時々聞かれるのですが、一部に
被害児童(保護者)への慰謝(謝罪・弁償・示談)の処置は不要
被害感情を逆撫でするだけだ
という弁護士もいるようです。
交通事故でも同じですが、謝罪しに行くというのは、被害者から強く当たられることがあって、被告人も弁護人もつらいです。
だから、被告人もそういう話に乗ってしまう。
しかし、そういう弁護士の話を信じると、裁判所の心証としては
慰謝の措置を全く講じていない
という不利な評価になります。
法廷で謝罪しても、被害者には伝わらない事が多い。
実刑事案ではその分服役が延びるから気の毒です。
さらに、あらかじめ被害者側から拒絶の意思が表明されている場合にも、端からあきらめてしまうのではなく常識的に可能な範囲で、
- 詫び状を届ける
- 示談の働きかけをする
- 一部支払う・提供する
という努力をすることは、被告人に有利な事情と評価されます。そういう裁判例もしばしば見かけます。
弁償用に用意したお金は、拒まれた場合でも、贖罪寄付なり供託なりして。性犯罪弁護の常套手段ですけどね。
量刑理由の例
結局は受領を拒否されたものの,弁護人を介して,あらためて被害者側に対して被害弁償の一部として金 円を送付し,被告人なりに謝罪の意を表そうとしたこと,また,反省の気持ちを表すべく別途金 の贖罪寄付をしていること,・・・など,これらの被告人のためにしん酌し得る事情等を総合考慮して,主文の刑を定めた。
よって,主文のとおり判決する。
なお、慰謝の措置には程度の問題があって、実刑相当事案では、とことんやるべきだし、そうでない事案では、ほどほどにということになります。そこは、最初の量刑の見極めで決まることになります。
実刑相当事件の児童ポルノ事件では、氏名不詳(全身写真はある)の被害児童の連絡先を、調査事務所(探偵)に依頼してまで探して、その結果を「そこまでして慰謝の努力をした」証拠として出して有利な評価を得たこともあります。