児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

強制わいせつ罪と3項製造罪は観念的競合(名古屋高裁H22.3.4)

 原判決はこんな感じに分断されて併合罪とされていましたので、観念的競合か包括一罪でとにかく科刑上一罪だと主張していました。名古屋高裁によれば、これは社会的見解上一個の行為で、観念的競合だということです。
 じゃあ、第1だけだと強制わいせつ罪未遂じゃないかという控訴理由については、犯人の企図の一部であっても、わいせつ行為が行われれば既遂になるという判断です。傾向犯だと全部やって既遂という結論に親しむわけで、これも珍しい判断です。じゃあ残りの行為は単純一罪なのか包括一罪なのか継続犯なのかという問題が出てきます。時間的にある程度長引くわいせつ行為もありますので。

罪となるべき事実
第1 平成22年5月3日午前9時10分ころ,大阪市北区西天満Aマンション階段付近において,B(当時11歳)に対し,同児が13歳未満であることを知りながら,同児に口淫させるなどし、もって13歳未満の女子に対し,わいせつな行為をした
第2 前記第1の日時場所において,同児が18歳に満たない児童であることを知りながら,同児に対し,自己の所有する携帯電話機の静止画機能を使用し,同児に前記第1の口淫行為等に係る児童の姿態をとらせて撮影し,その静止画を同携帯電話機に記録させ,もって児童に児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものをとらせ,これを電磁的記録に係る記録媒体に描写する方法により,児童ポルノを製造した

 観念的競合と明示したのは、仙台高裁に続いて2件目。
 併合罪の原判決には、科刑上一罪だといい、観念的競合の原判決には吸収一罪・包括一罪だと言っていけば、観念的競合説で収束すると見込んでいますので、ご協力ください。
 立法者には思いもよらない論点でしょうが、現場で固めてしまう。

名古屋高裁H22.3.4
論旨は,原判示第2,第3、第6,第7及び第8の各事実について、同一機会の強制わいせつと児童ポルノの製造であるから,観念的競合とすべきであったのに,両者を併合罪とした原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
確かに,所論のとおり,被害児童らに対し手淫ないし口淫させた姿を撮影した行為は,児童ポルノ製造の実行行為となるほか,強制わいせつ罪の実行行為にも当たるから,強制わいせつの事実において上記撮影の点が起訴,認定されていないことを考慮しても,上記の行為は1個の行為が児童ポルノ製造罪及び強制わいせつ罪の2個の罪名に触れるものというべきであって,両罪は観念的競合となると解される。
原判決にはこの点において法令適用の誤りがあるといわざるを得なりが,正しく法令適用した場合と原判決のした法令適用とにおいて最終的な処断刑の範囲は変わらないから,その誤りは判決に影響を及ぼすものではない。
論旨は理由がない。