児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

被告人の氏名は被害者特定事項には当たらない(福岡高裁H23)

 児童福祉法違反については、被害者推知報道を禁止する規定はありません。

条解刑事訴訟法
3) 被害者特定事項
例示されている氏名,住所のほかに,具体的な事実関係にもよるが,例えば,被害者の勤務先や通学先,配偶者や父母の氏名等の情報等が考えられよう。
4) 決定 被害者特定事項を明らかにしない旨の決定は,420条1項の「訴訟手続に関し判決前にした決定」 にあたり,これに対して不服を申し立てることはできない。被害者等から申出がなされた場合において,裁判所が被害者特定事項を明らかにしない旨の決定をすることが適当でないと認めるときは,特段の決定をする必要はない〈訴訟関係人および申出をした被害者等への通知は必要である.規196の5①②)。この場合,不服を申し立てる対象が存在しないので,検察官や申出をした被害者等は不服を申し立てることができない。
5) 申出 被害者等からの申出は,事件が起訴された後,当該被告事件が終結するまでの聞は,いつでも行なうことができる。もっとも,秘匿の実効性を考えると,第一回公判期目前に行なわれることが多いものと考えられる。
6) 呼称 被害者の氏名等に代えて,仮名を用いることなどが考えられる。

刑訴法
第290条の2〔被害者等特定事項の非公開〕
裁判所は、次に掲げる事件を取り扱う場合において、当該事件の被害者等(被害者又は被害者が死亡した場合若しくはその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹をいう。以下同じ。)若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、被害者特定事項(氏名及び住所その他の当該事件の被害者を特定させることとなる事項をいう。以下同じ。)を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができる。
一 刑法第百七十六条から第百七十八条の二まで若しくは第百八十一条の罪、同法第二百二十五条若しくは第二百二十六条の二第三項の罪(わいせつ又は結婚の目的に係る部分に限る。以下この号において同じ。)、同法第二百二十七条第一項(第二百二十五条又は第二百二十六条の二第三項の罪を犯した者を幇助する目的に係る部分に限る。)若しくは第三項(わいせつの目的に係る部分に限る。)若しくは第二百四十一条の罪又はこれらの罪の未遂罪に係る事件
二 児童福祉法第六十条第一項の罪若しくは同法第三十四条第一項第九号に係る同法第六十条第二項の罪又は児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律第四条から第八条までの罪に係る事件
三 前二号に掲げる事件のほか、犯行の態様、被害の状況その他の事情により、被害者特定事項が公開の法廷で明らかにされることにより被害者等の名誉又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれがあると認められる事件
②前項の申出は、あらかじめ、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。
③裁判所は、第一項に定めるもののほか、犯行の態様、被害の状況その他の事情により、被害者特定事項が公開の法廷で明らかにされることにより被害者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認められる事件を取り扱う場合において、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができる。
④裁判所は、第一項又は前項の決定をした事件について、被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしないことが相当でないと認めるに至つたとき、第三百十二条の規定により罰条が撤回若しくは変更されたため第一項第一号若しくは第二号に掲げる事件に該当しなくなつたとき又は同項第三号に掲げる事件若しくは前項に規定する事件に該当しないと認めるに至つたときは、決定で、第一項又は前項の決定を取り消さなければならない。

教え子わいせつ 二審は実名審理 福岡高裁で結審 
2011.12.09 西日本新聞
 教え子の女子生徒2人にわいせつな行為をしたとして、児童福祉法違反(淫行)の罪に問われ、一審佐賀地裁で懲役6年(求刑懲役8年)を言い渡された佐賀県立高校の男性教諭(57)=休職中=の控訴審初公判が9日、福岡高裁であり、即日結審した。一審は、被害者が特定されないように被告の氏名や住所を伏せて異例の審理を行ったが、陶山博生裁判長は実名で審理した。
 一審では検察側から被害者保護を目的に刑事訴訟法に基づく申し立てがあり、地裁は「被害者が特定されてしまう事項を明らかにしない」として、被告の身元だけでなく、犯行年、学校名なども伏せた。
 被告は勤務していた学校で2人が18歳未満と知りながら、わいせつな行為をしたとして起訴された。この日、被告側は「一審判決は生徒の供述を全面的に信用しており事実誤認。わいせつ行為はしていない」と無罪を主張。検察側は被告の控訴を棄却するよう求めた。
 ▼おことわり 福岡高裁は被告を実名で審理しましたが、本紙は被害者保護の観点から引き続き匿名とします。

http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2100019.article.html
教え子にみだらな行為、無罪主張 被告名は秘匿せず
 この事件をめぐっては、女子生徒保護のため、佐賀地検が特定につながる情報の秘匿を申し立て、一審佐賀地裁は教諭の氏名のほか生徒の氏名や犯行時期、学校名など大半を秘匿して審理。控訴審でも福岡高検が秘匿を申し立てたが、福岡高裁は教諭の名前、住所を秘匿事項から外した。理由については「コメントできない」としている。
 弁護側は控訴趣意書で、女子生徒2人が供述した内容が変遷しているとして「犯行は無く、一審判決は事実誤認」と主張した。検察側は控訴棄却を求めた。判決は来年2月29日に言い渡される。県教委によると、男性教諭は現在、休職中となっている。
 今年8月の一審判決によると、教諭は運動部の顧問をしており、当時18歳未満だった教え子の部員2人に、校内でみだらな行為をした。
 おことわり 教諭の氏名について、福岡高裁は秘匿事項から外しましたが、佐賀新聞社は生徒が特定される可能性を考慮し匿名で報道します。
2011年12月10日更新

 ここで隠しても、有罪になって懲戒免職になると、教員免状の失効公告がでますよね。