児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童買春罪と製造罪は観念的競合(北海道方面)

 起訴状は観念的競合みたいですね。というか、札幌では観念的競合で書かざるを得ないでしょうね。
 よそでは、併合罪で起訴しているはずで、地検も児童ポルノ・児童買春犯人に寛容です。

http://mainichi.jp/hokkaido/news/20071020hog00m040006000c.html
道警は児童買春容疑のみで逮捕、送検したが、地検は被告がわいせつな画像を撮影していたことが児童ポルノ製造に当たると判断した。
 起訴状によると、被告は9月21日午後9時ごろ、同市中央区の駐車場に止めた乗用車内で同市豊平区の無職少女(16)に現金6000円を渡し、みだらな行為をするとともに少女の胸などをデジタルカメラで撮影した。

わいせつ画像投稿、2300万円稼ぐ 児童買春で札幌の元教頭を起訴=北海道
2007.10.20 読売新聞社
 起訴状などによると、容疑者は9月21日午後9時ごろ、自分の乗用車の中で、市内の少女(16)に現金6000円を渡し、体を触った。その後車内で、少女にわいせつなポーズをさせてデジタルカメラで撮影した。

児童買春の元教頭起訴*札幌地検
2007.10.20 北海道新聞
 起訴状などによると、被告は九月二十一日夜、札幌市中央区の駐車場に止めた乗用車内で、出会い系喫茶で知り合った当時十六歳の無職少女が十八歳未満と知りながら、現金六千円を渡して胸を触り、露出させた胸をカメラで撮影し児童ポルノを製造した。

 よそでは併合罪の判決。

名古屋高裁金沢支部H14.3.28
(3)所論は,原判示第3の1の買春行為がビデオで撮影しながら行われたものであることから,上記児童買春罪と原判示第3の2の児童ポルノ製造罪とは観念的競合となるともいうが(控訴理由第21),両罪の行為は行為者の動態が社会見解上1個のものと評価することはできないから,採用することはできない

名古屋高裁金沢支部H17.6.9(上告棄却)
所論は,児童買春罪と児童ポルノ製造罪とは,手段結果の関係にあるか,社会的に見て一個の行為であるから,牽連犯あるいは観念的競合となり一罪であるのに,原判決は,これを併合罪としてしており,罪数判断を誤っている,というのである。しかし,児童買春の際に児童ポルノが製造されるのが通常であるとはいえないから,児童買春罪と児童ポルノ製造罪とは,手段結果の関係にあるとも社会的に見て一個の行為であるともいえない。

阪高裁H18.10.11(上告棄却)
原判示の児童に淫行をさせる罪に係る行為である被告人らと児童との性交等とその場面を撮影した行為とは,時間的には重なっているものの,法的評価を離れ構成要件的観点を捨象した自然的観察の下では,社会通念上1個のものと評価することはできないから,両者は併合罪の関係にあるというべきである。論旨はその前提を欠き,理由がない。

 これに対して、札幌高裁が3/8以降観念的競合。

札幌高裁H19.3.8
第1 管轄違い及び法令適用の誤りの控訴趣意について(控訴理由第4)
論旨は,要するに,本件児童ポルノ製造罪と本件児童淫行罪とは併合罪であって,本件児童ポルノ製造罪の管轄は地方裁判所であるのに,これを観念的競合であるとして本件児童ポルノ製造罪について家庭裁判所に管轄を認めた原判決には不法に管轄を認めた違法があり,また,判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
そこで,検討するに,原判決別紙一覧表番号8ないし20の各行為、は,児童に淫行させながら,その児童の姿態を撮影したというものであり,児童淫行罪であるとともに児童ポルノ製造罪に該当する。これらの児童に淫行させる行為とその姿態を撮影する行為は,法的評価を離れ構成要件的観点を捨象した自然的観察の下で,行為者の動態が社会見解上一個のものと評価されるものであるから,一個の行為で二個の罪名に触れる場合に当たり,観念的競合の関係にあると解される。原判決は,これと同旨の判断に基づき,児童淫行罪を専属管轄とする家庭裁判所として本件を処理したものであって,不法に管轄を認めた違法ないし法令適用の誤りはない。論旨は理由がない。

札幌高裁H19.9.4
 3 罪数処理に関する主張について
 論旨は、要するに、本件児童ポルノ・児童買春罪は、1罪であるのに、11罪とした原判決には、法令適用の誤りがある(控訴理由第7)、というのであるが、原判決の罪数処理は相当であって、原判決に法令適用の誤りはない。
 所論は、①同一被害児童に対する数回の撮影行為は包括一罪である、②児童ポルノ製造罪の個数は、製造された児童ポルノの個数により定まる、③本件の児童ポルノ製造罪と児童買春罪は観念的競合である、という。
 ①の点を考えるに、なるほど、同一被害児童に対する複数の撮影行為の場合、その場所的時間的近接性、機会の単一性・同一性、犯意の同一性、といった観点から、一つの行為とみることが相当であるとして包括一罪とされる場合は存在する。しかしながら、本件の場合、各撮影等の行為は買春行為に付随して行われているところ、この各買春行為は、その買春の機会ごとに被告人から新たな買春の申込みがなされ、これに被害児童が個別に応じることによって生じたものであって、それぞれが別個独立した機会、犯意に基づくものである。このような買春行為に付随して行われた撮影等の行為も、買春行為ごとに別個独立の行為とみるのが相当である。
 ②の点を検討するに、本件で各買春行為に関連してなされた姿態を描写して児童ポルノを製造する行為は、上記のとおり別個独立であり、それぞれの描写行為(miniSDカードへの記録行為)により製造された児童ポルノであるminiSDカードは、それ以前のminiSDカードが内蔵していた姿態とは異なる姿態を内蔵するのであるから、それまでの児童ポルノとは異なる別個の児童ポルノとなっていることも明らかである。すなわち、外形上1個の有体物ではあっても、各描写行為により別個の児童ポルノが製造されていたこととなる。したがって、仮に、所論のとおり、児童ポルノ製造罪の個数が製造された児童ポルノの個数で定まると考えても、本件では、11個の児童ポルノが製造されているのであるから、11罪となる。
 そして、③については、原判決も、各買春行為とこれに関連してなされた児童ポルノ製造罪とを観念的競合として処理している。
 上記判断と同様の罪数処理をした原判決に誤りはなく、法令適用の誤りはない。論旨は理由がない。

 常識で考えて、性行為と撮影行為が一個の行為であるはずがないのに、高検検事までハメ撮り一罪説。
   「ハメ撮りするなら、札幌高裁管内」
ということですか?
 まあ、弁護人としては被告人に有利な方(たいてい観念的競合説)を主張しますけどね。札幌高裁だけ観念的競合説というのは気持ち悪いですね。
 当面、東京高裁H19.11.6に注目しましょう。量刑不当と罪数処理というシンプルな控訴理由になっています。

松江地検でうっかり起訴、男性検察官に厳重注意処分

 法人には罰金刑しかないのに、3年以上前の行為を起訴してくると、起訴状を一読した段階でも違和感があるということでしょう。

 掲示板管理者の刑事責任でも、設置行為のみを幇助とすると、古い掲示板だと、公訴時効にかかることがありますので要注意。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071020-00000205-yom-soci
起訴状などによると、同県のい草製品製造会社が02年4月、国と岡山県補助金1000万円を不正受給したとして、松江地検が今年3月に同社専務らを同法違反容疑で逮捕した。地検は両罰規定で専務らとともに会社も同法違反罪で起訴した。
 ところが、地裁から法人の公訴時効が成立しているとの指摘で、地検は3日後に起訴を取り下げた。同罪の公訴時効は個人が5年、法人は3年だが、検察官らは個人と法人の時効期間が同じと勘違いしていたという

刑訴法第250条〔公訴時効の期間〕
時効は、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一 死刑に当たる罪については二十五年
二 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については十五年
三 長期十五年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については十年
四 長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については七年
五 長期十年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については五年
六 長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については三年
七 拘留又は科料に当たる罪については一年

第6回 東南アジアにおける児童の商業的・性的搾取対策に関するセミナー

 毎年、このセミナーの前に、国外犯が摘発されて、セミナーで成功事例として紹介されて賞賛されます。
http://www.npa.go.jp/safetylife/syonen35/20071019.pdf
 そう言えば、水着DVD事件は国外犯。
 別に、いいんですけど、そのペースじゃ、毎年1件しか検挙できませんよね。

児童だとは知らなかったという主張(年齢不知)〜大阪府専用

 当不当は別として、実際問題、大阪府内で淫行しようとする人に、年齢確認義務はありません。

 児童・青少年と交際しようとする者の年齢確認義務について
 多くの自治体の青少年条例では、「児童(青少年)の年齢を知らないことを理由として、・・・の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失がないときは、この限りでない。」という年齢知情規定がある。
 しかし、大阪府条例にはそのような規定がないから、大阪府内においてはそのような年齢確認義務はない。

大阪府青少年健全育成条例
http://www.pref.osaka.jp/koseishonen/jorei_public/jorei_honbun.pdf
第3章 青少年の健全な成長を阻害する行為の禁止
(みだらな性行為及びわいせつな行為の禁止)
第28条 何人も、次に掲げる行為を行ってはならない。
(1)青少年に金品その他の財産上の利益、役務若しくは職務を供与し、又はこれらを供与する約束で、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと。
(2)専ら性的欲望を満足させる目的で、青少年を威迫し、欺き、又は困惑させて、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと。

 しかも、児童ポルノ・児童買春法は、買春者一般に年齢確認義務を負わせない。使用者のみに確認義務がある。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
第9条(児童の年齢の知情)
児童を使用する者は、児童の年齢を知らないことを理由として、第五条から前条までの規定による処罰を免れることができない。ただし、過失がないときは、この限りでない。

 従って、18歳と自称した少女らと接した被疑者には年齢を確認する義務はないから、確認しないのが当然である。