児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

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教員による強制わいせつ罪(176条後段)につき、教育委員会に慰謝料200万円を認容(訴額は600万円)した事例(名古屋地裁H30.6.29)

 刑事事件は 名古屋地裁岡崎支部H28.12.20懲役1年08月執行猶予3年没収 300万円で示談です。強制わいせつ罪(176条後段)と製造罪が観念的競合になっています。
 損害が起訴されたわいせつ行為による慰謝料だとすると、教育委員会監督責任(教員とは不真正連帯債務)を認めたとしても、それを200万円と評価すると、支払い済みということで請求は棄却されます。
 教員に対して訴訟上の請求をしたとしても認容額は200万円だったことになり、それを300万円支払ったことになります。

https://mainichi.jp/articles/20180630/k00/00m/040/095000c
名古屋地裁わいせつ「前歴」教諭 教委の監督責任を認定
毎日新聞2018年6月29日 20時57分(最終更新 6月29日 23時50分)
 愛知県豊田市立小学校で担任教諭の男性にわいせつ行為をされた女児側が市に600万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、名古屋地裁岡崎支部は29日、200万円の賠償責任を認めた。長谷川恭弘裁判長は、男性が前任校で女子生徒の体を触るなどしており、市教育委員会は被害を予見できたのに監督責任を怠ったと判断した。
 一方、女児側と男性が示談し300万円が支払われているとして請求自体は棄却した。
 判決によると、女児は9歳だった2014年10月、校内で特別支援学級担任の男性に服を脱がせられ写真撮影された。男性は強制わいせつ罪などで懲役1年8月、執行猶予3年の判決が確定し、懲戒免職処分とされた。
 男性は前任の同市立中学校で12年、校内で2人きりとなった女子生徒の体を触るなどして学校の調査を受けたが処分されず、休職をした後、女児の小学校に復職した。
 判決は、前任校での男性の行為は性的な意味を持ち、その後に適切な監督も継続されておらず、市教委は男性が再び性的な行為に及ぶ恐れを予見できたと認定した。その上で、小学校校長に事情を説明して配置の検討や十分な監督を指導すべきだったと指摘した。

 また、前任校での行為は事実確定ができず対応できなかったとの市側主張を「生徒や児童の安全、教員の監督に関する意識の低さを示すもの」と批判した。男性は小学校で女児への行為前、別の児童を膝に乗せるなどしていたが、判決は校長の過失について「性的な行為まで予想できなかった」と否定した。

 判決を受け、女児の父親(44)は「一定の理解を示してくれたが損害賠償と示談は別。納得できず、(控訴に関しては)弁護士と相談する」と話した。

 豊田市教委は「教員によるわいせつ行為は大変重く受け止めており、おわびする。主張が認められなかった点があったとすれば残念。判決理由をよく見た上で対応を協議していく」とコメントした。市の担当者は「判決にかなり厳しい表現がある。不十分だったところは今後の対応に生かしたい」と述べた。

 判決書が届きました。
 損害はわいせつ行為によるもので、200万円と評価されていて、不真正連帯債務者の公務員(犯人)が300万円を支払っているので、全部弁済済ということで請求棄却になっています。
 刑事弁護的には、公務員が300万円で示談したというのは相場的にはいい線だったことが判決でも追認された感じになっています。
 さらに学校相手に別途600万円請求するには、特別な理論構成や損害立証が必要だったと思います。

岡崎支部h30.6.29
第1 請求
被告は,原告に対し, 600万円及びこれに対する平成年月日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,原告が,被告の設置及び管理する豊田市、学校(以下「本件小学校」という。)において,担任教諭である■■■(以下■■」という。)が原告に対して強制わいせつ行為(以下「本件わいせつ行為」という。)に及んだことについて,本件小学校の校長には担任教諭に対する適切な指導監督を怠った過失又は本件小学校に在籍する児童である原告への安全配慮義務違反があり,被告の教育委員会の教育長(以下「本件教育長」という。)には本件小学校の校長に対する指導監督等を怠った過失又は原告への安全配慮義務違反があるなどと主張して,被告に対し,選択的に,国家賠償法1条1項又は債務不履行安全配慮義務違反)に基づき,原告が被った精神的苦痛について慰謝料600万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成年月日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

裁判所の判断
3 争点(2) (原告の損害及びその額)について
(1) 本件においては,前記2(2)のとおり,本件教育長に,■:本件小学校に赴任する際に,校長である■■■■に対し,前件問題について具体的な事情を説明した上で,■が女子児童と二人きりになったりしないように配置を検討し,十分に監督するよう指導を行うべきであったにもかかわらず, これを怠った過失及び安全配慮義務違反があるから, この過失及び安全配慮義務違反と相当因果関係のある原告の損害及びその額について検討する。
(2) 原告の損害について
前記2(2)ウ鮒のとおり,本件教育長が,前記(1)の義務を果たしていれば,本件わいせつ行為を回避することができたから,本件わいせつ行為は,本件教育長の過失及び安全配慮義務違反と相当因果関係を有するものであり,本件わいせつ行為によって生じた損害は,上記の過失及び安全配慮義務違反と相当因果関係を有する損害である。原告は,前記1(3)力のとおり,本件わいせつ行為後,■■■■■■■■■■■■■■■■症状が生じて, これが残存するなどしており,生活にも支障を来し,本件わいせつ行為によって,多大な精神的苦痛を受けたことが認められる。
なお,原告は,本件わいせつ行為による精神的苦痛だけではなく,学校に対して不信感を抱きながら通学せざるを得ない精神的苦痛の損害を受けた旨主張する。
しかし,原告が学校に対して不信感を抱きながら通学せざるを得ない状況になったのは,本件わいせつ行為が発生したからにほかならないし,生活に支障を来したことの一側面なのであって,前記(1)の過失及び安全配慮義務違反によって,本件わいせつ行為によるものとは別のものとして,原告が学校に対して不信感を抱きながら通学せざるを得ない精神的苦痛を受けたと認めることはできない。
(3) 損害額について
前記(2)のとおり,原告は,前記(1)の過失及び安全配慮義務違反によって,本件わいせつ行為による多大な精神的苦痛を受けたと認められるから,その損害の額について検討する。
原告は,前記1(3)力のとおり,本件わいせつ行為後,■■■■■■■■■■■■■■■■状が生じて, これが残存するなどし,生活にも支障を来しており,原告の受けた精神的苦痛は非常に大きい。
また,本件わいせつ行為については,原告に対して直接教育をし,安全を守るべき立場にあった■垳ったこと, 当時9歳と年少であり,かつ特別支援学級の児童で,十分な判断能力のない原告に対する行為であることからすれば,悪質なものである。
もっとも,本件わいせつ行為は,暴行及び脅迫がないことや直接的な身体接触を伴うわいせつ行為ではないことなどからすれば, これらを伴う場合と比較して悪質性の程度は大きいものではないといわざるを得ない。
そうすると,本件わいせつ行為の悪質性の程度からすれば,原告に生じた苦痛の程度を最大限考慮しても,本件わいせつ行為による精神的苦痛に対する慰謝料の額は200万円であると認めるのが相当である。
(4) したがって,原告には,前記(1)の本件教育長の過失及び安全配慮義務違反
によって, 200万円の損害が生じたと認められ,被告は,原告に対し, 200万円の損害賠償義務を負う。
4争点(3) (本件示談による弁済)について
(1) 前記1(3)ウ及びエのとおり,本件わいせつ行為を含む本件公訴事実については,本件示談が成立しており, 300万円が支払われている。
前記3のとおり,本件教育長の前記3(1)の過失及び安全配慮義務違反は,本件わいせつ行為による精神的苦痛と相当因果関係を有するものとして損害賠償債務を負うものであるから,被告の原告に対する上記過失についての国家賠償法1条1項に基づく損害賠償債務及び上記安全配慮義務違反についての債務不履行に基づく損害賠償債務(200万円)は,B原告に対する本件わいせつ行為による不法行為に基づく損害賠償債務と同一の損害に向けられた債務であり,不真正連帯債務の関係に立つものである(なお,■行為それ自体についても,公権力の行使に当る公務員が,その職務を行うについて,故意によって違法に他人に損害を加えたときに該当し,被告は,原告に対し, 同条同項に基づく損害賠償義務を負うものである。)。そうすると,■が本件示談によって■原告に対する上記債務を弁済した場合には,被告の原告に対する上記各債務は,弁済の絶対的効力によって消滅することになる。
(2) 原告は,本件示談が原告及び原告の家族全員(合計■名) との間で行われたものであり,原告の本件わいせつ行為による損害については本件示談金(300万円)の約■分のの■万円しか弁済されていない旨主張する。
しかし,本件示談は,B刑事事件に関連して行われたものであり,刑事事件の被害者は原告であることからすると,主として原告の本件わいせつ行為によって生じた損害について賠償する趣旨のものであると認められる。
そして,本件示談は,文言上,原告及び原告の家族と■との間での示談となっているが,そもそも家族として誰を指定しているかも不明である。そうすると,仮に近親者の慰謝料が認められる可能性があるとしても, その額が合計100万円を超えるものとは認められない。また,本件示談は,原告及びその家族が提示した300万円の慰謝料を,■:そのまま受け入れて成立したものであるから, その支払によって,原告及びその家族が被った精神的苦痛は,いずれも慰謝されたものと認められる。
(3) そうすると, ■の原告に対する前記(1)の債務は,前記(1)の本件示談に基づ<300万円の支払によって,すでに弁済がされ,消滅したと認められる。そのため,被告の原告に対する前記3(4)の各債務(200万円)も,不真正連帯債務における弁済の絶対的効力によって,消滅する。したがって,被告の原告に対する前記3(4)の各債務は,いずれも■前記(1)の弁済によって,消滅したと認められる。
第4結論
以上によれば,被告は,原告に対して200万円の損害賠償義務を負うが,■弁済によって消滅したから,原告の国家賠償法条項に基づく請求及び債務不履行安全配慮義務違反)に基づく請求((選択的併合)はいずれも理由がなく, これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。