児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

録画ネットの仮処分決定

 管理・支配性について詳細に検討されています。逆に言えば、こうすれば管理・支配性が否定されるということですね。仮処分ですけど。

 奥村弁護士としては、微妙な事案の相談が持ちこまれたときに、ある特定の見解に基づいて「法の盲点をつく」というのはお薦めしません。特に民事関係は罪刑法定主義がないですから。刑事事件でも「判例変更」を喰らったことがあるし。
 まず、弁護士の見解を示して、実務上・判例上のリスク(損害賠償請求や刑事訴追の危険がある)を調査・予想して、「両論併記」であとは自己責任という極めて「弱気」な意見書を書いています。
 でないと、奥村弁護士の見解に従ったら裁判された・逮捕されたと言われます。
 それに、法令解釈は裁判所が裁判で決めるわけで、訴訟追行は優秀な弁護士に任せるとしても、前段階の提訴されたとか逮捕されたとかいうのが事実上かなりの不利益なわけで(要するに訴えられるのは嫌ですわな)、後で仮に勝訴なり無罪になっても、取り返せない部分が残る。そこも考慮して行動して欲しいからです。
 訴訟では「法の盲点だ」「立法の過誤だ」と主張しまくってますけど。訴訟外では、そうではありません。

 そういう意味では、この債務者の「顧問弁護士」は結構「強気」の先生なんでしょうね。

http://www.6ga.net/kettei.pdf
東京地裁H16.10.7
平成16年ヨ第22093号著作隣接権侵害差止請求仮処分命令申立事件
イ 債務者の管理・支配性
(ア) 本件サービスにおいては,上記のとおり,多くの機器類をネットワーク回線等によって接続した一つのシステムが構成されており,それらはすべて債務者が調達,設定し,管理している。
(イ) 機器類の中で,各テレビパソコンの所有権は,確かに各利用者に帰属しているが,販売するテレビパソコンは債務者が選定,調達したものであり,販売後の設置場所も債務者の事務所に限られる。さらに,債務者は録画予約等のためのソフトウェアをインストールするほか,各種のデータを記録し,保守管理を行うなどして,利用者が本件サービスを継続する限り,これを管理・支配下に置いている。
(ウ) 実際の録画の過程という側面からみても,現実の複製に当たって利用者が行う行為は,上記ソフトウェアの動作に従った録画予約の指定のみであり,その後の録画は,上記のとおり債務者が構築し,管理するシステムによって自動的になされている。さらに,本件サービスにおいては,本件サイトを経由してのみ録画予約が可能になっており,債務者の管理・支配の程度がより強くなっている。この点は,債務者が主張するとおり,本件サービスの本質的な要素ではないとみることもできるが,仮にこれを除外しても,録画の過程が債務者により規定されていることに変わりはない。
ウ 利用者の管理・支配性
(ア) 利用者は,テレビパソコンを購入し,その所有権を有しているとはいえ,そもそも,債務者が調達,販売する以外のテレビパソコンを購入して本件サービスに加入することはできず,テレビパソコンの設置場所も債務者の事務所に限られている。
(イ)さらに,テレビパソコンについて利用者ができる操作は,上記ソフトウェアを通じたもののみであり,それ以外の用途に利用することも,それ以外の方法でハードディスクのデータにアクセスすることもできない。テレビパソコンの返還を受けることはできるが,それは本件サービスを解約した場合のことであるから,本件サービスにおいて,利用者がテレビパソコンを管理・支配する程度は,極めて弱いといわざるを得ない。
(ウ) 実際の録画の過程についても,上記イ(ウ)のとおり,利用者の行為は限られたものである。
エ 以上のとおり,本件サービスにおける複製は,債務者の強い管理・支配下において行われており,利用者が管理・支配する程度は極めて弱いものである。
より具体的にいえば,本件サービスは,解約時にテレビパソコンのハードウェアの返還を受けられるという点を除き,実質的に,債務者による録画代行サービスと何ら変わりがない。債務者が主張する,テレビパソコンの販売とその保守管理というのは,本件サービスの一部を捉えたものにすぎず,サービス全体の本質とはいえない。
オ 以上によれば,本件サービスにおいて,複製の主体は債務者であると評価すべきである。
カ なお,債務者が主張するように,パソコンの性能の向上,インターネットやネットワーク技術の発達により,私的複製の領域が拡大していることは否定できない。その結果,著作物の使用者による私的複製が,第三者の管理・支配下にない状態で,しかも本件サービスの利用者のそれと同じような簡便さで可能となることは,十分考えられる。
しかし,本件サービスは,同様に技術の発展によって可能となったものとはいえ,上記のとおり債務者の管理・支配性が強いものであり,利用者による私的複製と評価することはできない。