児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

着用下着買受け罪

 記事によれば、下着も5000円、体も5000円みたいです。これが大阪ですね。

110番・119番:下着買い取り容疑の男送検 /大阪 - 毎日新聞 (283文字)
 2006年3月30日(木)
 府警少年課と東署は29日、平野区の会社員の男(29)を府青少年健全育成条例違反(着用下着買い受け)容疑で大阪地検書類送検したと発表した。調べでは、男は先月16日夜、住吉区内の駐車場で、堺市の女子中学3年生(15)から、下着を1枚現金5000円で買ったうえ、現金5000円を渡してわいせつな行為をした疑い。容疑を認めているという。
 男は、少女が「下着売ります」などと書き込んだインターネットサイトを見てメールで連絡。少女は昨年6月ごろから約40人の男に下着を売るなどし約40万円を稼いでいたという。
 2月に同条例が改正施行され、着用下着の買い取りでの摘発は初めて。
[毎日新聞 ]

 なんだか「着用済み下着」ごときに万全の規制ができていますが、買受け罪は30万円以下の罰金ですね。

大阪府青少年健全育成条例(改正後)
http://www.pref.osaka.jp/koseishonen/jorei_public/jourei.pdf
(着用済み下着の買受け等の禁止)
第29条 何人も、青少年から着用済み下着を買い受け、若しくはその売却の委託を受け、又はその売却の相手方を青少年に紹介してはならない。

(青少年への勧誘行為の禁止)
第31条 何人も、青少年に対し、次に掲げる行為を行ってはならない。
(1)着用済み下着を売却するように勧誘すること。

32条 何人も、次に掲げる行為が青少年に対して行われ、又は青少年がこれらの行為を行うことを知って、そのための場所を提供し、又は周旋してはならない。
(1)第28条各号に掲げる行為
(2)青少年から着用済み下着を買い受け、若しくはその売却の委託を受け、又はその売却の相手方を青少年に紹介する行為

第4節 古物の買受け等の禁止
(古物の買受け及び物品の質受け等の禁止)
第23条 古物商は、青少年から古物(青少年が着用した下着(青少年がこれに該当すると告げたものを含む。以下「着用済み下着」という。)を除く。)を買い受け、若しくは交換し、又は青少年から古物の売却若しくは交換の委託を受けてはならない。
2 質屋は、青少年から物品(着用済み下着を除く。)を質に取って、金銭を貸し付けてはならない。
3 古物商又は質屋は、古物の売却等又は物品の質置き等を申し出た者について、身分証明書等の提示を求める等の方法により青少年でないことを確認しなければならない。ただし、当該申出を行った者が明らかに青少年でないと認められる場合は、この限りでない。
4 前3項の規定は、当該青少年が保護者と同伴する場合又は保護者の委託を受け、若しくはその承諾を得ていると認められる場合は、適用しない。


第5章 罰則
第39条 第28条の規定に違反した者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
第40条 第32条第1号、第3号又は第4号の規定に違反した者は、50万円以下の罰金に処する。
第41条 次の各号の一に該当する者は、30万円以下の罰金に処する。
1)第14条第1項、第17条第1項、第20条第1項若しくは第2項、第23条第1項若しくは第2項、24条第1項、第29条から第31条まで又は第32条第2号の規定に違反した者
2)第15条第3項、第18条第3項、第20条第4項又は第22条の規定による命令に違反した者

[懲戒]不適切交際:県教委、中学教諭を懲戒免職 女子高生に隠ぺい指示 /山形

 懲戒処分が警察捜査の端緒になることもあるので、弁護士に至急相談すべきタイミングです。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060330-00000163-mailo-l06
県教委によると、男性教諭は00年秋ごろから、勉強を習いに来た当時高校1年の女子生徒と不適切な交際を開始。女子生徒が大学に進学した後の04年夏ごろまで、深夜に女子生徒を連れ出すなどして、自家用車内や山形市内のホテルで複数回にわたり性的関係を持った。男性教諭は妻帯者。

5〜6歳児のパンツをずりさげた姿態の写真を3号児童ポルノとした事例(神戸地裁尼崎支部)

 こんなのが一般人をして「性欲を興奮させ又は刺激する」かどうかは疑問です。
 こういう行為が許されるとは到底思えませんが、こういう構成要件だと、低年齢の児童の姿態(2号、3号)が、児童ポルノの定義から外れてしまうのが問題です。
 なお、大阪高裁は6歳について「性欲を興奮させ又は刺激する」というためには、扇情的ポーズを要求していたと思います。

第2条(定義)
3 この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの

 なお、ずり下げる行為は強制わいせつ罪として併合罪としています。この罪数処理も疑問。撮影行為自体が性的傾向の発現ですから、撮影行為も強制わいせつの実行行為にに入れて、児童ポルノ製造罪は観念的競合にするのが、適正な処理だと思います。

 判例が徹底されていないので、なあなあでやってる感じ。

参考判例

阪高裁 平成14年9月10日
第4事実誤認ないし法令適用の誤り(控訴理由第9)及び事実誤認(控訴理由第10)の主張について論旨は,①原判決は,本件ネガにつき,単なる裸体ではなく両脚を開かせ性器を露出させた露骨な描写をしており,一般人の性欲を興奮させ又は刺激すると判示しているが,被害児童は6歳であって,このような児童の姿態からは,どのようなポーズを取らせてみても,一般人の性欲を興奮させ又は刺激するものとは解されず,本件ネガが児童ポルノに当たるとはいえず(控訴理由第9),②被告人も,本件ネガが一般人の性欲を興奮又は刺激されるものであるとの認識はなかったから,被告人に故意があるとはいえないのに(控訴理由第10),本件ネガが児童ポルノに当り,被告人にもその認識があったとして児童ポルノ製造罪の成立を認めた原判決には,判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認ないし法令適用の誤りがある,というものである。
しかしながら,捜査報告書(「差し押さえにかかる証拠品ネガフィルムの焼付けについて」,原審検甲5,6号証)によれば,被害児童は当時6歳の女児であるが,被告人によって撮影された被害児童の姿態は,幼女のあどけない自然な裸の姿ではなく,寝そべって両足を開いたり,足を立てて座ったりして,ことさら性器を露出するなど煽情的なポーズをとっており,これが鮮明に撮影されているものであるから,一般人の性欲を興奮又は刺激することのある態様のものと認められ,本件ネガが児童ポルノに当たることは明らかであり,また,上記のような被害児童のポーズを被告人がとらせたものであるから,これを撮影した被告人に児童ポルノ製造の故意があることも明らかであり,被告人に対し児童ポルノ製造罪の成立を認めた原判決に事実誤認ないし法令適用の誤りがあるとは認められない。 論旨は理由がない。

児童ポルノの輸入・関税法違反で取調・起訴猶予の事案

 海外のオ−クションで児童ポルノを買った人。
 輸入禁制品の輸入未遂罪(関税法違反)の容疑。
 税関の人は、福祉犯であるという意識が薄い。
 児童ポルノ輸入罪を適用すれば既遂だ。

児童買春罪と児童福祉法違反(淫行させる行為・児童淫行罪)を観念的競合とした事例(大阪家裁h13)

弁護人の主張

  • 当初は18歳と自称していたから「児童との対償供与の約束」がない。
  • 「2くらい」という約束では意味がわからないから約束不成立。

[児童福祉法]大阪家裁事件102件

 午後は大阪地検にこもっていました。
 最初に、ヘルス系と児童虐待系とをより分けて、事務員はヘルス系、弁護士は児童虐待系という分業。
 大阪は、ヘルス系の比率は比較的低いです。虐待系5/ヘルス系7くらい
 児童虐待性的虐待)が意外に多いので、少年法37条の廃止には、大阪弁護士会からは反対論が出るものと予想します。

 ヘルス系は特定の弁護士をよく見かけました。
 未だに、「被告人自身が淫行するのは淫行させるにあたらない」という主張が散見されます。

小児わいせつの再犯率最悪 法務省調査

 初めての調査で「最悪」というのはピンぼけですが、特別な矯生教育してないからそんなもんですわ。
 人数は少なくても、繰り返す傾向があるんじゃないですか?
 いわゆる「危険な累犯者」がいると思います。

http://www.sankei.co.jp/news/060331/sha078.htm
性犯罪のうち、13歳未満の「小児」に対する強制わいせつで服役した元受刑者の再犯率は20%を超え、ほかの性犯罪に比べて最も高いことが、法務省の初の再犯状況調査で分かった。

恐喝被害の申告を自首と認定した事例(大阪家裁h12)

 淫行して撮影した児童ポルノ写真を販売した相手から恐喝されたので被害申告したのですが、その際に淫行のことも話したことが自首と認定されています。
 しかし、自首減軽はされていません。情状にとどまっています。

 結局後日、児童福祉法違反で逮捕されています。
 自首したかどうかわからなくて後々争われるような自首は、やぶ蛇になります。

 買春相手の親戚という人から「払わないと警察にばらす」などと執拗に法外な慰謝料を請求されているという相談も多いです。

 美人局みたいな事例ありますけど、自分の犯した罪について恐喝・脅迫されている場合、自首するかどうか、どうやって自首するかについては、専門家に相談してください。
 うまく立ち回れば、自分は逮捕されなくて、相手を逮捕してもらうという可能性は無いことはないと思います。
 

「裁判員裁判の下における捜査・公判遂行の在り方に関する試案」

 弁護人は自由にアクセスできるんでしょうか?
 裁判員は選択されたものを見せてもらえるだけなんですか?
 

http://www.kensatsu.go.jp/oshirase/00111200603310/saibaninsaiban.pdf
・ 量刑資料の取扱い
裁判員を量刑判断に関与させる目的は,量刑に一般の国民の感覚を取り入れることにあり,また,量刑判断は個別の事案における情状を踏まえて決められるのであるから,同種の事案であっても,量刑判断にある程度の差が出ることはやむを得ない。しかし,裁判所の構成や地域によって量刑に不合理な格差が生じることは避けなければならない。また,我が国の刑法のように法定刑の幅が広い法制の下で一般の国民たる裁判員に何らの資料も示すことなく,適正な量刑判断を行うことは容易でないと思われる。したがって,量刑に関し,裁判員に過去の裁判結果など,何らかの参考資料を示すことはやむを得ないと思われる。この点に関し,最高裁判所から公表された「裁判員裁判の審理,評議及び評決について(試案)」は,裁判所の量刑検索システムを検察官・弁護人の双方に開示し,論告・弁論でも,同システムによって得られた量刑基準を前提に議論してもらうということが考えられる,との考え方を表明している。
最高裁において整備中の量刑検索システムを裁判員裁判における量刑資料として用いるのであれば,そのデータはできる限り豊富な事例を集め,必要な量刑要素を正確に入力したものにすることが望まれる。
そのため,最高裁のデータについては,その正確性を担保するとともに内容の充実したものにすることが必要であり,そのための方策を検討していくべきである。
論告・弁論において上記の量刑検索システムによって得られた量刑基準を前提に議論するという点については,若干の留保が必要である。議論の土俵をなるべく共通にするという観点からは,検察官と弁護人は,できるだけ上記のデータを基に論告・弁論を行うように努めるのが望ましいと言えようが(注),適正な量刑判断を確保するためには,上記のデータのほかに参考とすべき事例がある場合,それを指摘することは認められるべきであろう。
その上で,個々の事件の評議の際には,上記の量刑検索システム中のデータや論告・弁論で指摘された事例の中から,当該事案に参考となりそうな事例を適宜選んで裁判員に示すこととするのが相当であろう。
【注】その場合,あくまで,当該事案における情状を的確に指摘することが中心となるべきであり,量刑データの事案等について詳細に論じることは適当でないことが多いと思われる。

週刊朝日 2006年3月31日増大号

 こんなこと書いたら、ほんとに25万円もらえると信じてしまいますよ。思慮浅薄だから。

http://opendoors.asahi.com/data/detail/7295.shtml
「大人のふり」して傷ついた元援交少女たちが振り返る
「最低5万円、最高25万円の私」

 裁判例では、200万、300万という対償金額も見受けられますが、高額になればなるほど詐言の危険性が増します。