児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「じぇんこ出せ」にリアリティー…供述調書は津軽弁のままで

 福祉犯の交渉経過とか行為状況とかも、リアルさを追求したのかべたべたの大阪弁で書かれていて、被告人が「僕、そんな大阪弁じゃありません」ということがあります。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090326-00000677-yom-soci
「じぇんこ出せ」にリアリティー…供述調書は津軽弁のままで
3月26日14時36分配信 読売新聞
 警察の取り調べが妥当だったかを裁判員裁判で証明するために4月から導入される取り調べの一部録画を巡り、取調室で“難解”な津軽弁が飛び交う青森県警は、容疑者らの言い回しを再現する際は供述調書にそのまま記載して読み上げる方針を決めた。
 真意を正確に伝える狙いだが、一方で津軽弁では転勤族の裁判員らが理解できないことも予想され、取調官が標準語での言い換えを補足して記載、録画時にも読み上げる。

不正アクセス行為の禁止等に関する法律を見ながら起案した?3項製造罪の判決書(東京地裁)

 これはだめですよ。児童ポルノ法では「特定電子計算機」なんて意味わからない。
 しかも、児童ポルノや有体物なのに「画像を製造した」になっていて、だめだめです。
 起訴状丸写しはだめだって研修所で習わないんですかね。
 弁護人も意味不明なのに認めたらだめですよ。

被告人は、h21.3.26、28、30の3回 児童(16)方において、児童に乳房陰部を露出する姿態をとらせて児童のカメラ付き携帯電話を用いて、児童をして撮影させ、同携帯電話機から 甲会社が管理するアクセス制御機能を有する特定電子計算機であるサーバにメールに添付して送信させ 3回同所において 画像データを前記サーバに記憶蔵置させて、3号ポルノである3画像を製造したものである

不正アクセス行為の禁止等に関する法律
第2条(定義)
1 この法律において「アクセス管理者」とは、電気通信回線に接続している電子計算機(以下「特定電子計算機」という。)の利用(当該電気通信回線を通じて行うものに限る。以下「特定利用」という。)につき当該特定電子計算機の動作を管理する者をいう。
2 この法律において「識別符号」とは、特定電子計算機の特定利用をすることについて当該特定利用に係るアクセス管理者の許諾を得た者(以下「利用権者」という。)及び当該アクセス管理者(以下この項において「利用権者等」という。)に、当該アクセス管理者において当該利用権者等を他の利用権者等と区別して識別することができるように付される符号であって、次のいずれかに該当するもの又は次のいずれかに該当する符号とその他の符号を組み合わせたものをいう。
一 当該アクセス管理者によってその内容をみだりに第三者に知らせてはならないものとされている符号
二 当該利用権者等の身体の全部若しくは一部の影像又は音声を用いて当該アクセス管理者が定める方法により作成される符号
三 当該利用権者等の署名を用いて当該アクセス管理者が定める方法により作成される符号
3 この法律において「アクセス制御機能」とは、特定電子計算機の特定利用を自動的に制御するために当該特定利用に係るアクセス管理者によって当該特定電子計算機又は当該特定電子計算機に電気通信回線を介して接続された他の特定電子計算機に付加されている機能であって、当該特定利用をしようとする者により当該機能を有する特定電子計算機に入力された符号が当該特定利用に係る識別符号(識別符号を用いて当該アクセス管理者の定める方法により作成される符号と当該識別符号の一部を組み合わせた符号を含む。次条第二項第一号及び第二号において同じ。)であることを確認して、当該特定利用の制限の全部又は一部を解除するものをいう。

 研修720号のこの事案ですね。
 7ヶ月後にDLしたんですが、送ってもらうために撮らせたのだとすると犯意については継続していると言えないこともないです。
 でも、上述したように、不正アクセス罪の記載が混入している点と、データを児童ポルノとして記載している点で、控訴すれば破棄されたと思います。
 こんなの悪い見本です。おかげで、以来、データを児童ポルノとする判決が散見されます。

星景子「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律2条3項3号に該当する姿態を児童自らに撮影させ、その画像を同児童の携帯メールに添付して・・・」研修 第720号
(1) Vlに係る児童ポルノ製造罪
被告人は,平成18年10月,V1(当時16歳の女児)が18歳未満の児童であることを知りながら,束京都内の児童の自宅において同児童をしてその乳房及び陰部等を露出させる等の姿態をとらせ、これを児童の携帯電話機のカメラにより静止画として撮影させ、その画像を携帯電話機からYプロハイダー会社が管理する特定電子計算機であるサーバーコンピューターに電子メール添付ファイルとして送信させた上平成19年5月神奈川県内の被告人方に設置されたパーソナルコンピューターから電気通信回線を介して・前記パーソナルコンピューターに受信して記憶・蔵置させて,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であっで性欲を興奮又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである画像データを製造した。

(2)V2に係る児童ポルノ製造罪
平成19年6月 V2 (当時17歳の女児)が18歳未満の児童であることを知りながら,東京都内の児童の自宅において,児童をしてその乳房及び陰毛等を露出させる等の姿態をとらせ,これを同児童の携帯電話機のカメラにより静止画として撮影させた上その画像を同携帯電話機からYプロバイダー会社が管理する同都千代田区内に設置したアクセス制御機能を有する特定電子計算機であるサーバーコンピューターに電子メール添付ファイルとして送信させ,そのころ同所において,その画像データを前記コンピューターに受信して記憶・蔵置させて,衣服の全部又は一部を射すない児童の姿態であっで性欲を興奮又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである画像データを製造し

このような訴因や犯罪事実の記載について東京高裁H20.9.18は訴因不明確だとしています。

東京高裁平成20年9月18日
上記の者に対する児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件について,平成20年2月29日地方裁判所が言い渡した判決に対し,被告人から控訴の申立てがあったので,当裁判所は,検察官出席の上審理し,次のとおり判決する。
主文
原判決を破棄する。
理由
本件控訴の趣意は,弁護人奥村徹作成名義の控訴趣意書及び平成20年6月30日付け控訴趣意補充書(ただし,第1のみ)各記載のとおりであるから,これらを引用する。
第1 訴訟手続の法令違反(訴因不特定)の主張について
1 論旨は,要するに,原判決は,原判示第2の事実として,起訴状記載の公訴事実と全く同旨である,被告人が,平成年日,ホテルにおいて,当時17歳の女子児童が18歳に満たない児童であることを知りながら,同児童をしてその乳房及び陰部を露出させるなどの姿態をとらせた上,これをデジタルカメラで撮影し,その画像データを記憶させ,同日ころ,同市内の被告人方において,上記画像データをパーソナルコンピューターに記憶,蔵置させ,もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態等であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである画像データ20画像を製造したとの事実を認定したが,上記公訴事実の記載は,訴因が不特定であって,刑訴法256条3項に違反し,公訴が無効であるにもかかわらず,公訴棄却の裁判をせず,原判示第2の事実を認定し有罪とした原審の措置には,判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反がある,というのである。
検討すると,起訴状記載の公訴事実につき訴因の明示に不備があったとしても,その公訴事実自体によって全く訴因が特定されているといえないような極限的な場合を除いては,直ちに当該起訴がその効力を失うものではなく,訴因の記載が明確でない場合には,裁判所は検察官に釈明を求め,それにもかかわらずなお不明確な場合にこそ,訴因不特定として公訴棄却すべきであると解されるところ,本件公訴事実は,犯行の主体・客体,目時・場所を特定していることはもとより,その方法についても「児童をしてその乳房及び陰部を露出させるなどの姿態をとらせた上,これをデジタルカメラで撮影し,その画像データを記憶させ,(中略)上記画像データをパーソナルコンピューターに記憶,蔵置させ」という程度には具体的に表示しているから,訴因不特定として公訴棄却すべき場合に当たらないことは明らかであり,所論は採ることができない。
2しかしながら,職権をもって調査すると,原判決には以下に説示するとおりの訴訟手続の法令違反があり,この点において破棄を免れない。
(1)原審記録及び当審における事実取調べの結果によれば,以下の事実が認められる。すなわち,
ア 被告人は,平成18年月日,市内のホテルにおいて,当時17歳の女子児童が18歳に満たない児童であることを知りながら,同児童に対し,現金4万円の対価を供与して同児童と性交し,もって児童買春した(原判示第1の事実)。
イ 上記児童買春の際に,被告人は,同ホテル内において,同児童に衣服の全部又は一部を着けない姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものをとらせ,これを所携のデジタルカメラで撮影し,上記姿態を同カメラ内蔵の記録媒体であるピクチャーカードに視覚により認識することができる方法により描写した。
ウ 次いで,被告人は,同日,同市内の被告人方において,上記デジタルカメラをパーソナルコンピューターに直接接続し,上記ピクチャーカードに記録した上記姿態に係る画像データを上記パーソナルコンピューター内蔵の記録媒体であるハードディスクに視覚により認識することができる方法により描写した。その上で,被告人は,上記ピクチャーカードに記録した上記姿態に係る画像データは消去した。
なお,その際,被告人は,上記ピクチャーカードに記録した画像データを,まず上記ハードディスクのCドライブのフォルダの1つであるデスクトップに作成したフォルダに複写したが,その後の平成19年月日には,上記ハードディスクのDドライブに作成したフォルダにそのデータをそのまま移動させた。
 しかし,上記パーソナルコンピューターに内蔵されたハードディスクは,物理的に1台の装置であり,それを見掛け上(論理上)複数のドライブに分割して,Cドライブ,Dドライブとして使用していたにすぎないものであった。
エ 原判示第2の事実に係る起訴状には,被告人に対する公訴事実として,要旨「被告人は,平成18年,市内のホテルにおいて,当時17歳の女子児童が18歳に満たない児童であることを知りながら,同児童をして,その乳房及び陰部を露出させるなどの姿態をとらせた上,これをデジタルカメラで撮影し,その画像データを記憶させ,同日ころ,同市内の被告人方において,前記画像データをパーソナルコンピューターに記憶,蔵置させ,もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態等であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである画像データ20画像を製造した」との記載がなされ(以下,単に「本件公訴事実」という。),これに対する罪名及び罰条として,「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反同法律第7条第3項・第1項,第2条第3項第2号・第3号」が挙げられている(以下,この項において,本件公訴事実に関する事件を「本件」という。)。
オ 原判決は,(罪となるべき事実)の項で,第2の事実として,本件公訴事実と同旨の事実を認定し,(法令の適用)の項で,罰条として,同法7条3項,1項,2条3項2号,3号を摘示し,刑種の選択以下の法令適用に及んでいる。
(2)児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下,この項において,単に「法」という。)にいう「児童ポルノ」とは,「写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
一児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
二他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」と定義されている(法2条3項)。
したがって,本件のような電磁的記録に係る事案において,児童ポルノとは,画像データ等の電磁的記録自体ではなく,当該電磁的記録に係る記録媒体(フロッピーディスク,CD−ROM,MOディスク,DVD,メモリーカード,ハードディスク等)を指すものといわなければならない(この点を指摘する所論は正当である。)。
(3)本件公訴事実は,上記(1)エのとおりの記載がなされ,罪名及び罰条の記載や公訴事実の記載全体の体裁からすれば,法7条3項の児童ポルノ製造罪に該当する事実が起訴されたものであると解されるところ,公訴事実中に,「もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態等であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである画像データ20画像を製造した」と記載されており,結論として電磁的記録である画像データ自体が児童ポルノに該当するとしているものと解さざるを得ず,これが上記(2)の法の解釈を誤解したことに基づく誤った記載であることは明らかである。そして,上記(1)ア〜ウの事実関係を前提とすると,本件において,製造行為の客体である児童ポルノに該当し得るものは,デジタルカメラに内蔵されたピクチャーカード,あるいはパーソナルコンピューターに内蔵されたハードディスクが考えられるところ,本件公訴事実中にはこれらが挙げられておらず,製造行為の客体である児童ポルノが明示されているとはいえない。
他方,本件公訴事実においては,製造行為の目時・場所については特定されており,その方法についても「児童をしてその乳房及び陰部を露出させるなどの姿態をとらせた上,これをデジタルカメラで撮影し,その画像データを記憶させ,(中略)前記画像データをパーソナルコンピューターに記憶,蔵置させ」という程度には記載がなされており,訴因としておよそ釈明の余地がないほど不明確なものとはいえず,訴因の補正又は変更により十分対処できる程度のものといい得るから,このような場合,原審としては,検察官に対し,本件公訴事実について釈明を求め,電磁的記録である画像データ自体を児童ポルノであるとする誤った記載は撤回削除させ,製造行為の客体である児童ポルノが何であるかについて明らかにさせるなど,訴因の記載を明確にさせた上で,審理すべきであったといわなければならない。
しかるに,原審は,そのような措置をとることなく,訴因不明確なまま審理を終結し,あまつさえ「もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態等であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである画像データ20画像を製造した」という本件公訴事実中の明確に誤った記載までそのまま漫然と踏襲して,上記(1)オのとおり事実を認定し,かつ,法令の適用をしているのであるから,原審の訴訟手続には法令の違反があり,これが判決に影響を及ぼすことが明らかである。
したがって,弁護人のその余の控訴趣意に対する判断をするまでもなく,原判決は破棄を免れない。
第2 破棄自判

 この東京高裁判決はなかなか「研修」に取り上げられませんね。

不特定又は多数の者に提供する目的で不特定又は多数の者に提供したという犯罪事実(東京地裁)

 日本語になってないような気がします。
 「不特定又は多数の者に提供する目的で」は所持罪の要件だけだから、判示2に記載すべきです。
 しかも、わいせつ図画じゃないのに「販売」だなんて。
 東京地裁、大丈夫ですか?

被告人は、
不特定又は多数の者に提供する目的で
1 h21.3.26 被告人方において、被告人のpcを利用して、3号ポルノdvd5枚をインターネットオークションに出品し、4/10ころ落札した甲に郵送する方法で販売して提供した。
2 5/10ころ 被告人方に、3号児童ポルノであるdvd10枚所持した

実刑事案でこれくらいぼけてくれるのは、控訴理由が増えるので歓迎です。

強要による3項製造罪の事案(徳島地裁)

 弁護人でないのでいえるんですが、脅迫してわいせつ行為するのがどうして強制わいせつ罪でないのかが疑問です。

http://mainichi.jp/seibu/shakai/news/20090326ddp012040014000c.html
児童ポルノ:女性を脅迫し画像、元教諭が起訴内容を認める−−徳島地裁
 強要と児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)の罪に問われている被告(33)に対する初公判が25日、徳島地裁(武田正裁判官)であり、被告は起訴内容を認めた。また、検察側は同様の2件について23日付で追起訴したことを明らかにした。


 罪名として強要罪と3項製造罪が挙がっているものの科刑状況。

富山地裁 懲役2年実刑
松山地裁西条 懲役1年10月実刑
山形地裁米沢 懲役2年06月執行猶予5年
札幌地裁 懲役1年10月実刑
福井地裁 懲役1年02月実刑
徳島地裁 懲役1年10月実刑

 厳しいですね。

インターネット上での児童ポルノの流通に関する問題とその対策について 平成20 年度総合セキュリティ対策会議報告書

 管理不行き届きの掲示板管理者が逮捕されるのも珍しくないわけですから、児童ポルノの存在を知れば削除義務が生じるとか、以後は作為犯・正犯になるとか言ってもいいと思うんですが、「削除する等の措置を講じていくことが望ましい。」とのことです。
 見る側は通信の秘密も表現の自由もないとか言われてるのに、業界団体が参加しているので、そっちにはゆるゆるな感じです。それじゃなくならないですよ。

http://www.npa.go.jp/cyber/csmeeting/h20/image/pdf20.pdf
4.サイト管理者等による対策(児童ポルノの削除等)
インターネット上のサイトには、児童ポルノのDVD等を販売するサイトのようにサイト管理者自らが児童ポルノを頒布している場合があり、このようなサイト管理者に対しては、警察による検挙を進めていく必要があるが、サイト管理者が頒布にかかわっていると認められない場合には、サイト管理者も流通防止措置の主要な実施者の一人として、自身が管理するサイトに児童ポルノが掲載されたことを知った場合に削除する等の措置を講じていくことが望ましい。
児童ポルノがインターネット上に一旦流通した場合には、これを回収することは極めて困難であることから、児童ポルノのサイトへの掲載を未然に防止することが理想的である。しかし、そのためには、児童ポルノに限らず掲示板に投稿等された画像のすべてを事前に確認することが必要となるが、実務的にみても、大量の投稿についてそのような措置を人手で行うことは現実的でなく、自動判定技術の開発、利用の促進等が進められていくことが望ましい。
一方、掲載された児童ポルノをサイト管理者やサーバ管理者が削除するための取組みは既に進められており、電気通信事業者団体等は、児童ポルノ等の違法情報の該当性判断についてのガイドラインを定めるとともに、違法情報等の削除等を可能とするモデル契約約款を作成するなどしている。さらに、サイト管理者等による取組みを支援するための仕組みとして、一般のインターネット利用者からの通報を受理しサイト管理者等への削除依頼を行うインターネット・ホットラインセンターが設置されている。インターネット・ホットラインセンターでは、平成20 年中に、「児童ポルノ公然陳列」に該当する情報について、国内のサーバに蔵置されていた445 件について削除依頼を行うとともに、ホットライン相互の国際的な連携組織であるINHOPEに加盟するホットラインの存在する国のサーバに蔵置されていた467 件について当該国のホットラインへの通報を行っている。このような取組みが進められている中、サイト管理者等による児童ポルノの削除を進めるに当たって、削除依頼に応じないサイト管理者等の存在やINHOPEに加盟しているホットラインの存在しない国のサーバに蔵置されており削除依頼ができない児童ポルノの存在等の課題がある。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090326-00000020-rbb-sci
今後の対策としては、インターネットを通じた児童ポルノの流通を防止するためには、その流通に関わる者すべてが、それぞれの立場で対策を講じる必要があるとしており、Webブラウザを利用した児童ポルノの流通経路についてみれば、児童ポルノの製造、頒布を行う当事者の他、児童ポルノが掲載されるWebサイトのサイト管理者、サーバ管理者、検索エンジンサービス事業者、DNSサービス提供者、インターネット・サービスプロバイダ(ISP)、一般のインターネット利用者などが関わっており、これら関係者すべてが、その流通防止に向けた対策を講じていく必要があると報告書では分析している。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090326-00000036-jij-soci
警察庁主催の有識者懇談会「総合セキュリティ対策会議」は26日、インターネット上の児童ポルノ流通を防ぐため、児童ポルノ掲載サイトのリストを作成し管理する団体の設置を提言する報告書をまとめた。信頼ある団体が認定するリストを業者に提供することで、サイトへの接続を遮断する「ブロッキング」が日本で初めて実現する。

http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2009/03/26/22926.html
報告書では、ネット上での児童ポルノ流通の問題点について、児童ポルノがネット上にいったん流通した場合には回収することが極めて困難であり、性的虐待の現場を永久に残し、被害児童の心を傷つけ続けることとなる問題や、児童ポルノの流通によって児童を性欲の対象として捉える風潮を助長する問題があると指摘。対策としては、児童ポルノを流通させた被疑者の検挙、インターネット・ホットラインセンターによる削除依頼などの取り組みが行われているが、依然として多数の児童ポルノが流通し、ネット利用者が容易に検索・閲覧が可能な状態だとしている。

 もっとちゃんと取り締まれば減るとおもうんですけどね。
 そうでないと、ブロッキングとか新手法を作っても、新罪作っても、どれも執行が中途半端になって終わりになります。


 自分も児童ポルノ画像を陳列していた画像掲示板の管理者について、他人が投稿した画像についても、条理に基づいて、法律上の削除義務を認めた判決がありますが、研究会の構成員はご存じないんでしょうね。

名古屋地裁平成18年1月16日
(罪となるべき事実)
被告人は,・・・が管理していた・・・に設置されたサーバーコンピュータに,不特定多数の者が児童ポルノ画像を送信することにより自動的にその画像が掲載されて,インターネットを利用する不特定多数の者において,これを受信して再生閲覧することが可能となる電子掲示板「ロリータなんでも」を開設し,これを管理しうる立場にあったものであるが,
第2 
上記掲示板の開設者としてこれを管理し,違法画像が同掲示板に受信掲載されているのを発見した場合には,これを削除するなどして,これが不特定多数のインターネット利用者に閲覧等されるのを防止すべき義務があるのに,別紙一覧表2記載のとおり,らに、平成年月日ころから同年月日ころまでの間に,所在のほか3か所において,ABCDこもごも,衣服の全部または一部を着けない児童の姿態であって,性欲を興奮させ又は刺激するものを,視覚により認識することができる方法によって描写した電磁的記録である児童ポルノ画像合計11画像を,上記電子掲示板に送信して記憶蔵置させ,不特定多数のインターネット利用者に対し,これらの画像の閲覧が可能な状況を設定し,もって,児童ポルノを不特定多数の者に公然陳列しようとした際,同掲示板にこれらの画像が受信掲載されていて,不特定多数のインターネット利用者が再生閲覧することが可能であることを知りながら,敢えてこれを放置し,もって,これを幇助した。
(争点に対する判断)
1検察官は,判示第2の所為について,被告人と一覧表2記載の各投稿者(以下「投稿者」という。)との間に,児童ポルノの公然陳列についての共同正犯が成立すると主張した。
2しかしながら,判示第2の事実について取り調べた各証拠によれば,同事実において被告人の行った行為は,上記のとおり,児童ポルノを掲載した電子掲示板を開設していた被告人が,投稿者らがこの掲示板に児童ポルノを送信して記憶蔵置させ,インターネットを通じて不特定の第三者が閲覧可能な状態にあることを知りながら,これを削除等しないまま蔵置を続けたというものである。そして,同証拠によれば,被告人と各投稿者らとの間には,上記の内容の電子掲示板が開設されていることの認識と,これに対して投稿者らが児童ポルノを送信して記憶蔵置させ,これがインターネットを通じて不特定の第三者に閲覧可能であることを相互に認識していたにとどまり,具体的に相手の行為を利用して各投稿者が送信蔵置させた児童ポルノを不特定の第三者に閲覧させることについての意思の連絡があったとは言い難い。

3したがって,判示第2の各犯行lこついて,被告人が共同してこれを実行したというためには,被告人の,上記投稿者らがこの掲示板に児童ポルノを送信して記憶蔵置させ,インターネットを通じて不特定の第三者が閲覧可能な状態にあることを知りながら,これを削除等しないまま蔵置を続けたという行為が,これを怠れば自ら積極的に公然陳列したと評価されるほどに,強度の削除すべき義務に違反する行為と言えることが必要と解される。
(1)この点について上記被告人の役割について検討すると,確かに被告人は,上記電子掲示板を開設し,インターネットを通じて不特定の第三者がこれに児童ポルノを送信して記憶蔵置することを可能にしたものであり,これを管理しうる立場にあったのであるから,不特定の第三者にこのような画像が閲覧されることを防止するために,これを削除する等して管理すべき義務があったというべきものである。
(2)そこで,更に進んで,これを怠ったことが,投稿者と共同して児童ポルノを公然陳列したと評価し得るほどに強度の違法性を有するといえるかについて検討を加える。あ上記のとおり,被告人と投稿者らとの間には,具体的画像を不特定の第三者に閲覧させることについての意思の連絡がないことからすれば,投稿者と被告人との間で,相互に相手方の行為を利用して児童ポルノを公然陳列しようとの意思が形成されていたとは言い難い。
そうすると,被告人が,投稿者から上記掲示板に児童ポルノに該当する画像が投稿されたことを認識したのに,これを削除しなかったことをもって,自ら不特定多数の者に対し公然陳列したと同一に評価されるほどに強度の削除義務違反があったと合理的疑いを入れる余地なく認定することはできない。
いしかしながら,上記の被告人の電子掲示板開設に伴う管理義務を考慮すると,判示第2記載の行為は投稿者らの不特定多数の者への公然陳列を幇助したものと認めるのが相当である。

 通信の秘密については問題視していないようです。

P14
6.ISPによる対策(ブロッキングの実施)
ISPは、一般の利用者がインターネットにアクセスするために不可欠なサービスを提供する事業者として、インターネットを通じた児童ポルノの流通防止に重要な役割を担っており、英国、イタリア、スウェーデンフィンランドを始めとする諸外国では、児童ポルノを含むウェブページへのアクセスを遮断するブロッキングを既に実施している。我が国においては、ブロッキングについての検討が緒に就いたところであり、他国の取組みと比べて大きく遅れている。ブロッキングについては、その態様により利用の公平、通信の秘密の観点からの整理を要する(特段の問題はないとの意見もある。)ところであるが、他国における先例もあるところであり、これらを参考としつつ、今後迅速に実施に向けた検討を進めていく必要があろう。

P18
また、利用者が閲覧を行おうとする通信の内容を確認し、これが児童ポルノ掲載アドレスリストに掲載されているものであるときには、同通信の媒介を拒絶するという場合には、電気通信事業法との関係から、「通信の秘密の保護」との関係を慎重に検討する必要がある。その際には、「機械的に処理される仕組みであっても、電気通信事業者の取扱中に係る通信に関し、その通信の秘密に属する情報について機械的に検索を行い、特定の条件に合致する通信を検知し、当該通信を通信当事者の意思に反して利用する行為は、通信の秘密の侵害(窃用)に当たる。」とされる一方で、「通信当事者の同意があれば、窃用に当たらないため、構成要件を満たさない」という議論が参考となり得る。しかし、一般に、通信の当事者間では、「通信の秘密の保護」は放棄されている場合が多いものと解されることから、ISPと利用者が当該通信行為の当事者と解し得る場合には、「通信の秘密の保護」との関係は、比較的容易に整理されるものと考えられる。
また、ブロッキングについては、第3章6において述べたとおり、その方式により、ブロッキングする単位、導入コスト、実施に伴うリスク等が異なっており、その具体的方式を決定するに当たっては、実際のインターネット環境において検証を行うことが必要である。あわせて、アクセスがブロックされる範囲が過大なものとならないかなどについても検証する必要がある。もとより、いずれの方式を導入すべきかという点については、上述の法的整理が影響するものであり、その判断に当たっては、両者を総合的に勘案して結論を得る必要がある。