児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

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準強姦の逆転有罪判決(福岡高裁R02.2.5)

準強姦被告事件
福岡高等裁判所
令和2年2月5日第1刑事部判決
       判   決
原判決 福岡地方裁判所久留米支部 平成31年3月12日宣告
控訴申立人 検察官
       主   文
原判決を破棄する。
被告人を懲役4年に処する。
原審における訴訟費用は被告人の負担とする。
       理   由

 本件控訴の趣意は,検察官大竹純作成の控訴趣意書記載のとおりであり,これに対する答弁は弁護人共同作成の答弁書記載のとおりであるから,これらを引用する。論旨は,関係証拠によれば,被害者が抗拒不能の状態にあり,被告人が被害者の抗拒不能状態を認識し,その状態に乗じて被害者と性交をしたと認定できるから,被告人に無罪を言い渡した原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるというのである。
 そこで,以下,記録を調査して検討する(なお,当審で被告人質問を実施したが,被告人は終始黙秘したため,当審で取り調べた実質的証拠は存在しない)。
第1 事案の概要等
1 公訴事実
 本件公訴事実は,「被告人は,平成29年2月5日,□□□(以下「本件飲食店」という)店内において,被害者X(以下,被害者の氏名等は別紙呼称一覧表のとおり)が飲酒酩酊のため抗拒不能であるのに乗じ,同人と性交をした」というものである。
2 審理経
 原審は,公判前整理手続に付して争点と証拠を整理した。その結果,被告人が上記の日に本件飲食店で被害者と性交をした事実には争いがなく,争点は,〔1〕当時,被害者が抗拒不能の状態にあったか否か(争点1),〔2〕仮に被害者が抗拒不能の状態にあったとして,被告人がそれを認識していたか否か(争点2)の2点であると確認された。そして,第6回公判期日までの間に,同意された検察官請求証拠が取り調べられたほか,被害者を含め本件飲食店に居合わせた男女8名の証人尋問及び被告人質問が実施された。
第2 原判決の検討
1 原判決の要旨
 原判決は,争点1について,被害者は,被告人に対して抵抗することが著しく困難であり,抗拒不能の状態にあったと認定したが,争点2について,被告人が,被害者の抗拒不能状態を認識していたと認めるには合理的な疑いが残ると判断して,被告人を無罪としている。その理由の要旨は次のとおりである。
(1)争点1(被害者が抗拒不能の状態にあったか否か)について
ア 被害者は,本件飲食店で催された■■■■■■■■■■サークルの懇親会に前日午後11時頃から参加したが,当日午前4時15分頃までの数時間の間に多量のアルコールを短時間のうちに摂取し,店内北側のカウンター席で眠ったまま嘔吐するような状態に陥り,嘔吐後他の者に運ばれて店内南側のソファフロアに移動させられても,周囲の問い掛けに応じずに眠り込むような状態であった。そして,当日午前5時41分頃にはスカートの下にストッキングやパンツを履かずに横になり,添い寝する被告人から抱きつかれ,身体を触られたりしたが,それらの様子を写真撮影されても気付かず,その後,被告人と性交をしている。したがって,被害者は,嘔吐した時点で飲酒酩酊のため眠り込んだ状態であったと考えられ,ソファフロアに移動した後の様子からも,状況を認識して思うように体を動かすことができる状態ではなかったといえる。
イ 被害者は,帰宅後,■■■■■■■■■■サークルから退会し,産婦人科医院を受診して避妊薬の処方を受け,これを服用しているから,上記のような状況で性交をすることを許容していたとは考えられず,性交時において,状況を認識して思うように体を動かすことができる状態にはなかったといえる。
ウ したがって,被害者は,性交時,被告人に対して抵抗することが著しく困難であり,抗拒不能の状態にあったと認められる。
(2)争点2(被告人が被害者の抗拒不能状態を認識していたか否か)について
ア 被害者は,被告人と性交をした際,飲酒酩酊によって抗拒不能の状態にあったが,目を開けたり,大きくない声で何度か声を発したりすることができる状態にあり,それからあまり時間が経たないうちに被告人とは別の者から胸を触られた際,大きな声で「やめて」と言い,その手を振り払って抵抗できた。したがって,被害者は,性交時,飲酒による酩酊から覚めつつある状態にあり,意識があるかのように見える状態にあった。
イ 被告人は,原審公判において,犯行前,Dから「被告人のことが良いと言っているよ」と言われ,ソファフロアに案内された旨供述するところ,その供述が信用できないとはいえない。また,当日の懇親会や別の日の■■■■■■■■■■サークルのイベントにおいて,わいせつな行為がしばしば行われ,被告人も,以前に本件飲食店で被害者とは別の女性と性交に及んだことがあったなどと供述し,当日の懇親会において,女性に対して安易に性的行動に及ぶことができると考えていたことがうかがわれる。これらに加えて,被害者が,犯行時,被告人に対して明確な拒絶の意思を示していなかったことも併せると,被告人は,被害者が性交を許容していると誤信する状況にあったということができる。
ウ ソファフロアは,中央フロアと可動式の仕切扉によって区分されていたが,両フロアは行き来が可能であり,中央フロアにいた多数の者の中には,被告人と初対面の者がおり,犯行時,被告人は,ソファフロアに被害者以外にも女性が寝ていたことを認識している。したがって,被告人は,飲食店にいた他の者から警察等に通報されたり,被害者に事実を告げられたりするなどの危険があることを認識していたから,そのような中,被害者の同意がないとか,被害者が抵抗できない状態にあるなどといった認識の下で性交をするとは考え難い。
エ したがって,被害者が抗拒不能の状態にあったことを認識していなかった旨を述べる被告人の供述の信用性を否定することができない。
2 原判決の不合理性
 しかし,被告人は,飲酒酩酊のために眠り込んで抗拒不能の状態にあった被害者を直接見て性交をしているから,被害者の抗拒不能状態を認識していたと推論するのが当然であるのに,原判決が,争点2に関して,上記推論を妨げるものとして掲げる各事実は,いずれも認定することができないか,推論を妨げるとはいえないものであり,争点2に関する原判決の上記説示は,論理則,経験則に反しているといわざるを得ない。以下,補足して説明する。
(1)被害者が飲酒酩酊から覚めつつあり,意識があるかのように見える状態にあったと認定した点について
 所論が指摘するとおり,原判決は,被害者が飲酒酩酊による抗拒不能の状態であったと認定しているから,一時的に意識があるかのような反応をしたからといって,直ちに飲酒酩酊から覚めつつある状態にあるとはいえない。しかも,性交時に被害者の意識があったかのようにいう被告人の原審供述は,後記のとおり信用できない。原判決の認定には飛躍がある。
(2)被害者が性交を許容していると誤信するような状況にあったと認定した点について
 まず,原判決が指摘するDの発言については,単に被害者が被告人のことが良いと言っているというものにすぎず,仮にそのような発言があったとしても,所論が指摘するとおり,性交に同意していることを推認させるような具体性がない。また,原判決は,当日,女性に対して安易に性的行動に及ぶことができると考えていたという被告人の原審供述を誤信の根拠としているが,そもそもそのような非常識な発想を誤信の根拠とすること自体が不合理である上,被告人がそのように考えた根拠となる事情は,いずれも被害者とは無関係であるから,所論が指摘するとおり,男女間における性的関係に対する同意という極めて個人的な事柄を推論する際に用いることは相当ではない。仮に当日の懇親会に安易に性的行動に及ぶことができる雰囲気があったとしても,被害者は,初めて参加し,一気飲みをさせられて酔い潰れていたのであるから,そのような雰囲気を積極的に許容し,まして被告人との性交にまで同意したと考えるには,何段階もの飛躍がある。さらに,所論が指摘するとおり,原判決は,被害者が飲酒酩酊のため抗拒不能の状態にあったと認定しているから,被害者が明確な拒絶の意思を示すことができないのは当然であり,その点を被告人が誤信した根拠とするのは不合理である。
 このように,原判決が指摘する諸点は,いずれも被告人にとって,被害者が性交を許容していると誤信するような状況であったことを裏付ける事情とはいえない。原判決の推論は,論理則,経験則に反する不合理なものというほかない。
(3)ソファフロアの状況からすれば,被害者の同意がないとか,被害者が抵抗できない状態にあるなどといった認識の下で性交をしたとは考え難いと認定した点について
 原判決は,被告人が,他の参加者から目撃される可能性があることを認識していたことを指摘する。しかし,所論が指摘するとおり,通常はそのような状況で性交に同意する女性はいないから,むしろ被告人は被害者が同意しないことを認識して性交をしたと推認するのが合理的である。
 また,原判決は,目撃者から通報される危険性を指摘する。しかし,所論が指摘するとおり,当時,本件飲食店内は雑然とし,各参加者の行動を周囲が逐一把握していた状況にはないから,そのような危険性があったとは必ずしもいえない。
 そもそも,被告人は,自ら被害者がソファフロアのソファの上で下着等を露出したまま眠っている様子を写真撮影し,他の参加者から,被害者のスカート内側に手を入れるなどした姿を写真撮影されているが,被告人のこれらの行為を制止したり,通報しようとしたりする者はいなかった。また,被告人は,□□□と一緒にソファフロアに入った上で,被害者の近くに別の女性がもう1人寝ていることを認識しつつ被害者と性交をしている。これらの飲食店内の状況や被告人の行動からすれば,被告人は,被害者との性交を他人に見られて通報されることを不安に思うような状況にはなく,そのようなことを意に介さずに被害者が飲酒酩酊のため抗拒不能状態にあることに乗じて性交をしたとみるのが自然である。この点に関する原判決の判断も,論理則,経験則に反する不合理なものである。
第3 争点2に関する当裁判所の判断
1 はじめに
 そこで,改めて争点2に関する当裁判所の判断を示すと,被害者,A,B及びEの各原審供述を始めとする原審で取り調べられた関係証拠によれば,被告人は,犯行時,被害者の抗拒不能状態を認識していたものと優に認めることができ,それを否定する被告人の原審供述は,その認定に合理的疑いを生じさせるものとはいえない。以下,その理由を説明する。
2 被害者の原審供述について
(1)被害者の原審供述の概要
 被害者は,原審公判において,酩酊状況や被害状況等について,次のとおり供述する。すなわち,被害者は,前日午後11時半頃,Bとともに懇親会に参加したが,罰ゲームとしてテキーラを一気飲みさせられるなどして,いつもと比べて強い酒を速いペースで飲み,風邪からの病み上がりだったこともあって,酔っ払って眠ってしまい,カウンター席で嘔吐したことやソファフロアに運ばれたことを覚えていない。ところが,膣に異物が入ってきた痛みを感じて目を覚まし,被告人から性交をされていることが分かったが,飲酒酩酊の影響により抵抗することができず,再び眠ってしまった。その後,ソファフロアで目が覚めたときには被告人がいなくなっていたが,寝ている間に全然知らない人から無理やり性交をされたことが分かって声を出して泣いた,というのである。
(2)被害者の原審供述の信用性の検討
ア 飲酒酩酊して眠ってしまったという点について
 この点は,Bの原審供述によって裏付けられている。すなわち,Bは,被害者が一気飲みさせられるなどした末にカウンター席に座ったまま突っ伏した体勢で寝てしまい,おもちゃの剣を髪の毛に刺されるなどのいたずらをされても起きず,その体勢のまま吐いても起きず,男性から後ろ向きに引きずられて仕切り扉の向こう側にあるソファフロアに連れて行かれた。その後,Bは,ソファに横になる被害者に「大丈夫」と声を掛けたが,被害者は,きつそうで眠たそうな口調で「寝たら大丈夫」と答え,そのまま眠った,というのである。そして,■■■■■■■■■■サークルの主催者Fの携帯電話機には,当日午前4時15分に上記のとおりにいたずらされてもカウンター席に突っ伏して眠る被害者の写真(原審甲49)が保存され,被告人の携帯電話機には,当日午前4時22分にソファでスカートがまくり上げられ,下着等露出した状態で横になる被害者の写真(原審甲50)が保存されていた。これらの写真は,被害者及びBの各原審供述を客観的に裏付けているから,被害者は,午前4時22分頃にはソファで飲酒酩酊のため眠り込んでいたということができる。
イ 酩酊して眠っている最中に被告人から性交をされたという点について
 この点は,第1に,A及びEの各目撃供述によって裏付けられている。すなわち,両名とも,原審公判において,店内中央の仕切り扉の隙間からソファフロアをのぞいたところ,被告人がソファの上で被害者を正常位の体勢で性交をし,腰ないし体を前後に動かしているのが見えたが,その際,被害者は自らの意思で体を動かしているようには見えなかった,と供述している。両名の各原審供述は,いずれも具体的で臨場感があり,供述の信用性を疑わせるような不自然,不合理な点は見当たらず,見た場面と見なかった場面を区別するなど供述態度も真摯であり,相互に信用性を補強し合うものとして十分信用することができる。
 第2に,その後の被害者の言動とも整合する。すなわち,関係証拠によれば,被害者は,ソファフロアで目覚めた後に泣き出し,帰宅途中の車中でも泣き続け,■■■■■■■■■■サークルに入会して1週間程度しか経っておらず,■■■■■■■■■■ツアーに参加したこともなかったのに帰宅したその日のうちに突然退会し,翌日には産婦人科医院を受診し,避妊薬の処方を受けて服用している。このような被害者の言動は,被害者が,眠っている間に全然知らない人から無理やり性交をされたことが分かって悲しい気持ちになり,■■■■■■■■■■サークルと関わりたくないと思ったと供述する心理状態をよく表している。また,被告人が,被害者の太腿かその辺りに射精したと供述しているのに,被害者が,原審公判において,どこに射精されたかも分からないし,避妊具を使用していたかも分からなかったから産婦人科医院を受診したと供述するところも,被害者が性交をされた状況を十分に認識できていないことと整合している。
 第3に,被害申告の経緯も,被害者の原審供述の信用性を高めるものである。すなわち,Cの原審供述によれば,Cは,懇親会で初めて被害者やBと会ったが,2人が■■■■■■■■■■ツアーをすごく楽しみにしていたのに懇親会が終わった当日に突然■■■■■■■■■■サークルから退会したことを知って非常に疑問に思ったが,1,2週間後に催された■■■■■■■■■■ツアーに参加した際,寝ている間に主催者のFから体を触られるなどしたため,Bから連絡先を聞いて被害者に直接連絡したところ,被告人から被害に遭ったことを聞いた,というのである。そして,被害者は,Bとは別の友人から,警察に相談すると根掘り葉掘り聞かれて大変だと聞き,また,酔いすぎた自分にも非があると思うとともに,インターネット等で調べた結果,被害に遭ったその日に警察に相談に行かないと犯人のDNAが採取できないことが分かったので,警察に被害届は出さず,相談もしないつもりでいたが,Cから,自分も警察に相談しているから,勇気を持って警察に相談してみないかと進められ,心が痛むことを承知の上で警察署に相談に行った,というのである。このような被害申告に至るまでの被害者の消極的態度は,申告した被害内容が作為的なものではないことを示すものである。また,被害者が,Cに答えた内容は,当初から被害状況に関する供述が具体性を持って一貫していることを示している。これらの点は,被害者の原審供述の信用性を高めるものである。
3 事実認定等
(1)事実認定及び争点2に対する判断
 そうすると,信用できる被害者の原審供述に加えて,関係証拠によれば,被害者が被告人から性交をされた状況は,次のとおりであったと認めることができる。すなわち,被害者は,当日午前4時15分頃には本件飲食店内で飲酒酩酊してカウンター席で座ったまま眠り込んで嘔吐し,男性に引きずられてソファフロアに連れて行かれ,午前4時22分頃にはソファで眠りこんだ。そして,被害者は,当日午前5時41分頃には眠ったまま,被告人から陰部を触られるなどした末に性交をされ,陰部に痛みを感じて目を覚ましたが,飲酒酩酊の影響により抵抗することができずに再び眠り込んだ,というのである。
 このように,被告人は,被害者が飲酒酩酊のため眠り込んでいる状態に乗じて性交をしているから,被害者が抗拒不能の状態にあることを認識していたことは明らかである。
(2)被告人の原審供述等について
 これに対し,被告人は原審公判において,次のとおり,被害者が性交に同意していたかのように供述する。すなわち,被告人は,Dから,被害者が,被告人のことが良いと言っているよと呼ばれてソファフロアに行ったところ,被害者は横になってパンツをはいてなかった。被告人は,被害者に抱きついて口にキスをしたが,被害者は眠っておらず,胸や陰部を触っても嫌がらなかったので,「いい」と尋ねたところ,被害者は,戸惑ったように「えっ」と言っただけで,明確に拒否しなかったので受入れられたと思って正常位で性交をし,その最中,被害者から「ゴムは」みたいなことを聞かれたが,「ゴムはないよ」と答えた。被害者は,少し気持ちよさそうにあえぎ,声を出して普通に性交に応じている様子であり,やめてとか,痛い痛いとか,そういう発言はなかった,というのである。そして,原判決は,Bの原審供述に照らし,Dから上記のとおり言われた旨の被告人の原審供述が信用できないとはいえないとか,上記の被害者とのやり取りも不自然ではない,などと認定している。
 しかし,Bは,原審公判において,被告人がDから手招きされてDと一緒にソファフロアに入るのを見たと供述するが,Dの被告人に対する上記発言を聞いたとは供述していない。また,被害者が飲酒酩酊して眠ったまま嘔吐するなどしてソファフロアに連れて行かれた経緯や,被害者が被告人とは初対面であり、2人が当日意気投合したような状況がなく,Dが被害者の気持ちを代弁する立場にもないことからすると,Dが上記発言をしたかは疑問があり,この点に関する被告人の原審供述は不自然である。しかも,被告人は,原審公判において,被害者は眠っておらず,意識は全然普通にあるように感じたと供述するが,あいまいで具体性も臨場感もない内容に終始している上,前記A及びEの各目撃供述とも整合しない。そもそも,被害者は,被告人とはほとんど面識がなく,意識を失うほど泥酔して眠り込み,目覚めた後は被害に気付いて泣き続けていたから,被告人との性交の最中に「ゴムは」などという問い掛けをするはずがなく,まして明確な意識を持った状態で性交に応じたとは到底考えられない。仮に被害者が,被告人との性交の最中に,被告人からの刺激に対し,無意識な反応を多少示したことがあったとしても,それが被害者の明確な意識に基づく行動ではないことは容易に理解することができたはずであり,被告人が,被害者のそのような意識朦朧とした状態を直接見て認識していたことは明らかである。したがって,被告人の原審供述は全体的に信用性が低く,これをもって前記認定に合理的疑いを生じさせるものとはいえない。
 また,被告人の上記供述に沿うGの原審供述については,当時Gが被告人と不貞関係にあり,起訴前に実施された期日前証人尋問において,被告人をかばう虚偽の供述をしていたことからすると,信用性は低いというほかない。 
第4 破棄自判
 以上からすると,論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。
 そこで,刑訴法397条1項,382条により原判決を破棄し,同法400条ただし書により更に判決をする。
(罪となるべき事実)
 第1の1に記載した本件公訴事実と同じである。
(証拠の標目)《略》
(法令の適用)
 被告人の判示所為は平成29年法律第72号附則2条により同法による改正前の刑法178条2項,177条前段に該当するので,その所定刑期の範囲内で被告人を懲役4年に処し,原審における訴訟費用については,刑訴法181条1項本文により全部これを被告人に負担させることとする。
(量刑の理由)
(原審における検察官の求刑 懲役4年)
検察官山本佐吉子 公判出席
令和2年2月5日
福岡高等裁判所第1刑事部
裁判長裁判官 鬼澤友直 裁判官 平島正道 裁判官 三芳純平