児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

7条3項の製造罪の解説

 加除式の書籍用に起案して、校正する前の原稿です。本全体の趣旨からしてバランスを欠くので、大幅に切り詰めることになりそうなんですが、せっかく書いたので紹介しておきます。

2 7条3項の製造罪
 性犯罪や福祉犯の機会に、提供目的なく児童の裸体が撮影されると、それ自体性的虐待である上、後日流通する危険が生じることから、「姿態をとらせ」製造する行為が処罰されています。
 提供目的がある場合には、2項・5項の製造罪が成立しますので、3項は適用されません(仙台高判H20.2.28)。
 「児童に第2 条第3 項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより」 との手段の限定がありますので、複製は除外されますが、判例では自ら児童に姿態をとらせて撮影した者が複製した場合には、複製行為を含めて、3項の製造罪が成立するとされています(最決H18.2.20判時 1923号157頁)。
「姿態をとらせ」が3項の製造罪の実行行為か否かについては、実行行為であるという判例(札幌高判H19.9.4高検速報 172号)と「『姿態をとらせること』は製造とは別の行為であって、児童ポルノ法7条3項の児童ポルノ製造罪の実行行為には当たらず,製造の手段たる行為に過ぎないと解され,同罪は,児童に姿態をとらせた者がこれを利用して児童ポルノを製造することを処罰する,身分犯的な犯罪であると理解すべきところでもある。」という判例(大阪高裁H23.12.21)があります。
 「姿態をとらせ」 とは、行為者の言動等により、当該児童が当該姿態をとるに至ったことをいい、強制によることは要しません。犯人と児童との性交の機会に犯人自身がその様子を撮影した場合には単に児童と性交しただけで「姿態をとらせ」たことになるという判例があります(札幌高判H19.3.8)。
 また、メールで児童に撮影・送信を依頼した場合(いわゆるsexting)について、児童には製造罪は成立せず、依頼した側だけが3項の製造罪で処罰されるという判例があります(大阪高判H21.12.3、東京高裁H22.8.2)。児童を脅迫して撮影・送信させた場合には、3項の製造罪に加えて強要罪が成立し観念的競合となるとした判例(大阪高判H22.6.18)、強制わいせつ罪が成立し併合罪となるとした裁判例(大分地判H23.5.11)があります。
 法定刑は3年以下の懲役又は300万円以下の罰金です。
 なお、児童と真剣に交際している場合には違法性阻却される場合もあり。「児童との真摯な交際が社会的に相当とされる場合に、その交際をしている者が児童の承諾のもとで性交しあるいはその裸体の写真を撮影するなど、児童の承諾があり、かつ、この承諾が社会的にみて相当であると認められる場合には、違法性が阻却され、犯罪が成立しない場合もありうると解される」という判例もあります(前掲札幌高判H19.3.8)。
 本罪は、性犯罪・福祉犯の機会に行われることが多いので、罪数処理が問題になることがあります。現在の判例

児童福祉法違反(淫行させる行為)とは併合罪(最決H21.10.21刑集 63巻8号1070頁)
兵庫県少年愛護条例(わいせつ行為)とは観念的競合(大阪高判H23.12.21)
児童買春罪と観念的競合(前掲札幌高判H19.9.4)
強制わいせつ罪とは観念的競合(大阪高判H23.12.21、仙台高判h21.3.3、名古屋高判H22.3.4、高松高判H22.9.7、広島高判H23.5.26)

という状況です。