児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童ポルノの被害者数↑→

 素人向けに名前がわかったのだけをカウントするという話をまとめました。
 統計は↓。

少 年 非 行 等 の 概 要( 平 成 20年 1 〜 12月 )
http://www.npa.go.jp/safetylife/syonen38/syonenhikou_h20.pdf
(6) 児童買春・児童ポルノ禁止法違反事件
児童ポルノ事件の送致件数は676件(同19.2%増)、送致人員は412人(同9.3%増)、被害児童数は351人(同27.6%増)と増加した。

 児童ポルノ事件には少なくとも1人の被害児童がいるので、件数676件なら、676人以上の被害児童がいる。
 なのに、統計上の被害児童数は351人。少なくとも325人を数えていない。

 これは↓の判例があるから。

阪高裁H12.10.24
児童ポルノ法の立法趣旨、すなわち、同法が、児童ポルノに描写される児童自身の権利を擁護し、ひいては児童一般の権利をも擁護するものであることに照らすと、児童ポルノに描写されている児童が実在する者であることは必要であるというべきであるが、さらに進んで、その児童が具体的に特定することができる者であることまでの必要はないから、所論のような規定が設けられていないからといって、法二条三項が、表現の自由を過度に広範に規制するものとはいえない。

京都地裁平成14年4月24日
(争点に対する判断)
 以上のような写真集であることを前提に考察すると,児童ポルノの被害法益が主として個人的法益であると解するのが相当であるとしても,1個の思想の表現として本件写真集という形式が選択されている場合においては,その一部が児童ポルノであることが立証されれば,他の部分については,厳密にその要件を満たすか否かの検討をしなくても,本件写真集が児童ポルノ法2条3項3号に該当することは明らかなのであるから,そのような場合にまで,本件写真集の被撮影者一人一人につき,児童の特定を必要とするものではないと解するのが相当である。

阪高裁H14.9.12
(1)の点については,原判決は上記?の結論を否定していない上,児童ポルノが本件のように複数の写真が掲載された写真集である場合には,そのうちの1枚の写真が児童ポルノ法2条3項3号の要件を満たしてさえいれば,その余の写真がその要件を満たしているか否かを問わず,その写真集は児童ポルノに当たると解すべきである(なお,所論は,写真集も児童ポルノに当たると解すれば,表現の自由を不当に侵害するし,複数の写真が一冊にまとめられることによって児童の保護も後退すると主張する。しかしながら,1冊にまとめられた複数の写真は,販売等の際には同じ運命をたどるから,これを一体のものとしてみることはその実態に適っている上,所論がいうように個々の被撮影者を特定しなければならないとすれば,そのために多大な時間と労力を要し,ひいては写真集を児童ポルノ法による規制から逃れさせることになり,かえって,児童の保護に適わず,不合理である。)から,本罪の保護法益が個人的法益であるからといって,上記?ないし?の各結論が当然に帰結されるものではないし,また,写真集が児童ポルノに当たり得るからといって,犯情の軽重を判断したり,刑を量定したりする際に,その要件を満たす写真や被撮影者の数を考慮することができないと考える根拠もない。したがって,原判決には所論のような理由のそごはない。なお,上記?の結論については,被撮影者が写真撮影時に実在していれば足りると解されるし,上記?の結論についても,原判決が説示するとおりである。また,(2)の点については,その前提が失当であることは既に説示したとおりである。この論旨も理由がない。

 「個人的法益」と認めつつ、傷害罪、名誉毀損罪という個人的法益の罪では考えられない解釈になっている。
 大阪高裁H14.9.12事件では250人位の写真があったので、おおざっぱな推計をすると、351人の被害児童が判明した事件が3項製造罪で1件1人として、残り325件が被害児童の特定が困難な提供事件で、1件に平均10人の被害児童がいるとするとH20の被害児童は3250+351=3301人、1件に平均100人の被害児童がいるとするとH20の被害児童は32500+351=32851人。
 被害児童数の300や500というのは、提供事件数件について、名前がわからない被害児童を数えれば、すぐ、2桁3桁増やせる。実は、そこが被害の現状なのに、わざと一角だけを表示している。
 殺人事件や交通事故の被害者数では、氏名不明の死体でも、こんな扱いはしない。