児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

インターネットは「公共の場所」か

 http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20050917#1126946129でも検討しました。
 この弁護士はこういう見解なんだけど、

著者:弁護士 寺林智栄(琥珀法律事務所。2007年弁護士登録。法テラスのスタッフ弁護士を経て、2013年4月より、琥珀法律事務所にて執務。)
http://lmedia.jp/2014/07/25/54894/
ネットオークションは、迷惑防止条例における「公衆に対する発売場所」として「公共の場所」に該当しうると考えられています。そのため、不当な高額でチケットが売買される場合には、ダフ屋とみなされて処罰の対象となることがあります。

 ダフ屋行為の構成要件に「高額転売」という要件はありません。

 さらに、ネットオークションがダフ屋行為で検挙される場合の罰条は東京都でいえば、2条1項の「不特定の者に転売・・・するため乗車券等を、道路、公園、広場、駅、空港、ふ頭、興行場その他の公共の場所(乗車券等を公衆に発売する場所を含む。以下「公共の場所」という。)又は汽車、電車、乗合自動車、船舶、航空機その他の公共の乗物(以下「公共の乗物」という。)において、買」う行為であって、ネットオークションは「不特定の者に転売・・・する」に該当するから摘示されているだけで、ネットオークションが「道路、公園、広場、駅、空港、ふ頭、興行場その他の公共の場所(乗車券等を公衆に発売する場所を含む。以下「公共の場所」という。)」とされているわけではありません。「ネットは東京都か」という問題も生じます。

 弁護士さんが例としてあげる事案も、コンビニの端末という「公共の場所」での購入行為で検挙されています。

 チケット転売の男 ダフ屋容疑で逮捕 5千万円売り上げか
2014.01.23 中日新聞
 宝塚歌劇団や人気グループ「いきものがかり」の公演のチケットを転売目的で購入していたとして、警視庁生活安全特別捜査隊は二十三日、東京都迷惑防止条例違反(常習ダフ屋行為)の疑いで、容疑者を逮捕したと発表した。
 逮捕容疑では昨年七〜九月、転売目的で、都内のコンビニエンスストアの店頭情報端末で、宝塚歌劇団のミュージカル「愛と革命の詩−アンドレア・シェニエ−」やいきものがかり日本武道館公演、NHK杯国際フィギュアスケート競技大会のチケット計八枚を四万八千円で購入したとされる。
 同隊によると、容疑者は、チケット事前予約サービスの会員になって購入。定価の二倍で転売していた。

東京都条例第一〇三号
公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例を公布する。
公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例
(目的)
第一条 この条例は、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等を防止し、もつて都民生活の平穏を保持することを目的とする。
(乗車券等の不当な売買行為(ダフヤ行為)の禁止)
第二条 何人も、乗車券、急行券、指定券、寝台券その他運送機関を利用し得る権利を証する物又は入場券、観覧券その他公共の娯楽施設を利用し得る権利を証する物(以下「乗車券等」という。)を不特定の者に転売し、又は不特定の者に転売する目的を有する者に交付するため、乗車券等を、道路、公園、広場、駅、空港、ふ頭、興行場その他の公共の場所(乗車券等を公衆に発売する場所を含む。以下「公共の場所」という。)又は汽車、電車、乗合自動車、船舶、航空機その他の公共の乗物(以下「公共の乗物」という。)において、買い、又はうろつき、人につきまとい、人に呼び掛け、ビラその他の文書図画を配り、若しくは公衆の列に加わつて買おうとしてはならない。
2 何人も、転売する目的で得た乗車券等を、公共の場所又は公共の乗物において、不特定の者に、売り、又はうろつき、人につきまとい、人に呼び掛け、ビラその他の文書図画を配り、若しくは乗車券等を展示して売ろうとしてはならない。

ネットは「公共の場所」でない? 無料入館券販売「ダフ屋」適用見送り/警視庁
2005.09.17 読売新聞
 ◆愛知万博で人気「サツキとメイの家」無料入館券 ネットで4万円販売
 愛知万博の人気施設「サツキとメイの家」=写真=の入館予約券(無料)を大量に申し込んで入手したとみられる人物が、インターネットのオークションで1枚数千円〜4万円以上で販売していた問題で、警視庁は、この行為について、ダフ屋行為を禁じた東京都迷惑防止条例の適用はできないと結論づけていたことがわかった。インターネットは「条例が適用される『公共の場所』に当たらない」などと判断した。インターネットの“悪用”が社会問題化する中、専門家からも法の整備を求める声が上がっている。
 「サツキとメイの家」は、人気アニメ映画「となりのトトロ」(宮崎駿監督)の主人公が暮らす一軒家を、実物大で再現した展示施設。事前に予約した人しか入館できず、開幕当初、入館者は一日800人(後に880人)に限定されていた。
 入館希望者は希望日の前月の1日に、専用電話かコンビニエンスストアの情報端末で予約することになっていたが、4月1日に予約が殺到。2万枚以上の予約券は1時間余りですべてなくなった。
 その後、インターネットのオークションサイトに予約券が出品され、高い時で4万円以上の値段で売買されていることが明らかになった。
 このため、警視庁などには「ダフ屋行為ではないか」といった“通報”が相次ぎ、同庁生活安全特捜隊が、同条例に抵触するかどうか検討してきた。
 同条例では、〈1〉「不特定の人に転売する目的でチケットなどを購入する」行為〈2〉「チケットなどを公共の場所で売る」行為−−のどちらかが適用できれば、ダフ屋行為を摘発できる。
 しかし、〈1〉予約券は無料だから「購入」ではない〈2〉インターネット上は「公共の場所」には当たらない−−として、条例は適用できないとの見解に至った。
 同隊ではさらに、コンビニ経営者から予約券をだまし取った詐欺罪や、物価統制令なども模索したが、いずれも適用できないと判断、最終的に立件を見送ることにした。警視庁以外の警察でも、同様の結論に至った模様だ。
 警視庁などでは、無料の予約券を高額で売ることを目的とした計画的な“犯行”とみているが、人物の特定には至っていない。
 一方、ネットオークションを舞台にしたダフ屋行為は、これまでも多くの摘発例がある。警視庁でも2002年1月、宮崎監督が館主を務める「三鷹の森ジブリ美術館」のチケットを大量に購入し、ネットオークションで転売していた女を同条例違反で逮捕している。しかし、いずれもチケットが有料だったため、同条例が適用される「転売目的で『購入』した」行為をとらえたものだった。
 「サツキとメイの家」の予約券問題を巡っては、日本国際博覧会協会が6月分以降の予約について、万博の前売り入場券(有料)を購入してから、入場券に記載された番号をはがきに記入して応募する方法に変更している。
 ◆判断、個別に/改正検討を
 インターネットに詳しい一橋大学の松本恒雄教授(消費者法)の話「従来の公共空間に適用する法律が、インターネット上でもそのまま適用できるかどうかは、個別に検討しなければならない。しかし、現実の世界でもよくない行為は、ネット上でもよくないとして規制されるべきだ。現段階では、オークションの事業者側で、悪質な商品は出品しないように呼びかけ、出品されたら削除するといった対応しかないだろう」

 岡村久道弁護士の話「新たなネット上の問題が発生すれば、それに合わせて条例改正も検討されるべきだろう。だからといってネット上でのチケットの取引自体を規制する合理性はない。そもそも今回の問題は、一部の人に大量の予約券が集中し、投機の対象になったことにある。主催者側はネット時代にこのような取引が行われることも考えて、配布システムに注意を払うべきだったのではないか」

 〈東京都迷惑防止条例

 戦後の愚連(ぐれん)隊による暴力や押し売りから市民を守る目的で1962年に制定。施行後も、スカウト行為や強引な勧誘の禁止が盛り込まれるなど、社会情勢の変遷に伴って改正されてきた。ダフ屋行為についても禁じているが、チケットなどがインターネットで転売されることは想定されていない。