児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

国民生活安定緊急措置法施行令2条の「購入価格を超える価格」とは?

 結果的に3510円で仕入れて、3500円で売ったことになるが、譲渡時=仕入れ額が確定してない時点では「衛生マスクの譲渡(・・・当該衛生マスクの購入価格を超える価格によるものに限る。)」とはならないので、譲渡はあるけど譲渡罪は成立してないということですよね。刑法的にはどう説明しますかね?
 
 犯罪収益仮装罪で問題になったことがあって、事前収賄罪では法的位置付けについては,構成要件には属さない「客観的処罰条件」とする見解と,構成要件要素であるとする見解が対立している。という解説があるようです。
 譲渡の時点で備わってることが予定されているので構成要件ですよね。

判例番号】 L06310091
       児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件
【事件番号】 最高裁判所第3小法廷決定/平成20年(あ)第865号
【判決日付】 平成20年11月4日
【出  典】 判例タイムズ1285号80頁
 (1) 判示事項1の点に関する前記①の主張は,一見もっともらしいが(秋山実「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律10条1項の犯罪収益等隠匿罪を積極的に適用した一事例」研修662号123頁にも同旨の問題提起がある。),犯罪行為の対価として前払いで得た財産が「犯罪行為により得た財産」に含まれることは,実務上も学説上も当然のこととされてきたのであるし,実質論からしても,前払い代金が「犯罪収益」となり得ないなどという解釈は明らかに不合理である。そして,法文の「犯罪行為により得た」というのは「犯罪行為を原因として」と解することができるから,文理上も特段支障はないと解される。なお,本件では,前提犯罪である児童ポルノ提供罪は,犯罪収益取得事実仮装罪の実行行為の終了後に行われており,同罪は前提犯罪の成立を待って完成すると考えられるが,このように後の事情により犯罪が完成するという事象は,「公務員になろうとする者が,その担当すべき職務に関し,請託を受けて,賄賂を収受し,又はその要求若しくは約束をしたときは,公務員となった場合において,5年以下の懲役に処する。」とする刑法197条2項の事前収賄罪でも発生する。すなわち,同罪に係る収賄行為は当該賄賂を収受した時点で終了しており,その後,その者が公務員になることにより犯罪が完成するのであるが,本件の犯罪収益取得事実仮装罪についても,これと同じように考えることができるのであれば,不合理とはいえないと思われる(このほか,破産手続開始前に債権者詐害行為をした後,破産手続開始決定が確定したときに同行為を処罰する破産法265条1項の詐欺破産罪等も同様である。ただし,事前収賄罪の「公務員になったこと」等の法的位置付けについては,構成要件には属さない「客観的処罰条件」とする見解と,構成要件要素であるとする見解が対立している。)。

 

https://www.yomiuri.co.jp/national/20200523-OYT1T50226/
 中国のネット通販サイトで購入したマスクを転売したとして、大阪府警淀川署が、30歳代の夫婦を国民生活安定緊急措置法違反容疑で書類送検していたことがわかった。書類送検は20日付。新型コロナウイルスの影響でマスクが品薄になったことを受け、同法では、小売業者から仕入れたマスクを高値で転売することを禁止している。
 捜査関係者によると、夫婦は3月16日、大阪市淀川区のJR塚本駅のロータリーで、通行人に対し、50枚入りの使い捨てマスク1箱を3500円で販売した疑い。止めた車にマスクの箱を積んで購入を呼びかけており、他にも数人に売ったという。

 夫婦は3月初旬、クレジットカードを使い、中国の通販サイトでマスク数十箱を米ドルで購入。その日の為替レートで利益が出るように転売額を設定したが、カード決済は後日だったため、レートの変動で転売額の方が1箱数十円安くなった。夫婦は転売後、損失が出ていたことに気付いたという。

 夫婦は任意の調べに対し、「転売は違法だと認識していた」と供述したが、同法は高値での転売を規制しており、同署は起訴を求めない「しかるべき処分」の意見を付けた。

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=349CO0000000004
国民生活安定緊急措置法施行令
施行日: 令和二年三月十五日
最終更新: 令和二年三月十一日公布(令和二年政令第四十二号)改正
(法第二十六条第一項の政令で指定する生活関連物資等)
第一条 国民生活安定緊急措置法(以下「法」という。)第二十六条第一項の政令で指定する生活関連物資等は、衛生マスクとする。
(衛生マスクの転売の禁止)
第二条 衛生マスクを不特定の相手方に対し売り渡す者から衛生マスクの購入をした者は、当該購入をした衛生マスクの譲渡(不特定又は多数の者に対し、当該衛生マスクの売買契約の締結の申込み又は誘引をして行うものであつて、当該衛生マスクの購入価格を超える価格によるものに限る。)をしてはならない。

附 則 (令和二年三月一一日政令第四二号) 抄
(施行期日)
1 この政令は、公布の日から起算して四日を経過した日から施行する。
(経過措置)
2 改正後の第二条の規定は、同条に規定する譲渡のうちこの政令の施行の日前に締結された売買契約によるものについては、適用しない。