児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

強制わいせつ罪の可能性がある強制sextingの事案につき、強要罪ないし3項製造罪で起訴することも許される(仙台高裁H23.9.15)

 強制わいせつ罪が成立する場合には、強要罪は成立しないはずなのにという実体法上の問題と、強制わいせつ罪の一部起訴は許されるのかという訴訟法上の問題があります。
 ホントは強制わいせつ罪なんですが、生活安全課が処理すると、刑事課に遠慮して、強制わいせつ罪での立件を回避して、被害者に告訴をもらいに行ってないんですよ。それは、犯人にとってはラッキーですが、強制わいせつ被害者にとってはお気の毒なことです。一事不再理効により強制わいせつ罪での再起訴はできません。
 なお、仙台高裁は、強要行為も製造行為も、強制わいせつ罪の一部だと認定しています。

引用されている判例

裁判年月日 昭和59年 1月27日 裁判所名 最高裁第一小法廷 裁判区分 決定
事件番号 昭58(あ)909号
事件名 公職選挙法違反被告事件 〔宇野亨派選挙違反事件・上告審〕
なお、選挙運動者たる乙に対し、甲が公職選挙法二二一条一項一号所定の目的をもつて金銭等を交付したと認められるときは、たとえ、甲乙間で右金銭等を第三者に供与することの共謀があり乙が右共謀の趣旨に従いこれを第三者に供与した疑いがあつたとしても、検察官は、立証の難易等諸般の事情を考慮して、甲を交付罪のみで起訴することが許されるのであつて、このような場合、裁判所としては、訴因の制約のもとにおいて、甲についての交付罪の成否を判断すれば足り、訴因として掲げられていない乙との共謀による供与罪の成否につき審理したり、検察官に対し、右供与罪の訴因の追加・変更を促したりする義務はないというべきである。従つて、これと同旨の見解のもとに、被告人に対し交付罪の成立を認めた原判断は、正当である。

裁判年月日 昭和28年12月16日 裁判所名 最高裁大法廷 裁判区分 判決
事件番号 昭27(さ)1号
刑集 7巻12号2550頁
裁判集刑 89号465頁
 検事総長の非常上告理由について。
 一件記録によれば、被告人高橋義男、同上田好道の両名が相被告人山口文雄、同高橋一彦外三名と共同して暴力行為等処罰に関する法律第一条違反行為をしたものとして、昭和二三年一二月三〇日福島地方裁判所支部に起訴されたところ、同二四年四月五日同裁判所は、起訴に係る右所為は、被害者に対する強姦罪の構成要素でこれと不可分の関係にあって、しかも、強姦罪については、告訴が取下げられたから暴力行為についても公訴権が消滅したとの理由で公訴棄却の判決を言渡したこと、検察官が右判決に対し控訴の申立を為し、仙台高等裁判所は、右の公訴事実を認定して被告人等の所為を暴力行為等処罰に関する法律に違反するものとして所論の有罪判決を為し、被告人両名に対する該判決がそれぞれ確定するに至ったこと、並びに、昭和二七年七月一一日当裁判所第二小法廷は、右仙台高等裁判所の判決に対し上告を申立てた相被告人山口文雄、同高橋一彦の両名に対し、前記平支部の判決と同様の理由を以て原判決を破棄し右両名に対する公訴を棄却する旨の判決をしたことは、いずれも、所論のとおりである。
 しかし、暴力行為等処罰に関する法律第一条の違反行為は、同条所定の構成要件を充足するによって成立する非親告罪であって、その内容が数人共同して暴行をした場合でも必ずしも刑法一七七条前段の強姦罪の構成要素ではなく、まして、これと不可分の一体を為すものではない。従って、検察官が、同法律第一条違反の公訴事実のみを、何等姦淫の点に触れずに、同条違反の罪として起訴した以上、裁判所は、その公訴事実の範囲を逸脱して、職権で親告罪である強姦罪の被害者が姦淫された点にまで審理を為し、その暴力行為は、起訴されていない該強姦罪の一構成要素であると認定し、しかも、当該強姦罪については告訴がないか又は告訴が取消されたとの理由をも明示して、公訴を棄却する旨の判決を為し、これを公表するがごときこと(そして、かくのごときは、却って被害者の名誉を毀損し、強姦罪親告罪とした趣旨を没却すること勿論である。)の許されないこというまでもない。