児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

有害支配で逮捕された事例

 児童福祉法34条1項9号違反。
 「支配下」で性交すると6号違反もあり得るところ。9号と6号は併合罪らしい。

http://www.isenp.co.jp/news/_2006/0419/news09.htm
 津署は十八日、当時十五歳の少女を性交目的に支配下に置いたとして、児童福祉法違反の疑いで容疑者(21)を逮捕した。

第34条〔禁止行為〕
何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
一 身体に障害又は形態上の異常がある児童を公衆の観覧に供する行為
二 児童にこじきをさせ、又は児童を利用してこじきをする行為
三 公衆の娯楽を目的として、満十五歳に満たない児童にかるわざ又は曲馬をさせる行為
四 満十五歳に満たない児童に戸々について、又は道路その他これに準ずる場所で歌謡、遊芸その他の演技を業務としてさせる行為
四の二 児童に午後十時から午前三時までの間、戸々について、又は道路その他これに準ずる場所で物品の販売、配布、展示若しくは拾集又は役務の提供を業務としてさせる行為
四の三 戸々について、又は道路その他これに準ずる場所で物品の販売、配布、展示若しくは拾集又は役務の提供を業務として行う満十五歳に満たない児童を、当該業務を行うために、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和二十三年法律第百二十二号)第二条第四項の接待飲食等営業、同条第六項の店舗型性風俗特殊営業及び同条第九項の店舗型電話異性紹介営業に該当する営業を営む場所に立ち入らせる行為
五 満十五歳に満たない児童に酒席に侍する行為を業務としてさせる行為
六 児童に淫行をさせる行為
七 前各号に掲げる行為をするおそれのある者その他児童に対し、刑罰法令に触れる行為をなすおそれのある者に、情を知つて、児童を引き渡す行為及び当該引渡し行為のなされるおそれがあるの情を知つて、他人に児童を引き渡す行為
八 成人及び児童のための正当な職業紹介の機関以外の者が、営利を目的として、児童の養育をあつせんする行為
九 児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもつて、これを自己の支配下に置く行為
児童養護施設、知的障害児施設、知的障害児通園施設、盲ろうあ児施設、肢体不自由児施設又は児童自立支援施設においては、それぞれ第四十一条から第四十三条の三まで及び第四十四条に規定する目的に反して、入所した児童を酷使してはならない。

名古屋高等裁判所昭和58年8月17日
 所論にかんがみ、まず児童福祉法三四条一項九号(以下単に九号という。同条項の各号についても同じ)違反と六号違反との罪数関係について考察するに、九号と六号各違反の罪はこれをその規定の形態およびその文義の上からみるもそれぞれ別個の独立の犯罪構成要件を規定しているものと見られ、またその内容からみても六号は児童に淫行をさせる行為を処罰しているのに対し、九号は児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもつて、これを自己の支配下に置く行為を処罰しているのであつて、これらは各行為の内容を異にし、従つてその各構成要件は全く重複していないと解される。これに関し六号違反が九号所定の目的の一部を構成する場合があり得ることも考えられるが、九号の有害目的は一号ないし六号違反の行為をさせる目的のほか右各号に該当しない有害行為をさせる目的も含まれるものと解され(東京高等裁判所昭和四二年六月一五日判決・高刑集二〇巻三号三七六頁、名古屋高等裁判所金沢支部昭和四四年一二月二日判決・刑事裁判月報一巻一二号一〇九九頁照)、また九号違反を伴わない一号ないし六号違反も存在しうること、九号においては、「児童が四親等内の児童である場合及び児童に対する支配が正当な雇用関係に基くものであるか又は家庭裁判所等の承認を得たものである場合」を除外していること並びに児童福祉法三四条の立法の趣旨などを併せ考慮すると、九号違反の罪は、単に、一号ないし六号違反の罪の予備的あるいは未遂的段階の行為を処罰するものではなく、前記除外にかかる以外の者が児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的で児童を自己の支配下に置くという児童に悪影響を与える虞れの強い行為そのものを処罰するものと解されるから、九号違反の罪は六号違反の罪とは別個独立の犯罪を構成するものと解するのが相当である。
従つて、たとえ、本件のように、九号違反の目的の中に一部六号違反の内容が含まれるような場合にも九号違反の罪が六号違反の罪に吸収されるものと解することは相当でない。以上の理由によれば、本件において九号違反の事実を認定肯認しながら、その所為は、原判示第二記載の六号違反の罪に吸収され、九号違反の罪としては成立しないとして、前記公訴事実につき無罪の言渡しをした原判決には、法令の適用を誤つた違法があつて、その誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、所論のうちその余の主張について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れない。論旨は理由がある。