児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

9条は児童買春罪(4条)には適用されないのに「18才未満と知らずに、そしてその知らないことに過失がない時には違法ではないことになります」という弁護士の回答

 そもそも、9条の年齢知情規定は、「第五条、第六条、第七条第二項から第八項まで及び前条の規定による処罰を免れることができない」となっているので、4条の児童買春罪には適用されません。
 A1弁護士の回答が正解で、故意犯ですから、児童であることを知って買春行為をした場合だけが処罰され、過失で知らなかった場合には処罰されませんよね。
 9条の反対解釈として、使用者でない場合には、故意犯であって過失犯は処罰されないと説明する実務家もいます。

(児童買春)
第四条  児童買春をした者は、五年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
(児童買春周旋)
第五条  児童買春の周旋をした者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2  児童買春の周旋をすることを業とした者は、七年以下の懲役及び千万円以下の罰金に処する。
(児童買春勧誘)
第六条  児童買春の周旋をする目的で、人に児童買春をするように勧誘した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2  前項の目的で、人に児童買春をするように勧誘することを業とした者は、七年以下の懲役及び千万円以下の罰金に処する。
児童ポルノ所持、提供等)
第七条  自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。自己の性的好奇心を満たす目的で、第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管した者(自己の意思に基づいて保管するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)も、同様とする。
2  児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
3  前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
4  前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
5  前二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
6  児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
7  前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
8  第六項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。
(児童買春等目的人身売買等)
第八条  児童を児童買春における性交等の相手方とさせ又は第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を描写して児童ポルノを製造する目的で、当該児童を売買した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
2  前項の目的で、外国に居住する児童で略取され、誘拐され、又は売買されたものをその居住国外に移送した日本国民は、二年以上の有期懲役に処する。
3  前二項の罪の未遂は、罰する。
(児童の年齢の知情)
第九条  児童を使用する者は、児童の年齢を知らないことを理由として、第五条、第六条、第七条第二項から第八項まで及び前条の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失がないときは、この限りでない。

木村光江 児童買春等処罰法の運用と課題 (「犯罪と非行」124、P119〜)
「児童を使用する者」の定義規定は本法にはないが.児童福祉法上「雇傭その他,児童との身分的若しくは組織的関係において児童の行為を利用しうる地位にある者」あるいは「特にその年齢の確認を義務づけることが.社会通念上相当と認められる程度の密接な結びつきを当該児童との間に有する者」をいうとされる。本法に即していえば,買春の周旋者,児童ポルノ製造者等がこれに当たる(46)。

東京高裁H7.7.6
児童福祉法60条3項にいう「児童を使用する者」というためには,児童との身分的又は組織的関係において児童を管理・支配しその行為を継続的に利用し得る地位にあれば足り,弁護人の主張するように,児童と民法上の雇用関係ないし労働基準法上の労使関係に立つことや,これとの間に労使関係類似の支配従属関係があることまで必要とするものではないと解すべきである。なぜなら,そのように解することが,心身の発育の未熟な児童の保護を図った児童福祉法の前記規定の趣旨に最もよく合致し,同条の文理からみても無理がないと考えられるからである。
東京高裁H7.5.31
ところで、児童福祉法六〇条三項の「児童を使用する者」とは、当該児童との間に継続的な雇用関係ないし身分関係にある者に限られず、広く当該児童との間に、社会通念上その年齢確認を義務つけることが相当として是認されるだけの継続的な支配従属関係があると認められる者、いいかえると、その者が当該児童に心理的ないし経済的な影響を及ぼすことにより当該児童の意思決定を左右しうる立場にあると認められるような関係を有する者も含まれると解すべきである。本件についてこれをみると、被告人は、自己の支配する組事務所に寝泊まりさせていた右児童らの依頼に応じてスナックのホステスとして就業させることによって、右児童らに対し、その住居等を提供するのと引換えに、児童らがスナックから得る賃金のうちから一定の割合による金員を取得するという関係を築こうとしたもので、被告人が暴力団組長であり、児童らが家出により親の監護から完全に離脱した状態で、所持金も乏しく自活能力も極めて低い状態にあったという当時の客観的な状況にもかんがみると、被告人と右児童らとの間には、右にいう支配従属の関係があり、したがって、被告人が右条項における「児童を使用する者」に当たるというべきである。本件の場合、確かに、児童らは被告人が自らの手で組事務所に連れてきたわけではなく、スナックへのその就業も被告人が強制したものではなく、児童らの自発的な就業斡旋の依頼に応じたものにすぎないこと、組事務所における児童らの日常生活も、被告人やその配下組員の監視、干渉によりその行動の自由が奪われたり、制限されたりしていたわけではなく、また、親許との連絡についても、児童らには何らの制約も加えられていなかったこと、被告人が児童らから就業斡旋を依頼され、同女らを配下組員が近い将来開業しようとしていたコンパニオンクラブで働かせようと企図し、また、被告人か児童らから食事代の名目で日日金員を徴収していたことは前述のとおりではあるものの、被告人が児童らの労働によりそれ以上の経済的ないし社会的利益をむさぼろうとしていたことを認めるに足りる証拠はないことなどの諸事情があることは、いずれも所論の指摘するとおりではあるけれども、これらの所論指摘の諸事情は、右判断の妨げとなるものではない。
最高裁H5.10.26
本件児童をして同社が制作するビデオ録画1本に出演料80万円で出演させる契約を締結し,その上で,本件児童をして,Aの指揮監督の下に,2日間にわたり,いずれも午前8時ころから午後10時ころまで,東京都渋谷区内のスタジオなどにおいて,同社の制作関係者が事前に立てた録画予定表に従い,男優を相手として,露骨な性戯,模擬性交などのわいせつな演技をさせるなどし,もって,右BおよびAらと意思相通じ,児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的でこれを自己の支配下に置いたというのであって,右の事実関係の下においては,被告人が児童福祉法60条3項にいう「児童を使用する者」に当たることは明らかである。
東京高裁H2.3.28
思うに,児童福祉法34条1項9号にいう「児童を自己の支配下に置く行為」とは,児童を,使用,従属の関係において,その意思を左右し得る状態の下に置くことをいい,また,同法60条3項にいう「児童を使用する者」とは,児童と継続的雇用関係にある者のみに限定されないが,少なくとも児童と雇用関係類似の密接な社会的関係において児童の行為を利用し得る地位にある者をいうと解するのが相当である。

https://www.bengo4.com/c_1009/c_19/b_394224/
Q 児童と知らないでした児童買春行為の罪責2015年10月22日 12時06分

A1弁護士の回答2015年10月22日 12時42分 
その場合は故意がありませんので犯罪にはならないといえるでしょう。

A2弁護士の回答 2015年10月22日 13時01分
児童買春、児童ポルノに関わる法律第9条に、「児童を使用する者は、児童の年齢を知らないことを理由として、第五条から前条までの規定による処罰を免れることができない。ただし、過失がないときは、この限りでない。」18才未満と知らずに、そしてその知らないことに過失がない時には違法ではないことになります。
実際には18歳と知らないことに過失がないというのは、年齢確認をしたのに女の子が身分証明書を偽造してた場合などがそうですが、児童買春するのにいちいちそんなことしないでしょうから、実質的にはただ知らなかったというだけで無罪を主張するのは難しいと思います。
ただ知らなかったことに正当性が認められれば理論どおり無罪です。
また、淫行条例の中には、過失でも処罰をしているものがあります。