児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

実子に売春させた児童淫行罪で実刑(和歌山家裁h20.12.25)

 別の報道では、地裁の別件で執行猶予判決を受けていたようですが、常套手段としてちゃんと控訴しているのでしょうか?
 そっちは控訴しないと損ですよね。取り消されると大損するように刑期が水増しされていますので。
 まあ、家裁と地裁に分かれた場合には、地裁事件との併合した場合の量刑に調整してもらうように、控訴すべきですね。

http://www.sponichi.co.jp/society/flash/KFullFlash20081225025.html
中学3年生だった娘に売春させたとして、児童福祉法違反と売春防止法違反の罪に問われた和歌山市の母親(37)に、和歌山家裁(杉村鎮右裁判官)は25日、懲役3年6月、罰金10万円(求刑懲役5年、罰金10万円)の判決を言い渡した。
 判決によると、母親は夫(47)と共謀し「(娘の)電話代が高い。体売ってでも金をつくってこい」などと繰り返し売春を強要。和歌山市内のホテルで2月下旬、当時15歳の娘にわいせつな行為をさせ現金1万2000円を受け取らせた。

 同種事案の弁護人から言わせてもらえば、実親子という切りようがない関係があるわけですが、この先、同居させるわけにもいかないわけで、そういう面でも取り返しがつかないことになっています。
 義理の関係なら、離婚とか離縁とかで関係絶てて、それのほうが双方にいいことがあるのですが、それができないんですよ。


追記

http://mytown.asahi.com/wakayama/news.php?k_id=31000000812260003
 当時中学3年生だった少女(16)に売春させたとして、児童福祉法違反と売春防止法違反の罪に問われた和歌山市の母親(37)の判決公判。和歌山家裁の杉村鎮右裁判官は「親としての責任を省みず、娘の気持ちや人生を平然と踏みにじった」などとして懲役3年6カ月と罰金10万円の判決を言い渡した後、母親に対して、異例とも言える長時間の説諭をした。(宮崎亮)
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 母親は覚せい剤取締法違反(使用)の罪で懲役1年6カ月、執行猶予3年の判決がすでに確定している。今回の判決が確定すれば執行猶予が取り消され、あわせた期間服役することになる。

 うーん。地裁は控訴してないとマズイですね。家裁でも執行猶予が付くと思っていたんでしょうか?
 合計懲役5年になりますが、ちょっと重い感じです。併合審理できれば、懲役4年〜4年6月くらいじゃないかと思います。
児童買春罪ですがこういう判決もあります。
量刑のプロである裁判所としては、同時に進行している事件があるのに考慮せずに量刑するというのがさぞかしもどかしいのでしょう。この辺が少年法37条廃止の動機です。

東京高裁H18.3.6
第5 量刑不当の主張について
論旨は,本件と家裁事件とは本来併合審理されるべきであったのであり,本件の量刑に当たっては,両者が併合審理され,同時に1個の判決がなされた場合との均衡を考慮し,併合の利益を最大限に尊重した判断がなされるべきであったのに,原判決は,これをせず,むしろ家裁事件に共通する被告人に不利な情状を二重に評価し,家裁事件について一審で懲役a年の実刑判決を受けた被告人を,懲役b年,執行猶予に処したものであり,この執行猶予が取り消されることなどを考慮すると,原判決の量刑は著しく重く,不当である,というのである。
そこで検討するに,
・・・
以上の事実関係を前提としてさらに検討すると,上記のとおり,本件は原審の東京地方裁判所に起訴され,家裁事件は,売春及び児童買春の周旋並びに児童淫行の事件として,少年法37条により東京家庭裁判所に起訴されたものであって,本来併合審理されるべきであったとはいえない。また,原判決は,既に東京家庭裁判所において,被告人に対して実刑判決の言渡しがあったことを前提としつつも,原判決宣告の時点においては同判決がいまだ確定していなかったこともあって,被告人にとって量刑上有利な執行猶予を選択しており,家裁事件に共通する被告人に不利な情状を二重に評価しているとは認め難い。
そして,本件の罪質,動機,犯行に至る経緯,態様,結果等を考慮にいれても,原判決の量刑は,その宣告の時点においては相当であって,これが重すぎて不当であるとはいえない。
しかしながら,当審における事実取調べの結果によれば,原判決後,被告人が児童自立支援施設に寄付をするなどして反省の情を更に深めていること,本件被害児童の保護者から,前記のような判決結果を踏まえて被告人の寛大な処分を望む嘆願書が改めて提出されていること,が当審公判において,被告人の今後の監督を誓っていること等の事情が認められる。
さらに,一般に執行猶予が付される場合の主刑は,執行猶予が取り消されたときには服役しなければならない刑の期間を示して,善行保持のための心理的強制の効果をねらうという趣旨から,実刑とされる場合よりもその刑期が長期とされるのが通例であり,原判決もそのような量刑を行っているものと考えられる。
そして,原判決に付された執行猶予は,前記のとおり原判決後家裁事件について実刑判決が確定したことにより,刑法26条3号による取消しが見込まれるところ(昭和48年2月28日最高裁第1小法廷決定・刑集27巻1号80頁参照),この執行猶予が取り消される実質的な理由は,家裁事件と本件とが同時に審判されたならば,執行猶予の言渡は本来なかったという点に求められるものと解せられるから,当審における量刑判断に当たっては,家裁事件の刑期や原判決に付された執行猶予が取り消されることなどを念頭に置いた上,できる限り同時に審判された場合との権衡を失しないような配慮をするのが相当である。このような観点からすると,家裁事件についての確定控訴審判決が一審判決の量刑を見直すに当たり,本件について執行猶予の取消しが見込まれることを酌んでいる点を考慮したとしても,なお,本件の執行猶予判決の主刑については,相応に見直す必要があるものと考えられる(もっとも,現時点においては,既に家裁事件についての実刑判決が確定していることから,当審において執行猶予判決の主刑を見直す際に刑法25条1項を適用して執行猶予を付すことの可否が問題となる。ここでの執行猶予は,原判決が適法に付した執行猶予がその後の懲役刑の実刑判決の確定によっても不利益変更禁止の制限に拘束されて本件訴訟手続内では取り消すことができないことから付されるものにすぎず,実刑判決確定後の控訴審において新たな判断に基づいて,初めて付されるというものではない。このような場合における同項の「前に」とは,不利益変更禁止の制限に拘束されて本件訴訟手続内では取り消すことのできない適法な執行猶予の前に,すなわち,原判決言渡し前にという意味に解せられ,同項が適用される。なお,確定裁判が実刑判決の場合における余罪について,同項を適用して執行猶予を言い渡すことができない旨の最高裁判例(平成7年12月15日第3小法廷判決・刑集49巻10号1127頁)は,控訴審において実刑判決確定後に新たな判断に基づいて執行猶予を付した事案に関するものであって,本件に同項を適用することは上記判例に抵触しないものと解される。)。
以上の諸事情に前記の情状を併せ考慮すると,現時点においては,執行猶予付きの原判決の主刑の刑量を更に相応に減じることが正義に適うものと認められる
よって,刑訴法397条2項により原判決を破棄し,同法400条ただし書を適用して更に次のとおり判決する。原判決記載のとおりの(罪となるべき事実)及び(証拠の標目)の後に,次の(確定裁判)の項を付加する。

東京高裁H18.1.23
事件名 児童福祉法違反、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反、売春防止法違反被告事件の判決に対する控訴事件
裁判結果 破棄自判
3 量刑不当の論旨について
 論旨は、他の同種類似事案や周旋相手の量刑との均衡や被告人に有利な情状を十分にしん酌していないとして、原判決の量刑判断を論難するほか、本件においては併合審理の利益がない上、原判決は、別件地裁事件でも判断される不利な情状について二重に評価して量刑をしている不当があるなどというのである(なお、被害児童2名に対する児童買春の周旋を業としての児童買春周旋罪と評価すべきであるとして量刑不当をいう論旨は、前記のとおり、前提を欠き失当である。)。
 そこで検討するに、本件において量刑上考慮すべき事情について、原判決が「量刑の理由」の項において説示する内容はおおむね是認し得るところである。本件事案内容、各被害児童の年齢や本件が児童らの健全な成育に与えた悪影響の大きさなどの犯情に照らせば、被告人の本件刑事責任は到底看過し得るものではない。なお、所論のように二重評価の危険を防ぐ必要があるとしても、それは同様の事情が二重に評価されることを避けるべきことをいうのであって、当該事情が双方の裁判所で考慮されないことを認めるものではない。そうすると、先行する裁判所において、後行する裁判所がどのように量刑事情を考慮するかをあらかじめ予測することは困難であるから、裁判官が同一であるときなどは別として、先行する裁判所において、当該事件について考慮すべき量刑事情を量刑判断の前提に含めることは当然許されるのであって、後行する裁判所において、先行する裁判所の判断を十分考慮し、同一事件の二重評価を避けるべきなのである。こうした観点からすれば、先行する裁判所である原判決の量刑判断に対して二重評価をしたとの批判は当たらないのである。そうすると、他の同種類似事案の量刑との均衡等所論の指摘を十分に勘案してみても、原判決時において、被告人を懲役2年(求刑・懲役3年)に処した原判決の量刑判断はまことにやむを得ないものであって、これが重過ぎて不当であるなどとはいえないところであった。
 しかしながら、当審で取り調べたところ、別件地裁事件について、平成17年9月29日、被害児童乙に対する児童買春の罪のみを認定した上、被告人を懲役1年6月(執行猶予3年)に処する旨の判決が言い渡されたという事実が認められるところ(なお、この判決についても被告人から控訴の申立てがなされている。)、本件の実刑判決の確定により、同執行猶予が取り消されることが十分見込まれる。このような原判決後の事情のほか、既に被害児童2名との間で示談が成立しており、うち1名の保護者は嘆願書を作成していること、被告人が、当審においても、更に反省の気持ちを深めている様子も見受けられること、勤務先を懲戒解雇されるなど社会的制裁を受けていること、前科前歴はなく、被告人がこれまで通常の社会生活を送ってきたものであることなど、これらの被告人のためにしん酌し得る事情をなお十分に勘案してみると、現時点においては、原判決の量刑を維持することはやや酷に失し、本件犯情に照らし執行猶予を付するまでには至らないものの、刑期の点については、これを若干軽減するのが相当である。