児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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「原告の身体を後方から羽交い締めにし,無理やりに原告の胸を10秒ほど揉んだ。・原告の手を取り,被告のパンツの中に入れようとして拒絶され,原告の手を被告の股間に力ずくで押しつけようとした。また,被告は,原告に対し,自慰行為を手伝ってほしい等と述べ,アダルトビデオを一緒に見ることを求めた・被告は,原告がいる居室内で,ズボンとパンツを脱ぎ,自慰行為を始めた。・原告の宿泊する居室に立入り,原告に対して即時に退去するように強制した。更に,被告は,突然の退去の強要に動揺していた原告に対し,「殺すぞ。」等と述べて脅迫し

 被害者の方は被害者側の代理人をメモして下さいね。
 刑事事件は告訴取り下げ。

損害賠償請求事件
東京地方裁判所
平成25年4月11日民事第13部判決
原告 a
同訴訟代理人弁護士 鈴木芳乃
被告 b
       主   文
1 被告は,原告に対し,124万8178円及びこれに対する平成23年7月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを3分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。


       事実及び理由

第1 請求
 被告は,原告に対し,183万1146円及びこれに対する平成23年7月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 原告の主張(請求原因)
(1)被告は,平成23年7月当時,その最後の住所地において,「旅人の宿」の屋号で民宿(以下「本件宿」という。)を経営していた者である。
(2)原告は,平成23年7月8日,オートバイ(以下「原告車両」という。)で旅行をするために,単身で北海道へ行き,同月11日,αを走行していた。
 被告は,原告に対し,原告車両の整備不良等を指摘し,原告車両の修理を兼ねて本件宿への宿泊を強く勧めた。原告は,これに応じた。
(3)原告は,平成23年7月11日から同月17日まで,雨天のために旅行を継続することが困難であったことから,本件宿への宿泊を余儀なくされ,その間,被告から次の不法行為による被害を受けた。
ア 被告は,平成23年7月14日午後5時ころ,本件宿において,原告の身体を後方から羽交い締めにし,無理やりに原告の胸を10秒ほど揉んだ。
イ 被告は,同月16日午前7時ころ,原告の手を取り,被告のパンツの中に入れようとして拒絶され,原告の手を被告の股間に力ずくで押しつけようとした。また,被告は,原告に対し,自慰行為を手伝ってほしい等と述べ,アダルトビデオを一緒に見ることを求めた。
 さらに,被告は,原告がいる居室内で,ズボンとパンツを脱ぎ,自慰行為を始めた。
ウ 被告は,同月17日午前3時半ころ,原告の宿泊する居室に立入り,原告に対して即時に退去するように強制した。更に,被告は,突然の退去の強要に動揺していた原告に対し,「殺すぞ。」等と述べて脅迫した。
エ 原告は,同日朝,本件宿を退去した。ところが,被告は,原告に対して電話をかけ,原告車両の修理に不備があること等を強調し,原告に強い不安を与え,本件宿に戻るように述べた。そのため,原告は,同日午前8時30分ころ,やむを得ず本件宿に戻った。
 被告は,同日,原告の承諾を得ることなく原告車両を修理するように装い,午後2時ころまでにはこれを故障させた。
 被告は,原告に対し,原告車両のラジエーターを固定するネジがないと述べ,ネジを入手するまで,本件宿にもう1日宿泊するように述べた。
 被告の上記一連の行為は,原告が本件宿から退去する手段を奪うものであり,監禁行為に該当するものである。
(4)原告は,平成23年7月17日,警察及びJAFに通報して本件宿から脱出し,同日,帰京した。
(5)原告は,被告の不法行為によって,別紙のとおりの被害を被ったが,若干の補充をする。
ア 原告は,帰京後,不眠等の症状に悩まされ,平成23年7月19日,東京女子医科大学病院を受診し,同月22日,担当医師により急性ストレス障害との診断を受けた。原告は,その後,同年10月7日まで同病院に通院し,治療を受けた。通院に要した費用は次のとおりである。
通院治療費       合計1万2180円
通院交通費(駐車場代)   合計1700円
文書料             3150円
イ 原告が北海道から帰京するために要した費用
              9万6770円
ウ 原告は,被告について,旭川東警察署に対して告訴状を提出した。その結果,被告は,平成23年9月15日,同警察署の警察官に逮捕され,その後,勾留された。
 原告は,旭川東警察署及び旭川地方検察庁での事情聴取に応じ,その際,交通費等を支出した。
            合計3万7230円
エ 原告は,海外で行われる学会への出席を予定していたが,上記アの症状等により出席することができず,予約していた航空券をキャンセルした。
キャンセル費用       4万6020円
オ 原告車両の修理費用   6万7628円
カ 慰謝料       200万円
キ 小計        226万4678円
ク 原告は,被告が逮捕,勾留された後,その代理人弁護士を通じて示談金を受領した。ただし,原告はこれによって被告を宥恕するものではない。
示談金          60万円
ケ 原告は,本件に関して代理人弁護士を依頼しているところ,上記キの226万4678円から既に受領した上記60万円を控除した166万4678円の1割である16万6468円は,被告の不法行為と相当因果関係のある損害である。
弁護士費用        16万6468円
(6)よって,原告は,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償として183万1146円及びこれに対する不法行為以後の日である平成23年7月17日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
2 被告は公示送達による呼出しを受けたが,本件口頭弁論期日に出頭しない。
第3 当裁判所の判断
1 被告の原告に対する不法行為について
(1)証拠(甲2から4まで,6,24,原告本人)によれば,原告の主張(請求原因)(1)から(4)までの事実を認めることができる。
(2)また,証拠(甲3,4,24,25,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告の北海道旅行の計画や原告が本件宿に宿泊していた際の状況について,次のとおり認められる。
ア 原告は,昭和61年○月○○日生の女性であり,平成23年7月当時は,高校生を対象とする受験指導の講師のアルバイトをしていた。原告は,オートバイで旅行をする趣味を有し,平成22年には,単身で,1か月ほど,北海道内をキャンプしながら旅行をした経験を有している。
イ 原告は,平成23年7月8日から約2週間をかけて,苫小牧からβまで,原告車両で,北海道を縦断する旅行を計画していた。
ウ 原告は,同月11日,αにおいて,被告に勧められるまま本件宿に宿泊することとした。
エ 原告が宿泊した平成23年7月11日から同月17日まで,本件宿の宿泊客は,男性が3名ほどであり,女性は,原告のほかには同月16日,17日に1名いたのみであった。
 原告は,宿泊期間中,他の宿泊客や被告と共に,オートバイの整備工場や温泉に行って過ごすことがあり,同月16日には,旭川市内の居酒屋で飲食をした。
オ 被告は,本件宿の居間のテレビでアダルトビデオやホラービデオを上映しており,原告を含めた宿泊客に対して半ば強制的に視聴させていた。
 被告や,他の宿泊客は,原告に対し,背後から大声を上げるなどして驚かせることがあった。
カ 被告は,原告の承諾を得ることなく,原告が宿泊する居室に立ち入ったり,蒲団に入ったりすることがあった。
キ 被告は,原告車両を整備ないし修理するとして,タイヤの交換をしたり,オイル交換をしたり,テスト走行をしたりしたほか,修理を完了せず,原告の承諾を得ることなく,部品の交換等を行った。
(3)被告が,原告に対し,暴力を用いて無理やりに胸を触ったり,原告の手を被告の股間に触らせようとしたり,自慰行為を見せつけたりした行為(原告の主張(3)ア,イ)が不法行為に当たることは明らかである。
 また,被告は,平成23年7月17日午前3時ころに心霊写真を持ち出し,これを嫌がって他の女性客と共に居室に戻った原告に対し,いったんは直ちに退去するように強制し,その退去後,原告車両の整備不良などを述べて本件宿に呼び戻すなど強要行為をし,更に原告車両を損傷させた(原告の主張(3)ウ,エ)が,このように宿泊客を深夜に退去させようとしたり,呼び戻そうとしたりと強要することは社会的に許されるものとはいえず,また,原告車両を故意に損傷させることも当然に不法行為に当たる。
 したがって,被告は,原告に対し,これらの不法行為に起因する損害の賠償の義務を負う。
(4)なお,被告は,原告が旭川東警察署に告訴したことによって,平成23年9月15日,強制わいせつ(原告の主張(3)ア)の被疑事実により逮捕され,引き続き勾留された。被告は,同年10月5日までに原告に対して示談金60万円を支払い,これを受けて原告は上記告訴を取り下げた(甲1)。
2 原告の損害について
(1)通院治療費,交通費,文書料について
 証拠(甲9の1から4まで,甲10から12まで,24,25,原告本人)によれば,原告の主張(5)アの事実が認められ,これらの費用は被告の不法行為による損害ということができる。
(2)原告が北海道から帰京するために要した費用について
 証拠(甲13,26,原告本人)によれば,原告は,当初,苫小牧港から大洗港まで,原告車両と共にフェリーで帰京する予定であったところ,被告の不法行為による被害を受けたために航空機の利用のほか,別途原告車両の運送費用として9万6770円を要したことが認められる。フェリーの利用による運賃が約3万円であるから(原告本人),実際に要した金額からこれを控除した6万6770円が被告の不法行為による原告の損害といえる。
(3)原告が旭川東警察署及び旭川地方検察庁に出頭した際の費用
 証拠(甲14から20まで(枝番のあるものは枝番を含む。),24)及び弁論の全趣旨によれば,原告の主張(5)ウの事実が認められ,これらの費用は被告の不法行為による損害ということができる。
(4)航空券のキャンセル費用について
 証拠(甲22,原告本人)によれば,原告が,平成23年7月29日、地質学の研究学会が台湾で開催され,これに出席する婚約者を補助するため,原告も付き添う予定であったこと,原告は,急性ストレス障害を発症したこともあって,結果的にこの学会に出席できなくなったために航空券のキャンセル費用として4万6020円を支払ったことが認められる。原告の病症が被告の不法行為に起因するものであること,原告の渡航予定が不法行為の時期に近接していること等の事情を考慮すれば,この航空券のキャンセル費用は,被告の不法行為に基づく損害ということができる。
(5)原告車両の修理費用
 証拠(甲23,24)及び弁論の全趣旨によれば,原告の主張(5)オが認められるところ,この費用は被告の不法行為による損害である。 
(6)慰謝料について
 上記(1)のほか証拠(甲24,原告本人)によれば,原告が,被告の不法行為によって,急性ストレス障害を発症するほどの精神的苦痛を受けたことが認められる。
 被告の原告に対する不法行為の態様に加え,上記1(2)に認定した各事実,本件宿での状況,帰京後に通院を余儀なくされたこと,その他本件に顕れた一切の事情を考慮すれば,被告が原告に対して支払うべき慰謝料の額は150万円が相当というべきである。
(7)小計及び示談金
 上記(1)から(6)のとおり,原告が被告の不法行為によって受けた損害は,173万4678円ということになる。
 原告は,上記1(4)のとおり,平成23年10月5日までに被告から示談金60万円を受領した。
(8)弁護士費用について
 原告は,本件に関して訴訟代理人弁護士を依頼しているところ,その弁護士費用のうち11万3500円について,被告の不法行為と相当因果関係のある損害と認める。
3 結論
 以上のとおり,原告の被告に対する請求は,124万8178円及びこれに対する不法行為以後の日である平成23年7月17日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金を求める範囲で理由があるから,その範囲でこれを認容し,その余は理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担について民事訴訟法61条,64条本文を,仮執行の宣言について同法259条1項を,各適用して,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第13部
裁判官 栗田正紀