で、結局、自分で考える。
弁護人としては、強制わいせつの既遂後に、姦淫しようとしたときとかの強姦の要件とか疑問を抱えています。これは東京高裁で考えてもらっています。
強盗以外の他の目的で暴行・脅迫を加え,被害者の反抗を抑圧した後に,不法領得の意思を生じて財物を奪った場合に強盗罪が成立するかについては従来から議論されてきたところですが,正面からこの論点について判断した最高裁の判例はなく,下級審の裁判例も判断が分かれています。
東京高裁平成20年3月19日判決(確定。判タ1274号342頁)は,強制わいせつの目的で,被害者を緊縛した後,新たに不法領得の意思を生じて携帯電話等を奪ったという事案について,強盗罪の成立を認めましたが,第133回検事一般研修の捜査・公判事例研究会において,研修員から,同判決と類似の事例について強盗罪で処理した旨の報告がされましたので,同事例を題材として,改めて本論点について整理し,検討を加えたいと思います。
なお,本稿中,意見にわたる部分は筆者の私見です。
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第4 おわりに
本論点については,いまだ争いがあり,強盗罪の成立が認められるか,その場合の理論構成をいかにすべきかについては,今後の裁判例の集積を待つ必要があると思われます。
実務においては,被害者を強姦し,その財物を奪った被疑者が,「最初から財物を奪うつもりはなかった。強姦後,たまたま被害者が持っていたバッグが路上に落ちているのが目に入ったので,これを盗った。」などと弁解し,強盗の犯意を否認することは決して珍しいことではありません。
改めて言うまでもありませんが,被疑者の発した言葉だけでなく,目つきなどの動作,それらを認識した際の被害者の心情等について詳細に取り調べ,また,事後の財物の利用状況や被疑者の余罪等から。当初から不法領得の意思があったことをうかがわせる事情がないかなどについて丹念に捜査していくことが必要です。
(法務総合研究所教官)