児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

内山良雄「特別刑法判例研究 児童ポルノ、わいせつ物であるMOを販売用CD-R作成に備えたバック・アップ用に製造所持した行為と児童ポルノ禁止法7条2項、刑法175条の販売目的」法律時報2007.7

 最高裁h18.5.16の評釈。弁護人としては、いまさら評釈されてもという感じです。
 「××目的所持」という縛りが効かなくなると指摘されていますが、実務的には、縛りは掛かってないようなものです。
コピー元hddの所持の販売目的を肯定した大阪高裁h18もあります。

7/1の児童ポルノ製造(児童A 撮影)と7/2の児童ポルノ製造(児童A 撮影)は包括一罪だが、7/1の児童買春罪(児童A)と7/2の児童買春罪(児童A)は併合罪(千葉地裁松戸支部H19)

 何を基準に罪数処理してるのでしょう?

違法でも有害でもないけど削除要請されても困りますね。

 どういう場合に削除要請が出て、それがどういう効果があって、削除しなかったらどうなるのかというのを、パターン別に決めてもらえませんか?

http://www.sankei.co.jp/keizai/it/070720/itt070720002.htm
動物虐待や死体画像、サイト削除要請 ホットラインセンター指針見直し方針
 インターネット上の違法・有害情報について、一般利用者からの通報を受け、プロバイダー(接続業者)などに削除を求める「インターネット・ホットラインセンター」は、動物の虐待映像や人間の死体画像、ワンクリック詐欺サイトについても、新たに削除要請する方針を固めた。運用指針(ガイドライン)に基づき、わいせつ画像や児童ポルノなどを削除対象としてきたが、寄せられた全情報のうち約8割が指針以外で、宙に浮いたため対象を拡大することにした。今秋にもガイドラインを見直す。(宝田将志)
 センターは警察庁の業務委託を受けた「インターネット協会」が運営。昨年6月に開設された。ガイドラインで、わいせつ画像や児童ポルノ、規制薬物や他人名義の口座の売買情報など7項目を「違法情報」に、人を自殺に導いたり、違法行為の請負など3項目を「有害情報」に規定。違法情報と判断した場合は警察庁に、有害情報はプロバイダーやサイト管理者に削除を要請する。
 しかし、残りの全情報の約8割にあたる5万3349件は違法・有害に当てはまらない「その他」に分類され削除要請されなかった。
 このため、センターは削除要請されなかった“グレー情報”を精査。「ネット掲載の裏で違法行為が行われていると推測されるものがある」として、(1)動物の虐待映像(2)人間の死体画像(3)ワンクリック詐欺サイト−を新たに有害情報に盛り込む方針を固めた。

 違法・有害のところもプロバイダの法的責任がはっきりしないところなので、あまり手を広げないで、そこに絞って、きっちりやって欲しいと思います。警察ですから。動物死体も警察でしたっけ?

提供目的製造罪と児童淫行罪は併合罪(最高裁決定H19.7.18)

 3項製造罪(姿態とらせて製造)と児童淫行罪を観念的競合とした東京高裁H17.12.26とは事案が異なるので、判例違反にならないということか?
 それだと、検察庁が困るよね。
 近々、調査官が判例雑誌で匿名解説するのを待ちましょう。

参考までに、判決文と上告理由を紹介しておきます。

最高裁H19.7.18
判例違反をいう点は,事案を異にする判例を引用するものであって,本件に適切でなく,・・・刑訴法405条の上告理由に当たらない。

第3部 上告理由
上告理由第1 法令違反・判例違反〜児童淫行罪と製造罪の罪数関係について(観念的競合である)
1 法令違反
 両罪は観念的競合になるというのが判例(東京高裁H17.12.26、大阪高裁H18.9.21)であり、実務である。
 ところが、原判決は、児童淫行罪(家裁)と製造罪(地裁)は併合罪であり公訴事実の同一性がないと判示した。

原判決
まず,①の主張について検討する。原判示の児童に淫行をさせる罪に係る行為である被告人らと児童との性交等とその場面を撮影した行為とは,時間的には重なっているものの,法的評価を離れ構成要件的観点を捨象した自然的観察の下では,社会通念上1個のものと評価することはできないから,両者は併合罪の関係にあるというべきである。論旨はその前提を欠き,理由がない。

 第2部で述べたように、撮影→編集→ダビングという製造行為は包括一罪であって、児童淫行罪+撮影(製造罪)は観念的競合であって、
  児童淫行罪+撮影(製造罪)
    +
 撮影→編集→ダビング
は全部、科刑上一罪である。というのが判例の帰結でもある。
 にもかかわらず原判決は

原判示の児童に淫行をさせる罪に係る行為である被告人らと児童との性交等とその場面を撮影した行為とは,時間的には重なっているものの,法的評価を離れ構成要件的観点を捨象した自然的観察の下では,社会通念上1個のものと評価することはできないから,両者は併合罪の関係にある

として、真っ向から従来の判例に反対する判示をした。
 しかも、同じ被告人の同じ行為(淫行の際の撮影行為と児童淫行罪)について観念的競合という評価を前提にした大阪高裁H18.9.21にも反するのである。

 さらに、児童淫行罪と製造罪を観念的競合として家裁で審理することは実務の通例であって、それらにも反する。罪数についての最高裁判例がないと実務にも混乱が生じる。
奈良家裁H16.2.5
奈良家裁H16.1.21
横浜家裁横須賀支部H17.6.1
東京家裁H16.10.25
長野家裁H18.4.20
千葉家裁H12.12.22
札幌家裁小樽支部H18.10.2(控訴中→札幌高裁も追認)
 従ってこれらを併合罪とした原判決には、判決に影響を及ぼすべき法令の違反があって原判決を破棄しなければ著しく正義に反するから原判決は破棄を免れない。
上告理由第2 憲法39条違反(二重処罰)
上告理由第3 憲法違反〜少年法37条は憲法39条違反
上告理由第4 法令違反(管轄違)