児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童買春罪につき年齢不知で無罪(東京地裁H19.11.26)

 「児童買春の故意があったといえるためには、被告人が、性交前の段階で、本件当日のBの外観を見て、Bが18歳未満であると認識したことを合理的な疑いを容れる余地なく立証できていなければならない」というのです。
 対償供与約束は実行行為なので、厳密に言えば、約束の時点で18歳未満と知っていたことが要件になると思います。

第一法規DB
東京地方裁判所平成19年11月26日
 上記の者に対する児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件について、当裁判所は、検察官森川久範及び私選弁護人山本裕夫各出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人は無罪。
理由
1 本件の概要
  本件公訴事実は、「被告人は、平成19年3月27日ころ、東京都足立区(以下略)所在の『Aホテル』客室内において、B(平成2年7月14日生、当時16歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、同児童に対し、現金3万円の対償を供与することを約束して同児童と性交し、もって児童買春をしたものである。」というものである。
  これに対し、被告人は、B(以下「B」という。)に対し、現金3万円の対償を供与することを約束してBと性交したことは認めるものの、Bの年齢が18歳未満であるとの認識はなかった旨弁解し、これを受けて弁護人は、被告人には児童買春の故意がないから無罪である旨主張する。
  本件は、被告人とBの二人だけがホテルの客室内にいる状況下での事件であり、また、被告人が、捜査及び公判段階を通じて、Bの年齢が18歳未満であるとの認識はなかった旨一貫して弁解しているので、被告人が、本件当時、Bが18歳に満たない児童であることを認識していたという事実を裏付ける証拠としては、Bの当公判廷における供述がほぼ唯一の証拠となっている。そこで、Bの当公判廷における供述の信用性を中心に、以下検討する(なお、括弧内の甲の番号は検察官請求証拠の番号を示す。)。
・・・
3 Bの当公判廷における供述の信用性について
  Bは、当公判廷において、被告人と性交した際に被告人との間でした年齢に関するやり取り等について、概要、次のとおり供述した。すなわち、「被告人とAホテルの客室内に入った後、性交する前の時点で、被告人から年齢を聞かれ、『17で、今年で18になります。』と答えた。それに対し、被告人が、『え、本当に18なの。』と更に聞いてきたので、『いや、本当は16歳なんです。』と答えた。性交する前の時点で被告人とそのような年齢に関する会話をした記憶があることの根拠は、その年齢に関する会話をしていた時は、自分も被告人も服を着ており、被告人が靴下を履いていなかった記憶があるので、被告人が、性交する前に、入浴するための準備として、浴室内にある浴槽への注水を止めに行った後の時点のことであると思うからである。」などと供述した。

以下省略