児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

条例による児童ポルノ規制

 法律と条例の抵触の問題が出てきます。
 国法で禁止しないとした場合に、条例での規制を容認する趣旨なのかどうかです。
 奈良県は、性犯罪防止(子どもポルノが県内にあると性犯罪が増える?)という別の目的を決めて、対象も13歳未満に下げて、抵触の問題をクリアしています。
 国法の改正動向が影響するのですが、気にしていると何もできません。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100604-00000031-kyt-l26
府、331億円の補正案発表 当初予算を肉付け、地域包括ケアなど
6月4日13時49分配信 京都新聞
 歳出では、福祉や医療、介護を一体化したサービスを地域で提供する「京都式地域包括ケア」の体制づくりや専門知識を備えた人材育成などに4億8千万円を計上。児童ポルノ規制条例の制定に向けた検討会議の設置に100万円を充てる。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100605-00000160-mailo-l26
児童ポルノ規制条例検討会議の設置費100万円−−など。
学校裏サイトなどの中傷・いじめの書き込みを監視する民間委託費500万円−−など

http://www.pref.nara.jp/somu-so/jourei/reiki_honbun/k4011081001.html
子どもを犯罪の被害から守る条例
第一条 この条例は、子どもの生命又は身体に危害を及ぼす犯罪の被害を未然に防止するため、県、県民及び事業者の責務を明らかにするとともに、必要な施策及び規制する行為を定め、もって子どもの安全を確保することを目的とする。
第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
四 子どもポルノ 写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次のいずれかに掲げる子どもの姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
ア 子どもを相手方とする又は子どもによる性交又は性交類似行為に係る子どもの姿態
イ 他人が子どもの性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触る行為又は子どもが他人の性器等を触る行為に係る子どもの姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
ウ 衣服の全部又は一部を着けない子どもの姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの

参考判例

最高裁第一小法廷 昭和53年12月21日
工作物除却命令無効確認請求事件
一(一) 憲法九四条は、「地方公共団体は、……法律の範囲内で条例を制定することができる。」と定め、また、地方自治法一四条一項も、「普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第二条第二項の事務に関し、条例を制定することができる。」と定めている。これは、条例制定権の根拠であるとともに、その範囲と限界を定めたものである。したがつて、普通地方公共団体は、法令の明文の規定又はその趣旨に反する条例を制定することは許されず、そのような法令の明文の規定又はその趣旨に反する条例は、たとえ制定されても、条例としての効力を有しないものといわなければならない。
   (藤崎萬里 団藤重光 本山亨 戸田弘 中村治朗) 

最高裁大法廷 昭和50年 9月10日
事件名 集団行進及び集団示威運動に関する徳島市条例違反、道路交通法違反被告事件 〔徳島市公安条例事件・上告審〕
第二 当裁判所の見解
 一 本条例三条三号、五条と道路交通法七七条、一一九条一項一三号との関係について
 道路交通法は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的として制定された法律であるが、同法七七条一項は、「次の各号のいずれかに該当する者は、それぞれ当該各号に掲げる行為について」所轄警察署長の許可を受けなければならないとし、その四号において、「前各号に掲げるもののほか、道路において祭礼行事をし、又はロケーションをする等一般交通に著しい影響を及ぼすような通行の形態若しくは方法により道路を使用する行為又は道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすような行為で、公安委員会が、その土地の道路又は交通の状況により、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図るため必要と認めて定めたものをしようとする者」と規定し、同条三項は、一項の規定による許可をする場合において、必要があると認めるときは、所轄警察署長は、当該許可に道路における危険を防止しその他交通の安全と円滑を図るため必要な条件を付することができるとし、同法一一九条一項一三号は、七七条三項により警察署長が付した条件に違反した者に対し、これを三月以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する旨の罰則を定めている。そして、徳島県においては、徳島県公安委員会が、右規定により許可を受けなければならない行為として、徳島県道路交通施行細則(昭和三五年一二月一八日徳島県公安委員会規則第五号)一一条三号において、「道路において競技会、踊、仮装行列、パレード、集団行進等をすること」と定めており、本件集団示威行進についても、主催者から所轄徳島東警察署長に対し、道路交通法七七条一項四号、徳島県道路交通施行細則一一条三号により道路使用許可申請がされ、徳島東警察署長から、「だ行進、うず巻行進、ことさらなかけ足又はおそ足行進、停滞、すわり込み、先行てい団との併進、先行てい団の追越し及びいわゆるフランスデモ等交通秩序を乱すおそれがある行為をしないこと」等四項目の条件を付して、道路使用許可がされている。
 他方、本条例は、一条において、道路その他公共の場所で集団行進を行おうとするとき、又は場所のいかんを問わず集団示威運動を行おうとするときは、同条一号、二号に該当する場合を除くほか、徳島市公安委員会に届け出なければらないとし、三条において、
 「集団行進又は集団示威運動を行おうとする者は、集団行進又は集団示威運動の秩序を保ち、公共の安寧を保持するため、次の事項を守らなければならない。
 一 官公署の事務の妨害とならないこと。
 二 刃物棍棒その他人の生命及び身体に危害を加えるに使用される様な器具を携帯しないこと。
 三 交通秩序を維持すること。
 四 夜間の静穏を害しないこと。」
と規定し、五条において、三条の規定等に違反して行われた集団行進又は集団示威運動(以下、「集団行進等」という。)の主催者、指導者又はせん動者に対し、これを一年以下の懲役若しくは禁錮又は五万円以下の罰金に処する旨の罰則を定めている。
 本件一、二審判決は、憲法九四条、地方自治法一四条一項により、地方公共団体の条例は国の法令に違反することができないから、本条例三条三号の「交通秩序を維持すること」とは道路交通法七七条三項の道路使用許可条件の対象とされる行為を除くものでなければならないという限定を付したうえ、本条例五条の罰則の犯罪構成要件の内容となる本条例三条三号の規定の明確性の有無につき判断しているのであるが、まず、このような限定を加える必要があるかどうかを検討する。
 道路交通法は、前述のとおり、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図ること等、道路交通秩序の維持を目的として制定されたものであり、同法七七条三項による所轄警察署長の許可条件の付与もかかる目的のためにされるものであることは、多言を要しない。
 これに対し、本条例の対象は、道路その他公共の場所における集団行進及び場所のいかんを問わない集団示威運動であつて、学生、生徒その他の遠足、修学旅行、体育競技、及び通常の冠婚葬祭等の慣例による行事を除くものである。
 このような集団行動は、通常、一般大衆又は当局に訴えようとする政治、経済、労働問題、世界観等に関する思想、主張等の表現を含むものであり、表現の自由として憲法上保障されるべき要素を有するのであるが、他面、それは、単なる言論、出版等によるものと異なり、多数人の身体的行動を伴うものであつて、多数人の集合体の力、つまり潜在する一種の物理的力によつて支持されていることを特徴とし、したがつて、それが秩序正しく平穏に行われない場合にこれを放置するときは、地域住民又は滞在者の利益を害するばかりでなく、地域の平穏をさえ害するに至るおそれがあるから、本条例は、このような不測の事態にあらかじめ備え、かつ、集団行動を行う者の利益とこれに対立する社会的諸利益との調和を図るため、一条において集団行進等につき事前の届出を必要とするとともに、三条において集団行進等を行う者が遵守すべき事項を定め、五条において遵守事項に違反した集団行進等の主催者、指導者又はせん動者に対し罰則を定め、もつて地方公共の安寧と秩序の維持を図つているのである。
 このように、道路交通法は道路交通秩序の維持を目的とするのに対し、本条例は道路交通秩序の維持にとどまらず、地方公共の安寧と秩序の維持という、より広はん、かつ、総合的な目的を有するのであるから、両者はその規制の目的を全く同じくするものとはいえないのである。
 もつとも、地方公共の安寧と秩序の維持という概念は広いものであり、道路交通法の目的である道路交通秩序の維持をも内包するものであるから、本条例三条三号の遵守事項が単純な交通秩序違反行為をも対象としているものとすれば、それは道路交通法七七条三項による警察署長の道路使用許可条件と部分的には共通する点がありうる。しかし、そのことから直ちに、本条例三条三号の規定が国の法令である道路交通法に違反するという結論を導くことはできない。
 すなわち、地方自治法一四条一項は、普通地方公共団体は法令に違反しない限りにおいて同法二条二項の事務に関し条例を制定することができる、と規定しているから、普通地方公共団体の制定する条例が国の法令に違反する場合には効力を有しないことは明らかであるが、条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾抵触があるかどうかによつてこれを決しなければならない。例えば、ある事項について国の法令中にこれを規律する明文の規定がない場合でも、当該法令全体からみて、右規定の欠如が特に当該事項についていかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であると解されるときは、これについて規律を設ける条例の規定は国の法令に違反することとなりうるし、逆に、特定事項についてこれを規律する国の法令と条例とが併存する場合でも、後者が前者とは別の目的に基づく規律を意図するものであり、その適用によつて前者の規定の意図する目的と効果をなんら阻害することがないときや、両者が同一の目的に出たものであつても、国の法令が必ずしもその規定によつて全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨ではなく、それぞれの普通地方公共団体において、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解されるときは、国の法令と条例との間にはなんらの矛盾抵触はなく、条例が国の法令に違反する問題は生じえないのである。