児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

控訴理由に「3項製造罪の保護法益は個人的法益ではない」という大阪地裁判決を引用したら「独自の見解」だと評価された事例(大阪高裁H19.12.4)

 個人的法益だと信じて弁護していたら、隣で個人的法益ではないという判決が出ていたので、どっちなんですかと高裁に聞いてみました。
 ということで個人的法益らしいですよ。大阪地裁さん聞いてますか?

控訴理由
 3項製造罪の保護法益について
 原判決は、撮影行為による児童の権利侵害を重視して、被告人の行為を指弾した。被害感情が重視された反面、児童ポルノ罪の社会的法益(児童を性的対象とする社会的風潮)は考慮されていない。
 これに対応して弁護人の弁護活動も慰謝の措置に重心があった。これは、3項製造罪の保護法益はもっぱら、描写された児童の権利侵害であるとの理解に基づく。

原判決量刑の理由
本件は児童ポルノ製造及び青少年健全育成条例違反の事案である。
 これにより、被害女児らの心身に重大な痛手を与え、その健全な成長に容易に推し量り難い悪影響を与えていることは、被害女児らの処罰感情が厳しいことなどからも明らかである。被告人の刑事責任は極めて重いというほかない。
もっとも、一方で、被告人は、本件で身柄を拘束されるなど一連の手続を通じて、ようやくというべきであるが、自己の犯行の重大性について認識し、反省の情を示すに至っていること、被害女児らやその保護者に対し慰謝の措置を講じるべく努力していること、被告人の父親が被告人の更生に協力する旨述べていることなど、被告人にとって有利に斟酌すべき事情もある。

 ところで、刑事確定訴訟記録法により最近閲覧した大阪地裁H17.7.15によれば、3項製造罪の保護法益について「児童ポルノ製造罪の主要部分は、個人的法益ではない。「とらせる」というのは、処罰範囲限定の趣旨にすぎない。」と判示している。
 そうだとすれば、撮影行為による被害児童の権利侵害を量刑上重視するのはそもそも量刑の事由として不適切であったことになる。

阪高裁H19.12.4
3量刑不当の主張について
所論は,児童ポルノ製造罪について,被害児童に対する権利侵害の点を量刑上重視することは不適切であるというが,独自の見解であって採用の限りではない。

保護法益が決まらないと、量刑の物差しが決まらないことになります。そういう状況でバンバン実刑にしてます。