児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

カラオケB店通路において、正面から抱き付いた上、その着衣の上からでん部を手でつかみ、さらに、同人の顎を手でつかんでその唇に接ぷんし、もって強いてわいせつな行為をしたという事実(否認)につき懲役1年6月執行猶予3年とした事例(横浜地裁h30.1.25)


 被害者の供述とその裏付け(防犯カメラ)を検討して信用できると評価して、被告人の供述と客観証拠(メール)との不整合を指摘して、有罪ということになっています。

横浜地方裁判所平成30年01月25日
 上記の者に対する強制わいせつ被告事件について、当裁判所は、検察官寺尾智子及び同初沢怜以並びに私選弁護人大坂周作(主任)各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文
被告人を懲役1年6月に処する。
この裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予する。
訴訟費用は被告人の負担とする。

理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、平成28年3月23日午後10時36分頃、神奈川県(以下略)カラオケB店(省略)号室東側の通路において、C(当時53歳)に対し、正面から同人に抱き付いた上、その着衣の上からでん部を手でつかみ、さらに、同人の顎を手でつかんでその唇に接ぷんし、もって強いてわいせつな行為をした。
(証拠の標目)
(事実認定の補足説明)
第1 前提事実及び争点
  関係証拠によれば、平成28年3月23日当時、被告人及び被害者は、いずれもA市議会議員であったこと、両名は、同日午後7時以降(特に断らない限り、以下の時刻は同日のものである。)、いずれも同会議員であるD(以下「D」という。)、E(以下「E」という。)、F(以下「F」という。)その他2名の議員と共に飲食店で飲食し、その後、判示のカラオケ店(以下「本件カラオケ店」という。)に移動して、同店2階の(省略)号室(以下「(省略)号室」という。)内でカラオケ等に興じていたこと、その間、被害者とEは飲酒しなかったが、被告人を含むその他の参加者は飲酒していたこと、本件カラオケ店2階は、東西に伸びる通路を挟んで個室が並び、その北側に(省略)号室が出入口を通路に接して設けられ、また、(省略)号室の東側壁に沿って南北に伸びる幅約125cmの通路(以下「本件通路」という。)があり、両端は行き止まりとなっていて、東西に伸びる通路と交わる地点の北側部分には非常階段が、南側部分にはドリンクバー、エレベーター及びトイレがそれぞれ設置されていたこと、被告人が(省略)号室内にいた被害者を室外に呼び出し、午後10時36分頃、本件通路の北側部分において、二人きりの状態で話をしたことが認められ、これらの事実は当事者双方も争っていない。
  以上の事実を前提として、検察官は、被害者の供述に依拠して、被告人が、本件通路の北側部分において判示のわいせつ行為に及んだと主張し、弁護人は、被害者の供述は信用できず、被告人はそのようなわいせつ行為をしていないから無罪であると主張する。

第2 当裁判所の判断
 1 被害者の供述の要旨
  被害者は、公判廷において、被告人から(省略)号室の外に呼び出された後の状況について、要旨、次のとおり供述する(以下「被害者供述」という。)。
  被告人に呼び出されて(省略)号室を出ると、被告人から、被害者が市議会の副議長になることについて被告人と同じ会派の議員が嫌がっている旨言われたので、その話を真剣に聞こうと思い、本件通路の北側部分に移動した。そこで被告人と向かい合う体勢になり、被告人から、副議長になっても威張るなよなどと言われ、さらに、被告人が「あのな、あのな。」などと言いながら近寄ってきたので、少し後ずさりしたところ、いきなり被告人から抱き付かれ、いずれかの手ででん部をつかまれた上、手で顎をつかまれて唇にキスされた。顔を右側に向けたが、唇の左側に被告人の唇が当たった。たばこと酒の入り交じった息の臭いと、唇を押し付けられた感触を覚えている。これらは一瞬の出来事だった。すぐに被告人を突き飛ばしたり、手を伸ばしてくる被告人を振り払ったりして逃げていたところ、(省略)号室にいた同僚議員らが本件通路に出てきた。同僚議員からどうしたのか尋ねられ、みんなの前で今この男にキスされた旨言った。唇をずっと触っていると、D議員が紙おしぼりを何枚か持ってきてくれたので、封を開けて口を拭いた。その後、左耳のピアスが外れていることに気付いて付近を探したり、気持ちを落ち着かせようとして、本件通路南側部分のドリンクバーの蛇口から水を出して、手ですくって飲んだりした。
 2 被害者供述の信用性
  まず、被害者供述には、不自然又は不合理な点はうかがえない。
  そして、被害者供述のうち、わいせつ被害の前後の状況は、本件通路中央付近に設置された防犯カメラ(以下「本件防犯カメラ」という。)に記録された映像(甲12号証添付のDVD-R)により裏付けられている。すなわち、本件通路と東西に伸びる通路が交わる場所から本件通路の南側部分までを撮影対象とする本件防犯カメラには、被害者が、被告人に(省略)号室出入口から呼ばれて、同室を出て本件通路の北側部分に行ったこと(午後10時36分7秒頃)、それから被告人は、本件通路の北側部分にいる被害者に向かって話をしていたが、更に北側に移動して本件防犯カメラの画面に姿が映らなくなったこと(同40秒頃)、その約16秒後(同56秒頃)に、今度は被害者が本件通路の北側部分から姿を現し、(省略)号室出入口ドアの前に移動してドアを開けたものの、後から来た被告人に両手で腕をつかまれたり立ち塞がれたりしたため、(省略)号室には入らず、その後も被害者は、近寄ろうとする被告人と距離を取ろうとしたり、話し掛けてくる被告人から離れようとする行動を取っていたこと、その間、(省略)号室からE、Dら同僚議員が出てきて(午後10時37分19秒以降)二人の様子をうかがっていたこと、その後、被害者は、右手で口元を触る仕草をしたり、左耳を触ったりしたほか、ドリンクバーに設置されたウォーターサーバーから水を出して手ですくい、口元を手で拭う仕草をした(午後10時41分20秒頃)こと、Dが複数枚の紙おしぼりを持ってきたことなどが記録されており、これらの事実は、被害者供述とよく符合している。また、Dが持ってきた紙おしぼりで、被害者が口を拭いたことは、D及びEの各公判供述によって裏付けられている。
  しかも、関係証拠によれば、当日被告人が(省略)号室にいた被害者を呼び出すまでは、先輩議員である被告人が被害者を市議会副議長職に推し、被害者も副議長職に就くことを意欲するなど、被告人と被害者との間に格別トラブルが生じた形跡はなかったと認められ、被告人の呼び出しに被害者が嫌がる様子もなかったところ、上記のとおり、本件通路の北側部分において二人きりになり始めて1分もたたないうちに被害者が被告人をその場に残して(省略)号室に戻ろうとした上、その後も近寄る被告人から離れて避けようとする行動を取っており、その際の被告人と被害者の挙動は、同僚議員らが(省略)号室から出てきて様子をうかがうほどであったことからすると、本件通路の北側部分において被害者が被告人を殊更避けようとする不快な出来事が生じたものと推認できる。加えて、その後の被害者が自分の口元を気にする仕草を繰り返す一連の行動は、本件通路の北側部分において被告人からキスされるなどのわいせつ行為をされたという被害者供述の信用性を強く支えるものといえる。
  さらに、被害者が(省略)号室から出てきた同僚議員らに対し、被告人からキスされた旨話したことは、D、Eの各公判供述のほか弁護人請求証人であるFの公判供述によって裏付けられているところ、被害者が、同僚議員らに対し、先輩議員である被告人を名指しで、あえて虚偽のわいせつ被害を申告するような動機は見当たらず、むしろ、このことは被害者供述の信用性を相当高める事情といえる。
  以上によれば、被告人から判示のわいせつ行為をされたという被害者供述は十分信用できる。
 3 被告人の供述の信用性
  これに対し、被告人は、公判廷において、被害者を本件通路に呼び出した上、両手を被害者の両肩に置きながら、やや強い口調で被害者の言動をいさめるなど意見したところ、突然被害者が奇声を発するなど大騒ぎし始めたのであり、その際、被害者がなぜ騒ぐのか分からず、被害者に対してわいせつ行為は一切していない旨供述する。しかしながら、被告人は、本件直後に戻った(省略)号室内において、被害者との騒ぎの現場に駆け付けた同僚議員らの前で、「やってもうた。」などと述べる一方で、騒ぎになった原因については全く弁明しなかったというのであり、さらに、本件翌日には、被害者に対して繰り返し電話を掛け、応答しない被害者に対し、「1つだけ大事なことを伝えたい。」とメールした後、「しばらくはお腹に入った重いものを噛み締めます。ごめんなさい。」という謝罪のメッセージを送信しているのであって、これらの言動は、被告人が供述するような状況ではなかったことを強くうかがわせるところ、この点に関して被告人から納得のいく説明はされていない。被告人の供述は、不合理であるといわざるを得ず、被害者供述の信用性に疑いを生じさせない。
 4 弁護人の主張に対する判断
  弁護人は、15秒程度という短時間のうちに被害者供述のような犯行に及ぶことは極めて不自然であると主張する。しかしながら、被告人と被害者は、本件通路で向かい合って話をする程度の近い距離にいたのであるから、被害者供述のような瞬間的ともいえる短時間のわいせつ行為を行うことは十分に可能であり、弁護人の上記主張は採用できない。
  また、弁護人は、本件犯行場所は、他の客がドリンクバーやトイレなどを利用するためいつやってくるかも知れず、しかも、犯行が行われたという時間帯は、本件カラオケ店の従業員が(省略)号室に入り、その間、同室の出入口ドアが開いたままの状態であったから、このような状況で被告人が犯行に及ぶことは有り得ない旨主張する。しかしながら、本件わいせつ行為の態様に照らせば、被告人が行き止まりの通路で被害者と二人きりでいた際に衝動的に行ったものと考えられるから、弁護人の上記主張は採用できない。なお、犯行前後の(省略)号室出入口ドアの開閉状況について、本件防犯カメラに記録された映像によれば、犯行直前の午後10時36分30秒頃に本件カラオケ店の従業員が(省略)号室に入った直後にドアが閉まり、同59秒頃に被害者がドアを開けようとするまでドアは閉まった状態であったと認められるから、犯行時間帯に(省略)号室の出入口ドアが開いたままであったとする弁護人の主張は前提を欠く。
  次に、弁護人は、被害者が、本件後に本件カラオケ店1階カウンター前において、笑顔を見せたり、同僚の男性議員に後ろから抱き付いたり、カラオケ代金について話をしたりした上、被告人に対して車で家まで送る旨申し出たりする行動を取っており、これらの被害者の行動からは被害者が真実わいせつ被害を受けたとは到底考えられない旨主張する。しかしながら、これらの行動について、被害者は、被害直後に、周囲には同僚議員や一般の人もいるので、落ち着いて醜態をさらさないように、しっかりしないといけないなどと考えて、そのように振る舞っていたところ、同僚の男性議員が、自分の味方をする発言をしてくれたので、その議員の背中にもたれ掛かるようにして泣いてしまった、被告人にカラオケ代金をおごられるのが嫌で、せめて自分の分だけは支払おうと思い金額を確認していた、カラオケ店を出る際、E議員同席の下で、やはり被告人には本件わいせつ行為を認めてほしいなどと考えて、被告人を車で家まで送る旨申し出たなどと、それぞれ当時の心境を交えた納得し得る説明をしているのであって、弁護人の上記主張は採用できない。
  さらに、弁護人は、被害者は、市議会の副議長選挙において性的被害者を装って同情票を得る思惑があり、また、結局副議長になれなかった原因が本件カラオケ店における被告人の発言にあると考えたために、被告人から本件わいせつ被害を受けた旨の告訴をした旨主張する。しかしながら、上記のとおり、被害者は、本件わいせつ被害の直後に、同僚議員に対して被告人からキスされた旨述べているのであり、この時点で、被害者に、弁護人が指摘するような虚偽供述の動機があったことはうかがわれない。よって、弁簿人の上記主張は採用できない。
  その他弁護人の主張を踏まえて検討しても、被害者供述の信用性に疑いを抱かせるものは見当たらない。
 5 まとめ
  以上のとおり、被害者供述は信用できるから、被告人には判示の強制わいせつ罪が成立すると認定したものである。
(法令の適用)
罰条 平成29年法律第72号附則2条1項により同法による改正前の刑法176条前段
刑の執行猶予 刑法25条1項
訴訟費用の負担 刑訴法181条1項本文
(量刑の事情)
 本件犯行の態様は、被害者の人格を無視した卑劣なものであって、瞬間的ともいえる短時間の犯行であることを考慮しても、暴行の程度やわいせつの程度が軽いとはいえず、被害者の受けた精神的苦痛は大きい。
 このような犯情を中心にした上で、被告人は、公判廷において、被害者が虚偽の供述をしているなどと不合理な弁解に終始しており、反省の態度が見られないこと、他方で、これまで前科もなく社会生活を送ってきたことは更生を期待させ得る事情といえることなどの一般情状をも考慮して、主文掲記の量刑をしたものである。
(求刑 懲役1年6月)
第4刑事部
 (裁判長裁判官 片山隆夫 裁判官 池田知史 裁判官 西沢諒)

女子トイレに、その出入口から侵入し、同トイレ個室内にいたAに対し、やにわにその右こめかみ又は右手の甲に被告人の陰茎の先端を接触させ、という建造物侵入、強制わいせつ被告事件につき、無罪が言い渡された事例(名古屋地裁h30.1.11)

建造物侵入、強制わいせつ被告事件につき、無罪が言い渡された事例(名古屋地裁h30.1.11)
 被害者供述の信用性が否定されています。被告人の供述は検討されていません。

名古屋地方裁判所平成30年01月11日
主文
被告人は無罪。

理由
第1 本件訴因変更後の公訴事実と争点
  本件訴因変更後の公訴事実は、「被告人は、A(当時46歳)に強いてわいせつな行為をしようと考え、平成29年3月22日午後7時18分頃、G市a区b町c番地B店店長Cが看守する同店2階女子トイレに、その出入口から侵入し、同トイレ個室内にいたAに対し、やにわにその右こめかみ又は右手の甲に被告人の陰茎の先端を接触させ、もって強いてわいせつな行為をした」というものである。
  関係証拠によれば、被告人が、上記日時頃に、上記女子トイレ(以下「本件女子トイレ」という。)内の個室にAと2人で入った状態になっていたことが明らかに認められ、被告人及び弁護人は、被告人が、同トイレ内で、Aが認識できる状態で陰茎を露出したことがあったことは争っていない。そして、被告人は、用を足すために、女性用のトイレと認識せずに本件女子トイレに入ったが、強制わいせつ行為はしていない旨述べている。
  よって、本件の争点は、強制わいせつ行為の有無と、被告人が本件女子トイレに入った目的であるが、強制わいせつ行為が認められなければ、前記訴因変更後の公訴事実にある強制わいせつ目的による侵入の事実も認められないことになるから、以下、強制わいせつ行為の有無を中心に検討する。
第2 前提事実
  関係証拠によれば、被告人及びAが本件当時同僚の関係にあり、本件当日は他の同僚らとバーベキューをした後、午後5時前頃(以下の時刻のみの記載は、いずれも本件当日のものである。)から、十数名で、2次会として前記B店(以下「本件店舗」という。)2階のH号室でカラオケをしたこと、被告人が、午後7時前頃に、他のベトナム人ら3名と共に帰ることとしてH号室を出たが、本件店舗入口付近で考えを変えて本件店舗に残ることにし、午後7時1分頃に他のベトナム人に電話をしてこれを告げたこと、Aが、本件店舗入口付近まで被告人らを見送りに出ていたこと、上司のDが、午後7時12分頃から18分頃にかけて4回にわたりAに電話をかけたが応答がなく、午後7時24分頃にAから電話を受けて女子トイレに来るよう求められ、本件女子トイレに行くとAと被告人がいたこと、Aが、H号室に戻った際涙を流しており、同僚のEやFに対し、本件女子トイレ内で被告人から顔付近に陰茎を押し付けられたなどと訴えたこと、Aが、午後9時半頃に本件店舗を出た後、D、Fほか1名と共にA宅で3次会をしたことなどが明らかに認められる。
第3 A供述について
 1 本件被害についてのAの公判供述は、概ね次のようなものである。
  被告人らが帰った後、本件女子トイレに行って用を足した。ズボンを履いた後、被告人が同じ個室に入ってきた。個室の鍵をかけたかは覚えていない。被告人が、ズボンのチャックを下ろして陰茎を出し、手で持ったので、おしっこをするのかなと思ったが、おしっこはせず、Aの名字を呼んで近寄ってきた。何やってるの、おしっこ出ないの、待ってなどと言ったが、ほら、ほらと言いながら近寄ろうとするのをやめないので、被告人を押しのけるようにした後、頭を手で覆い、体を丸めて身を守るような姿勢で、お尻をついてしゃがみ込んだところ、和式便器と床との段差部分と便器で額と鼻を打った。しゃがみ込んだときに、Dからの着信で携帯電話が鳴った。その後も、被告人は、Aの名字を呼び、ほら、ほらと言いながら、しゃがみ込むAの顔付近に手で持った陰茎を近付けたので、陰茎が、Aの右こめかみ付近に1、2回と、頭を覆っていた右手の甲に1回ほど、それぞれ1、2秒程度当たった。その後、Dに電話をかけて助けを求めたが、電話をした後も、被告人はまだ陰茎を近付けようとしてきていた。
 2 そこでA供述の信用性を検討するに、本件の当初の公訴事実は、強制わいせつ行為を「(Aの)身体に抱きつくなどの暴行を加えた上、その顔面に露出した陰茎を押しつけるなどし」というものであったが、A自身が、公判において、実際にはこのような行為はなく、捜査段階では自分が思ったことを自分流に話したなどとの説明をしたために、前記のように訴因変更がなされた経緯がある。Aの公判供述は、本件において強制わいせつ行為を直接立証する唯一の証拠であり、その信用性は慎重に検討する必要があるところ、罪体そのものに関する部分をこのように大きく変遷させたという供述経緯は、それ自体においてA供述の信用性を大きく損なう事情に当たる。
  さらに、捜査段階供述についてのAの説明は、要するに強制わいせつ行為を誇張して述べたというものと解されるが、捜査段階供述は、しゃがみ込んだAの口付近に被告人が陰茎を近付けてきたため、口を手で覆って顔を背けたところ右頬に陰茎を押し付けられた、被告人が陰茎を出した際既に勃起しており、小便をしたい様子は全くなかったとするもので、被告人が用を足すと思ったか否か、しゃがみ込んだ際のAの手の位置、陰茎の接触場所及び接触態様等において、公判供述とは相当に異なる内容である。捜査段階供述が誇張の範疇にあるとはいい難く、誇張の元に当たる公判供述中の強制わいせつ行為の存在自体を疑わせしめるものといえる。
 3 加えて、Aの公判供述には、内容自体にも、以下のとおり看過し難い問題点が複数指摘できる。
  まず、ひたすら陰茎を手に持ち近付けようとするという態様自体がわいせつ行為として理解しにくい上、Aの供述するように、頭部が和式便器やその床との段差部分(床からの高さ約30センチメートル(甲6))に当たるくらい低い姿勢でAがしゃがみ込んでいたのであれば、身長約170センチメートルの被告人がAの身体のいずれかの部分に陰茎を接触させようとすれば、被告人自身もかなりかがんだ姿勢をとらなければならず、相当に不自然である。そして、Aは、被告人が途中でかがんだ等の説明をしておらず、頭部等に陰茎が接触した理由を説明できていない。
  また、Dとの発着信履歴に照らすと、被告人がわいせつ行為を開始してAがしゃがみ込んでから、助けを求める発信をするまでに最低でも6分程度が経過していたことになるが、A供述はその間の出来事について的確に説明し得ていない。本件女子トイレの個室の狭さを踏まえれば、被告人が真にAに陰茎を押し付けようとしたのであれば、大した抵抗もしていないAを相手にこれを遂げるのは容易と考えられ、A供述によれば、被告人は、目の前でAが電話で助けを求めた後もなお続けたというほど同行為に執着していたというのに、数回の軽微な接触があったにとどまったとは考え難い。
  さらに、女性用トイレの個室にいた際に男性が入ってきて陰茎を露出すれば、相当に驚くはずであるが、そのような状況も供述していないなど、Aの公判供述は全般的に迫真性を欠いている。
 4 また、Dは、Aと被告人が本件女子トイレの個室から出てきた時に、特に変わった表情や雰囲気などはなく、強制わいせつ行為があったとは思えないような状態だったと述べている。
  一方で、AがH号室に戻った後、涙を流して強制わいせつ被害を訴えたことは、そのような被害があったことを一定程度裏付ける事情ともいえる。しかし、訴えを受けたEは、Aは被告人の行為を嫌がっていた雰囲気ではなく、被告人に好意を抱いているとも言っていた、泣いたのは、被告人に振られた等の悔しい気持ちからだと思うと述べ、Fは、Aは陰茎を押し付けられた頃に、私でいいのかなと被告人に言い、行為を容認する気持ちが一瞬芽生えたと言っていた、泣いたのは被告人の行為が怖かったのかなと思ったが、酔っていたからかなとも思った、3次会では、本件女子トイレでのことを気に留めていない様子だったなどと述べ、Dも、概ねこれらに沿う供述をしている。さらに、被告人が一緒に帰ろうとしていたベトナム人らの供述によれば、被告人がこのベトナム人らと本件店舗入口付近で別れた際、Aが被告人を引き止めて抱き合う形になっていたことなどが認められ、これらの関係者の供述に照らしても、被告人がAに対し、その意に反する性的接触をしたことには疑問が残る。
 5 以上に指摘した問題点に加え、自宅で3次会を行うという本件後のAの行動が、強制わいせつの被害に遭った直後の行動として疑問が残ることや、Aが被害届出の前後に親族とやり取りしたIメッセージが、届出の動機や被害内容に疑問を抱かせる内容であること等も考慮すれば、Aの公判供述の信用性を肯定することはできない。
第4 小括
  そして、Aの公判供述のほかに前記訴因変更後の公訴事実の強制わいせつ行為を行ったと認定するに足りる証拠はないから、被告人が同行為を行ったとの事実は認められない。
第5 建造物侵入について
  被告人がAに強制わいせつ行為をした事実が認められない以上、前記訴因変更後の公訴事実にある被告人が強制わいせつ目的で本件女子トイレに侵入したとの事実も認められない。
  進んで、本件女子トイレの出入口付近の状況を検討すると、同出入口ドアは一定角度以上に開くと開いたままの状態になるところ、開いたままの状態になれば、同ドアに貼られた女性用トイレであることを示すプレートが見えにくくなる一方で、同ドア上方の壁に男女のマークが並んだプレートが貼ってあり、さらに、同出入口を正面に見る廊下に立つと、隣接する男子トイレの存在も認識しにくくなると認められ、本件女子トイレのドア枠部分が赤色に塗られていること等を考慮しても、紛らわしさは否定できない。被告人の供述は、本件店舗にとどまることにしてからAがDに発信するまでの時間経過等を無理なく説明する内容とはいい難いものの、その説明するように、酒に酔った状態の被告人が、女性用トイレと認識せずに本件女子トイレに入ることがあり得ないとはいえない。
第6 結論
  よって、本件訴因変更後の公訴事実については犯罪の証明がないことになるから、刑訴法336条により被告人に無罪の言い渡しをする。
(求刑-懲役1年6月)
刑事第1部
 (裁判官 諸徳寺聡子)

児童ポルノ単純所持罪と迷惑防止条例違反(盗撮)とで、懲役8月執行猶予3年(鹿児島地裁h30.1.24)

 
  迷惑条例(盗撮)で検挙されて警察署に連れてこられた際にスマホを任意提出させられて、児童ポルノ画像が発見されたので、単純所持罪でも立件されたようです。児童ポルノの犯情は不明で、常習盗撮の方が犯情重いようです。

「第2の行為は児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条1項前段にそれぞれ該当するところ、」では2条3項何号に該当するのかわかりませんね。理由不備の疑い。

鹿児島地方裁判所平成30年01月24日
 上記被告人に対する公衆に不安等を覚えさせる行為の防止に関する条例違反(鹿児島県)、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件について、当裁判所は、検察官春口太志、私選弁護人上野英城各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文
被告人を懲役8月に処する。
この裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予する。

理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、
第1 常習として、正当な理由がないのに、平成29年11月12日午後6時16分頃から同日午後6時27分頃までの間、(住所略)株式会社A B店内の試着室内において、自ら同室内にあらかじめ設置した火災報知器型等の小型カメラ2台で氏名不詳の女性の下着姿を撮影し、もって写真機等を使用して、人の下着又は身体の映像を記録し、人が通常衣服等の全部又は一部を着けない状態でいるような場所において当該状態でいる者に対し、著しく羞恥させ、かつ、不安を覚えさせるような行為をした。
第2 自己の性的好奇心を満たす目的で、平成29年11月12日、(住所略)C警察署において、衣服の全部又は一部をつけない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである動画データ3点を記録したマイクロSDカード1枚を所持した。
(証拠の標目)
  [注:括弧内の甲乙の番号は、証拠等関係カードにおける検察官請求証拠の番号]全部の事実について
 被告人の公判供述
第2の事実について
 被告人の警察官調書(乙8~10)
 スマートフォンの領置日時場所報告書(甲9)
 領置経過報告書謄本(甲10)
 児童ポルノ等写真撮影報告書(甲11)
 児童ポルノ等写真撮影報告書の訂正報告書(甲12)
 「(省略)」フォルダー内画像精査結果報告書(甲13)
 鑑定書(甲14、15)
(法令の適用)
 第1の行為は公衆に不安等を覚えさせる行為の防止に関する条例(鹿児島県)6条2項、2条の2第2項2号、第2の行為は児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条1項前段にそれぞれ該当するところ、各所定刑中懲役刑をいずれも選択し、以上は刑法45条前段の併合罪であるから、同法47条本文、10条により、犯情の重い第1の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役8月に処し、情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。
(量刑の理由)
 本件は常習盗撮と児童ポルノの所持の事案である。なかでも犯情の重いのは、スポーツショップの試着室に盗撮用のカメラを仕掛けて、試着中の女性客の下着姿を動画で盗撮した事案であり、被告人は、同様の盗撮用の特殊なカメラをトイレ等に設置し、用便中の女性の肢体を動画撮影することを繰り返していた。被告人のパソコンに保存されていた被告人が撮影したこの種の盗撮動画のうち撮影日時が特定できるものだけでも、平成29年5月から同年11月までの116件が確認されており、常習的な盗撮である。
 被告人は、まだ大学生であった平成26年にもアルバイト先の更衣室で盗撮行為を行い、警察に検挙されて、軽犯罪法違反で科料に処せられた前科があったのに、社会人となり鹿児島税務署に勤務するようになった後も、前述した様な破廉恥な犯行を1年以上も繰り返していたというのであるから、この種の犯行に対する規範意識は相当低い。
 そうすると、被告人の刑事責任を軽く考えることはできないが、各犯行の罪質や被告人に禁錮刑以上の前科がないこと、事実を認め反省の態度を示していること等を考慮して、社会内での更生の機会を与えることとする。
(求刑 懲役8月)
刑事部
 (裁判官 冨田敦史)

保護責任者遺棄致傷、強制わいせつ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反、強制わいせつ(変更後の訴因 わいせつ誘拐、強制わいせつ)、殺人、強制わいせつ致傷被告事件(東京高裁h30.1.30)はD1lawに掲載予定

強制わいせつ罪(176条後段)と姿態をとらせて製造罪が観念的競合になってるらしい

判例ID】 28260882
【裁判年月日等】 平成30年1月30日/東京高等裁判所/第6刑事部/判決/平成28年(う)1687号
【事件名】 保護責任者遺棄致傷、強制わいせつ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反、強制わいせつ(変更後の訴因 わいせつ誘拐、強制わいせつ)、殺人、強制わいせつ致傷被告事件
【裁判結果】 控訴棄却
【上訴等】 上告、上告受理申立て
【裁判官】 大熊一之 野口佳子 景山太郎
【審級関連】 <第一審>平成28年7月20日/横浜地方裁判所/第4刑事部/判決/平成26年(わ)528号...等 判例ID:28243152
【出典】 D1-Law.com判例体系
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法律相談として、疑わしい媒体をお預かりして、弁護士が法律上の「児童ポルノ」だと判断したものは、法3条の2で所持できないので、法律相談として破壊方法を相談して、秘密裏に確実な方法で物理的に破壊していただいて、秘密裏に経緯を報告書で残します(相談料で55000円)

 何をいつ破壊したのかを証明します。単純所持罪の公訴時効(所持をやめたときから3年)の起算点を証明します。
 写真集100冊とかいうのは粉砕方法を検討しますので別途相談してください。

 破壊しておけば、仮に捜索されても、逮捕起訴されることはありません。「単純所持で逮捕」「弁護活動で起訴猶予」とか不安をあおる弁護士サイトがありますが、そういうことはありません。

 さらに、販売業者が摘発された事件では、上記の報告書を警察に提出するなどして、捜索を免れた人もいます(警告処理)。但し、警察への対応を依頼される場合は、弁護人として選任していただく必要があります。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(H26改正後)
第三条の二(児童買春、児童ポルノの所持その他児童に対する性的搾取及び性的虐待に係る行為の禁止)
 何人も、児童買春をし、又はみだりに児童ポルノを所持し、若しくは第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管することその他児童に対する性的搾取又は性的虐待に係る行為をしてはならない。

 所持を性的搾取・性的虐待だとする法の趣旨からすれば、最善の方法が即時破壊です。
 警察も破棄を薦めています

[きょうナニある?]/話題/児童ポルノ所持を警戒/県警 サイバーパトロール
2015.06.13 沖縄タイムス
 県警は11日、個人が趣味で児童ポルノの写真や映像を持つ「単純所持」が7月15日から摘発対象となるのを前に、「ウィニー」などのファイル共有ソフトを使った児童ポルノに対するサイバーパトロールを全国一斉に実施すると発表した。期間は6月15日から7月14日までの1カ月間。全国の警察で175人体制(うち県警少年課から8人)で警戒する。

 同課の吉浜信永次席は「パソコンやスマートフォンに保存している児童ポルノ画像があれば廃棄して」と呼び掛けた。画像を発見した場合は、所持者らに警告を行うという。

 児童買春・ポルノ禁止法は昨年6月に改正され、単純所持が処罰対象に加わった。自分の意思に基づき性的好奇心を満たす目的で18歳未満の児童のポルノ写真などを所持した場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される。

 全国の警察が昨年1年間に送致した児童ポルノ事件は1828件(前年比184件増)で、県内は18件(前年比1件増)だった。このうちファイル共有ソフトを使ったものは577件(70件増)で、県内は4件(前年比1件増)。被害児童数は746人(100人増)、県内は7人(同数)だった。
・・・
◎「児童ポルノ廃棄を」=一斉にネットパトロール-単純所持の罰則前に・警察庁
2015.06.11 時事通信 (全448字) 
 警察庁は11日、全国の警察が15日から一斉にサイバーパトロールを行い、悪質な児童ポルノ流通事件を摘発すると発表した。一斉取り締まりの予告は異例で、同庁は「7月15日から児童ポルノの単純所持に罰則が適用される。所持している人は廃棄するように」と呼び掛けている。
 一斉パトロールは7月14日までの1カ月間、47都道府県警の捜査員175人態勢で臨む。ファイル共有ソフトを使った悪質な流通事件を摘発し、単純所持は対象としない。
 全国の警察は毎年、共有ソフトによる流通事件を抜き打ちで一斉摘発しているが、事前の予告は初めて。昨年は1年間で、過去最多の1380人が児童ポルノを製造、流通させた容疑で逮捕・書類送検された。 
 単純所持を禁じた改正児童ポルノ禁止法は議員立法で昨年6月に成立。同7月に施行されたが、自主的に廃棄する期間として1年間は罰則の適用が猶予された。来月15日からは、性的好奇心を満たすため自分の意思で児童ポルノを所持すると、1年以下の懲役か100万円以下の罰金が科される。

監護者わいせつ罪で執行猶予(旭川地裁h30.3.2)

 性交・性交類似行為を処罰する児童淫行罪だと親子だとまあ実刑で、性交(姦淫・口腔性交・肛門性交)を処罰するのが監護者性交等罪になってこれは5年以上とされたのでこれも実刑で、性交・性交類似行為・姦淫・口腔性交・肛門性交以外の性的行為のみが、監護者わいせつ行為になったので、執行猶予もありうるということになります。
 監護者性交罪とともに、保護法益が不明確で、罪数処理も不明です。

「監護者わいせつ罪」15歳娘の実父有罪*道内初判決
2018.03.03 北海道新聞
 【旭川】同居する当時15歳の娘に対し、支配的な立場を利用してわいせつな行為をしたとして、監護者わいせつ罪に問われた宗谷管内の男(41)の判決公判が2日、旭川地裁であり、佐藤英彦裁判官は懲役3年、執行猶予5年(求刑懲役3年)を言い渡した。

 判決によると、男は昨年11月、親の立場を利用してわいせつな行為をした。

 佐藤裁判官は、「犯行が悪質であり、被害者の性的自由を侵害した」と述べる一方、犯行に常習性がなく、反省の態度を示しているなどとして執行猶予とした。

 監護者わいせつ罪は昨年7月施行の改正刑法で新設され、判決が出るのは道内初。立場を利用して18歳未満の者にわいせつ行為をすれば暴行や脅迫がなくても罰し、罰則は強制わいせつ罪と同じ「懲役6カ月以上10年以下」。

 同じく新設された、より重い罰則の監護者性交罪は昨年12月、札幌地裁小樽支部で後志管内の会社員の男が懲役7年の判決が確定している。

わいせつ目的誘拐罪・強制わいせつ罪で逮捕(否認)→青少年条例違反で罰金(鳥取簡裁h30.2.26)

 
 誘拐と暴行脅迫が落ちました。

強制わいせつ 容疑で71歳逮捕 鳥取署=鳥取
2018.02.06 読売新聞
 10歳代の少女を誘拐してわいせつな行為をしたとして、鳥取署は5日、容疑者(71)をわいせつ誘拐と強制わいせつの疑いで逮捕した。
 発表では、容疑者は1月9日午後3時45分頃、県東部で県内に住む10歳代の少女を自分の車に誘い込み、約1時間連れ回した上、車内で少女の胸を触ったり、キスをしたりするなどわいせつな行為をした疑い。「わいせつな行為はしたが、誘拐はしていない」と一部否認しているという。

わいせつ容疑 男に罰金30万円=鳥取
2018.03.01 読売新聞
 10歳代の少女を車に連れ込んでわいせつな行為をしたとして逮捕された容疑者(71)について、鳥取区検は県青少年健全育成条例違反で鳥取簡裁に略式起訴した。26日付。同簡裁は同日付で、罰金30万円の略式命令を出した。
 県によると、容疑者は2007年から県の非常勤職員として児童委員と民生委員を務めている。

準強制口腔性交罪で懲役3年6月(甲府地裁平成29年10月19日)

口淫させる行為については、強制わいせつ罪の時代よりは重くなりました。

上記の者に対する準強制性交等被告事件について,当裁判所は,検察官宮上泰明及び弁護人渡部美由紀(国選)各出席の上審理し,次のとおり判決する。
主文
 被告人を懲役3年6月に処する。
 未決勾留日数中30日をその刑に算入する。
理由

 (犯罪事実)
 被告人は,平成29年7月19日午前8時25分頃から同日午前11時8分頃までの間に,市●●●において,かねて顔見知りのAが自動車を運転して仕事に向かう姿を発見するや,同人が知的障害者であり,被告人が指示すれば,それを拒み得ない心理状態になることに乗じて,前記Aを●●●被告人方に連れ込んで性交しようと考え,前記Aに同車から降りるよう命じ,同人が所持していた携帯電話機を取り上げた上で,同車から降車した同人に,同棟最西端に設置された階段を上り前記被告人方に行くよう命じ,階段を上る前記Aの後方に付いて更に同様に命じるなどして,同人を前記被告人方に連れ込み,同所において,前記Aに口腔性交に応じるよう指示し,被告人の指示を拒み得ない心理状態にある前記Aの口腔内に自己の陰茎を入れ,もって同人の抗拒不能に乗じて口腔性交をした。
 (証拠)
 なお,弁護人は,判示事実は間違いないとする一方で,本件は被害者の知的障害に付け込んで行われた犯行ではない旨主張するので,念のため被告人の故意について検討する。
 被告人は,その公判供述によれば,被害者に知的障害があることを知っており,正しい判断に基づけば口腔性交に応じないことも分かっていたというのであるから,被告人が被害者の抗拒不能に乗じて本件犯行に及んだことは明らかで,本件の故意も認められる。
 (法令の適用)
 被告人の判示所為は刑法178条2項,177条に該当するところ,犯情を考慮し,同法66条,71条,68条3号を適用して酌量減軽をした刑期の範囲内で被告人を懲役3年6月に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中30日をその刑に算入することとし,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
 (量刑の理由)
 被告人は,被害者に知的障害があり,性的行為に関して正常な判断ができないことを知りながら,それに乗じて,携帯電話機を取り上げたり,後方から階段を上ったりするなどして,被害者を自宅に連れ込み,全裸にさせるなどした上で口腔性交をさせているのであって,犯行態様は卑劣で悪質である。被害者は,本件により甚大な精神的苦痛を受けており,厳しい処罰感情を有しているのも当然である。
 以上によれば,被告人の刑事責任は重いというべきであり,今般の法改正により口腔性交が性交と同様の重い類型の犯罪として処罰されることになったことも踏まえると,相当期間の実刑は免れない。
 その上で,被告人が,本件犯行を認めて示談の申入れをするなど,反省の態度を示していること,罰金前科以外の前科がないこと,被告人の姉がきょうだいによる監督を約束していることなどの事情も考慮して,主文の刑を定めた。
 よって,主文のとおり判決する。
 (求刑―懲役5年)
 甲府地方裁判所刑事部
 (裁判長裁判官 丸山哲巳 裁判官 望月千広 裁判官 種村仁志)

鉄道営業法34条2項の「婦人ノ為ニ設ケタル待合室及車室等ニ男子妄ニ立入リタルトキ」

鉄道営業法
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=133AC0000000065&openerCode=1
第三十四条 制止ヲ肯セスシテ左ノ所為ヲ為シタル者ハ十円以下ノ科料ニ処ス
一 停車場其ノ他鉄道地内吸煙禁止ノ場所及吸煙禁止ノ車内ニ於テ吸煙シタルトキ
二 婦人ノ為ニ設ケタル待合室及車室等ニ男子妄ニ立入リタルトキ

安西温 特別刑法1 p305
④吸煙、男子禁制場所への立入り(三四条)
『制止ヲ肯セスシテ、(イ)停車場其ノ他鉄道地内吸煙禁止ノ場所及吸煙禁止ノ車内ニ於テ吸煙シタルトキ、(ロ)婦人ノ為ニ設ケタル待合室及車室等ニ男子妄ニ立入リタルトキ』は、科料に処せられる。「制止」は、権限のある鉄道係員によるものに限られ、私人によるものは含まれない。本条の行為は、このような者の「制止」をきかないで、的停車場その他の「鉄道地内」(後述⑤参照)において禁煙と指定された場所や、禁煙と指定された車両(いわゆる『禁煙車』。車両の一部につき禁煙の指定がされている場合は、車両のその部分)内でタバコを吸うこと、帥婦人のために設けられた待合室または車室等(現在このようなものが存在するか疑わしいが〉に、男子が「妄に」、すなわち、正当な理由がないのに不法に立ち入ることである。

注解特別刑法02 交通編p67
〔吸煙および婦人室立入りに関する罪〕
第三四条
制止ヲ肯セスシテ左ノ所為ヲ為シタル者ハ十円以下ノ科料ニ処ス
一停車場其ノ他鉄道地内吸煙禁止ノ場所及吸煙禁止ノ車内ニ於テ吸煙シタルトキ
二婦人ノ為ニ設ケタル待合室及車室等ニ男子妄ニ立入りタルトキ

本条の趣旨
本条は、火災を防止し、社会的礼儀を維持するための罰則規定である。本条の法定刑は、制定当時は科料とされていたが、明治四三年法律第五〇号により「十円以下ノ科料」とされたのである。現在、罰金等臨時措置法四条三号により、単に「科料」と読みかえられ、二条二項により科料は二〇円以上四千円未満ということになる。
本条は、鉄道略則七条に「吸煙並婦人部屋男子出入禁止ノ事 何人ニ限ラス『ステーション』構内吸煙ヲ禁セシ場所並ニ吸煙ヲ禁セシ車内ニテ吸煙スルづヲ許サス且婦人ノ為ニ設アル車及部屋等ニ男子妄リニ立入ルヲ許サス若右等ノ禁ヲ犯シ掛リノ者ノ戒メヲ用ヒサル者ハ車外並ニ鉄道構外ニ直一一退去セシムヘシ」とあり、鉄道犯罪罰例五条に「規則第七条ノ禁ヲ犯ス者ハ払タル賃金ヲ没シ十円以内ノ罰金ニ処ス」とあるのを引き継いだものである。
科料のみが定められているので、逮捕、勾留に制限があるほか 、執行猶予ができず、教唆犯、幇助犯は処罰できず 、刑の時効は一年であり、公訴時効も一年である等の点に留意する必要がある。
行為
「制止ヲ肯セス」とは制止に従わずにという意味であるが、これを要件としたのは、一号および二号の各行為は、旅客が当初気付かず、あるいは故意なくすることがありうるためであろう。制止されたのに、これに従わない場合であるから故意犯であり、制止に気付かない場合とか制止以前の行為は処罰しえない。
制止は、本条の趣旨からみて権限ある鉄道係員によるものでなければならず、私人が制止してもこれにあたらない
三 吸煙禁止の場所
「停車場其ノ他鉄道地内」の意義については、三七条注二参照。「吸煙禁止ノ場所」または「吸煙禁止ノ車内」とは、火薬類の積卸をする場所とか火薬類を積載した貨車内のように法令上定められている場所のほか、寝台使用中の寝台車内とか国電区間で旅客が混雑する車両等鉄道が合理的な基準により指定した場所も含む。なお、「きつ煙は御遠慮下さい」と表示した場所は、本条にいう吸煙禁止の場所とはいえない。また、き煙を御遠慮下さいというマイク放送も制止にはあたらない。

退去強制
本条の違反者は四二条一項二号により車外または鉄道地外に退去させることができ、その場合にはすでに支払った運賃は還付しない(同条2項)

注釈特別刑法第六巻 交通法・通信法編Ⅱp26
第三十四条
制止ヲ肯セスシテ左ノ所為ヲ為シタル者ハ十円以下ノ科料ニ処ス
一停車場其ノ他鉄道地内股煙禁止ノ場所及吸煙禁止ノ車内ニ於テ吸煙シタルトキ
二婦人ノ為ニ設ケタル待合室及車室等二男子妄ニ立入リタルトキ
一 本条は、火災を予防し、社会的礼儀を維持するための罰則規定である。
本条の法定刑は、法制定当時、単に「科料」とされていたが、明治四三年の改正で「十円以下ノ」が加えられて今日に至っている。
二 本条の行為は、制止をがえんじないで、
(1)鉄道地内で禁煙と指定された場所又は禁煙と指定された車両(車両の一部につき禁煙の指定がされている場合は当該一部)内で喫煙すること(2)婦人のために設けた待合室又は車室等に、男子がみだりに立ち入ること、である。
「制止」は、権限のある鉄道係員によるものと解され、私人によるものを含まない。本条の罪は、制止に従わず、あえてすることによって成立するから、故意犯である。過失による場合はもちろん、制止前の行為もまた処罰の対象とならない。
「停車場」は、「鉄道地内」の例示である。「鉄道地内」の意義については、三七条の注釈二参照。
三 本条の罪の法定刑は、「十円以下ノ科料」とされているが、罰金等臨時措置法四条三号により、単に「科料」と読みかえられる。科料の上限は四千円未満、下限は二十円である。

検察官控訴・検察官上告ではないのに~~村井敏邦「刑事法のなかの憲法(10)強制わいせつ罪の成立に、わいせつ目的を必要とするか」時の法令 第2043号


 被告人控訴、被告人上告でした。検察官は趣意書出してないだろ。
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=87256
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail3?id=86760

強制わいせつ罪の成立についての判例変更
昨年(二○一七年)一一月二九日、最高裁判所は、大法廷判決において、上記一九七○年判例を変更しました。「被告人は、被害者が一三歳未満の女子であることを知りながら、被害者に対し、被告人の陰茎を触らせ、口にくわえさせ、被害者の陰部を触るなどのわいせつな行為をした。」という事案です。
第一審判決は、自己の性欲を刺激興奮させ、満足させる意図はなく、金銭目的であったという被告人の弁解が排斥できず、被告人に性的意図があったと認定するには合理的な疑いが残るとしたのですが、強制わいせつ罪の成立には、性的意図があったことは必要がないとして、強制わいせつ罪の成立を認めました。
検察官の控訴を受けた高等裁判所は、第一審の事実認定を認めた上で、客観的に被害者の性的自由を侵害する行為がなされ、行為者がその旨認識していれば、強制わいせつ罪が成立し、行為者の性的意図の有無は同罪の成立に影響を及ぼすものではないとして、一九七○年判例を現時点において維持するのは相当でないと説示して、強制わいせつ罪の成立を認めた第一審判決を是認しました。
検察官は、一九七○年判例に違反すると主張して上告しました。この上告に対して最高裁判所が下したのが、判例変更によって検察官の上告を棄却するという判断でした

児童ポルノ単純所持の刑事処分と社会的制裁

バラツキがありますね

所属 刑事処分 懲戒 行政処分・影響
新聞社次長 罰金10万円 減給  
漫画家 罰金20万円 なし 連載中断
教諭 罰金20万円 懲戒免職 免許取消
県職員 罰金80万円 停職4月  
高校事務職員 罰金30万円 減給6月  
高知県警 巡査長 30万円 本部長訓戒 依願退職
和歌山県警 巡査長 30万円 本部長訓戒 依願退職
海上保安 30万円 停職2月  
検事 50万円 停職2月 依願退職
教員 20万円 停職6月 依願退職
塾講師 30万円 不明  
検察事務官 20万円 停職1月 依願退職
皇宮護衛官 不明 なし 依願退職
航空自衛隊 不明 停職5日 依願退職
警視庁 不明 無し 依願退職

「いわゆる弁当切り」の時系列

 弁護士ドットコムで、弁当切りが微妙な相談が出ていました。弁護士の回答もぶれています。(最後の検事出身の弁護士の回答は法律を間違っています。)
 大まかな手続きを並べてみると、大至急で手続きされると、4月末には確定させることができます。上訴で最短で4ヶ月半稼げる。

  2017/12/12 第1審判決言渡=懲役4月実刑
   ↓
  2018/4/27 最高裁に到達,即日棄却決定(確定)

 時間稼ぎしやすいのは1審ですのでそこから慎重に審理してもらうことが必要でしょう。

下村忠利弁護士「刑事弁護人のための隠語俗語実務用語辞典」
弁当
執行猶予のこと(刑法25条)。「弁当持ち」が猶予期間を満了させることを「弁当切る」.満了できずに取り消されてしまうことを「弁当食う」という。「先生,弁当切れるように弁護して下さい」「あかん,無理。もうあきらめて弁当食えよ」。
・・・
城祐一郎検事「捜査・公判のための実務用語・略語・隠語辞典」
弁当持ち(べんとうもち)(隠語)
執行猶予期間中の者のこと。その由来の詳細は不明だが.執行猶予判決が弁当に相当するものとして.それを持っていることから言われているものと思われる。

 法定の手続を並べて、必要な日数を予想すると、■■■■■■■の部分が決定・判決を書く期間で未知数ですが、一審判決後最速で5ヶ月で確定する可能性があるようです

最悪最速の時系列
2015/5/13 前刑判決=懲役1年6ヶ月・執行猶予3年
2015/5/27 前刑判決確定
2017/11/28 1審1回目
2017/12/12 第1審判決言渡=懲役4月実刑
2017/12/26 被告人,控訴申立て(法366条1項)
2017/12/27 控訴状が第1審裁判所に到達
2017/12/27 第1審裁判所から高裁に記録到達
被告人に控訴趣意書差出最終日を指定した通知書が送達(規則236条2項)
国選弁護人選任(第1回公判期日指定つき)
2018/2/20 控訴趣意書差出最終日(規則236条3項)に控訴趣意書提出
2018/2/21 控訴趣意書を検察官に送達
2018/2/28 検察官の答弁書差出期間(規則243条)
2018/3/8  控訴審第1回公判期日
最速2018/3/8 即日判決言渡し
■■■■■■■■■■■■■■■■

2018/3/22 被告人上告申立て
2018/3/23 上告状が高裁に到達
2018/3/24 高裁から最高裁に記録到達
2018/3/25 上告趣意書の差出最終日を指定した通知書を被告人に送達(規則252条1項)
2018/4/22 上告趣意書差出最終日に上告趣意書提出
■■■■■■■■■■■■■■■■
最速2018/4/22 上告棄却判決(法408条)又は上告棄却決定(法414条,386条1項3号)
2018/4/23 判決又は決定の被告人への送達
2018/4/26 決定に対して異議申立て(法428条3項,386条2項,385条2項,422条)
2018/4/27 最高裁に到達,即日棄却決定(確定)
2018/5/27 前刑執行猶予期間経過

裁判所も警戒しています。

原田國男「量刑判断の実際〔第3版〕(立花書房・平成11年)」
p44
(3) 執行猶予中の被告人に対して実刑とした場合,その執行猶予期間の満了が迫っているときには,被告人が控訴・上告を行って実刑の確定を遅らせると,前刑の執行猶予の取消しを免れることができる。改正刑法草案73条2項は,このような不都合を回避するために,期間経過後の執行猶予の取消しを認めている。現行刑法には,このような規定がないから,前記のような事態も避け得ない。
そこで,第一審としてもなるべく判決宣告を早める等の措置を取ることは可能である。控訴審の係属期間として約3か月,上告審の係属期間として約2か月が見込まれることを考えておく必要がある。(40)
また,被告人側がその目的で不合理な引き延ばしを図ることもあるので,それに乗じられるようなことがないようにしなければならなに。(41)
もっとも,事実を全面的に否認しているからといって,引き延ぱしのためだけと速断すべきではなく,事案として通常のケースと同様に処理すべきは当然である。
ただ,前記の点も頭の隅に入れておくのが賢明であろう。なお,前刑終了後5年の経過が近いときには,執行猶予の言渡しが法律上可能となるように,被告人が引き延ばしを図ることもある。同様の注意が必要であろう。
(40)この期間は,一応の見込みにすぎなし、から,これよりも長くなることも,逆に短くなることもある。ただ,執行猶予期間の満了が切迫している事件については,上訴審としてある程度処理を早めているのが実情であろう。執行猶予取消しまで、のフロセスとしては,上告棄却決定→異議申立て→同棄却決定(判決確定)→執行猶予取消請求→同取消決定→即時抗告→同棄却決定告知までが考えられる。この告知があれば,特別抗告に対する決定前でも,取消しの効果が発生する(最大決昭和40年9月8日刑集19巻6号636頁等)。
(41) 最決昭和36年5月9日刑集15巻5号771頁は,執行猶予を付し得ることとなる10月余りも先に判決言渡しを延期した期日変更決定を違法であるとしている。

https://www.bengo4.com/c_1009/c_19/c_1092/b_629319/
黒岩 英一 弁護士
長崎 長崎市
弁護士ランキング 長崎県1位
ベストアンサー ありがとう
控訴審の判決日が3月中になるとしても、そこから2週間で上告すると4月になり、上告趣意書の提出期限が通常は1ヶ月以上設けられますので、5月に入ることは間違いありません。

そこから上告審の審理も多少はありますので、ぎりぎりであることはその通りですが、5月を超える可能性は高いと思われます。

https://www.bengo4.com/c_1009/c_19/c_1092/b_613282/
川面 武 弁護士
東京 豊島区
弁護士ランキング 東京都7位
ベストアンサー ありがとう
> ①在宅起訴で、道路交通法違反の軽微な事案でしかも在宅で1年も引っ張られてる事は、判決に影響してきますか?罰金刑で抑えてくださいとこちらは訴えてます。②控訴をした場合、弁当切りできますかね?

①については,在宅事件は検察にとって急いで処理する誘因がないため,伸びただけで,さして判決に影響する事由ではないと思います。

②については,国選の上告事件を扱えるのは東京三会の弁護士だけですので,比較的ノウハウを持っている立場として回答すれば,適切な対応をとれば弁当切りはほぼ固いことを以下に示します。

まず,12日に実刑判決が出たら,控訴期限最終日(26日)の午後に,当該裁判所の事件受付に控訴状を提出します。そうすると原審の記録チェックだけで年を越すことになり,高裁に記録を送るのはどんなに早くても1月4日(通常は1月9日以降)と考えられます。
その後弁護士の選任意向通知が発送されますが,それを無視します。
裁判所が職権で国選弁護人を選任するのが,おそらくどんなに早くても月末くらいになるでしょう。要急事件として処理されるとしても,国選弁護人の控訴趣意書提出最終日まで2.3週間はかかるでしょうら,第1回公判は超特急でも2月末くらいでしょうか。国選弁護人とよく話し合って,この時期は確定申告で忙しいとか色々理由を付けてもらえば判決は3月中旬になるでしょう。
以下上告も同じです。上告期限最終日の午後高裁の事件受付に持参して上告状を出します。
超特急でも弁護人選任は4月になるでしょう。これを無視するのも高裁段階と同じです。
しかも今年は曜日の並びがいい。最高裁判所も質問者の事件など土日に処理はしませんから,最終日は11日です。上告趣意書の提出期限自体がこの日前後かもしれません。
余裕で逃げ切りです。
一つ忘れていました。国選弁護人の中には,弁護士としては有能であっても,弁当切りのことをよく理解しない人もいます。各々最終日に提出するよう強く要望しておく必要があります。
なお最高裁判決には,異議申し立てができこれで10日前後伸ばせます。いずれにせよ質問者の事例は,質問者と弁護人が適切な対応をすれば,弁当切りは余裕で可能な事案です。なお控訴状や上告状の提出を1日でも遅れると逆にアウトですので要注意です。

2017年12月12日 00時18分

https://www.bengo4.com/c_1009/c_19/c_1092/b_613282/
松本 篤志 弁護士
大阪 大阪市 北区
弁護士が同意2
ありがとう
> 控訴をした場合、弁当切りできますかね?
> 30年の5月13日が執行猶予が切れる日です。
一審判決宣告から約半年となると、なかなか楽観的なことは言えないのが実際だと思います。
高裁も最高裁も、本件のような事案については、あまり日をあけずに書面の提出期限を定めたり期日指定したりして、前刑の執行猶予期間中に上告棄却まで済ませてしまおうとする傾向にあります。
ただ、あなた側としては、希望する罰金刑にはならなくとも、できるだけ手続が先延ばしになる方が有利なのは勿論ですから、各弁護人と相談しながら上手に対応する必要があります。 2017年12月11日 21時44分
・・・・
松本 篤志 弁護士
大阪 大阪市 北区
弁護士が同意1
ありがとう
補足ですが、前刑の執行猶予期間満了が近い事案などの場合、控訴裁判所が国選弁護人を選任するにあたり、控訴趣意書の提出期限のみならず初回期日まで指定しており、期日調整を理由とした引き延ばしができないように対策が採られることがあります。

もちろんそれでもなお手を変えて時間稼ぎをすることは可能ですが、上記の例でも分かるように裁判所も黙って引き延ばしを許すことはありませんので、具体的な部分については、手続が進む都度に弁護人等とよく相談することが大切です。 2017年12月12日 00時48分

この回答は、間違っています。確定しないと執行猶予が取り消されることはありません。
 ↓

https://www.bengo4.com/c_1009/c_19/c_1092/b_629378/
小野寺雅之弁護士
質問者がありがとう
控訴が棄却され,上告も棄却されると,第一審判決が確定することになります。
つまり,ご相談の事案では昨年12月12日の判決が確定するということです。
たとえ控訴審判決あるいは上告審決定が執行猶予期間である今年の5月27日の後になされたとして,第一審判決が執行猶予期間中になされたという事実に変わりはありません。
そのため,控訴・上告をしたことによって,いわゆる弁当切れとなることはないはずであり,服役は免れないと思います。
・・・
https://p40.bengo4.com/a_40130/g_40132/l_801539/
検事として刑事事件を扱った17年間の実務経験と,法科大学院教授として刑事法の研究と法曹養成に携わった10年間の学識経験・教育経験とが相まって,より質の高い刑事弁護を提供できる弁護士です <<

追記 令和6(2024)年3月10日
 手持ち記録から上告棄却決定から、異議申立棄却決定までの日数を拾いました。

上告棄却決定 異議申立棄却
7月19日 8月7日 19
3月11日 3月28日 17
9月28日 10月13日 15
7月18日 8月31日 44
12月26日 1月15日 20

「就寝中だった女子生徒の上半身裸の映像をひそかに撮影、保存して児童ポルノを製造した」というひそかに製造罪の被疑事実

 パンツ脱がして撮影とかだと、ひそかに製造ではなく、姿態をとらせて製造罪ですよね。
 準強制わいせつ罪に発展する恐れ




http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/local/accident/news/20180222/2974510
児童ポルノ製造などの容疑で少年逮捕 県警
2月22日 12:44
 栃木署と県警少年課は22日、児童買春・児童ポルノ禁止法違反の疑いで、東京都江戸川区、調理師の少年(19)を逮捕した。
 逮捕容疑は県内在住の中学校女子生徒(14)が18歳未満であることを知りながら、1月24日、女子生徒の持つカメラ付きタブレット端末で自分の裸を撮影させ、少年に送信させたほか、2月5日にも就寝中だった女子生徒の上半身裸の映像をひそかに撮影、保存して児童ポルノを製造した疑い。容疑を認めているという

匿名起訴の6パターン(城祐一郎「殺傷犯捜査全書」)

 福井地裁の事件で、起訴状では匿名だったが、検察官請求証拠に実名が出ていたので、判決では実名が出て、判決書謄本で被害者名をマスクしようとした事件があったので、一応控訴しておいた。

名古屋高裁金沢支部平成27年7月23日
    判    決
 上記の者に対する強要,強要未遂,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件について,平成27年1月8日福井地方裁判所が言い渡した判決に対し,被告人から控訴の申立てがあったので,当裁判所は,検察官立石英生出席の上審理し,次のとおり判決する。
    主    文
 本件控訴を棄却する。
    理    由
 本件控訴の趣意は,弁護人奥村徹作成の平成27年4月6日付け控訴趣意書,同月10日付け控訴趣意書,同年5月19日付け控訴趣意補充書及び同月21日付け控訴趣意補充書のとおりであるから,これらを引用する。論旨は,第1回公判期日における弁護人の釈明内容を踏まえると,不法な公訴受理,審判の請求を受けない事件について判決をした違法,理由不備,訴訟手続の法令違反及び法令適用の誤りを主張するものである。
第1 控訴趣意中,不法な公訴受理(刑訴法378条2号違反)の主張について
 論旨は,要するに,検察官は,起訴状記載の公訴事実において,各被害児童について,それぞれその実名で特定できる証拠があるにもかかわらず,それをしないまま起訴し,変更後の訴因(以下「本件訴因」という。)においても,各被害児童を,その被害当時の居住場所,年齢並びにインターネットアプリケーション「LINE」(以下「LINE」という。)において使用する名前及びユーザーIDで特定した(以下「本件特定方法」という。)だけで,その氏名で特定しなかったところ,個人的法益に対する罪である強要罪並びに平成26年法律第79号による改正前の児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。)7条3項の児童ポルノ製造罪(以下「3項製造罪」という。)及び同法7条4項の児童ポルノ公然陳列罪にあっては,本件訴因は特定されているとはいえないから,刑訴法256条3項に違反しており,公訴棄却されるべきであるのに,公訴を棄却せずに実体判断をした原判決には,不法に公訴を受理した違法がある,というのである。
 そこで検討するに,公訴事実は,裁判所に対し審判請求の範囲を特定するとともに,被告人に対し防御の範囲を特定することを目的とするものであることから,特に個人的法益に対する罪については,犯罪の客体である人についても,それが具体的事実によって特定されている必要があり,一般的には,その実名を記載することが,その特定のための最も確実かつ簡明な方法である。
 しかしながら,人を特定するにあたって,訴因の特定が求められる目的にもとらない限り,必ずしもその氏名を表示しなくても,訴因不特定として違法となることにはならないと解されるところ,本件において,LINE上では,各個人には一つのユーザーIDが付され,他に同一のユーザーIDを使用する者が存在しないことから(原審甲12),各被害児童に係るユーザーIDを付すことで,各被害児童は,客観的に特定されていると認められ,本件特定方法により各被害児童を特定したとしても,審判請求の範囲を画することにおいて,特に支障は生じないというべきである。
 また,本件は,被告人が,LINEを通じてインターネット上で知り合った18歳未満の被害児童2名に対し,同児童らがいずれも18歳に満たないことを知りながら,それぞれ脅迫して,同児童らをしてその裸体等を撮影させ,その写真画像データ等を送信させるなどした上,その画像データ等をそれぞれインターネット上で公然と陳列するなどしたという事案であり(なお,以下では,原判示第1における被害児童を「被害児童A」,同第2における被害児童を「被害児童B」という。),被告人は,各被害児童の実名を知らないことがうかがわれることからすれば,本件訴因で特定された犯行の日時,場所,犯行方法による特定のほか,各被害児童がLINE上で使用していた名前や被害当時の居住場所を併せ考えることで,被告人において,自らのどの行為が犯罪に問われているのか識別することも十分可能であり,被告人自身も,捜査段階において,それらにより,被疑事実を識別した上で,本件各犯行を自白している(原審乙3ないし7)。また,被害当時の各被害児童の年齢が特定されていることから,各被害児童が児童ポルノ法2条1項に定める児童に該当することも明らかとなっている。そうすると,上記のような本件事案の内容,性質から,検察官が,起訴状の公訴事実に各被害児童の実名を特定して記載する証拠を収集していたとしても,その実名を起訴状に記載することにより,各被害児童の名誉等が侵害され,あるいは,被告人が各被害児童の実名を知ることで,再被害を受けることを考慮して,各被害児童につき,実名で特定せず,本件特定方法によって特定した上,公訴を提起したとしても,訴因の特定方法として十分合理性があり,本件訴因については,その特定に欠けるところはないというべきである。
 弁護人は,本件とは全く別の,被害者を,単に「被害者」としか記載せずに起訴された事例を挙げて,種々論難するが,いずれも本件訴因から離れた一般的,抽象的な主張に過ぎず,採用できない。
 以上によれば,本件公訴を棄却せずに実体判断をした原判決に,不法に公訴を受理した違法はなく,論旨は理由がない。
第2 控訴趣意中,審判の請求を受けない事件について判決をした違法の主張について
 論旨は,要するに,本件訴因では,各被害児童の実名を秘匿し,LINEのID等を用いた本件特定方法によって各被害児童が特定されていたのに,原判決は,訴因変更を経ることなく,その罪となるべき事実において,各被害児童をその実名で特定しているから,原判決には,刑訴法378条3号後段にいう審判の請求を受けない事件について判決をした違法がある,というのである。
 しかしながら,証拠によれば,本件訴因に記載された各被害児童と原判決の罪となるべき事実に実名で記載された各被害児童とがいずれも同一人物であることは明らかであって,原判決には,審判の請求を受けない事件について判決をした違法はなく,被告人に対し不当な不意打ちを与えたことにもならない。論旨は理由がない。
第3 控訴趣意中,理由不備の主張について
 論旨は,要するに,弁護人に対して交付された原判決書抄本では各被害児童の氏名がマスキングされており,他に特定事項がないので,被害児童は1名であると解するほかないのに,「争点に対する判断」の第2の3項において,被害児童が別人であると認定した原判決には,理由不備の違法がある,というのである。
 しかしながら,原判示第1の1ないし3における被害児童Aと,同第2の1ないし3における被害児童Bが別人であることは記録上明らかである(なお,原審裁判所が弁護人に対して交付した原判決書抄本においても,各被害児童の年齢(当時17歳と15歳)や所在地(福井県内と北海道内)からすれば,両者が別人であることは極めて容易に見て取れる。)から,論旨はその前提を欠いており,理由がない。
第4 控訴趣意中,訴訟手続の法令違反の主張について
 論旨は,要するに,原審裁判所は,弁護人からの原判決書謄本交付請求に対し,各被害児童名を秘匿した抄本を交付したが,刑訴法46条は,判決書謄本交付請求に対し裁判所の裁量で一部をマスキングした抄本を交付することを認めておらず,弁護人が交付を受けた原判決書抄本によっては,被害児童が何名いるのかも確認できず,控訴審における被告人の防御活動上支障を生じるから,原審裁判所の上記措置には,判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反がある,というのである。
 しかしながら,刑訴法379条にいう「訴訟手続」とは,原判決の直接の基礎となった審判手続をいうと解されるところ,弁護人の原審裁判所に対する刑訴法46条に基づく判決書謄本交付請求は,原判決の宣告が終了し,原判決書も作成された後にされたものであることは明らかであるから,同請求に対し判決書抄本を交付した原審裁判所の手続は,刑訴法379条の「訴訟手続」には当たらないというべきである。したがって,その余の点について検討するまでもなく,論旨は理由がない。

城祐一郎「殺傷犯捜査全書」p1070

起訴状における対応
一方,起訴状については,被告人の手元に直接に届くものであるだけに, これに被害者特定事項が記載されるとなれば,被害者の上記意図は全く無視されるということになろう。
(1)近時の取組
この点について, 「近年,性犯罪やストーカー規制法違反等の起訴状の公訴事実において,被害者の氏名を実名で記載せず,氏名とは別の表記によって被害者を特定する実務上の取扱いがなされるようになってきている。」(初澤由紀子「起訴状の公訴事実における被害者の氏名秘匿と訴因の特定について」慶應法学31号229頁) ことが広く知られるようになっている。
そして, その際の被害者氏名の記載に代わる被害者特定のための表記の方法としては,
①被害者の氏名をカタカナ表記にし,被害者の生年月日や年齢とともに記載する')。
②被害者が被害に遭った後婚姻するなどして姓が変わった場合において,被告人がこれを知らない場合,被害当時の被害者の旧姓を記載する2)。
③被害者のいずれかの親の氏名及び続柄,被害者の年齢を記載する3)。
④被害者が自宅で被害に遭った後,転居した場合,犯行場所を記載した上,「当時○○○(犯行場所)に単身居住していた女性(当時○歳)」などと記載する4)。
⑤被告人が被害者の勤務先や学校名を把握していて,被害者の通称名や姓又は名だけを知っている場合, 「○○○(勤務先や学校名)に勤務する(通学する) 『△△△』(通称名,姓又は名) と称する女性(当時○歳)」などと記載する5)。
⑥被告人が被害者の携帯電話のメールアドレスなど電子機器の唯一無二の識別番号を把握していた場合, 「携帯電話のメールアドレスが○○@△△だった女性(当時○歳)」などと記載する6)。
という方法が採られていることが知られている(前出・初澤244, 245頁)。
(2)考察
このような被害者の特定を秘匿する記載であっても,刑訴法256条3項が規定する
公訴事実は,訴因を明示してこれを記載しなければならない。訴因を明示するには,できる限り日時,場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならない。
との訴因の特定に対する要請に反するものではないと考えられる(もっとも,裁判所がそれでは訴因の特定として不十分であると判断した場合には,公訴棄却判決(同法338条4号)がなされることになる。)。
このような方法を採ることは可能であるにしても,最終的に, そのような記載方法で訴因の特定として十分であるかどうかを判断するのは裁判所であり,現在のところ,個々の裁判所がどのような判断をするかは必ずしも予見できるものではない。したがって,被害者に対し,事前にこのような記載での起訴状で裁判を行うことができると確約することはできないこととなる。
また,仮に, このような記載で裁判が行われたとしても,判決には実名が記載されてしまう例が多く, そのような場合には,判決謄本の交付の際に,当該実名をマスキングすることで対応するしかないという問題も残されている。
l)①の方式での公訴事実による起訴を認めて,判決が言い渡された裁判例としては,住居侵入,強姦致傷及び強制わいせつ等に関する平成26年7月2日横浜地裁判決(公刊物未登載),電車内におけるいわゆる迷惑防止条例違反事件に関する平成26年7月16日横浜地裁判決(公
刊物未登載),通行中の女性に対する強制わいせつ等事件に関する平成26年8月7日前橋地
裁判決(公刊物未登載),住居侵入, ストーカー規制法違反事件に関する平成25年5月7日前橋地裁太田支部判決(公刊物未登載)などがある。
2)②の方式での公訴事実による起訴を認めて,判決が言い渡された裁判例としては,住居侵入,強姦事件に関する平成25年6月6日東京地裁判決(公刊物未登載),通行中の女性に対する強制わいせつ事件に関する平成25年9月20日東京地裁判決(公刊物未登載),住居侵入,強盗強姦事件に関する平成26年2月21日横浜地裁判決(公刊物未登載)などがある。
3)③の方式での公訴事実による起訴を認めて,判決が言い渡された裁判例としては,公園内において行われた女児に対する強制わいせつ等事件に関する平成25年11月12日東京地裁判決(公刊物未登載),駅構内において行われた強制わいせつ事件に関する平成26年1月15日東
京地裁判決(公刊物未登載),電車内における強制わいせつ事件に関する平成25年12月3日東京地裁判決(公刊物未登載),同様の事件に関する平成25年11月28日横浜地裁判決(公刊物未登載)などがある。
4)④の方式での公訴事実による起訴を認めて,判決が言い渡された裁判例はない。逆に,被害者の実名を記載するよう起訴状の補正を検察官に求め,応じなければ公訴棄却判決をするとして,被害者の実名での補正をさせた上で実体判決を行った,住居侵入,強制わいせつ事件に関する平成25年12月26日東京地裁判決(公刊物未登載)がある。
5)⑤の方式での公訴事実による起訴を認めて,判決が言い渡された裁判例としては, ストーIo74第3篇殺傷犯捜査手続法カー規制法違反事件に関する平成25年7月12日東京地裁判決(公刊物未登載)などがある。
6)⑥の方式での公訴事実による起訴を認めて,判決が言い渡された裁判例としては,児童買春・児童ポルノ禁止法違反,脅迫等事件に関する平成26年6月16日水戸地裁土浦支部判決(公刊物未登載),離婚訴訟中の妻の交際相手に対する脅迫事件に関する平成26年9月30日水戸地裁下妻支部判決(公刊物未登載)等がある(以上,前出・初澤247~250頁参照。)。

「甲野に対し,「俺は若い男をいじめると興奮するんだ。」などと語気荒<申し向け,ライターの火を同人の顔に近付けて脅迫し,その反抗を著しく困難にして同人の陰茎を自己の肛門内に入れさせ, もって肛門性交した」という強制肛門性交罪の犯罪事実(警察官のための充実犯罪事実記載例第4版)

 こういう事件があったんだろうね。

警察官のための充実犯罪事実記載例第4版
【男性による男性に対する肛門性交事例(陰茎を挿入させる)】
被疑者は,強制的に甲野太郎(当時21歳) と性交等をしようと考え,平成○○年○月○日午後○時○分頃,東京都○○区○○7丁目○番○号所在の「ホテル○○」13号室において,上記甲野に対し,「俺は若い男をいじめると興奮するんだ。」などと語気荒<申し向け,ライターの火を同人の顔に近付けて脅迫し,その反抗を著しく困難にして同人の陰茎を自己の肛門内に入れさせ, もって肛門性交したものである。