行為を行うことであり、医行為とは、医師の医学的知識及び技能をもって行うのでければ人体に危険を生ずるおそれのある行為をいい、これを行う者の主観的目的が医療であるか否かを問わないものと解されるところ、本件行為は、針で皮膚を刺すことにより、前記のように皮膚組織に損傷を与えて出血させるだけでなく、医学的知識が十分でない者がする場合には、化膿菌、ウイルス等に感染して肝炎等の疾病に罹患する危険があり、また色素を皮膚内に注入することによっても、色素自体の成分を原因物質とするアレルギーなどの危険があるとともに、色素内に存在する嫌気性細菌等に感染する危険があることが認められ、さらには、多数回皮膚に連続的刺激を与えて傷つけることによりその真皮内に類上皮肉芽腫という病変を生ずることも指摘されていることが認められるのであって、本件行為が医師ではない者がすることによって、人体に対して右のような具体的危険を及ぼすことは明らかである。
 弁護人は、本件行為が美容を目的として人体に対する危険性が高くないものとしてすでに社会的に広まっており、しかも、入れ墨が社会的に容認あるいは黙認されている状況にあり、これに類似する本件行為は営業として宣伝までしているにもかかわらず、何らの取締りを受けていないことからすると、すでに社会に受け入れられた社会的相当行為である旨主張する。しかしながら、本件行為が美容の上から何らかの効果があり、社会的に広く行われている現状にあるとしても、たまたま見過ごされてきた本件行為が、本件により、前記のような人体に対する具体的危険を及ぼすことが判明した以上、医師ではないものが本件行為をなすことに違法性があることは明らかである。
 そして、なるほど、本件行為と古来から行われてきている入れ墨を彫る行為とは、針で人の皮膚に色素を注入するという行為の面だけをみれば、大差ないものと認められるので、入れ墨もまた本件行為と同様医行為に該当するものと一応は認められる。しかしながら、入れ墨が歴史、習俗にもとずいて身体の装飾など多くの動機、目的からなされてきていることに比較し、本件行為は前記のように美容を目的とし、広告等で積極的に宣伝して客を集めているものであり、その宣伝があたかも十分な美容効果が得られるような内容であるのに、これが本件のような病変した皮膚を目立ちづらくするというにはほとんど効果がないか、乏しいものであるうえ 専ら営利を目的とし その料金(皮膚一平方センチメートルあたり三万円ないし五万円程度)も、客の期待がほとんど達せられないという意味で極めて高価であるなどという際立った差異が認められる。このことからすると、入れ墨も本件行為もともに違法であるとはいっても、それぞれの違法性の程度は当然異なるといわざるをえない。そして、入れ墨も本件行為も、結局この違法性の程度に応じて、即ち、その社会的状況を反映した実体ごとに取締りの対象になるかどうかが判断されているものと思われる。したがって、入れ墨が違法ではあっても今日社会的に黙認されているからといって、前記のような違法性の程度が異なる本件行為もまた黙認ないし容認されるべきものと認めることはできない。
 そして、本件行為の実体が前記のようなものである以上、本件行為の違法性は高くないものとは認められず、ましてや、本件行為が社会通念上正当なものと評価される行為とは到底認めることができない。
 以上により、弁護人の本件行為が社会的相当行為であるとの主張は採用することができないと判断した。
(法令の適用)
罰       条 医師法三一条一項一号、一七条
刑種の選択懲役刑
未決勾留日数の算入 刑法二一条
訴訟費用の負担刑事訴訟法一八一条一項本文
(量刑の理由)
(裁判官 岡村 稔)

注釈特別刑法5-1 医事・薬事編(1)[第二版]P101
本罪は、性質上同種の行為の反復が予想されるものであるから、反復してなされた数個の行為は包括的に一個の犯罪として処理される

名古屋高等裁判所昭和26年1月29日
高等裁判所刑事判決特報27号13頁
 まず本件につき職権をもつて審査するに、被告人に対し、(1)昭和二十五年一月二十三日附起訴状により「((一))被告人が医師でないのに昭和二十四年十二月六日頃より同二十五年一月十五日頃迄の間肩書自宅等において急性肺炎患者であるの長女当一才を診療して医業を為し」た事実につき原裁判所に公訴が提起されたのであるが、次で(2)昭和二十五年六月二日附起訴状により同様「(第八)被告人が医師でないのに昭和二十四年三月頃より同二十五年一月初頃に至る間右自宅等において食道癌患者である当五十一才を診療して医業を為し」た事実につき、更に(3)昭和二十五年六月二十日附追起訴状により同様「(第二)被告人が医師でないのに昭和二十四年三月頃より同二十五年五月二十日頃迄の間右自宅において別紙犯罪事実明細表の通り外十名を診療して医業を為し(該明細表添附)」た事実につきいずれも同裁判所に各公訴が提起されたことは記録上明らかであるところ、原審は右各起訴状並追起訴状記載の各公訴事実につき併合審理の上前記(1)(2)(3)の無免許医業の事実をその儘原判決に判示第四の(一)(二)(三)犯罪事実として(同上(三)につき別紙明細表添附)認定しこれに各医師法第十七条第三十一条第一号(第三十一条第一項第一号の誤と認む)を適用し併合罪として処断しておるが、医師法第十七条にいわゆる「医業」とは反覆継続の意思で医行為に従事するを謂うものと解すべく、従て同条の規定に違反してなされる無免許医業もその犯罪構成要件の性質上同種の行為の反覆が予想さるべきものであるから、その反覆して為された場合これら数個の行為は包括的に一個の犯罪としてこれを処断すべきものといわねばならぬ。しかるに被告人の右無免許医業の各行為は既にその前示期間、日時、患者数からみても引続き相接近して繰返されたことが明らかであり、反覆継続の意思で行われたものと観てもよいと思われ、またこの点に関する原判決挙示の証拠上からもそれが窺い得るのであるから、右は包括的に一個の犯罪として取扱うべきものといわざるを得ない。然らば右犯罪事実につき既にその本件公訴の提起において前記(2)(3)の起訴状によりなされた起訴手続は不適法のものというべく、しかるを原審が漫然審理して前示の如く判決をしたのは不法であつて、到底破棄を免かれない

福井県青少年愛護条例の「何人も、青少年の年齢を知らないことを理由として、第1項から第5項までの規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない」

 淫行相手に「年齢を問いただす」で足りるんですか?

福井県少年愛護条例」福井県青少年総合対策本部編
「青少年の年齢を知らないことを理由として、罰則規定を免れることはできないことを規定したものである。ただし、青少年の年齢確認について、客観的に充分な注意義務が払われ、違反行為の発生に過失が認められなかった場合には、罰則の適用は免れる。
「過失のないとき」 とは、具体的な事案ごとに提出された客観的資料の種類、その提出の状況およびその確認方法等を総合的に検討し、社会通念に照らして通常可能な調査が適切に尽くされているか否かによって判断される。
青少年の年齢確認については、関係業者の協力に委ねるところが大きいが、学生、生徒等の場合には、学生証、生徒手帳等の提示を求めるとか、服装、態度等から判断して、年齢を問いただすなどの適当な方法をとることが望まれる。

福井県青少年愛護条例と性犯罪

 「刑法以上の規制」だそうです。

福井県少年愛護条例」福井県青少年総合対策本部編
(趣旨)
一般に青少年は、その心身の未成熟あるいは精神と肉体の発達段階の不均衡から、成人に比し精神的に未だ十分に安定しておらず、反倫理的、反道徳的な行為や体験による衝撃ないしは被影響性が大きく、かつ容易にこれらから回復し難いものである。したがって、このような青少年の特質に鑑み、その健全な育成を図るとともにこれを限害するおそれのある行為を禁じ、もってその福祉の向上を図るため、青少年を対象としてなされるもののうち、特に社会通念に照らして、倫理的な非難を受けるべき性行為等を禁ずることとしたものである。
(解説)
青少年の性的な非行は、大人の心ない行為により、これを知ったことによるものが多く、その責任は、大人にあるといっても過言ではない。したがって、本条は、青少年に対してなされる淫行、わいせつな行為、さらにこれらの行為を教えたり見せたりする行為を禁止するものである。
刑法では、第176条(強制わいせつ)、第177条(強姦)、第178条(準強制わいせつ及び準強姦)等の規定があり、これらの行為は、暴行、脅迫、心身喪失、抗拒不能等の状態下における行為であるが、条例では、前記刑法の規定以上に青少年に対する淫行、わいせつな行為等を禁止するものである。
特に、本条第l項の違反については第51条第1項により、条例中、最も厳しい量刑(2 年以下の懲役または100万円以下の罰金)が科されている。
「みだらな性行為」とは、各県の条例によって、「淫行」「みだらな性行為」など表現の相違はみられるが、この二つの言葉は同義語である。
「みだらな性行為」とは、「健全な常識ある一般社会人からみて、結婚を前提としない、欲望を満たすことのためのみに行う不純とされる行為」 (東京高裁昭39.4.22)をいう。
「みだらな性行為」には、性交類似行為も含まれる(新潟家長岡支決昭40.1.12) が、本条では「わいせつな行為」という用語でもって規定しており、「わいせつな行為」とは、いたずらに性的感情を刺激、興奮させたり、その露骨な表現によって、正常な普通人をして性的差恥や嫌悪の情を起こさせ善良な性的道義感に反するものをいう。
なお、本条は、これまで「親告罪」としてきたが、「親告罪とするか否かはこの種規
定のもたらす現実的影響、地域的特性等を考慮した立法政策上の問題」であることから、平成8年3月の一部改正で、「親告罪規定」 を削除した。
親告罪規定」の有無にかかわらず、本条の適用に際しては、関係者の人権の尊重等細心の民意が不可欠であることは、当然である。
児童福祉法では、児童に対する禁止行為として、同法第34条第1項第6号により、「児童に淫行をさせる行為の禁止」 が規定されている。両者の異なる点は、児童福祉法は、児童に「なさしめる」 ことを禁止しているのであり、本条は、直接、青少年を相手に「淫行をする行為」である。
「何人も」とは、すべての者をいい、「してはならない」とは、青少年を相手として行うことを一切「禁止」 したもので、相手方の同意の有無を問わない。
「教え」とは、相手方とはならないが、当該行為の方法等を教示することで、単なるわい談等の一般的にまん然としたものではなく、具体的に教えることであり、その方法の如何を関わない。例えば、文書、図画、写真、ビデオ等を視聴させる行為等が「教え」に当たる。しかし、学校等法令または正当な業務に基づく「性教育」は、これに該当しないことはいうまでもない。
「見せ」 とは、自己または他人の性行為またはわいせつな行為を青少年に見せることで、前述の文書、図画等を見せることは、ここでいう「見せる」fこは該当しない。
8 本条第2項の違反には、第51条第4項第8号により、罰則(30万円以下の罰金)の適用がある。
9 本条は、青少年に対する行為を対象としたものであり、青少年の行為について本条を適用することは、妥当ではない。また、たとえ青少年以外の者の行為であっても、将来、両者が結婚することが家族等周知の事実であるなど、特定の事情が存在する場合には、本条を適用することは妥当でない。
なお、本条の趣旨から青少年の面前でのわい談などの言動は厳に慎むべき行為である。