児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

水着姿少女のDVD摘発=芸能プロ社長ら逮捕−児童ポルノ製造容疑・警視庁

 1件目の裁判は東京高裁の予定表で見かけましたが、その後どうなったか聞こえてきません。
 捕まるか捕まらないかのギリギリで商売してる人というのは感心できませんが、ちゃんと弁護士に意見をもらっておく必要があります。たとえ違法だとされても、違法性の意識の証拠になって、量刑上反映されますから。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
第2条(定義)
3 この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090217-00000047-jij-soci
全員が容疑を認め、「危ないとは感じたが、この程度なら大丈夫だと思った」などと供述しているという。
 水着姿などを撮影した作品が同法違反で摘発されたのは2例目。起訴されれば初めてとなる。 

http://www.asahi.com/national/update/0217/TKY200902170128.html
少年育成課と亀有署などによると、神崎容疑者らは昨年6月22日、東京都中野区本町5丁目の貸しスタジオで、モデルの少女(16)が18歳未満と知りながら、わいせつなDVD作品を撮影したなどの疑いがある。全裸シーンはないが、下腹部を誇張した下着を着たり、女性スタッフが水着の上から胸を触ったりする映像があるという。
 こうした過激なセミヌードは「着エロ」などと呼ばれ、グラビアやネットで人気がある。18歳未満のモデルも増えて批判が出たことから警視庁は問題視。07年10月、全裸シーンのない少女の映像について全国で初めて同法違反容疑で制作会社幹部を逮捕したが、東京地検児童福祉法違反の罪で起訴した。

参考判例

京都地方裁判所判決平成12年7月17日
そこで、これらの写真集及びビデオテープが児童ポルノに該当すると認定した理由を説明する。
 二 児童ポルノ法二条三項三号の解釈
 児童ポルノ法二条三項三号にいう児童ポルノ(以下「三号児童ポルノ」という。)とは、写真、ビデオテープその他の物であって、(1)衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって(2)性欲を興奮させ又は刺激するものを(3)視覚により認識することができる方法により描写したものに該当するものである(数字は条文にはないが便宜上付け加えた)。本件では、(1)、(3)は客観的
判断することができることから、特に(2)の「性欲を興奮させ又は刺激するもの」の意味内容が問題となる。
 そもそも児童ポルノの販売等が禁止され、さらに、これらの目的での児童ポルノの製造、所持等が禁止されているのは、これらの行為による児童に対する性的搾取及び性的虐待が、児童ポルノの対象となった児童の心身に有害な影響を与え続け、児童の権利を著しく侵害するからに他ならない(児童ポルノ法一条参照)。
 このように、児童の権利を保護することの重要性にかんがみて、児童ポルノ法は、刑法におけるわいせつの定義、すなわち、「徒に性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、幣通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」という最高裁判所判例最高裁昭和三二年三月一三日大法廷判決参照)によって確立されている定義とは異なった観点から児童ポルノの範囲を定め、性欲を興奮又は刺激せしめる点は必要であるが、しかし、「徒に」興奮又は刺激しなくても処罰の対象とし(この点で刑法よりも規制対象を拡大しているといえる。)、また、禁止される行為の範囲も業としての貸与、頒布等の目的での製造等にまで広げ、国内外を問わず処罰することとしたのである(同七条参照)。
 そうだとすると、問題となっている写真、ビデオテープ等が、ことさらに扇情的な表現方法であったり、過度に性的感情を刺激するような内容のものである場合などに限るなど、特別な限定をしなくても、性欲を興奮させ又は刺激するものと認められる以上は、三号児童ポルノに該当すると解すべきである。弁護人は、「性欲を興奮させ又は刺激する」との規定の意味を、児童のポーズが意味もなく局部を強調するものであったり、構図などから男女の性交を暗喩していると認められるような場合に限定すべきであると主張するが、そのように限定して解釈すべき理由はない。
 三 判断の方法
 そして、性欲を興奮させ又は刺激するものであるか否かの判断は、児童の姿態に過敏に性的に反応する者を基準として判断したのではあまりにも処罰範囲が拡大してしまうことから、前記のとおり、児童ポルノの定義から最高裁判所判例の掲げる「普通人の正常な性的羞恥心を害し」という要件が割愛されているとしても、法の一般原則からして、その名宛人としての「普通人」又は「一般人」を基準として判断するのが相当である。
 もっとも、三号児童ポルノの範囲が拡大すると、表現の自由や学問の自由等の憲法上の権利を制約することになりかねないという懸念もあろう。児童ポルノ法三条も、この法律の適用に当たっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならないと定めているところである。
 そこで、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態(以下「児童の裸体等」という。)を描写した写真または映像に児童ポルノ法二条二項にいう」性器等」、すなわち、性器、肛門、乳首が描写されているか否か、児童の裸体等の描写が当該写真またはビテオテープ等ガ全体に占める割合(時間や枚数)等の客観的要素に加え、児童の裸体等の描写叙述方法(具体的には、(1)性器等の描写について、これらを大きく描写したり、長時間描写しているか、(2)着衣の一部をめくって性器等を描写するなどして性器等を強調していないか、3児童のとっているポーズや動作等に扇情的な要素がないか、(4)児童の発育過程を記録するために海水浴や水浴びの様子などを写真やホームビデオに収録する場合のように、児童の裸体等を撮影または録画する必然性ないし合理性があるか等)をも検討し、性欲を興奮させ又は刺激するものであるかどうかを一般通常人を基準として判断すべきである。そして、当該写真又はビデオテープ等全体から見て、ストーリー性や学術性、芸術性などを有するか、そのストーリー展開上や学術的、芸術的表現上などから児童の裸体等を描写する必要性や合理性が認められるかなどを考慮して、性的刺激が相当程度緩和されている場合には、性欲を興奮させ又は刺激するものと認められないことがあるというべきである。

大阪高等裁判所平成12年10月24日
エ 所論は,(1)法2条3項2号,3号は,児童ポルノとして規制の対象とされる児童の姿態の描写について,いずれも「性欲を興奮させ又は刺激するもの」という要件を設けてこれを限定しているが,性欲を興奮させ又は刺激するものであるかどうかを通常人が客観的に判断することは難しく,その判断基準は曖昧である。また,上記の要件を,刑法上のわいせつの概念である「いたずらに性欲を興奮又は刺激せしめ,かつ,普通人の性的羞恥心を害し,善良な性的道義観念に反するもの」という要件と対比すると,「いたずらに」という限定がないため,表現が性的に過度であることが要件とされておらず,規制の対象が広がつている。これらの点において,法2条3項2号,3号にいう「性欲を興奮させ又は刺激するもの」か否かを客観的に判断することは困難である。通常人は,児童の裸体等に性的興奮を覚えたり,それから刺激を受けたりしないのであるから,通常人を基準としてこれを判断するのであれば,児童ポルノに当たるものはなくなるし,また,子供の性に対して特別に過敏に反応する者を基準としてこれを判断することは,通常人を名宛人とする法規範の解釈としては許されない。したがって,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」か否かの判断基準が明確ではないのに,これを要件とする法2条3項2号,3号は,漠然として不明確な規定であるから,憲法21条に違反するものであり,かつ,刑罰法規の明確性を要請する憲法31条にも違反するものである,という。
 しかし,わいせつ物頒布等の罪を規定した刑法175条は,社会の善良な性風俗を保護することを目的とするものであるから,同条におけるわいせつの概念としては,普通人の性的羞恥心を害し,善良な性的道義観念に反するほどに著しく性欲を興奮,刺激せしめることを要するとされるのに対し,児童ポルノ法は,すでに前記(1)等において説示したとおり,児童ポルノに描写されることの害悪から当該児童を保護し,ひいては児童一般を保護することを目的とするものであるから,著しく性欲を興奮,刺激せしめるものでなくとも,児童ポルノの児童に与える悪影響は大きく,したがって,処罰の必要性が高いと考えられること,すなわち,両者の保護法益ないし規制の対象におのずから相違があることなどに照らすと,所論の指摘するところを考慮しても,法2条3項2号及び3号が,表現の自由に対する過度に広範な規制をするものとは言えないし,また,わいせつの概念が所論1のようなものであるにもかかわらず,刑法175条が憲法21条及び31条に違反するものでないとされていること(最高裁判所昭和58年10月27日判決刑集37巻8号1294頁,同昭和54年11月19日決定刑集33巻7号754頁等参照)などからしても,法2条3項2号及び3号が,漠然として不明確な規定と言えないことは明らかである。
オ 所論は,(1)表現行為を制限する立法については,立法の趣旨,目的とそれを達成するための規制手段との間に合理的関連性があることが要求される。児童ポルノ法の立法目的は,法1条に記載されているとおり,児童に対する性的搾取や性的虐待等の防止にある。ところで,一般的に言えば,性的虐待とは相手の意思を無視して暴力的あるいは強制的に行われる性的行為を言うが,児童の中でも高年齢の者は,性的自己決定権を備えているのであるから,「児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為」一般が,法1条にいう児童の性的搾取や性的虐待に当たるとは言えない。したがって,児童ポルノとして規制すべき対象物を定めるに当たっては,上記のような性的虐待につながるものであること,すなわち,被撮影者の意思に反するものであることを要件とすべきである。しかるに,法2条3項1号が,被撮影者の意思に反することを構成要件としていないのは,立法目的とそれを達成するための規制手段との間に合理的関連性を欠いていると言うべきである。(2)また,法2条3項2号,3号についても,被撮影者の意思に反することを要件としていない点において,法1条の立法目的との合理的関連性を欠いているというべきである,という。
  しかし,前記(1)等において説示したような児童ポルノ法の立法の趣旨,目的,ことに同法が,児童買春の対象となつたり,児童ポルノに描写された児童の保護だけでなく,児童一般の保護をも目的としていることに照らすと,法2条3項各号が,児童ポルノで描写された被撮影者の意思に反することを要件としていなくとも,立法目的と規制手段との間に合理的関連性を欠くとは言えない。
(3) 法7条2項における規制対象行為について
  所論は,法7条2項は,児童ポルノの製造,所持,運搬についても処罰することとしているが,これらの行為を禁じても,児童虐待を防ぐという立法目的を達成することはできないから,これらの行為をも処罰する法7条2項は,表現の自由に対する過度に広範な規制というべきであり,憲法21条に違反する,という。
   ところで,法7条2項は,同条1項所定の,児童ポルノの頒布,販売,業としての貸与又は公然陳列の目的による児童ポルノの製造,所持,運搬等の行為を処罰するものであるところ,上記各行為は,児童ポルノに描写された児童の心身に有害な影響を与え続けるのみならず,このような行為により児童ポルノが社会に広がるときには,児童を性欲の対象として捉える風潮を助長するとともに,身体的,精神的に未熟である児童一般の心身の成長にも重大な悪影響を与えることになり,前記児童ポルノ法の立法の趣旨,目的にもとることになるものである。したがって,同条1項所定の製造,所持,運搬等の行為を処罰する必要性は高いというべきであるから,法7条2項において,上記各行為を処罰の対象としていることが,表現の自由を過度に広範に規制するものとは言えない。