児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

強制わいせつ致傷罪と児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条3項の児童ポルノ製造罪の関係につき,具体的事実関係を踏まえ,併合罪の関係にあるとした事例松山地判平26.1.22裁判所ウェブサイト警察実務重要裁判例 平成26年版(立花書房)

http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20140416#1397482076
でも説明しましたが、この判決は強制わいせつ罪とは観念的競合、強制わいせつ致傷罪とは併合罪としています。


本判決は,同一の被害児童に対して同一機会に行われた強制わいせつ致傷行為と児童ポルノ製造行為について,その具体的事実関係を踏まえ,観念的競合(刑法54条1項前段)ではなく,併合罪(刑法45条前段)に当たる場合があるとしたものである。
そもそも観念的競合に当たるか否かの判断について,最高裁は,「(刑法54条1項前段にいう) 1個の行為とは,法的評価をはなれ構成要件的観点を捨象した自然的観察のもとで,行為者の動態が社会的見解上一個のものとの評価を受ける場合をいうJとしており(最大判昭和49.5 .29),現在の実務もこれに沿ったものとなっている。
本判決は,上記最高裁判決を踏まえ.本件強制わいせつ致傷等事実については,同時に審理された他の6件の事実とは異なり,撮影行為だけでなく,胸や陰部を触るという児童ポルノ製造罪の実行行為ではない行為が含まれていることに加えて,被告人が児童から逃げるための暴行にも及んでいるという具体的な事実関係を踏まえ.強制わいせつ致傷と児童ポルノ製造は,その行為の一部に重なる点があるにすぎず,それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のものといえるとして,両罪は,観念的競合ではなく,併合罪の関係にある旨判示した。本判決は.あくまでも当該事案における具体的な事実関係を踏まえた事例判断であるものの,この種事案における罪数の考え方の参考になる事例と思われる。
なお.本件強制わいせつ致傷等事実に関しては,犯行態様の一部に争いがあり,被害児童の供述の信用性も争点となったところ,本判決は,被害児童の供述を全面的に信用し被告人の供述を虚偽として排斥することはできないとして,被告人の供述に沿った事実を認定しており,その点において,直接証拠が被害者供述のみである事案における事実認定の難しさを示したものでもあり、その意味でも参考になる事案と思われる。