児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

欺罔による児童買春について

援助交際児童は警戒心が弱いので、偽札にも引っ掛かるということでしょうか
http://www.nara-shimbun.com/n_soc/050120/soc050120d.shtml

 こんな事例は児童買春なのかという話。

http://courtdomino2.courts.go.jp/kshanrei.nsf/webview/EF601E14EDBC0CE449256BED000313EE/?OpenDocument
◆H14. 5.29 広島地方裁判所福山支部 平成14年(わ)第17号,第28号 通貨偽造・同行使,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告
事件番号  :平成14年(わ)第17号,第28号
事件名   :通貨偽造・同行使,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告
裁判年月日 :H14. 5.29
裁判所名  :広島地方裁判所福山支部
             主     文
    被告人を懲役3年に処する。
    この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。
    押収してある五千円札ようのもの1枚(平成14年押第8号の1)及び五千円札ようのもの7枚(同号の2)を没収する。
             理     由
(罪となるべき事実)
 被告人は,
第1 平成13年12月15日午後9時ころから同日午後10時20分ころまでの間,広島県三原市ab丁目c番d号の有限会社A事務所内において,行使の目的をもって,パーソナルコンピューター,カラースキャナー及びカラープリンター等を利用して,通用する金額五千円の日本銀行券8枚(平成14年押第8号の1及び2)を偽造した上,同日午後11時10分ころ,同市e町f番地gの株式会社B生コンプラント材料置場に駐車中の軽四輪乗用自動車内において,C(昭和h年i月j日生,当時15歳)に対し,淫行の対価等として,その偽造に係る金額五千円の日本銀行券8枚を,真正な通貨のように装って交付して行使した
第2 同日午後11時15分ころから同日午後11時35分ころまでの間,同所に駐車中の同車内において,前記Cが18歳に満たない児童であることを知りながら,同児童に対し,現金2万円の対償の供与を約束して,同児童の性器にバイブレーターを挿入し,同児童をして口淫させ,自己の陰茎を同児童の性器に押し付けるなどの性交類似行為をし,もって児童買春をした
ものである。

 法益関係的錯誤についての森永真綱氏の見解によると、詐欺罪と(凖)強制わいせつ罪になりそうです。

森永真綱「被害者の承諾における欺罔・錯誤(一)」関西大学法学論集'02.12.
Ⅷ 反対給付に関する欺岡・錯誤と傷害罪、詐欺罪
そのつもりがないのに、「殴らせてくれたら百万円やる」と欺いてこれに承諾させ、実際に殴り百万円支払わない場合、どのように判断されるべきかが問題となる。この事例解決については、先にも述べたように、従来の法益関係的錯誤説からはなお説得的に説明はできないし、かといってそれに代わる決定的な見解が存在するわけでもない。そもそも詐欺罪のみが成立するのか詐欺罪と傷害罪の双方の成立を認めるかということ自体に争いがあるのである。本事例については問題提起に留め、私見の展開は本稿では留保したい。先にも述べたように、詐欺罪と傷害罪などの規定の関係をどのように考えるかということにかかっているように思われる。場合によっては罪数論的解決も含めた検討が必要となろう。

森永氏の設例に判例の事例を代入するとこうなる。

そのつもりがないのに、「性交類似行為させてくれたら2万円やる」と欺いてこれに承諾させ、実際に性交類似行為し、2万円支払わない場合、どのように判断されるべきかが問題となる。
この事例解決については、先にも述べたように、従来の法益関係的錯誤説からはなお説得的に説明はできないし、かといってそれに代わる決定的な見解が存在するわけでもない。そもそも詐欺罪のみが成立するのか詐欺罪と(凖)強制わいせつ罪の双方の成立を認めるかということ自体に争いがあるのである。本事例については問題提起に留め、私見の展開は本稿では留保したい。

ということで、学者もわからないらしいので、ちょっとおいときます。


佐伯説では、(凖)強姦罪は成立しない。

中義勝「佐伯仁志『被害者の錯誤について』」法律時報'87.9.
これに対して、性的行為自体は認識し錯誤なく承諾しているが、その目的(たとえば結婚すると欺岡されて性交に応じる)や対価(売春対価)に錯誤があった場合は、被害者の承諾は有効であり、性的自由の侵害はないというべきである。