児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

被害者との示談で「実名を被告に知らせない」と約束。男が実名を知った時は、〈1〉被害者は家族ごと転居〈2〉転居費用を被告が負担――との条件

 被害者匿名の起訴状の是非はさておき、匿名を求める被害者の場合、弁護人から「示談していただいて弁護人も協力すれば、法廷で一切被害者の名前を出さないし、被告人にも知らせないこともできますよ。」と切り出す材料ができたという見方もできますよね。

http://www.yomiuri.co.jp/national/20140426-OYT1T50041.html?from=tw
性犯罪被害者が被告に実名を知られ再被害に遭わないよう、水戸地検支部が実名を伏せて起訴した強制わいせつ事件の初公判が25日、水戸地裁支部であった。
 匿名による起訴を弁護側も求めたが、裁判所側は「再被害の恐れはない」と拒否。検察側と弁護側は協議し、検察官が法廷で実名を書いた紙を示し、被告が顔をそむけて確認しないという方法で被害者の保護を図った。一方、裁判所側はこの態度を公判調書に記載しない意向で、匿名起訴状を巡る異例の展開となった。

 ◆実名書いた紙示す…被告は見ず◆
 強制わいせつと住居侵入の罪で起訴されたのは県内の男(29)。昨年12月、面識のない女性を襲ってわいせつな行為をしたとして、今年2月に起訴された。起訴状では、被害者を生年月日などとともに「当時○歳の女性」と記載。県警も被害者を匿名にして男の逮捕状を請求、執行していた。

 25日午後4時の開廷直後、裁判長が「再被害の具体的な恐れは認められず、実名記載の例外には当たらない」と発言。起訴状の補正の有無を問われた検察官は「実名を追加し、メモを使う」と回答した。検察官が起訴状朗読後、証言台の前に立つ男に歩み寄ると、弁護人も男の右隣まで接近した。検察官が実名の記された紙を見せると、男は弁護人の方に顔をそむけた。

 被告人質問では、弁護人が「検察官が出した書面を見ましたか」と質問。男は「いいえ。被害者の名前を知らないようにするために見なかった」と答えた。

 検察側は起訴にあたり、行きずりの犯行で態様が悪質なことなどから、「2次被害の恐れがある」として匿名化を決めた。弁護側は被害者との示談で「実名を被告に知らせない」と約束。男が実名を知った時は、〈1〉被害者は家族ごと転居〈2〉転居費用を被告が負担――との条件も設けていた。

 事前協議で、検察側と弁護側は「被害者、被告双方の利益に合致する」として、裁判長に匿名による起訴を主張。検察側は3月20日付で再被害の可能性を訴える意見書を出したが、裁判長は実名記載を求め、「紙の提示」を提案したという。

 検察側から説明を受けた被害者側は嫌悪感を示しつつ、「(男が)処罰されるなら」と同意したという。

 弁護側は当初、公判で「実名は不要」と発言する予定だったが裁判長が認めず、検察側と協議し、「紙を見ない」ことにした。

 裁判は即日結審し、検察側は懲役2年を求刑した。
 水戸地裁管内での匿名起訴は2件目だった。
 検察側は、異例の措置を講じたことについて、「外形的には実名起訴だが、被告に被害者名は知られていない」としている。