高裁金沢支部H17.6.9
ハードディスクの製造は児童ポルノ製造罪に該当しないとの所論について
所論は,被告人は,メモリースティックからハードディスクへ画像データをダビングしたものであるところ,ダビングの際には,「姿態をとらせ」の要件がないから,児童ポルノ製造罪には該当しないとする。しかし,そのように解した場合,カメラ等を使用して撮影した場合には,その画像が最初に保存される媒体(ネガ,メモリースティック等)のみが製造となり,そこから他に流通の危険性が高いと認められる媒体(写真,MO,CD−R,DVD−R等)やそれらを作成するため画像を長期間保存できる媒体(ハードディスク等)に画像をダビングする行為は製造罪には当たらないことになるが,それでは,他人に提供する目的のない児童ポルノの製造でも,流通の危険性を創出する点で非難に値するとして処罰規定を新設した法の趣旨が没却されるというべきである。したがって,被告人において,児童に「姿態をとらせ」て撮影したものを元にして,被告人自身が他の媒体へダビング等する行為は,法7条3項の製造に該当すると解すべきである。
え〜っ!?
姿態とらせてないのに、なんで?
撮影行為と包括的に評価して、3項製造罪。
「拡散の危険性が増す行為を看過することができないから」だそうです。
ちょっと置いてから日時場所を変えてダビングすれば包括評価できないですよね。
従来の説明(奥村説)
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20050405/1112706322
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20050122/1106538575
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20050116/1105838632
図表
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20050623/1119474879
http://d.hatena.ne.jp/images/diary/o/okumuraosaka/2005-06-23.jpg
第7条(児童ポルノ提供等)
3 前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第一項と同様とする。
販売目的製造罪に関する大阪高裁 平成14年9月10日・東京高裁平成15年6月4日によれば、
撮影→→→→→→フィルム→→→→→ネガ
と変化する場合には、
撮影→→→→→→フィルム
フィルム→→→→→ネガ
の各過程が、製造罪の実行行為であって、各過程について販売等の目的があれば、
撮影→→→→→→フィルム
フィルム→→→→→ネガ
の各々について、販売目的製造罪が成立する。撮影→→→→→→デジカメのメディア→→→→→MO
と変化する場合には、
撮影→→→→→→デジカメのメディア
デジカメのメディア→→→→→MO
の各過程が、製造罪の実行行為であって、各過程について販売等の目的があれば、
撮影→→→→→→デジカメのメディア
デジカメのメディア→→→→→MO
の各々について、販売目的製造罪が成立する。
とされ、ミクロに分析して、細かく製造罪の成否を検討していくのが従来の判例。
3項製造罪は、販売目的製造罪の目的という要件の代わりに、「姿態をとらせる」という要件があるだけだから、
撮影→→→→→→デジカメのメディア→→→→→MO
と変化する場合には、
撮影→→→→→→デジカメのメディア
デジカメのメディア→→→→→MO
の各過程が、製造罪の実行行為であって、各過程について「姿態をとらせる」があれば、
撮影→→→→→→デジカメのメディア
デジカメのメディア→→→→→MO
の各々について、3項製造罪が成立する。
となるだけである。これが従来の判例。
撮影→→→→→→デジカメのメディア→→→→→MO
と変化する場合には、
撮影→→→→→→デジカメのメディア
デジカメのメディア→→→→→HDD
の各過程が、製造罪の実行行為であって、おのおの製造罪となりうるが、撮影→→→→→→デジカメのメディア
の過程について「姿態をとらせる」があれば、
デジカメのメディア→→→→→HDD
については、「姿態をとらせる」がなくても、3項製造罪が成立する。
とするものであって、判例違反である。
また、名古屋がずれた。