児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童ポルノ罪包括一罪の判例

 近々、東京高裁あたりで「何度言ったらわかるんだ。併合罪じゃっ!」という判決が出ると思いますが、そう言われると困る「判例」があります。


1 公然陳列罪 東京高裁H16.6.23
 被害児童1名1罪とした原判決を修正して「包括一罪」としている。

東京高裁平成16年6月23日
2所論は,要するに,原判決は,被害児童ごとに法7条1項に違反する罪(児童ポルノ公然陳列罪)が成立し,結局これらは観念的競合の関係にあるとして,その罪数処理を行っているが,本罪については,被害児童の数にかかわらず一つの罪が成立するというのが従来の判例であるから,原判決には,判決に影響を及ばすことの明らかな法令適用の誤りがある,と主張する(控訴理由第16)。
 そこで,本件に即して検討すると,法7条1項は,児童ポルノを公然と陳列することを犯罪としているから,同罪の罪数も,陳列行為の数によって決せられるものと解するのが相当である。確かに,所論もいうように,児童個人の保護を図ることも法の立法趣旨に含まれているが,そうであるからといって,本罪が,児童個人に着目し,児童ごとに限定した形で児童ポルノの公然陳列行為を規制しているものと解すべき根拠は見当たらず,被害児童の数によって,犯罪の個数が異なってくると解するのは相当でない。
 そして,本件では,被告人は,22画像分の児童ポルノを記憶・蔵置させた本件ディスクアレイ1つを陳列しているから,全体として本罪1罪が成立するにすぎないものと解される。したがって,この点に関する所論は正当であって,被害児童ごとに本罪が成立するとした原判決の法令解釈は誤りである。

2 4項提供罪 福岡高裁那覇支部H17.3.1
 多数被害者の数回の提供罪を包括一罪とした「判例」である。

福岡高等裁判所那覇支部
平成17年3月1日
8控訴趣意中児童ポルノ販売罪の罪数に関する主張について
所論は要するに,被告人が前後6回にわたって児童ポルノを販売した罪は併合罪であるから,(1)被告人の判示所為について児童ポルノ販売罪の包括一罪が成立するとした原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,(2)併合罪については各罪ごとに訴因を特定して明示する必要があるのに,本件公訴事実は訴因の特定,明示を欠いているから,本件公訴の提起は違法であり,検察官に対して訴因を特定,明示をすべく釈明を求める必要があったのに,それをしないまま実体判決をした原判決には,不法に公訴を受理した違法及び訴訟手続の法令違反があるというにある。
しかし,児童ポルノ販売罪は,その性質上,反覆・継続する行為を予定しているから,同様の性質を有するわいせつ図画販売罪が同一の意思のもとにおいて行われる限り,数個の行為が包括一罪とされるのと同じく,同一の意思のもとにおいて反覆・継続して行われた数個の行為は包括一罪となると解すべきである。本件においては,販売されたCD−Rは原画を同じくする同一内容の画像である上,被告人は金を儲けるという単一の犯意に基づいて,インターネットのオークションを通じて販売するという同一の犯行態様により,1か月半という短期間に前後6回の販売行為に及んだのであるから,本件各販売行為が包括一罪であることは明らかである。

3 販売罪 大阪高裁h17.10.28
 数回の販売罪を包括一罪とした「判例」である。

阪高裁平成17年10月28日
論旨は,原判示2の所為のうち,わいせつ図画販売の点及び児童ポルノ販売の点はそれぞれ包括一罪であるとし,両者は観念的競合の関係にあるとした原判決の罪数判断には,判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りがある,というのであるが,原判決の罪数判断は正当であり,原判決には所論の法令適用の誤りはない。所論は,児童ポルノ販売罪については,被害児童毎に同罪が成立し,これらは観念的競合の関係になり,犯行日1月1−7日のわいせつ図画販売罪と児童ポルノ販売罪は観念的競合の関係にあって重い児童ポルノ販売罪の刑で処断されるが,続く犯行日同年2月4日及び3月26日の各わいせつ図画販売罪とは一罪の関係には立たず,併合罪と解すべきであるなどというが,独自の見解というべく採用できない。論旨は理由がない。

同じ事件で捜査機関と弁護人から「最決の事案を教えてください」という連絡

 最高裁のwebに最高裁の決定は載ってますが、事案は、控訴審、一審と遡ってもらわないとわかりませんね。確定記録は遠いところに保管されている。
 弁護人の守秘義務との関係で難しい点もあるんですが、評釈がたくさん出ていて、事案も紹介されているので、双方に同じ文献を紹介して、それで勘弁してもらいました。まあ、武器対等でがんばってください。判決を報告してもらえると助かります。

 犯罪的に悪いことをしてることは間違いないんですが、どの行為を何罪にするかというかが難しいところです。従来の理屈で手堅く行くべきだと思います。

実務家用の文献

 図書館で手に入りますからこれくらいは揃えておきましょう。
 ざっと振り返ると、詳しい人というのは限定されることがわかりますね。
 肩書きをみれば、全然異動しない人、異動して分野から消える人、異動しても専門分野は同じ人がいるのもわかります。

4.児童ポルノを受領する行為の可罰性について/豊田兼彦近畿大学法科大学院論集.(4)[2008.3]

5.判例紹介児童買春罪と,その機会に行われた児童ポルノ製造罪とが,観念的競合関係ではなく,併合罪関係であるとした事例[東高判平成19.11.6]/大口奈良恵研修.(716)[2008.2]

6.児童買春・ポルノ禁止法及び人身売買罪等の人身の自由を侵害する行為についての犯罪事実等のポイント(第5回)テーマ:児童ポルノの輸入,輸出の罪について(児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条2項,5項,6項)/白井美果捜査研究.57(1)(通号679)[2008.1]

7.刑事裁判例批評(61)児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に反する法律7条4項の児童ポルノ公然陳列の共同正犯としての訴因に対し、不作為による従犯の事実を認定する場合に、訴因変更の手続を必要とするとされた事例--名古屋高判平成18.6.26高刑集59巻2号4頁、判タ1235号350頁/黒澤睦刑事法ジャーナル.10[2008]

8.刑事弁護レポート製造中の児童ポルノ所持罪を否定/奥村徹刑事弁護.(50)[2007.Sum.]

9.判例レビュー児童ポルノの提供目的所持罪の成否ならびに罪数関係が争われた事例[大阪地方裁判所平成18.4.12判決]刑事弁護.(50)[2007.Sum.]

10.実務刑事判例評釈(154)児童ポルノ及びわいせつ物に該当する光磁気ディスクを,販売用コンパクトディスク作成に備えてバックアップのために製造,所持した行為について,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条2項の販売の目的及び刑法175条後段の販売の目的を認めた事例[最決平成18.5.16]/白井美果Keisatsukoron.62(11)[2007.11]

11.特別刑法判例研究(11)児童ポルノ、わいせつ物であるMOを販売用CD-R作成に備えたバック・アップ用に製造所持した行為と児童ポルノ禁止法7条2項、刑法175条の販売目的[最三小決平成18.5.16]/内山良雄法律時報.79(8)(通号985)[2007.7]

12.時の判例児童ポルノ・わいせつ物である光磁気ディスクを販売用コンパクトディスク作成に備えてのバックアップのために製造所持した行為について児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成16年法律第106号による改正前のもの)7条2項の児童ポルノを販売する目的及び刑法175条後段にいう「販売の目的」があるとされた事例--最三小決平成18.5.16/山口裕之ジュリスト.(1336)[2007.6.15]


16.刑事裁判例批評(45)児童ポルノ・わいせつ物である光磁気ディスクを販売用コンパクトディスク作成に備えてのバックアップのために製造所持した行為について児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成16年法律第106号による改正前のもの)7条2項の児童ポルノを販売する目的及び刑法175条後段にいう「販売の目的」があるとされた事例[最高裁平成18.5.16第三小法廷決定]/永井善之刑事法ジャーナル.8[2007]

17.実務刑事判例評釈(144)児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律2条3項各号のいずれかに掲げる姿態を児童にとらせ電磁的記録に係る記録媒体に記録したものが,当該電磁的記録を別の記録媒体に記録させた場合に,同法7条3項の児童ポルノ偽造罪が成立するか(最高裁平成18.2.20第三小法廷決定)/大久保仁視Keisatsukoron.61(12)[2006.12]

18.児童買春・ポルノ禁止法及び人身売買罪等の人身の自由を侵害する行為についての犯罪事実等のポイント(第3回)テーマ:営利等の目的で人を売買する行為(刑法226条の2,児童買春・児童ポルノ禁止法8条1項)/堤良行捜査研究.55(11)(通号665)[2006.11]

19.判例研究わいせつ物に該当する児童ポルノ画像を保存する光磁気ディスクを販売用コンパクトディスク作成に備えてのバックアップのために製造所持した行為について児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律第7条第2項(平成16年改正前のもの)及び刑法第175条の「販売の目的」があるとされた事例(最高裁平成18.5.16決定)/瀬戸毅研修.(700)[2006.10]

20.刑事判例研究(396)バックアップ用の光磁気ディスクの製造・所持行為が児童ポルノ禁止法・刑法に違反するとされた事例(最高裁平成18.5.16決定)/島根悟警察学論集.59(10)[2006.10]

21.児童買春・ポルノ禁止法及び人身売買罪等の人身の自由を侵害する行為についての犯罪事実等のポイント(第2回)テーマ:インターネット上で児童ポルノを扱う行為(児童買春・児童ポルノ禁止法7条1項,2項,4項及び5項)/阿部健一捜査研究.55(9)(通号663)[2006.9]

22.児童買春・ポルノ禁止法及び人身売買罪等の人身の自由を侵害する行為についての犯罪事実等のポイント(第1回)テーマ:児童に姿態をとらせて児童ポルノを製造する行為(児童買春・ポルノ禁止法7条3項)/阿部健一捜査研究.55(8)(通号662)[2006.8]

23.最新判例演習室刑法児童淫行罪と児童ポルノ製造罪の罪数関係--東京高判平成17.12.26/松宮孝明法学セミナー.51(7)(通号619)[2006.7]

25.刑事裁判例批評(28)児童ポルノ製造罪と児童淫行罪の罪数関係と起訴状不記載の公訴事実に基づく犯罪事実認定の可否--東京高判平成17.12.26判時1918号122頁/石井徹哉刑事法ジャーナル.5[2006]

26.法律・条約解説条約児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書--平成17年1月26日条約第2号法令解説資料総覧.(282)[2005.7]

27.サイバー・ポルノ規制と刑法および児童ポルノ法の改正(特集サイバー刑事法の動向と課題)/永井善之刑法雑誌.45(1)[2005.7]

28.法令解説児童買春、児童ポルノに対し、より厳格に対処--児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律/井川良時の法令.(通号1734)[2005.3.30]

29.法律・条約解説司法・法務児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律--平成16年6月18日法律第106号法令解説資料総覧.(275)[2004.12]

30.検証ハイテク犯罪の捜査(41)特集児童買春・児童ポルノ禁止法の改正/大橋充直捜査研究.53(12)(通号640)[2004.12]

31.サイバー・ポルノ規制と刑法・児童ポルノ法の改正/永井善之大阪経済法科大学法学研究所紀要.(38)[2004.12]

32.児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律(特集第159回国会成立の警察関係主要法律)/島戸純Keisatsukoron.59(10)[2004.10]

33.研修講座特別法シリーズ(134)児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律/島戸純研修.(676)[2004.10]

34.刑事立法の動向児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律/島戸純現代刑事法.6(10)(通号66)[2004.10]

35.児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律(特集第159回国会主要成立法律)/島戸純ジュリスト.(1274)[2004.9.1]

36.「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律」について/島戸純警察学論集.57(8)[2004.8]

37.疑問解決!実務相談室生活安全ビデオショップ店長が同店会員6人を集めて児童ポルノ上映会を行った場合の児童ポルノ陳列罪の成否Keisatsujiho.59(8)[2004.8]

38.児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について/島戸純捜査研究.53(8)(通号636)[2004.8]

39.児童ポルノ法理の新展開--仮想児童ポルノ規制に関する2002年FreeSpeechCoalition判決の考察を中心として/加藤隆之法学新報.111(1・2)[2004.7]

40.「児童買春・児童ポルノ法違反」の施行後の検挙状況について/渡部俊巳Keisatsujiho.59(5)[2004.5]

41.判例研究刑事判例研究児童ポルノ規制の保護法益(大阪高裁平成12.10.24判決)/東北大学刑事法判例研究会法学.68(1)[2004.4]

42.児童ポルノ・児童買春弁護人FAQ(特集性犯罪弁護に挑む)/奥村徹刑事弁護.(35)[2003.Aut.]


44.児童ポルノの刑事規制について(2・完)いわゆる「擬似的児童ポルノ」の規制の検討を中心に/永井善之法学.67(4)[2003.10]

45.児童ポルノの刑事規制について(1)いわゆる「擬似的児童ポルノ」の規制の検討を中心に/永井善之法学.67(3)[2003.8]


47.サイバー犯罪条約の実体法的意義(特集インターネットの利用と規制)--(第27回法とコンピュータ学会研究会報告)/山口厚法とコンピュータ.(21)[2003.7]

48.児童買春・児童ポルノ等処罰法の検討(1)/上野芳久湘南工科大学紀要.37(1)(通号39)[2003.3]

49.インターネット上の児童ポルノの擬律/奥村徹情報処理学会研究報告.2003(17)[2003.2.22]

50.児童買春・児童ポルノ事犯に対する国際捜査協力と国外犯事件への取組み(特集・少年警察の新たな展開)/高橋政光警察学論集.56(2)[2003.2]

51.海外法律事情ドイツ刑事判例研究(55)インターネットにおける児童ポルノ頒布行為の可罰性(StGB176a2,1843)(連邦通常裁判所第1刑事部2001.6.27判決)/ドイツ刑法研究会比較法雑誌.36(4)(通号123)[2003]


53.捜査実務児童買春・児童ポルノ法違反事件の捜査要領/中島真一生活安全.28(1)(通号329)[2002.Win.]

54.児童ポルノの罪の訴訟法的検討と弁護のヒント/奥村徹刑事弁護.(30)[2002.Sum.]

55.実務刑事判例評釈(100)カンボディア王国における児童買春行為,児童ポルノ製造行為について,我が国のいわゆる児童買春・ポルノ法の国外犯処罰規定が適用された事例(大阪地裁平成14.4.26判決,大阪地裁平成14.6.20判決)/島戸純Keisatsukoron.57(12)[2002.12]

56.研修講座特別法シリーズ(126)児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律/島戸純研修.(653)[2002.11]

57.実例捜査セミナーインターネットを利用した児童ポルノ公然陳列事件の捜査手法/澤田康広捜査研究.51(11)(通号614)[2002.11]

58.英米法研究(第26回)児童ポルノの規制と表現の自由(米国連最高裁2002.4.16判決)/尾島明法律のひろば.55(10)[2002.10]

59.判例研究児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の国外犯規定により処罰された事例(大阪地裁平成14.6.20判決)/岡村和美研修.(651)[2002.9]

60.特別刑法の諸問題(3)児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(2)/安冨潔捜査研究.51(6)(通号609)[2002.6]

61.特別刑法の諸問題(2)児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律/安冨潔捜査研究.51(5)(通号608)[2002.5]


63.実務刑事判例評釈(82)被撮影者である女児の人定に至らなかった児童ポルノビデオテープ販売目的所持事案について、同ビデオの画像自体から、被撮影者が実在する十八歳未満の者であると認定した事例(大阪高判平成12.10.24)/藤本治彦Keisatsukoron.56(5)[2001.5]

64.判例研究児童ポルノビデオテープの画像自体から,被撮影者が実在する18歳未満の者であると認定した事例児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律2条3項各号に掲げる「児童」は,実在する者であることを要するが,具体的に特定することができる者であることを要しないとした事例(大阪高判平成12.10.24)/本田守弘研修.(634)[2001.4]


66.警察政策課題研究会(2)児童売春・児童ポルノ法--立法の経緯/他Keisatsujiho.55(11)[2000.11]

67.児童買春・児童ポルノ法による取締りの現状と警察の対応--主な検挙事例と取締り及び保護上の留意事項など/中島真一警察公論.55(10)[2000.10]

68.検証・少年犯罪の最前線/児童買春・児童ポルノ法違反事件--法律施行後初適用による検挙/神奈川県警祭本部生活安全部少年課生活安全.26(3)(通号323)[2000.07]

69.研究報告インターネットとこどもの保護(特集情報社会における消費者保護の課題)--(第24回法とコンピュータ学会研究報告)/丸橋透法とコンピュータ.(18)[2000.7]


71.SA問題付きQ&A「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」(昇任試験受験対策)/児童買春児童ポルノ法研究班警察公論.55(5)[2000.05]

72.児童買春・児童ポルノ問題に対する警察の取組み(特集児童・少年を取り巻く諸問題への取組み)/池田泰昭生活安全.26(2)(通号322)[2000.04]

73.児童買春・児童ポルノ禁止法/参議院法制局第5部第1課青少年問題.47(3)[2000.03]

74.法令解説児童買春、児童ポルノを禁止--捜査・公判時の配慮、被害児童の氏名等のマスコミ報道の禁止、心理的アフターケアまで規定/川口啓時の法令.(通号1612)[2000.02.29]

75.「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」の成立過程に関する考察/小泉広子日本社会事業大学社会事業研究所年報.(36)[2000]

76.児童買春・児童ポルノ処罰法(特集刑事法制の新展開)/木村光江法律のひろば.52(12)[1999.12]



80.「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」について更生保護.50(11)[1999.11]

81.児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の概要について/宮本勝弘捜査研究.48(11)(通号577)[1999.11]

82.児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の概要/宮本勝弘Valiant.17(11)(通号194)[1999.11]

83.新法の紹介「児童買春(かいしゅん)、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」について/松本裕人権のひろば.2(4)(通号10)[1999.11]

84.児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の制定/酒井紀人警察公論.54(10)[1999.10]

85.児童売春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の制定について/宮本勝弘Keisatsujiho.54(10)[1999.10]


87.児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の制定について/池田泰昭警察学論集.52(9)[1999.09]

88.児童の性的保護--児童買春・児童ポルノ処罰法の成立を契機に(特集キーワードで学ぶ刑事法の新論点)/西田典之;鎮目征樹法学教室.(通号228)[1999.09]

89.資料児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律時の動き.43(8)(通号1014)[1999.08]

児童ポルノ罪における被害児童の承諾・同意の効果

 社会的法益で説明する判例が多いようです。
 だとすれば、児童自身が撮影・販売する場合でも、違法性ありますよね。
 個人的法益(但し処分不可)という説明なら、違法阻却の程度は大きくなるはずです。

東京高裁h15.6.4
児童ポルノ販売罪等は,その行為が,児童ポルノに描写された児童の心身に有害な影響を与え続けるのみならず,これが社会にまん延すると,児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長することになるとともに,身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長に重大な影響を与えることなどを理由に処罰しようとするものであって,性的秩序,風俗を害することを防止しようとする刑法のわいせつ図画に係る罪とは処罰根拠が異なるだけでなく,児童ポルノに該当するものでも,わいせつ図画には該当しない場合もあるから,所論のいうように両罪が法条兢合(特別関係)にあるとは認められない。

阪高裁h12.10.24
2 法二条一項について(控訴理由第7、第17)
児童ポルノも表現行為の一形態であるところ、表現行為を制限する法令の規定が非常に包括的な場合には、憲法上保護された表現の自由が不当に制約されるおそれがあるから、「より制限的でない他の規制手段」が考えられる場合には、それによらなければならない。ところで、婚姻可能年齢は、民法上男子は一八歳、女子は一六歳とされており(民法七三一条)、また、刑法上の性的行為に同意することが可能な年齢は、一三歳とされている(刑法一七六条、一七七条)のであるから、少なくとも一六歳以上の女子には、法律上、性的な行為に同意する能力があり、性的自己決定権があるというべきである。法二条一項は、一八歳未満の者をすべて児童とした上、これを一律に児童ポルノ法における規制対象としているが、右のように、児童のうちで性的自己決定権を有する者がいることに配慮すると、児童の年齢に応じて規制方法を変えるというように、「より制限的でない他の規制手段」を採ることを考えるべきである。したがって、法二条一項は、表現の自由に対する過度に広範な規制であり、憲法二一条に違反している。また、後記のとおり、児童ポルノ法においては、児童ポルノの製造行為も処罰されることになっているのであるから、法二条一項が、一律に一八歳未満の者をもって児童としているのは、性的自己決定権を有する児童が性的な表現を含むビデオに出演する権利を不当に侵害するものであり、同条項は、憲法一三条にも違反する、という。
しかし、児童ポルノ法は、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性にかんがみ、児童買春、児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、これらの行為などにより心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利を擁護することを目的としている(法一条)ところ、児童買春の当事者となったり、児童をポルノに描写することは、その対象となった児童自身の心身に有害な影響を与えるのみならず、そのような対象となっていない児童においても、健全な性的観念を持てなくなるなど、児童の人格の完全かつ調和のとれた発達が阻害されることにつながるものであるから、児童ポルノ法は、直接的には児童買春の対象となった児童や児童ポルノに描写された児童の保護を目的とするものであるが、間接的には、児童一般を保護することをも目的としていると解される。したがって、このような同法の立法趣旨にかんがみると、一八歳未満の者を一律に児童とした上で、児童買春や児童ポルノを規制する必要性は高いというべきであるから、法二条一項が表現の自由に対する過度に広範な規制を定めたものとはいえないし、また、そのために所論にいわゆる児童の性的自己決定権が制約されることになっても、その制約には合理的な理由があるというべきであるから、同条項が憲法一三条に違反するともいえない。
法二条三項について(控訴理由第8ないし第12、第14、第15)
 所論は、法二条三項によって規制対象とされる児童ポルノとは、被撮影者となつている子供の人権を救済し、保護するという児童ポルノ法の規制目的に照らすと、被撮影者の氏名、住所が判明しているまでの必要はないにしても、具体的に特定することができる児童が被撮影者となっている場合に限るとすべきであるのに、同条項において、そのような特定を要求していないのは、表現の自由に対する過度に広範な規制というべきである、という。
しかし、前記2において説示したような児童ポルノ法の立法趣旨、すなわち、同法が、児童ポルノに描写される児童自身の権利を擁護し、ひいては児童一般の権利をも擁護するものであることに照らすと、児童ポルノに描写されている児童が実在する者であることは必要であるというべきであるが、さらに進んで、その児童が具体的に特定することができる者であることまでの必要はないから、所論のような規定が設けられていないからといって、法二条三項が、表現の自由を過度に広範に規制するものとはいえない。
 所論は、児童ポルノの被撮影者は、一見児童であるように見えても、一八歳以上の者である場合があり得るから、検察官は、被撮影者となっている児童が存在し、その者が児童であることを積極的に立証する必要があるのに、法二条三項にその旨が明記されていないのは、表現の自由に対する過度に広範な規制をするものであって、憲法二一条に違反する、という。
しかし、所論の指摘するような構成要件該当事実について検察官に立証責任があることは、刑訴法上当然であるから、法二条三項に所論指摘のような規定が設けられていないからといって、同条項が、表現の自由を過度に広範に規制するものとはいえない。 
 所論は、規制対象となる児童ポルノについて、法二条三項は、「写真、ビデオテープその他の物」で法二条三項各号のいずれかに該当するものとしているが、児童の権利を擁護するという立法目的に照らすと、規制対象とすべき児童ポルノは、被撮影者が実在する特定の児童であることが明らかである写真及びビデオテープに限られるべきであるのに、同条項において、「その他の物」を含むとしているのは、例えば、抽象画から漫画まで広がりがあり、実在する特定の児童を描いたものであるか否か判然とせず、したがって規制対象に当たるかどうかの判断が恣意的になされる危険性が高い絵画まで含むことになるから、法二条三項は、表現の自由を過度に広範に規制するものであって、憲法二一条に違反する、という。
しかし、児童が視覚により認識することができる方法により描写されることによる悪影響は、写真、ビデオテープに限られず、所論の指摘する絵画等についても同様であるから、法二条三項が表現の自由を過度に広範に規制するものとはいえない。
 所論は、①法二条三項二号、三号は、児童ポルノとして規制の対象とされる児童の姿態の描写について、いずれも「性欲を興奮させ又は刺激するもの」という要件を設けてこれを限定しているが、性欲を興奮させ又は刺激するものであるかどうかを通常人が客観的に判断することは難しく、その判断基準は曖昧である。また、右の要件を、刑法上のわいせつの概念である「いたずらに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、普通人の性的羞恥心を害
し、善良な性的道義観念に反するもの」という要件と対比すると、「いたずらに」という限定がないため、表現が性的に過度であることが要件とされておらず、規制の対象が広がっている。これらの点において、法二条三項二号、三号は、表現の自由に対する過度に広範な規制をするものであって、憲法二一条に違反する。②また、法二条三項二号、三号にいう「性欲を興奮させ又は刺激するもの」か否かを客観的に判断することは困難である。
通常人は、児童の裸体等に性的興奮を覚えたり、それから刺激を受けたりしないのであるから、通常人を基準としてこれを判断するのであれば、児童ポルノに当たるものはなくなるし、また、子供の性に対して特別に過敏に反応する者を基準としてこれを判断することは、通常人を名宛人とする法規範の解釈としては許されない。したがって、「性欲を興奮させ又は刺激するもの」か否かの判断基準が明確ではないのに、これを要件とする法二条三項二号、三号は、漠然として不明確な規定であるから、憲法二一条に違反するものであり、かつ、刑罰法規の明確性を要請する「憲法三一条にも違反するものである、という。
しかし、わいせつ物頒布等の罪を規定した刑法一七五条は、社会の善良な性風俗を保護することを目的とするものであるから、同条におけるわいせつの概念としては、普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するほどに著しく性欲を興奮、刺激せしめることを要するとされるのに対し、児童ポルノ法は、すでに前記2等において説示したとおり、児童ポルノに描写されることの害悪から当該児童を保護し、ひいては児童一般を保護することを目的とするものであるから、著しく性欲を興奮、刺激せしめるものでなくとも、児童ポルノの児童に与える悪影響は大きく、したがって処罰の必要性が高いと考えられること、すなわち、両者の保護法益ないし規制の対象に自ずから相違があることなどに照らすと、所論の指摘するところを考慮しても、法二条三項二号及び三号が、表現の自由に対する過度に広範な規制をするものとはいえないし、また、わいせつの概念が所論①のようなものであるにもかかわらず、刑法一七五条が憲法二一条及び三一条に違反するものでないとされていること(最高裁判所昭和五八年一〇月二七日判決刑集三七巻八号一二九四頁、同昭和五四年一一月一九日決定刑集三三巻七号七五四頁等参照)などからしても、法二条三項二号及び三号が、漠然として不明確な規定といえないことは明らかである。
所論は、①表現行為を制限する立法については、立法の趣旨、目的とそれを達成するための規制手段との間に合理的関連性があることが要求される。児童ポルノ法の立法目的は、法一条に記載されているとおり、児童に対する性的搾取や性的虐待等の防止にある。ところで、一般的にいえば、性的虐待とは相手の意思を無視して暴力的あるいは強制的に行われる性的行為をいうが、児童の中でも高年齢のものは、性的自己決定能力を備えているのであるから、「児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為」一般が、法一条にいう児童の性的搾取や性的虐待に当たるとはいえない。したがって、児童ポルノとして規制すべき対象物を定めるに当たっては、右のような性的虐待につながるものであること、すなわち、被撮影者の意思に反するものであることを要件とすべきである。しかるに、法二条三項一号が、被撮影者の意思に反することを構成要件としていないのは、立法目的とそれを達成するための規制手段との間に合理的関連性を欠いているというべきである。②また、法二条三項二号、三号についても、被撮影者の意思に反することを要件としていない点において、法一条の立法目的との合理的関連性を欠いているというべきである、という。
しかし、前記2等において説示したような児童ポルノ法の立法の趣旨、目的、ことに同法が、児童買春の対象となったり、児童ポルノに描写された児童の保護だけでなく、児童一般の保護をも目的としていることに照らすと、法二条三項各号が、児童ポルノで描写された被撮影者の意思に反することを要件としていなくとも、立法目的と規制手段との間に合理的関連性を欠くとはいえない。
4 法七条二項における規制対象行為について(控訴理由第13)
所論は、法七条二項は、児童ポルノの製造、所持、運搬についても処罰することとしているが、これらの行為を禁じても、児童虐待を防ぐという立法目的を達成することはできないから、これらの行為をも処罰する法七条二項は、表現の自由に対する過度に広範な規制というべきであり、憲法二一条に違反する、という。
ところで、法七条二項は、同条一項所定の、児童ポルノの頒布、販売、業としての貸与又は公然陳列の目的による児童ポルノの製造、所持、運搬等の行為を処罰するものであるところ、右各行為は、児童ポルノに描写された児童の心身に有害な影響を与え続けるのみならず、このような行為により児童ポルノが社会に広がるときには、児童を性欲の対象として捉える風潮を助長するとともに、身体的、精神的に未熟である児童一般の心身の成長にも重大な悪影響を与えることになり、前記児童ポルノ法の立法の趣旨、目的にもとることになるものである。したがって、同条一項所定の製造、所持、運搬等の行為を処罰する必要性は高いというべきであるから、法七条二項において、右各行為を処罰の対象としていることが、表現の自由を過度に広範に規制するものとはいえない。

京都地裁h14.4.24
7 弁護人は本件各写真集につき,被害者(被撮影者)の同意があると主張する。
  しかしながら,児童ポルノ法の制定趣旨は,性的搾取及び性的虐待から児童の権利の保護を目的とするものであり,加えて,当該児童を保護し,関係者を処罰することによって,ひいては児童一般を保護しようとしている趣旨も間接的に含まれているのであるから,当該児童の同意があったとしても,これをもって,構成要件該当性あるいは違法性を阻却する事由とはなり得ないと解するのが相当である。したがって,弁護人の主張は理由がない。

阪高裁h14.9.10
第1理由不備の主張について(控訴理由第1)
論旨は,原判決は,児童ポルノ製造罪の保護法益について判示しておらず,また,判決理由中において被害児童に与える悪影響を度々指摘し児童ポルノ製造罪の保護法益が個人的法益であるとの前提で論を進めているとみられる一方で,罪となるべき事実において,被害児童の氏名を記載しないなど,保護法益が個人的法益でないことを前提とする判示をしているもので,判決の記載自体が首尾一貫しないから,原判決には刑事訴訟法378条4号の理由不備がある,というものである。
しかしながら,判決においてその認定した罪の保護法益を明示するまでの必要はなく,また,原判決の説示するところからすれば,原判決は,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下,「児童ポルノ法」という。)において,頒布,販売目的等による児童ポルノの製造等を処罰することにしたのは,これらの行為が児童ポルノに描写された児童の心身に有害な影響を与え続けるのみならず,このような行為が社会に広がるときは,児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長することになるとともに,身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長に重大な影響を与えるからである,と理解していることは明らかであるところ,この理解は正当であり,これによれば児童ポルノ製造罪の保護法益は個人的法益に限らないのであり,また,原判決が罪となるべき事実において被害児童の氏名を記載しなかったのは,証拠上,被害児童は公訴事実記載の氏名の児童であることは明らかであるけれども,児童ポルノ法12条の趣旨に則ってのことと考えられる

大阪地裁H13.2.21
児童ポルノ法違反に関する弁護人の主張に対する判断)
第一 憲法違反の主張について
 一 児童ポルノ法二条一項の憲法一三条、二一粂違反について
  1 弁護人は、児童ポルノ法七粂一項が前提とする同法二条一項について、婚姻可能年齢は民法上男子一八歳、女子一六歳とされており(民法七三一条)、また、刑法上の性的行為に同意することが可能な年齢は一三歳とされているから (刑法一七六条、一七七粂)、少なくとも一六歳以上の女子には法律上、性的な行為に同意する能力があり、性的な自己決定権があるというべきであるから、児童ポルノ法二条一項で年齢別の区別も婚姻についての例外も設けられておらず、一律一八歳未満を児童として取り扱っている点で、性的な表現を含むビデオに出演するという児童の自己決定権を侵害するから、憲法一三条に達反すると主張する。
 しかし、児童ポルノ法は、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性に鑑み、児童ポルノにかかる行為等を処罰するとともに、これらの行為などにより心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利の擁護に資することを目的としているところ、児童ポルノに描写することは、その対象となった児童の心身に有害な影響を与えるのみならず、このような行為が社会に広がるときは、児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長することになるとともに身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長に重大な影響を与えるものであるから、児童ポルノ法は、直接的には児童ポルノに描写された児童の保護を目的とするものであるが、間接的には児童一般を保護することをも目的としていると解される。このような同法の立法趣旨に照らすと、一八歳未満の者を一律に児童とした上で、児童ポルノを規制する必要性は高いというべきであり、児童が健やかに成長するように各般の制度を整備するとともに児童に淫行させる行為等児童買春に関連する行為をも処罰の対象とする法律である児童福祉法においても、対象者は一八歳に満たない者であることにも鑑みると、いわゆる児童の性的自己決定権が制約されることになったとしても、その制約には合理的な理由があるというべきであるから憲法一三条に達反するとは言えない。
  2 弁護人は、児童ポルノ表現の自由の範疇であるところ、憲法の保障する基本的人権の中でも特に重要視されるべきものであって、法律をもって制限する場合には、より制限的でない他の手段をとらなければならないが、児童ポルノ法は、年齢別の区別も婚姻についての例外も設けられておらず、一律に一八歳未満を児童として扱っている点において、表現の自由に対する過度に広範な規制であり、憲法二一条に達反すると主張する。
    しかし、児童ポルノ法の立法趣旨とその規制の必要性に鑑みれば、同法二条一項が表現の自由に対する過度に広範な規制を定めたものとは言えない。
 二 児童ポルノ法二条三項の憲法二一条、三一条違反について
  1 弁護人は、児童ポルノ法七条一項が前提とする同法二条三項により規制される児童ポルノは、被撮影者である児童の人権を救済し、保護するという目的に照らすと、同法二条三項の定義の中に具体的な子供が被写体となっている場合に限る旨を規定する必要があるのに、そのような限定がないので明らかに過度に広範な規制であるから、意法二一条に達反すると主張する。
    しかし、児童ポルノ法の立法趣旨、すなわち、同法が児童ポルノに描写される児童自身の権利を擁護し、ひいては児童一般の権利をも擁護するものであることに照らすと、児童が架空の人物ではなく、実在する人物であることは必要であるが、それ以上にその児童を具体的に特定することは必要ないと解すべきであって、そのような規定が設けられていないからと言って同法二条三項が過度に広範な規制であるとは言えない。
  2 弁護人は、「①児童ポルノについての定義である同法二条三項二号、三号には視覚的描写を限定するため「性欲を興奮させ又は刺激するもの」という要件を付しているが、この要件は、客観的判断が困難であり、判断基準は曖昧である。よって、限定が曖昧なので対象が広がるおそれがある。②刑法上のわいせつの概念である「いたずらに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的道徳概念に反するもの」という要件と対比すると「いたずらに」という限定がないため規制の対象が広がっている。これらの点で過度に広範な規制であるから、憲法二一条に達反する。」と主張する。
    しかし、わいせつ図画におけるわいせつ概念と比較しても「性欲を興奮させ又は刺激するもの」という要件が基準として曖昧であるとは言えない。また、わいせつ物頒布等の行為を規定した刑法一七五条は、社会の善良な性風俗を保護することを目的とするものであるが、児童ポルノ法は、直接的には、児童ポルノに描写されることの害悪から当該児童を保護することを目的とするとともに間接的には、児童一般を保護することをも目的としているから、その射程範囲には自ずから相違があり、わいせつ図画の場合におけるほど性欲を興奮させ又は刺激させるものでなくても児童に与える影響を鑑みると、処罰する必要性が高いと言うべきであるから、「いたずらに」という限定がなくても、同法二条三項二号及び三号が表現の自由に対する過度に広範な規制であるとは言えない。
  3 弁護人は、「児童ポルノについての定義である同法二条三項二号、三号の「性欲を興奮させ又は刺激するもの」か否かを客観的に判断することは困難である。通常人は、児童の裸体等に性的興奮を覚えたり、それから刺激を受けたりしないのであるから、通常人を基準としてこれを判断するのであれば、児童ポルノに当たるものはなくなるし、また、子供の性に対して特別に過敏に反応する者を基準としてこれを判断することは、通常人を名宛人とする法規範の解釈としては許されない。このように同法二条三項二号、三号は漠然不明確な規定であるから、憲法二一条に違反し、限定が曖昧すぎて刑罰法規として不明確であり、憲法三一条に達反する。」とも主張する。
    しかし、わいせつの概念が「いたずらに性欲を興奮又は刺激せしめかつ、普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義概念に反するもの」のようなものであるにもかかわらず、刑法一七五条が憲法二一条や三一条に達反するものでないとされていることなどからしても、本条の規定が漠然として不明確であるとは言えず、その判断が困難であるとは言えない。
  4 弁護人は、児童ポルノ処罰規定は被撮影者の意思に反するものであることを要件とすべきであるのにそれを欠いているのはいずれも立法目的に照らして合理的関連性を欠くから、過度に広範な規制として憲法二一条に達反すると主張する。
    しかし、児童ポルノ法の立法趣旨、目的、ことに同法が児童ポルノに描写された児童の保護だけでなく、児童一般の保護をも目的としていることなどに照らすと、法二条三項各号が児童ポルノで描写された被撮影者の意思に反することを要件としていなくても立法目的と規制手段との間に合理的関連性を欠くとは言えない。
  5 その他、弁護人は、児童ポルノ法が憲法に達反するとして縷々主張するが、いずれの主張も採用できない。
四 被害者の承諾による犯罪成立阻却事由について
   弁護人は、児童ポルノ販売罪の保護法益は被撮影者たる児童の一身専属的な権利であるところ、本件児童ポルノについては、強いて被撮影者の姿態を撮影した物はなかったので、撮影については被撮影者の承諾があり、さらに、本件各ビデオテープはタイトルが付けられ販売、頒布用に作成された物だから、被撮影者は販売についても包括的に承諾を与えているのであるから、本件児童ポルノ販売行為には、いずれも被害者である被撮影者の承諾が存在し、構成要件該当性あるいは違法性が阻却されるので、児童ポルノ販売罪は成立しないと主張する。
   しかしながら、前述のような児童ポルノ法の立法趣旨、すなわち、児童ポルノに描写された児童の権利を擁護し、ひいては、児童一般の権利を擁護するものであることに照らすと、被撮影者の承諾があったとしても構成要件該当性あるいは違法性が阻却されるものとはみられず、同罪の成立に影響しないと解すべきである。

名古屋高裁H18.5.30
3控訴理由第3(原判示第1につき,訴訟手続の法令違反【輸出罪は不成立】)
所論は,原判決は「児童ポルノDVDを航空機に搭載させ,もって,児童ポルノを輸出した」(原判示第1)と判示するところ,児童ポルノ輸出罪は,児童ポルノをB国の領域外に搬出させた時点で既遂に達するのであって,航空機に搭載させた時点では既遂にならないから,原判決の(罪となるべき事実)は犯罪を構成せず,原判決は刑訴法335条1項に反し,訴訟手続の法令違反がある,というのである。
そこで,児童ポルノの外国からの輸出罪の既遂時期について検討する。
性交又は性交類似行為に係る児童ポルノを製造,提供するなどの行為は,児童ポルノに描写された児童の心身に有害な影響を及ぼし続けこのような行為が社会に広がるときには,児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長することになるとともに,身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長にも重大な影響を与えるため,児童ポルノ処罰法7条もこれらの行為を処罰しているところ,そのうち同条6項は,外国の児童が児童ポルノの描写の対象とされて性的に搾取されている実情があることなどにかんがみ,これに対する国際的な対処が必要であることから,日本国民が同条4項に掲げる行為の目的で児童ポルノを外国に輸入する行為及び外国から輸出する行為をも処罰の対象にしたものと解される。

名古屋高裁金沢支部h17.6.9
(1)
所論は,法7条3項は,真剣な交際をしている者が,児童の承諾のもとで その裸体を撮影する行為,16,17歳で婚姻した夫婦間での撮影をも処罰 の対象にする点で,過度に広汎な規制であるから,憲法21条に違反して違 憲無効であるとする。しかし,過度に広汎な規制で憲法21条に違反すると の所論は採用しがたい上,記録によれば,本作は,所論が指摘するような場合でないことは明らかであるから,本件に適用する限りでは何ら憲法21条に違反するものではない。


(3)
所論は,本件においては,被害児童が児童ポルノ製造に積極的に関与しており,共犯者であるのに,撮影者である被告人のみを処罰するのは不公平であり,憲法14条に違反するとする。しかし,本条の立法趣旨が,他人に提供する目的のない児童ポルノの製造でも,児童に児童ポルノに該当する姿態をとらせ,これを写真撮影等して児童ポルノを製造する行為については,当該児童の心身に有害な影響を与える性的搾取行為にほかならず,かつ,流通の危険性を創出する点でも非難に値するというものであることからすると,児童は基本的には被害者と考えるべきである。そして,記録を検討しても,本件の被害児童が共犯者に当たるとすべきほどの事情は窺えず,また,被告人を処罰することが不公平で,憲法14条に違反するとも認められない。


2被害者の承諾による違法性が阻却されるとの所論について(控訴理由第6)
所論は,原判示第2の2の児童ポルノ製造罪について,被害児童の実勢な承諾・積極的関与があり,違法性を阻却するのに,児童ポルノ製造罪を認定したのは法令適用の誤りであるとする。しかし,法7条3項は,児童に法2条3項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ,これを写真等に描写することにより児童ポルノを製造した者を罰する旨規定しており,その文言からしても,強制的に上記姿態をとらせることは要せず,被害児童が上記姿態をとること等に同意している場合を予定していると解されるし,上記の態様によって児童ポルノを製造することが,当該児童の心身に有害な影響を与える性的搾取行為にほかならないとして児童ポルノ製造罪が創設された趣旨からしても,被害児童の同意によって,違法性が阻却されるとは解されない。また,記録を検討しても,被害児童に,違法性を阻却するほどの真筆な承諾,積極的関与があったとも認められない。

名古屋高等裁判所金沢支部h14.3.28
第3 控訴趣意中,法令の適用の誤り等の論旨(控訴理由第1ないし第18及び第22)について
1 児童買春処罰法が憲法,条約上の規定に違反する旨の各所論(控訴理由第7ないし第15,第17及び第22)について
(1)所論は,児童ポルノ憲法21条の表現の自由の範疇にあるとし,児童買春処罰法が処罰対象とする児童の年齢を一律18歳末満としている点は,刑法上の性的同意年齢が13歳とされ,民法上の婚姻年齢も女子は16歳とされていること,高年齢の児童の場合は自己決定能力を備えているから,必ずしも児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為がすべて児童に対する性的搾取,性的虐待であるとは限らないことからすると,必要以上の,あるいは立法目的に照らし合理的関連性を欠く過度に広範な規制であって,児童ポルノ製造罪の規定は憲法21条1項に違反し(控訴理由第7及び第10),また憲法13条の児童ポルノに出演する児童の自己決定権を侵害するもので(控訴理由第13),無効であるという。
 しかしながら,性交又は性交類似行為に係る児童の姿態等を描写するなどした児童ポルノを製造,頒布等する行為は,第1で述べた児童買春同様,児童ポルノに描写された児童の心身に有害な影響を与えるのみならず,このような行為が社会に広がるときには,児童を性欲の対象ととらえる風潮を助長することになるとともに,身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長に重大な影響を与えるものであり,そのためかかる行為が規制されたものであるところ,このような規制の趣旨目的に照らせば,対象となる児童の年齢を一律18歳末満とすることは,身体的及び精神的に未熟である児童の自己決定権を制約する部分があるとしても,合理的な理由があるというべきであり,また表現の自由などとの関係においても必要以上の,あるいは立法目的に照らし合理的関連性を欠く過度に広範な規制であるとはいえないから,所論指摘の憲法の各条項に違反するものということはできない。

(2)また,所論は,児童買春罪の規定についても,対象となる児童の年齢を一律18歳末満とする点で,また規定の文言上対償を伴うすべての性交等が処罰対象とされていて真剣な交際でも代償を供与すれば本罪に当たることとなる点で,過度に広範に性行為に関する児童の自己決定権を侵害するから憲法13条に違反するという(控訴理由第15)。
 しかしながら,第1で述べた規制の趣旨目的に照らせば,単なる性交等ではなく,金銭等の対償を供与し,又はその供与の約束をして,児童に対し,性交等する児童買春について,対象となる児童の年齢を一律18歳末満とすることには合理的な理由があるというべきであり,また「対償の供与」とは,児童に対して性交等することに対する反対給付として経済的利益等を供与することを意味するところ,児童買春処罰法1条の制定の目的を併せ考慮すれば,所論指摘のような真剣な交際の場合がこれに当たるとはいえないから,所論はその前提を誤っていて採用することはできない。

園田寿【コンピュータ・ウイルス作成罪と正当な業務行為】Law&Technology第40号


http://www.minjiho.com/periodical_citizen.php?bk=B040
コンピュータ・ウイルス作成罪と正当な業務行為甲南大学教授 園田 寿

だんじりか裁判員か 大阪地裁堺支部がアンケート

 そんなこと考慮してたら、京都とかもそんなこと言い出して。農繁休暇だとか収拾つかないですね。

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200807050127.html
伝統の祭りに参加するか、裁判員としての義務を果たすか――。来年5月に裁判員制度が始まると、こんな選択に悩む人が相次ぐかも知れない。勇壮さで全国に知られる「だんじり祭り」の大阪府岸和田市の住民を対象に、大阪地裁堺支部がアンケートに乗り出した。
・・・・・
支部の松本幸治・刑事次席書記官は「祭りが気になって早く帰りたいということでは困る」。住民の声を聞き、辞退の申し出が多そうな時期には裁判所に呼ぶ人数を多くすることも検討するという。<<

裁判員の参加する刑事裁判に関する法律
(平成十六年五月二十八日法律第六十三号)
(就職禁止事由)
第十五条  次の各号のいずれかに該当する者は、裁判員の職務に就くことができない。
一  国会議員
二  国務大臣
三  次のいずれかに該当する国の行政機関の職員
イ 一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第九十五号)別表第十一指定職俸給表の適用を受ける職員(ニに掲げる者を除く。)
ロ 一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律(平成十二年法律第百二十五号)第七条第一項に規定する俸給表の適用を受ける職員であって、同表七号俸の俸給月額以上の俸給を受けるもの
ハ 特別職の職員の給与に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十二号)別表第一及び別表第二の適用を受ける職員
ニ 防衛省の職員の給与等に関する法律(昭和二十七年法律第二百六十六号。以下「防衛省職員給与法」という。)第四条第一項の規定により一般職の職員の給与に関する法律別表第十一指定職俸給表の適用を受ける職員及び防衛省職員給与法第四条第二項の規定により一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律第七条第一項の俸給表に定める額の俸給(同表七号俸の俸給月額以上のものに限る。)を受ける職員
四  裁判官及び裁判官であった者
五  検察官及び検察官であった者
六  弁護士(外国法事務弁護士を含む。以下この項において同じ。)及び弁護士であった者
七  弁理士
八  司法書士
九  公証人
十  司法警察職員としての職務を行う者
十一  裁判所の職員(非常勤の者を除く。)
十二  法務省の職員(非常勤の者を除く。)
十三  国家公安委員会委員及び都道府県公安委員会委員並びに警察職員(非常勤の者を除く。)
十四  判事、判事補、検事又は弁護士となる資格を有する者
十五  学校教育法に定める大学の学部、専攻科又は大学院の法律学の教授又は准教授
十六  司法修習生
十七  都道府県知事及び市町村(特別区を含む。以下同じ。)の長
十八  自衛官
2  次のいずれかに該当する者も、前項と同様とする。
一  禁錮以上の刑に当たる罪につき起訴され、その被告事件の終結に至らない者
二  逮捕又は勾留されている者

(辞退事由)
第十六条  次の各号のいずれかに該当する者は、裁判員となることについて辞退の申立てをすることができる。
一  年齢七十年以上の者
二  地方公共団体の議会の議員(会期中の者に限る。)
三  学校教育法第一条、第百二十四条又は第百三十四条の学校の学生又は生徒(常時通学を要する課程に在学する者に限る。)
四  過去五年以内に裁判員又は補充裁判員の職にあった者
五  過去三年以内に選任予定裁判員であった者
六  過去一年以内に裁判員候補者として第二十七条第一項に規定する裁判員等選任手続の期日に出頭したことがある者(第三十四条第七項(第三十八条第二項(第四十六条第二項において準用する場合を含む。)、第四十七条第二項及び第九十二条第二項において準用する場合を含む。第二十六条第三項において同じ。)の規定による不選任の決定があった者を除く。)
七  過去五年以内に検察審査会法(昭和二十三年法律第百四十七号)の規定による検察審査員又は補充員の職にあった者
八  次に掲げる事由その他政令で定めるやむを得ない事由があり、裁判員の職務を行うこと又は裁判員候補者として第二十七条第一項に規定する裁判員等選任手続の期日に出頭することが困難な者
イ 重い疾病又は傷害により裁判所に出頭することが困難であること。
ロ 介護又は養育が行われなければ日常生活を営むのに支障がある同居の親族の介護又は養育を行う必要があること。
ハ その従事する事業における重要な用務であって自らがこれを処理しなければ当該事業に著しい損害が生じるおそれがあるものがあること。
ニ 父母の葬式への出席その他の社会生活上の重要な用務であって他の期日に行うことができないものがあること。

(事件に関連する不適格事由)
第十七条  次の各号のいずれかに該当する者は、当該事件について裁判員となることができない。
一  被告人又は被害者
二  被告人又は被害者の親族又は親族であった者
三  被告人又は被害者の法定代理人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人
四  被告人又は被害者の同居人又は被用者
五  事件について告発又は請求をした者
六  事件について証人又は鑑定人になった者
七  事件について被告人の代理人、弁護人又は補佐人になった者
八  事件について検察官又は司法警察職員として職務を行った者
九  事件について検察審査員又は審査補助員として職務を行い、又は補充員として検察審査会議を傍聴した者
十  事件について刑事訴訟法第二百六十六条第二号の決定、略式命令、同法第三百九十八条から第四百条まで、第四百十二条若しくは第四百十三条の規定により差し戻し、若しくは移送された場合における原判決又はこれらの裁判の基礎となった取調べに関与した者。ただし、受託裁判官として関与した場合は、この限りでない。

(その他の不適格事由)
第十八条  前条のほか、裁判所がこの法律の定めるところにより不公平な裁判をするおそれがあると認めた者は、当該事件について裁判員となることができない。

児童買春罪の公訴時効は5年ですか?

 罪名が決まれば基本刑を刑訴法250条に当てはめて見ればわかります。問題は罪名ですよね。
 伝統的な性犯罪と青少年条例違反・児童福祉法違反(児童淫行罪)等も検討してください。

相談者「児童買春罪の公訴時効は5年ですよね」
弁護士「H16改正の児童買春罪なら刑訴法250条で公訴時効は5年ですね。被害者の年齢は?」
相談者「自称13歳です。」
弁護士「12歳の可能性は?」
相談者「だって自称ですから・・・」
弁護士「12歳なら強姦罪だから、最高20年だから、10年になります。致傷だと15年で・・・」
相談者「児童買春が強姦罪とか強姦致傷罪になるんですか?」
弁護士「12歳だと強姦罪になるというのは、条文通りです。」
相談者「まだまだ時効にかからないかもしれませんね。」
弁護士「何罪かなんて、弁護士でも事実関係を詳細に聞かないとなんともいえませんよ。」

 相談者からすれば不安は払拭されないので、不満が残る回答だと思います。
 児童買春と信じていた相手が強姦(致傷)罪で告訴してくるというのはよくある話で、強姦(致傷)罪の証拠がそろえば、強姦(致傷)罪で時効未完成、逮捕され、起訴される。強姦(致傷)罪の証拠がそろわなければ、児童買春罪で時効完成だから、逮捕・起訴されないということですよね。

(強制わいせつ)
第176条 13歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
(強姦)第177条 
暴行又は脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、3年以上の有期懲役に処する。13歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。

刑訴法
第250条 時効は、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
1.死刑に当たる罪については25年
2.無期の懲役又は禁錮に当たる罪については15年
3.長期15年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については10年
4.長期15年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については7年
5.長期10年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については5年
6.長期5年末満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については3年
7.拘留又は科料に当たる罪については1年《改正》平16法156 第251条 2以上の主刑を併科し、又は2以上の主刑中その一を科すべき罪については、その重い刑に従つて、前条の規定を適用する。第252条 刑法により刑を加重し、又は減軽すべき場合には、加重し、又は減軽しない刑に従つて、第250条の規定を適用する。 第253条 時効は、犯罪行為が終つた時から進行する。2 共犯の場合には、最終の行為が終つた時から、すべての共犯に対して時効の期間を起算する。

なお、法定刑にしても、刑訴法にしても、延長した改正がありますから注意してください。

児童による2項製造罪(特定少数)+1項提供罪(特定少数)は成立する。

 他人から頼まれたり、頼まれなくても、被害児童自身が自分の裸体等を撮影して送信する行為は、2項製造罪(特定少数)+1項提供罪(特定少数)ですよね。
 まず、直接行為者の責任を検討するのが、定石ですが、保護法益は「処分可能な個人的法益」ではないので、被害者の同意や自損行為は違法性を阻却しない。
 

条解刑法
被害者の承諾は被害者が自ら処分可能な利益(法益)を放棄しており,その範囲で違法性が減少するが,実務上は一般的に,その承諾を得た動機・日的,承諾にかかる法益の内容,承諾に基づいてされた侵害行為の手段・態様・程度,侵害行為による結果発生の有無・程度等の諸般の事情をも総合的に考慮した上,被害者の承諾の存在ゆえに当該行為は処罰に値する違法性が否定され得るものか,それともその違法性の程度が軽減されるに止まるものなのかが判断されている。最決昭55・11・13も,傷害罪に関し,「被害者が身体傷害を承諾したばあいに傷害罪が成立するか否かは,単に承諾が存在するという事実だけでなく,右承諾を得た動機, 目的,身体傷害の手段,方法,損傷の部位,程度など諸般の事情を照らし合せて決すべきものである」としており,同様の立場をとるものと解される。
抑被害者の承諾に基づく行為につき違法性阻却が認められるための要件
① 承諾は,被害者自ら処分し得る個人的法益に関するものでなければならない。国家的法
益に対する罪や社会的法益に対する罪については被害者の承諾は無意味であるし,被害者の個人的法益を保護法益とする罪であっても.同時に競合して国家的法益や社会的法益をも保護法益にしている犯罪(例えば,放火罪等)については,たとえ被害者の承諾があっても,その承諾は違法性を阻却しないと解される(なお,非現住建造物等放火罪において,犯人以外の所有者の同意があれば自己所有物への放火の罪が成立すること・・・・

 従って、被害児童が2項製造罪(特定少数)+1項提供罪(特定少数)の正犯です。処断刑期は4年6月。
 関与した者は共犯の責任を負う。
 教唆だとすると、「撮って送れ」と頼んだら2項製造罪(特定少数)教唆+1項提供罪(特定少数)教唆の観念的競合で(処断刑期は3年)、「撮れ」「送れ」と分けて頼めば2項製造罪(特定少数)教唆+1項提供罪(特定少数)教唆の併合罪。最高4年6月。

 「撮って送れ」を3項製造罪(姿態とらせて製造)の一罪とする見解に対しては、

1 処断刑期の点で、教唆説に劣り、法益保護に欠ける。教唆犯を軽く処罰する趣旨で3項製造罪(姿態とらせて製造)が設けられたのではない。
2 送るというのは、まさに2項製造罪(特定少数)の実行行為であるのに、どうして製造罪で評価できるのか? 製造罪は被害児童の撮影行為の時点で既遂になっており、送信行為によって流通(流布)という新たな法益侵害の危険性を生じているのだから、製造罪一罪では評価し尽くせない。
3 大阪高裁H19等は強要による間接正犯として処理しているが、3項製造罪(姿態とらせて製造)説によれば、強要による場合も間接正犯による理由付けは不要となるはずである。
4 金沢支部判決は児童が児童ポルノ罪に問われる可能性を認めており、3項製造罪(姿態とらせて製造)説と矛盾する。
5 3項製造罪(姿態とらせて製造)は、児童を正犯とすることを回避する趣旨であろうが、保護法益に社会的法益が含まれることを看過している。この場面だけ純粋個人的法益であって処分可能であると理解することはできない。
6  教唆犯説によっても必ずしも児童を処罰する必要はなく検察官の起訴裁量によって起訴を回避すれば処罰されることはない。
7 被害児童があらかじめ撮影した画像を送った場合には、1項提供罪(特定少数)や4項提供罪(不特定多数)を認めざるを得ない。被害者だから犯罪から免責されるわけではない。
8 被害者の関与形態によっては可罰的な場合もあるのであるから、被害者に正犯を認める可能性は留保しておく必要がある。

という批判が可能であろう。