ちょうど製造作業中に踏み込まれて逮捕された人がいて、それが「所持罪」で起訴された。
それは製造罪か所持罪かという議論。
検事さんは、製造罪と所持罪は包括一罪だという前提。
論告
販売を前提として製造を行った児童ポルノについては,その後当然に販売の目的で所持されることとなるので,両者は包括一罪の関係に立つと考えられるから,両罪の成立が問題となる場合には,まず所持罪の成立を検討し,これが成立する場合は,あえて同一客体についての製造罪を論ずる実益は乏しいと思われる。
まあ、なんというか、そんな甘いことでは児童ポルノは取り締まれないわけです。
判例違反だし。MAC判決ですよ。
実務は併合罪に傾いているのに、いまどき東京高裁H15の弁護人と同じこといっちゃぁねえ。「包括しちゃいかん」って原田裁判長に怒られますよ。
東京高裁平成15年6月4日平成15年(う)第361号(MAC判決)
罪数関係の誤りをいう論旨について(控訴理由第8,第11,第13,第14)
所論は,①児童ポルノ罪は,個人的法益に対する罪であるから,被害児童毎に包括して一罪が成立し,製造・所持は販売を目的としているから,製造罪,所持罪,販売罪は牽違犯であり,これらはわいせつ図画販売罪・わいせつ図画販売目的所持罪と観念的競合になり,結局,一罪となるが,原判決は,併合罪処理をしており,罪数判断を誤っている(控訴理由第8),・・・などという。
まず,①の点は,児童ポルノ製造罪及び同所持罪は,販売等の目的をもってされるものであり,販売罪等と手段,結果という関係にあることが多いが,とりわけ,児童ポルノの製造は,それ自体が児童に対する性的搾取及び性的虐待であり,児童に対する侵害の程度が極めて大きいものがあるからこそ,わいせつ物の規制と異なり,製造過程に遡ってこれを規制するものである。この立法趣旨に照らせば,各罪はそれぞれ法益侵害の態様を異にし,それぞれ別個独立に処罰しようとするものであって,販売等の目的が共通であっても,その過程全体を牽連犯一罪として,あるいは児童毎に包括一罪として,既判力等の点で個別処罰を不可能とするような解釈はとるべきではない。
この東京高裁判決の判示は、児童ポルノ罪とわいせつ図画罪の保護法益の違いを明確に述べているんですが、いまだに検察官はこの区別がついていないんですね。
「訴因へのクレームは起訴検事に言ってくれ」って言っていたけど、これは自分で考えられたんでしょうね。ちょっと進歩した。
最近の奥村弁護士の理屈は、裁判例のつぎはぎでやってます。集まってきたものですから。