児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

製造罪と他罪との関係

 児童ポルノ製造罪と他罪との関係については、「児童買春罪とは併合罪」という高裁の判例がありますが、他の前提性犯罪(強姦、強制わいせつ、児童福祉法違反(淫行させる行為)、青少年条例違反等)との関係については不明です。
 しかし、○○製造罪と他罪との関係についての判例をざっと見ると、児童ポルノ罪の保護法益の重要性を考慮すると、併合罪説が正解なんでしょうね。実務家感覚。
 一罪にして処理しているのは、勉強不足なんでしょうね。提供罪の場合も含めて。弁護人としてはそういう検察官や裁判官に担当してもらえば幸運です。

東京高等裁判所判決昭和53年1月31日
 所論は要するに、原判示第一の(三)の爆発物の製造罪と同第の所持罪とは包括一罪と解すべきであるのに、原判決がこれを併合罪として処断したのは法令の解釈・適用を誤つたものであつて、その誤りが判決に影響を及ぼすことは明らかであるというのであるが、爆発物取締罰則は、爆発物による公共危険の発生を未然に防止するため、爆発物の製造、所持、使用等の各段階においてこれらをそれぞれ別個、独立に規制しようとするものと解せられるから、製造に当然随伴して一時的に所持するに過ぎないような場合は格別、製造した場所から持ち出して建物爆破の目的地に向うためこれを運搬していたという本件は、その所持に独自性を認めて然るべき場合であるから、右所持罪が製造罪に包括あるいは吸収されるものと考えるべきではなく、両者は併合罪の関係にあるものと解するのが相当である。原判決には所論のような法令の解釈、適用の誤りはなく、論旨は採用できない

東京高等裁判所判決昭和53年3月30日
 次に、所論(二)について案ずるに、爆発物取締罰則三条の規定が一面で同罰則一条の罪の予備罪としての性格を有することは否定できないとはいえ、原判決が刑法における予備罪とは異るとして指摘する同罰則三条の規定の特質、とりわけ、同条が所謂他人予備の場合も含み、且つ、同条違反の行為に対し狭義の共犯の成立が肯定されること及び同条の法定刑が同罰則一条のそれに比して、強盗と同予備あるいは放火と同予備の場合ほど軽重の開きがないことに鑑みれば、同罰則の立法趣旨を以下のように、すなわち、治安を妨げまたは人の身体、財産を害する目的をもつて爆発物を使用することは社会生活の平穏を著しく害するものであるが、右目的をもつて爆発物使用の準備をすることも、同様、社会不安を醸し出す一大原因となるから、同罰則一条によつて右目的をもつてする爆発物の使用を禁遏するとともに、同罰則三条によつて右目的をもつてする爆発物の製造、修理、輸入、所持等の使用準備行為を厳に禁遏するところにあると容易に理解でき、同罰則三条該当の行為は、同罰則一条の使用罪の成立(実行着手)の如何にかかわらず、独立の可罰性を有するものと解される。したがつて、右と同旨に出て原判示第七の罪と同第八の罪とを併合罪として処断した原判決には法令適用の誤りの廉はなく、論旨は理由がない。

最高裁判所第2小法廷決定昭和30年1月14日
被告人が昭和二七年二月二二日所持していたと認められた覚せい剤一八六〇本が、同判示第一の(一)、(二)において被告人が同年二月七日頃から同年五月二二日頃までの間製造したと認められた覚せい剤二五〇〇〇本の一部であつても、それが右製造に伴う必然的結果として一時的に所持せられるに過ぎないものと認められない限り、その所持は製造罪に包括、吸収せられるものと認むべきではないから、製造罪の外に所持罪の成立を認めた原判決は結局正当であつて、論旨は採用できない。

東京高等裁判所判決昭和27年12月27日
 覚せい剤の製造(覚せい剤取締法第十五条第一項違反)をしたのみならず引つづき之を所持した場合は別に同法第十四条第一項違反罪が成立すると解すべきであるから、原判決第二に於て被告人が所持していたと認められた覚せい剤千八百六十本が判示第一(一)
(二)で認められた同年二月以降五月までの間製造されたものの一部であつたとしてもそれは製造罪以外に所持罪を成立させる妨げとはならず、両者は併合罪として取扱われるべきものであり両者間に牽連犯とか想像的競合罪の成立を認むべきではないから、之と見解を一にした原審の措置は不当ではない。論旨は理由がない。