児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・強姦・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(強姦罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例違反)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

ホテルで18歳未満の児童に用意した制服を着用させたり,性交するなどの行為に応じさせ,ビデオカメラ等でその様子を撮影したなどとして,児童福祉法違反等の罪に問われたカメラマンに対する控訴審において,原判決について,理由不備,理由齟齬,訴訟手続の法令違反,法令適用の誤り及び量刑不当などを言う奥村弁護人の主張を退け,控訴を棄却した事例(東京高裁h21.7.6)

 判例秘書に登載されました。
 一審は児童淫行罪と5項製造罪の観念的競合の訴因について、観念的競合としたので(なのに併合罪加重しちゃった!ので)、包括一罪じゃないかと控訴したところ、併合罪にされちゃったものです。
 もっとも、児童淫行罪と製造罪をごっちゃにした訴因なので、併合罪だとすると、訴因不特定になると思うんですが、それはだれも気づかなかったようです。
 破棄してないのだから、観念的競合で確定しています。

児童福祉法違反,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
東京高等裁判所平成21年7月6日
第2 理由齟齬,訴訟手続の法令違反及び法令適用の誤りの主張(同控訴理由第1及び第4)について
 論旨は,要するに,原判決は,その「法令の適用」において,「科刑上一罪の処理」として,「刑法54条前段,10条」,「重い児童福祉法違反の罪の刑に法定の加重」と記載しているが,?刑法54条前段という条文の挙示が誤っているほか,その適条には,科刑上一罪としながら「法定の加重」という刑の加重事由があるとしており,自己矛盾があるから,理由齟齬ないし判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反(刑事訴訟法335条違反)及び法令適用の誤りがあり,さらに,?本件製造罪と本件淫行罪の罪数関係は,前者が後者に吸収される関係にあるか,又は混合的包括一罪の関係にあると解されるから,これらを観念的競合の関係にあるとした原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
 1 そこで,検討すると,本件は,原判示のとおり,被告人がBと共謀の上,被害児童の年齢確認を怠って,被害児童をアダルト雑誌に掲載する性交写真のモデルとして雇い入れ,平成20年7月17日,東京都品川区所在のホテル客室内において,当時16歳の被害児童に被告人を相手に性交等をさせるとともに,不特定又は多数の者に提供する目的で,被告人と性交するなどしている被害児童の姿態等をスチールカメラ及びデジタルビデオカメラで撮影し,その画像をフィルム14本及びミニデジタルビデオカセットテープ2本に記録し,もって,児童に淫行をさせる行為をするとともに,児童ポルノを製造したという事案であるが,本件淫行罪と本件製造罪の罪数関係については,以下のとおり,科刑上一罪の関係にあるとは解されず,併合罪の関係にあると解するのが相当である。すなわち,
 (1) 刑法54条1項前段にいう「1個の行為」とは,法的評価を離れ構成要件的観点を捨象した自然的観察のもとで,行為者の動態が社会的見解上1個のものと評価を受ける場合をいうと解されるところ,本件の各所為のうち,児童に淫行をさせる罪の動態は,児童に対して性交又は実質的に見て性交と同視できる程度の性行為(性交類似行為)をさせることであり,他方,児童ポルノ製造罪の動態は,性交するなどしている児童の姿態をカメラで撮影してフィルム等に記録することであるから,それぞれの動態は異質なものというべきである。確かに,本件においては,被害児童に淫行をさせ,その姿態を,機材を用いて撮影して記録媒体に十数本にわたって記録しているが,児童ポルノ製造罪は,児童ポルノと評価されるものを撮影するなどして写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物として記録化すれば成立するのであって,撮影の対象として児童の淫行が必要というものではなく,したがって,製造行為に児童の淫行が常に随伴するというものではない。また,本件のように,当初から,掲載写真等の撮影に引き続き,その編集,製本,出版といった雑誌の販売に向けて一連の工程が予定されている場合,その過程において,撮影自体は,いわば第一次的製造とも位置づけられ,その後の電磁的記録の編集,複写,ネガフィルムの現像,焼き付け等が,第2次媒体や第3次媒体の児童ポルノ製造と見られるとしても,これらの行為は,罪数的には別個に捉えられるべきではなく,複数の製造行為ではあるが1個の目的に向けた一連のものと観念されるから,その全体が包括一罪として評価されるべきものである。してみると,本件のような5項製造罪の製造行為は,いわば時間的にも行為的にも広がりを持つに至ることが予定されているのであって(換言すれば,本件製造行為は,これら一連の製造行為の一部を切り取って起訴されたものなのであり,その既判力はその過程全体に及ぶとみるべきものである。),本件児童淫行罪のように一時点,一場所において行われ,それで終了するというものではないのである。したがって,この意味においても,本件製造罪と本件淫行罪の動態は,社会的事実として,類型的にみても,基本的に別異なものであって,それぞれの行為の時点では同時的に併存はしていても,自然的観察のもとで,行為者の動態が社会的見解上1個のものと評価される場合には当たらないと解すべきである。
 (2) このように,本件淫行罪と本件製造罪は,観念的競合の関係にあるとは認められず,社会的見解上別個の行為と考えられるから,両者は併合罪の関係にあると認めるのが相当である。なお,所論は,撮影行為自体が児童淫行罪の実行行為であるから,製造罪は児童淫行罪に吸収されるとし,あるいは,性交等が製造罪の実行行為の一部であるかのようにも主張するが,いずれも独自の見解であって採用できない。また,混合的包括一罪をいう所論についても,両罪の行為類型はもとより,法益も異なるものであり,同一の日時場所において行われたなどという本件における事情を考慮しても,それらの行為を重い罪の構成要件である児童淫行罪に包摂した処理を認めるべき合理的な根拠はないから,採用できない。
 2 そして,原判決は,「法令の適用」において,本件淫行罪と本件製造罪について観念的競合に当たるとして,併合罪加重を行っていないことは明らかであるから,その点で法令適用の誤りがあると認められる。しかしながら,その誤りも,本件の犯情等を考慮すると,直ちに判決に影響を及ぼすことが明らかとはいえないから,これを理由に原判決を破棄することはしない(なお,原判決の「法令の適用」には,所論?指摘のとおり不正確な記載があるが,その記載を原判示の罪となるべき事実と照らし合わせると,その趣旨は,本件各罪について,科刑上一罪の関係に立つと解したものと理解することができ,その処理の中での明白な誤記ないしこれに類するものということができるから,そのような誤記自体から,理由齟齬ないし判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反があるとまではいえない。)。
 3 以上によれば,結局,原判決には,所論のような理由齟齬ないし訴訟手続の法令違反や判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りはないから,論旨は理由がない。
平成21年7月6日
    東京高等裁判所第5刑事部
        裁判長裁判官   中山隆夫
           裁判官   高橋 徹
           裁判官   瀧岡俊文

最高裁併合罪という前の判決なのに、最高裁決定の後に、こっそり公表するというのは後出しで「先取り」をアピールするみたいでずるいですよね。