児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童ポルノ規制と憲法判例

 某所で説明する資料としてまとめてみました。
 児童ポルノ罪の趣旨を盾にすれば、どんな規制もOKみたいな判示ですよね。
 児童ポルノ規制で、通信の秘密を侵害することがあっても、同じ理由付けになりそうですよね。

2 児童ポルノ規制の関連条項
(1) 製造販売する者の表現の自由
第21条〔集会・結社・表現の自由、検閲の禁止、通信の秘密〕
1 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
  判例①③④⑤⑦⑧

(2)出演する児童の自己決定権
第13条〔個人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利の尊重〕
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
判例

(3)物としての利用を阻害される者の財産権
第29条〔財産権〕
①財産権は、これを侵してはならない。
②財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。
判例④⑥

(4)買主を処罰しないことの不平等
第14条〔法の下の平等、貴族制度の否認、栄典の限界〕
①すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
判例③⑧
(5)罪刑法定主義
第31条〔法定手続の保障〕
何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。
判例①②⑤⑦

3 判例
① 大阪高判H21.10.24*1
 児童ポルノ法は、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性にかんがみ、児童買春、児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、これらの行為などにより心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利を擁護することを目的としている(法一条)ところ、児童買春の当事者となったり、児童をポルノに描写することは、その対象となった児童自身の心身に有害な影響を与えるのみならず、そのような対象となっていない児童においても、健全な性的観念を持てなくなるなど、児童の人格の完全かつ調和のとれた発達が阻害されることにつながるものであるから、児童ポルノ法は、直接的には児童買春の対象となった児童や児童ポルノに描写された児童の保護を目的とするものであるが、間接的には、児童一般を保護することをも目的としていると解される。
 したがって、このような同法の立法趣旨にかんがみると、一八歳未満の者を一律に児童とした上で、児童買春や児童ポルノを規制する必要性は高いというべきであるから、法二条一項が表現の自由に対する過度に広範な規制を定めたものとはいえないし、また、そのために所論にいわゆる児童の性的自己決定権が制約されることになっても、その制約には合理的な理由があるというべきであるから、同条項が憲法一三条に違反するともいえない。

児童ポルノ法の立法趣旨、すなわち、同法が、児童ポルノに描写される児童自身の権利を擁護し、ひいては児童一般の権利をも擁護するものであることに照らすと、児童ポルノに描写されている児童が実在する者であることは必要であるというべきであるが、さらに進んで、その児童が具体的に特定することができる者であることまでの必要はないから、所論のような規定が設けられていないからといって、法二条三項が、表現の自由を過度に広範に規制するものとはいえない。

児童が視覚により認識することができる方法により描写されることによる悪影響は、写真、ビデオテープに限られず、所論の指摘する絵画等についても同様であるから、法二条三項が表現の自由を過度に広範に規制するものとはいえない。

わいせつ物頒布等の罪を規定した刑法一七五条は、社会の善良な性風俗を保護することを目的とするものであるから、同条におけるわいせつの概念としては、普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するほどに著しく性欲を興奮、刺激せしめることを要するとされるのに対し、児童ポルノ法は、すでに前記2等において説示したとおり、児童ポルノに描写されることの害悪から当該児童を保護し、ひいては児童一般を保護することを目的とするものであるから、著しく性欲を興奮、刺激せしめるものでなくとも、児童ポルノの児童に与える悪影響は大きく、したがって処罰の必要性が高いと考えられること、すなわち、両者の保護法益ないし規制の対象に自ずから相違があることなどに照らすと、所論の指摘するところを考慮しても、法二条三項二号及び三号が、表現の自由に対する過度に広範な規制をするものとはいえないし、また、わいせつの概念が所論①のようなものであるにもかかわらず、刑法一七五条が憲法二一条及び三一条に違反するものでないとされていること(最高裁判所昭和五八年一〇月二七日判決刑集三七巻八号一二九四頁、同昭和五四年一一月一九日決定刑集三三巻七号七五四頁等参照)などからしても、法二条三項二号及び三号が、漠然として不明確な規定といえないことは明らかである。

児童ポルノ法の立法の趣旨、目的、ことに同法が、児童買春の対象となったり、児童ポルノに描写された児童の保護だけでなく、児童一般の保護をも目的としていることに照らすと、法二条三項各号が、児童ポルノで描写された被撮影者の意思に反することを要件としていなくとも、立法目的と規制手段との間に合理的関連性を欠くとはいえない。

法七条二項は、同条一項所定の、児童ポルノの頒布、販売、業としての貸与又は公然陳列の目的による児童ポルノの製造、所持、運搬等の行為を処罰するものであるところ、右各行為は、児童ポルノに描写された児童の心身に有害な影響を与え続けるのみならず、このような行為により児童ポルノが社会に広がるときには、児童を性欲の対象として捉える風潮を助長するとともに、身体的、精神的に未熟である児童一般の心身の成長にも重大な悪影響を与えることになり、前記児童ポルノ法の立法の趣旨、目的にもとることになるものである。したがって、同条一項所定の製造、所持、運搬等の行為を処罰する必要性は高いというべきであるから、法七条二項において、右各行為を処罰の対象としていることが、表現の自由を過度に広範に規制するものとはいえない。

② 最高裁H14.6.17*2
「性欲を興奮させ又は刺激するもの」の文言があいまいで不明確であるから,憲法21条,31条に違反するというが,上記文言は,一般の通常人が具体的場合に当該行為がその適用を受けるかどうかを判断することが可能な基準を示しているということができ,不明確であるとはいえない

③ 東京高裁H16.6.23*3
(3)所論は,要するに,法7条1項所定の「陳列」は作為を意味し,不作為は含まれないと解すべきであるから,不作為を処罰することは憲法31条の適正手続に違反する上,自己の知らないうちにホームページに掲載された児童ポルノ画像について,ホームページ管理者に児童ポルノ公然陳列罪の故意責任を認めるのは,表現の自由に対する過度に広汎な規制として憲法21条1項に違反するのに,「陳列」に不作為が含まれるとした上で,被告人に児童ポルノ公然陳列罪の故意責任を認めた原判決には,判決に影響を及ばすことの明らかな事実誤認ないし法令適用の誤りがある,と主張する(控訴理由第10)。
しかし,被告人の本件犯行が作為犯を主要なものとしつつ不作為犯も含まれていることは,これまで説明したとおりであり,原判決に所論のような憲法31条に違反する点があるとはいえない。また,1に記載した本件の事実関係に照らせば,被告人に本件児童ポルノ公然陳列罪の故意責任を認めることが,憲法21条1項に違反しないことも明らかである。
論旨は理由がない。

④ 大阪高裁h20.4.17*4
しかしながら、関係証拠によれば、被告人は、本件外付けハードディスク自体を販売する目的はなかったけれども、必要が生じた場合には、本件外付けハードディスクに保存された画像デ一タを使用し、これをDVDに記憶させた上、このDVDを販売する意思であったことが認められるから、本件外付けハードディスクの所持は、児童ポルノを提供する目的で行われたものということができる。また、児童の心身に有害な影響を与え、その成長にも重大な影響を及ぼす行為を防止し、児童を性欲の対象としてとらえる風潮を抑止するという児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。)の立法趣旨等に照らすと、同法による処罰をすることにより、人権に制限が加えられたとしても、それは公共の福祉による合理的な制限であって、この点が憲法の諸規定に達反するなどといえないことは明らかである。

⑤ 名古屋高裁金沢支部H14.3.28*5
性交又は性交類似行為に係る児童の姿態等を描写するなどした児童ポルノを製造,頒布等する行為は,第1で述べた児童買春同様,児童ポルノに描写された児童の心身に有害な影響を与えるのみならず,このような行為が社会に広がるときには,児童を性欲の対象ととらえる風潮を助長することになるとともに,身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長に重大な影響を与えるものであり,そのためかかる行為が規制されたものであるところ,このような規制の趣旨目的に照らせば,対象となる児童の年齢を一律18歳末満とすることは,身体的及び精神的に未熟である児童の自己決定権を制約する部分があるとしても,合理的な理由があるというべきであり,また表現の自由などとの関係においても必要以上の,あるいは立法目的に照らし合理的関連性を欠く過度に広範な規制であるとはいえないから,所論指摘の憲法の各条項に違反するものということはできない。

確かに,上記「児童ポルノ」は実在する児童を被写体としたものと解すべきであるが,この点は児童買春処罰法2条1項の「児童」が18歳に満たない者と定義され,これを用いて児童ポルノも定義づけられていることからすると,児童の実在を前提とする趣旨は明確となっているというべきである。所論は採用できない。

原判示第3の2の児童ポルノ製造行為は,児童買春処罰法7条3項1号に該当する児童ポルノを製造したとして起訴され,原判決もその旨を藩定したことが明らかであるから(原判示第3の2では「児童を相手方とする性交及び性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により,描写した児童ポルノ」とされている。),同項2号又は3号の文言について種々論難する上記各主張(もとより上記各号に関する主張が法令全体の無効を来す類のものとも解されない。)はいずれも本件においては失当である(なお,付言するに,刑法175条の「わいせつ」の文言と比べても,児童買春処罰法2条3項の「児童ポルノ」は各号ともにその内容が具体的に定義されていて,あいまいであるとはいえず,また児童ポルノの性質上,「いたずらに」とか,「普通人の正常な性的差恥心を害し,善良な性的道義観念に反する」を要しないとすることには合理性が諷められるから,その要件が過度に広範であるということはできない。また,誰を基準として判断するかの点についても,刑法における「わいせつ」概念と同様,「一般人」を基準として,その性欲を興奮させ又は刺激するものと解すべきことは一般人を対象とする法規範としての性質上明らかであり,また児童ポルノであるからといって,一般人の性欲を興奮させ又は刺激することがないとはいえないというべきである。)。

⑥ 大阪高裁H18.10.20*6
所論は,原判決は,わいせつ図画と認定されたファイル以外も含めて,原判示3の各ハードディスクドライブ全体を没収しているが,わいせつ図画と認定されたファイルの容量はハードディスク全体のわずか0.3パーセントにすぎず,違法と認定されていないファイルやハードディスク本体まで没収するのは被告人の財産権を侵害するもので憲法29条に違反し,違法である,仮に適法であるとしても量刑不当である,というのである。

しかし,現行法上,没収は有体物を対象とするものであり,立法論は別として,解釈論としては,電子データであるファイルの没収を考えることはできないから,本件ハードディスクドライブを没収したことは何ら療法その他の法令に違反するものではなく,また,量刑不当でもない。所論は,一定の偽造文書等を例に挙げて,刑訴法の没収の執行方法として電子データの一部消去が可能である旨主張しているが,児童ポルノないしわいせつ図画である本件ハードディスクドライブについては,取引の安全や社会生活上保護されるべき手続の安定性等を考慮する必要性はないのであるから,現行法の枠内において,あえて一部没収に相当するような没収方法を採る必要はなく,また,それが相当であるともいえない。

⑦ 名古屋高裁金沢支部H17.6.9
所論は,法7条3項は,真剣な交際をしている者が,児童の承諾のもとでその裸体を撮影する行為,16,17歳で婚姻した夫婦間での撮影をも処罰の対象にする点で,過度に広汎な規制であるから,憲法21条に違反して違憲無効であるとする。
しかし,過度に広汎な規制で憲法21条に違反するとの所論は採用しがたい上,記録によれば,本作は,所論が指摘するような場合でないことは明らかであるから,本件に適用する限りでは何ら憲法21条に違反するものではない。

(2)
所論は,法7条3項の「姿態をとらせ」との文言は漠然不明確であり,同法35条に違反して違憲無効であるとする。しかし,「姿態をとらせる」という文言は,児童に働きかけて法2条3項各号に規定する姿態をさせることであることは通常人であれば容易に理解することができるのであり,何ら漠然不明確ではない。

(3)
所論は,本件においては,被害児童が児童ポルノ製造に積極的に関与しており,共犯者であるのに,撮影者である被告人のみを処罰するのは不公平であり,憲法14条に違反するとする。しかし,本条の立法趣旨が,他人に提供する目的のない児童ポルノの製造でも,児童に児童ポルノに該当する姿態をとらせ,これを写真撮影等して児童ポルノを製造する行為については,当該児童の心身に有害な影響を与える性的搾取行為にほかならず,かつ,流通の危険性を創出する点でも非難に値するというものであることからすると,児竜は基本的には被害者と考えるべきである。そして,記録を検討しても,本件の被害児童が共犯者に当たるとすべきほどの事情は窺えず,また,被告人を処罰することが不公平で,憲法14条に違反するとも認められない。

福岡高裁那覇支部h17.3.1*7
児童買春法は,ポルノへの出演・販売等という表現行為・意見表明をするに足りる成熟度に達していない者がポルノに出演するなどして性的に搾取されることのないように,児童の保護を図るものであるところ,ポルノへの出演・販売等という表現行為・意見表明をするとか,対価を得ての性行為に及ぶことを判断するに足りる精神能力は,単純に性行為等に及ぶことそのものを判断するに足りる精神能力より高いものであると解されるから,児童買春法に,青少年保護育成条例と異なり,婚姻による成年擬制が働く場合についての除外規定がないことは,憲法21条との関係でも何ら問題になることはない。したがって,児童買春法が憲法21条に違反するとはいえず,児童買春法を限定解釈する必要があるとも認められないから,原判決には所論のような法令の適用の誤りはないし,本件被害児童が成年擬制が及ぶ者であるか否かを判断しなかった原判決に訴訟手続の法令違反があるともいえないことは明らかである。

所論は要するに,児童ポルノ販売罪は,買主との必要的共犯・対向犯であって,買主の買い受け行為の法益侵害,違法性は可罰的,当罰的であるにもかかわらず,売主のみを処罰するのは,法の下の平等憲法14条)に違反するから,児童買春法の児童ポルノ販売罪の規定は違憲,無効であり,同規定を適用して被告人を有罪とした原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあるというにある。
しかし,買主の買い受け行為にも法益侵害,違法性があるとはいえるが,売主の販売行為の違法性,法益侵害性が強度の可罰性,当罰性を有するのと比較して,前者の法益侵害,違法性の可罰性,当罰性は微弱であるから,販売行為のみを処罰の対象とし,買い受け行為を処罰の対象としないことが憲法14条に定める法の下の平等に反しないことは明らかである。論旨は理由がない。

所論は要するに,児童ポルノへの出演・販売等は,児童から見れば,表現行為・意見表明であるが,同法は児童の年齢や成熟度に応じた取扱をしていないから,同法は児童の権利に関する条約12条に違反するもので無効であり,同法を適用して被告人を有罪とした原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあるというのである。
しかし,上記のとおり,児童買春法は,ポルノへの出演・販売等という表現行為・意見表明をするに足りる成熟度に達していない者がポルノへ出演することなどにより性的に搾取されることがないように,その保護を図ろうとするものであるのに対して,上記の条約は児童の側からの意見表明の権利の確保を目指すものであり,その規制の方向を異にするのであって,ポルノへの出演・販売等という表現行為・意見表明をするに足りる精神能力の有無を年齢によって一律に決することには合理的な理由があるから,同法が上記の条約に違反するなどとは到底いえない。