児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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公然わいせつにつきエージェント登録者・パフォーマー登録者と管理者との共謀を認めた事例(大阪高裁H30.9.11)

 札幌高裁に同様の判例があった記憶

平成30年9月11日宣告
大阪高等裁判所第5刑事部
判決判 決被告人両名に対する各わいせつ電磁的記録記録媒体陳列,公然わいせつ被告事件について,平成29年3月24日京都地方裁判所が言い渡した判決に対し,被告人らからそれぞれ控訴の申立てがあったので,当裁判所は,検察官内田武志出席の上審理し,次のとおり判決する。
主 文
本件
控訴を棄却する。
理 由
本件各控訴の趣意は,被告人Aの主任弁護人森直也,弁護人池田良太及び同知花鷹一朗並びに被告人Bの主任弁護人秋田真志,弁護人水谷恭史及び同田篭明共同作成の被告人A・被告人B控訴趣意書,控訴趣意補充書2通(平成30年3月1日付,同年5月8日付)に各記載のとおりであり,これに対する答弁は,検察官清水淑子作成の答弁書に記載のとおりであるから,これらを引用するが,論旨は,⑴証拠採用に関する訴訟手続の法令違反,⑵共謀共同正犯の認定をめぐる事実誤認又は法令適用の誤り,⑶犯罪地をめぐる法令適用の誤り,⑷不告不理違反の各主張である。

・・・
第2 共謀共同正犯の認定をめぐる事実誤認又は法令適用の誤りをいう論旨(控訴趣意書の控訴の趣意第2点)について
1 論旨は,原判示の各罪につき,被告人らとわいせつな動画・映像の投稿・配信を行った者らとの間に共謀共同正犯は成立せず,これを認めた原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認又は法令適用の誤りがある,というのである。
2 原判決が認定した本件罪となるべき事実の概要は,以下のとおりである。
すなわち,大阪市内に本店を置き,インターネット・ホームページの企画,立案,制作並びにインターネットでのサーバの設置及びその管理業務等を目的とし,アメリカ合衆国所在の会社D社(代表者E)と共にインターネットサイト「D」を管理・運営するCの実質的相談役である被告人Aと,Cの代表取締役である被告人Bが,第1に,E及びIらと共謀の上,平成25年6月19日,被告人らがC従業員らをしてD社と共に管理するD内の投稿サイト「D動画アダルト」のサーバコンピュータに,Iが大阪市内の同人方からインターネットに接続した携帯電話機を使用して送信した男女の性器を露骨に撮影したわいせつな動画データを記録・保存させるなどし,インターネットを利用する不特定多数の者が前記わいせつな動画を閲覧することができる状態を設定し,同月28日ないし平成26年12月8日,前記動画データにアクセスしてきた不特定の者に対してこれを閲覧再生させ,もってわいせつな電磁的記録に係る記録媒体を公然と陳列し,第2に,E,Dに事業者としてエージェント登録していたJ及びパフォーマー登録していたKと共謀の上,平成25年12月25日,京都市内の同女方において,同女がウェブカメラで露骨に撮影した同女の性器の映像を,D内の配信サイト「Dライブアダルト」の映像配信システムを利用して,同市内の某所等へ電気通信回線34を通じて無修正で即時配信し,不特定の視聴者らに観覧させ,もって公然とわいせつな行為をし,第3に,E及び前同様にエージェント登録していたLらと共謀の上,平成26年6月3日,大阪市内の同人方において,同人らがウェブカメラで露骨に撮影した同人らの性器や性交場面等の映像を,前記「Dライブアダルト」の映像配信システムを利用して,前記京都市内の某所等へ電気通信回線を通じて無修正で即時配信し,不特定の視聴者らに観覧させ,もって公然とわいせつな行為をした,というものである(以下,I,J,K及びLらを併せて「本件各投稿者ら」という。)。
原判決は,要旨,次のとおり説示して,被告人らには少なくとも本件各罪の共謀共同正犯が成立すると認めた。
⑴ D社は,インターネットサイトであるDを管理・運営し,D内において,平成19年11月以降,投稿サイト「D動画」のサービスを,平成22年8月以降,配信サイト「Dライブ」のサービスをそれぞれ提供している。
D動画では,インターネットを通じて,D社が契約するサーバに動画データを投稿することができ,投稿された動画データは,無料会員用や有料会員用などの用途に合わせて変換された後,D社が管理する配信サーバに送られ,不特定多数の視聴者が,そのサーバにアクセスすることで,その動画の内容を視聴できるが,有料会員については,無料会員では視聴できない動画についても視聴でき,1日当たりの視聴制限が無制限となり,高画質に変換された動画データの配信を受けられ,日本にあるキャッシュサーバを利用した通信の高速化が図られるなどの特典があり,視聴者に有料会員登録を促す措置が講じられている。
また,D動画では,視聴者が投稿動画を介して新規に有料会員登録をした場合には,投稿者は登録料の一定割合に相当するポイントを報酬として受け取ることができ,それを現金化できるなどの仕組み(動画アフィリエイト制度)や,投稿された動画を視聴者に評価させる仕組35み(動画評価システム)など,投稿者により多くの動画を配信するよう促す措置が講じられている。
D動画アダルトへの投稿動画には,本件各犯行以前から,相当数の男女の性器等を露骨に表した無修正のわいせつ動画(以下「無修正わいせつ動画」という。
)が含まれており,D動画アダルトのサイト上には,「注目ワード」内に「無修正」(無修正わいせつ動画の意味)とのキーワードが表示されたり,「おすすめ動画」内に無修正わいせつ動画のサムネイルが多数表示されたりしていた。
次に,Dライブでは,ウェブカメラ等で撮影した動画データを生中継でインターネットを通じてD社管理のサーバ等に配信することができ,不特定多数の視聴者が,当該サーバにアクセスすることで,その動画データをリアルタイムで視聴できる仕組みになっている。
Dライブでは,無料配信形態と有料配信形態とがあり,視聴者が視聴料を支払って有料配信形態の動画を視聴した場合には,その動画の配信者は,視聴料の一定割合に相当するポイントを報酬として受け取ることができ,それを現金化できるなどの仕組み,Dライブの出演者(パフォーマー)を管理する会社又は個人(エージェント)が,出演者等を管理して,需要に応じた視聴料を設定することができ,それにより多くの視聴料を獲得できれば,その視聴料の一定割合に相当するポイントを報酬として受け取ることができる仕組み,Dライブの画面上に売上上位者の名前や金額を表示する仕組み,及び,配信された動画に視聴者のコメントを表示するチャット機能など,配信者により多くの動画を配信するよう促す措置が講じられている。
Dライブには,「一般」と「アダルト」があるところ,Dライブアダルトで配信された動画には,無修正わいせつ動画が含まれており,Dライブアダルトのサイトには,無修正わいせつ動画が配信されていることが容易にわかるサムネイルが多数あり,平成23年頃から利用者から無修正わいせつ動画36が配信されていることに対する苦情が数多く寄せられている。
JやLは,本件までにも多数の無修正わいせつ動画を配信しており,Jは平成25年1月頃から平成26年6月頃までの間に約1285万円を超える利益を得て,D社には約550万円の利益が入り,Lは平成26年1月頃から同年6月頃までの間に約3037万円を超える利益を得て,D社には約530万円の利益が入っていた計算になる。
これらの事情からすれば,Dライブアダルトについても本件各犯行以前から相当数の無修正わいせつ動画が配信されており,Dライブの取引高に寄与していたと推認できる。
⑵ Dの業務の大半は,Cで行っていたものであり,Cは,D社と共にD動画やDライブを含むDの業務全般を管理・運営していた。
⑶ E及び被告人らは,C従業員らを介して,Dの業務全般を管理・運営していた。
⑷ D動画アダルトは,被告人AとEの方針で設けられ,利用規約についても被告人Aの指示で作成・手直しがされた。
Dライブ開発時にも同様にアダルトカテゴリが設けられ,Eの方針で,ユーザーが稼げる仕組みを強調し,ブログ・動画に続く収益の柱に据えるように開発され,従量課金制度等が導入された。
また,Eの指示で,売上上位者のランキングを表示させ,ライブ配信により収益が得られることを配信者に動機付ける仕組みを作り,これらの過程は被告人らへ報告されていた。
また,売上上位者の名前や金額等のランキング,配信者数等は月次ミーティングでE及び被告人らにも報告されており,Dライブの売上の90パーセント以上をアダルトカテゴリが占めるようになった。
そして,被告人らは,本件以前から,アメリカ合衆国の法律では問題がないことからDで投稿を許可してきた無修正のアダルト動画について,複数の弁護士から,日本国内では刑事上違法と評価される可能性があると指摘され37ていたにもかかわらず,ⅰ)平成24年1月,D動画のアップロード画面の警告文から「無修正ポルノ」の文言を削除し,ⅱ)その後の同年2月,以前公然わいせつで捜査照会を受けていたDライブアダルトの動画投稿者が逮捕されたことを受け,被告人らの間で,警告文を表示するか否かなどを協議したものの,他の動画投稿サイトでは削除等がされている無修正わいせつ動画を放置し,無修正わいせつ動画を監視する担当者すら置かず,ⅲ)Dライブの利用規約には「アダルトコンテンツ以外で,性器の露出及び性器の露出を強制する行為」は禁止されているが,Dライブアダルトでそのような規制はなく,利用者からの問合せに対する対応マニュアルにも「無修正の配信内容であってもアダルトカテゴリで配信している限り,弊社では現状ペナルティは取っておりません」などと記載し,無修正わいせつ動画の配信を許容する方針を変更することなく,徹底していたといえる。
以上のとおり,E及び被告人らは,D動画アダルトやDライブアダルトにおいて相当数の無修正わいせつ動画が配信されることを認識した上で,D社やサーバが米国にあるとの理由から無修正わいせつ動画の投稿・配信を許容し,それらを利用してサイト利用者や有料会員を維持・増加させようとして,D動画アダルトやDライブアダルトを管理・運営していた。
⑸ 原判示第1の動画投稿者のIは,合計約110件の無修正わいせつ動画を投稿しており,過去に何度も投稿した動画が削除されることはなく,視聴者の反応を楽しむ等の欲求を満たすために無修正わいせつ動画の投稿を行っていた。
また,原判示第2の動画配信者のJは,Dライブアダルトにおいて,視聴者がコンスタントに入り稼ぎやすいこと,無料視聴か有料視聴か,その料金設定をエージェント等が設定できることなどを理由にエージェント登録し,Kとの間で報酬の割合を決めた上,利益獲得のため互いに共謀の上,有料設定で無修正わいせつ動画を繰り返し配信していたものであり,原判示第3の動画配信者のLも,他のサイトでは縛りがある無修正わいせつ動画を38配信しているDライブアダルトの存在を知ってエージェント登録し,利益獲得のためパフォーマーと共謀の上,有料設定をして,パフォーマーと性交等する無修正わいせつ動画を配信していた。
このように,D動画アダルトやDライブアダルトにおいては,その仕組みに動機づけられて,他のサイトで削除された動画も含め,無修正わいせつ動画が許容されるものとして相当数投稿・配信されており,Iも同様に動機づけられてD動画アダルトへ無修正わいせつ動画の投稿に及び,さらにDライブアダルトではエージェント登録により高額な利益を上げる仕組みであることに動機づけられて,J及びK並びにLらもDライブアダルトへ無修正わいせつ動画の配信に及んだ。
そして,E及び被告人らは,Dが不特定多数の者により,無修正わいせつ動画が相当の割合で投稿・配信されることを認識し,許容するだけでなく,これを利用して利益を上げる目的でD動画アダルト,Dライブアダルトを管理・運営していたのであり,具体的な投稿・配信行為を認識しなくても,概括的にこれを認識・認容していたといえる。
そうすると,E及び被告人らと,本件各投稿者らとの間には,無修正わいせつ動画の投稿・配信の各行為の時点で,それぞれわいせつ電磁的記録記録媒体陳列ないし公然わいせつを共同して行う旨の黙示の意思連絡及び相互利用補充関係があったものと認めるのが相当である。
被告人らがIらの無修正わいせつ動画の投稿・配信行為を具体的に認識しておらず,また,同人らの存在を具体的に認識していなかったとしても,共謀の成立には,必ずしも具体的な投稿者・配信者や個別具体的な実行行為まで認識することを要するものではないから,前記判断を左右しない。
⑹ なお,本件では,原判示第1の犯行につき,被告人らがEとともにD動画アダルトのサーバを管理・運営し,動画をサーバに記憶・保存させた行為がわいせつ電磁的記録記録媒体陳列の実行行為の一部に該当するか否39かも争われているが,仮にこれが実行行為に該当しないとしても,被告人らがサーバを管理・運営しなければ,投稿された無修正わいせつ動画を不特定多数の者が閲覧できる状態に置くことはできないから,被告人らがサーバを管理・運営した行為は,Iらによる実行行為の不可欠の前提を成すものであり,被告人らは正犯者といえる程度に重要な役割を果たしたといえるので,少なくとも共謀共同正犯が成立する。
⑺ よって,いずれの犯行についても,被告人らには少なくとも共謀共同正犯が成立する。
3 以上に対し,所論は,要旨,次のとおり主張する。
⑴ 被告人らは,Dの運営に関与し,サイト管理者としての当然の企業努力として,投稿数・配信数を伸ばすために様々なサービスを行ったから,その意味でサイト利用者に対して映像の投稿・配信を動機づけたと評価することは可能であるにせよ,被告人らが投稿・配信を動機づけたのは,あくまでも一般映像及びアダルト映像であって,違法な無修正わいせつ映像の投稿・配信を促したことはなく,被告人らが無修正わいせつ動画の投稿・配信を動機づけたというのは,事実誤認である。
⑵ 仮に原判決がいうように,本件各投稿者らが,被告人らが管理・運用していた動画配信システムという仕組みに動機づけられて本件各犯行に及び,また,被告人らがこれを認識・認容していたとしても,動機や認識・認容それ自体は,各人が単独で内心に持つ意思にすぎず,被告人らと本件各投稿者らとの間で内心の意思のやり取りがない以上,およそ両者間に意思連絡があるとはいえない。
被告人らは,本件投稿等の行為の全ての要素,すなわち,誰が,いつ,どこで,何をするのか(どのように行われるのか)という点について認識が欠けていたのであり,その行為についての意思連絡は,およそ観念することはできない。
最高裁判所平成15年5月1日第1小法廷決定(刑集57巻5号507頁。
スワット事件)の事案においては,実行犯40との間に黙示の意思連絡を認めることが可能な前提事実が存在したのに対し,本件では,そのような前提事実は存在しないのであり,原判決のように,全く特定されない不特定多数の者との間で,確定的認識もないままに概括的な認識・認容だけで意思連絡を認めることはできないというべきである。
⑶ 相互利用補充関係は,相互の意思の連絡を前提とするから,意思の連絡がない以上,相互利用補充関係も認められない。
また,相互利用補充関係は,「特定の犯罪を行うため」のそれでなければならないところ,原判決が強調する「動機づけ」及び「概括的」な「認識・認容」と,わいせつ動画の投稿や公然わいせつ動画の配信によって,投稿者や配信者とともに被告人ら又はその経営している会社にも金銭的利益が得られるという要素は,どこかの誰かが違法動画を投稿・配信しているかもしれないという程度の抽象的なレベルのものでしかあり得ず,特定の犯罪と結びついているわけではないから,特定の犯罪を行うための相互利用補充関係を根拠付けるものではない。
原判決のように,違法行為に及んだ行為者にその動機を与えたとされる者が,不特定多数の者が違法行為に及ぶことを概括的に認識・認容していたというだけで共謀共同正犯が成立するという解釈を採用すれば,違法行為を惹起する相応の危険を伴う社会経済活動(自動車の製造・販売,護身用ナイフやスタンガン等の製造・販売等)はおよそ不可能になり,著しく不合理である。
⑷ 共犯関係を認めるためには,誰が何をするかわからない状況で一般的な条件の設定を行っただけでは足りず,最終的に実現する「特定の犯罪」に対して因果性を与えた事実が認められることが必要である。
本件において,被告人らは,本件各投稿者らが行った犯罪について,単に条件を設定したと評価する余地があるにすぎず,因果性を肯定することはできない。
⑸ 共犯関係を認めるためには,主観面においても,共犯者各人が41「特定された犯罪」を認識対象としていることを要する。
犯罪の認識・認容は,ある程度概括的であることはあり得るにしても,「誰が何をするかわからない状況での不特定の者との間での共謀」や,「誰が何をするかわからない状況での不特定の者の行為についての故意」というものはあり得ない。
最高裁判所平成23年12月19日第3小法廷決定(刑集65巻9号1380頁。
Winny事件)は,著作権侵害に利用されたソフトを提供した被告人が著作権法違反の幇助罪に問われた事案における幇助犯の故意について,「例外的とはいえない範囲の者が同ソフトを著作権侵害に利用していることを認識,認容していたこと」が必要であるとし,同事件では,客観的には同ソフトの利用の4割が著作権侵害に利用されていたと認定され,したがって,被告人の主観についても,相当多数の侵害事例があることを認識していたことになるのに,なお被告人に幇助の故意がなかったと認定しているのであって,「例外的とはいえない範囲」を相当高い割合であると想定している。
ところが,原判決は,Dを利用して違法なわいせつ動画が配信されていた客観的な割合をそもそも認定していない。
証拠上合理的に推測できるD動画アダルトの投稿動画に占める違法なわいせつ動画の割合は,1割弱であり,原判決が指摘する,タイトルに「無」ないし「無修正」という文字が入っている動画(これらが当然に無修正わいせつ動画であると認定できるわけではない。
)の割合でさえ2割程度にすぎず,一般動画も含めた投稿動画全体に占める割合は,さらに上記数値より小さくなるから,被告人らには,前記Winny事件最高裁決定が想定する「例外的とはいえない範囲」の幇助の認識すら認められず,まして,共謀共同正犯の故意を認めることはできない。
⑹ 以上のとおり,本件においては,被告人らには相手方の存在についてさえ認識がなく,このような場合にも共謀を認めることは,相互の意思連絡を必要とする従来の共謀概念ではあり得ない。
424 当裁判所の判断⑴ 原判決は,前記2のとおり,原審で取り調べた関係証拠から諸事情を認定し,これらによると,被告人ら及びEと本件各投稿者らとの間に,本件各投稿・配信行為がなされた時点で,わいせつ電磁的記録記録媒体陳列ないし公然わいせつを共同して行う旨の黙示の意思連絡及び相互利用補充関係があったと認められるから,被告人らに共謀共同正犯が成立する,と判断したものである。
当裁判所の判断の骨子は,次のとおりである。
すなわち,原判決が,共謀共同正犯の成立を認めるための一つの間接事実と位置づけた前記2⑵の事実を推認する上で,再間接事実として認定した「C従業員が,D社への入社に応募してきた者に対し,D社の従業員として対応していた」という事実については,前述したとおり,違法収集証拠として証拠能力に欠ける原審甲26の外に,この事実を認定し得る的確な証拠がないから,原判決にはこの点で事実誤認がある。
しかしながら,この事実を除外しても前記2⑵の間接事実を推認することができるし,前記2のその余の認定に何ら事実誤認はないから,上記事実誤認は判決に影響を及ぼすものでないことが明らかである。
そして,これらの事実認定に基づき,被告人らに本件各犯行の共謀共同正犯が成立するとした点について,原判決に法令の解釈,適用の誤りはない。
以下,所論に即して補足して説明する。
⑵ 所論は,まず,被告人らは,動画の投稿数・配信数を伸ばすための当然の企業努力として種々のサービスを行ったにすぎず,被告人らが投稿・配信を動機づけたのは,あくまでも一般映像及びアダルト映像であって,違法な無修正わいせつ映像の投稿・配信を促したことはないと主張する(前記3⑴)。
しかしながら,原判決が的確に認定した事実によれば,D動画アダルト及43びDライブアダルトにおいては,無修正わいせつ動画を含め,アメリカ合衆国の法律上問題がない動画の表示は許可するという被告人らの基本方針の下,児童ポルノ,獣姦,グロテスク(死体写真等),ひどい暴力のコンテンツについては,一定の基準で凍結等の措置がとられ,特に,児童ポルノと獣姦については,監視体制をとって積極的に削除するなどの措置が講じられていた一方,無修正わいせつ動画については,一般カテゴリーでの投稿・配信は規制されていたものの,アダルトカテゴリーでは放置する方針がとられ,現に,D動画アダルト及びDライブアダルトには多数の無修正わいせつ動画が投稿・配信され,D動画アダルトに投稿された動画については,削除されることなく長期間閲覧ができる状態となっていた。
これらのサイトにおいては,被告人ら及びEの方針に基づいて,前記2⑴のとおり,有料会員登録を促す仕組みや,より多くの投稿・配信を促す数々の仕組みが作られ,有料会員を多数獲得するとともに,投稿・配信が多数に及ぶことを促進していたといえる。
そして,これらの方針やサイトの仕組み等は,サイトを利用する一般の視聴者にも認識できる状態にあった。
また,無修正わいせつ動画は,Dサイト内で人気が高いコンテンツであったことがうかがわれ,Dライブアダルトについては,無修正わいせつ動画を繰り返し配信して高額の利益を得る者らもいたのであるが,これらの事情も,Dサイト内にサービスの一環として表示される視聴者らのコメントや評価,売上上位者のランキング等により,Dの利用者らが容易に認識できる状態であった。
以上によれば,Dの利用者は,Dにおいては,サイトの管理・運営上,無修正わいせつ動画の投稿・配信が許容されており,他の動画サイトでは規制がかかる無修正わいせつ動画であっても,Dの各アダルトサイトに投稿・配信すれば,当該サイトの仕組みに従って,一般映像や,刑法の解釈,適用上わいせつとは評価されない種類のアダルト映像と同様に,凍結されたり削除されたりすることなく確実にサイトに掲載されて,不特定多数の者の閲覧又は観覧に供され,多くの閲覧者等を44得ることが可能であること,そして,投稿方法の選択によっては多額の経済的利益を得ることも可能であることを容易に認識できたといえる。
本件各投稿者らを含め,Dに無修正わいせつ動画を投稿等する者らの多くは,このような事情を認識していたからこそ,特にDを選んで無修正わいせつ動画の投稿・配信を行っていたものと認められる。
原判決は,このような事情を踏まえて,被告人らは,Eと共に,D動画アダルトやDライブアダルトにおいて相当数の無修正わいせつ動画が投稿・配信されることを認識した上で,これを許容し,それらを利用してサイト利用者や有料会員を維持・増加させて利益を上げる目的で,D動画アダルトやDライブアダルトを管理・運営していたものであり,他方,本件各投稿者らを含むサイト利用者らは,その仕組みに動機づけられて無修正わいせつ動画の投稿・配信に及んだと認定したのである。
この事実認定が論理則,経験則等に照らして不合理であるとはいえない。
⑶ 次に,被告人ら及びEと本件各投稿者らとの間に本件各犯行についての意思連絡及び相互利用補充関係があったとして共謀共同正犯の成立を認めた原判決の判断について,所論は,前記3⑵ないし同⑹のとおり,種々の観点から論難するので,さらに検討する。
まず,原判決が前記2⑴ないし同⑹のとおり,的確に認定,説示したところに照らすと,本件においては,Dのサイトを利用して無修正わいせつ動画を投稿・配信し,不特定多数の者の閲覧及び観覧に供することについて,被告人ら及びEの意思と本件各投稿者らの意思が,それぞれの内心に止まっていたにすぎないものではない。
すなわち,被告人ら及びEは,無修正わいせつ動画を除外することなくアダルト動画の投稿・配信を募り,たとえ投稿・配信された動画が無修正わいせつ動画であっても,他の適法な動画と同様に,各サイト(D動画アダルト,Dライブアダルト)のコンテンツとして投稿者・配信者が既定の方法の中から選択した方法で不特定多数の者の閲覧又は観45覧に供するとともに,その投稿者・配信者に対し,所定の特典を与えることによって投稿・配信を勧誘し,促進するという意図を有していたのであり,このような意図は,各サイトの画像上,当該サイトの利用者に対し,事前に黙示的とはいえ明確に示されていた。
また,本件各投稿者らも,これらのサイトのシステムに従って,自らが投稿・配信した無修正わいせつ動画を不特定多数のサイト利用者の閲覧又は観覧に供するとともに,所定の特典を受けることを希望するという意思を有していたものであり,このような意思も,本件各投稿者らが本件投稿等を行った時点において,Dの管理・運営を行う被告人ら及びEに対し,明確に示されていたということができる。
原判決は,以上の事実関係を捉えて,本件投稿等がなされた時点における被告人ら及びEと本件各投稿者らとの間の黙示の意思連絡の存在を肯定しているのであるから,被告人ら及びEと本件各投稿者らとの間に,およそ意思連絡といえるものはないとする所論(前記3⑵)の批判は当たらない。
そして,Dサイトの利用者が,D動画アダルト及びDライブアダルトの各サイトを,そのシステム(動画のアップロード時になされる警告を含む。
)に従って利用することによって惹起することが想定される犯罪行為は,ほぼ無修正わいせつ動画の投稿・配信に尽きるのであって,その犯罪行為の概要や法的性格は明確であり,当該犯罪についてDの管理・運営者である被告人ら及びEと動画の投稿・配信者とが担う役割も固定された明確なものであったといえるし,これらの点は,本件各投稿者らと被告人ら及びEが共に事前に認識できたと認められる。
以上の事実関係によれば,たとえ被告人ら及びEが,個々の無修正わいせつ動画の投稿又は配信の時点では投稿者等の存在や投稿等の内容を認識していなかったとしても,被告人ら及びEは,その方針に従って構築したDサイトにおいて,投稿・配信された無修正わいせつ動画をサイト利用者の閲覧又は観覧に供する方針で各サイト(D動画アダルト,Dライブアダルト)を管46理・運営していたのであるから,対外的に明らかになっている上記方針に沿って,現実に実行犯である特定の投稿者等の投稿・配信行為があった場合には,当該投稿者等と被告人ら及びEとの間で,共同して,このようなサイトのシステムにおいて予定されていた方法により,その投稿等に係る特定の無修正わいせつ動画をサイト利用者の閲覧又は観覧に供する旨の意思が実質的に合致したものといえるのであり,その旨の黙示の意思連絡が行われたと認めることができる。
そして,無修正わいせつ動画の投稿・配信を利用して利益を上げる目的で各サイトを管理・運営していた被告人ら及びEと,各サイトにおいて無修正わいせつ動画を投稿又は配信しサイト利用者の閲覧又は観覧に供するという実行行為に及んだ本件各投稿者らとの間には,互いに他方の行為を利用し,各自の意思を実行に移したとみることができる相互利用補充関係も存在するというべきである。
したがって,原判決の事実認定は正当である。
前記3⑵ないし同⑷の所論は,結局,被告人ら及びEが,個々の無修正わいせつ動画の投稿又は配信の時点では投稿者等の存在や投稿等の内容を認識していなかったことを理由に,被告人ら及びEと本件各投稿者らとの間の当該投稿・配信についての意思連絡の存在を否定し,ひいては,相互利用補充関係の存在や,被告人ら及びEの行為が当該投稿・配信に因果性を与えたことを否定するものであるが,前述したとおり,本件では意思連絡の存在を肯定すべきであるから,上記所論は採用できない。
この点,上記所論は,共謀を構成する実行犯との意思連絡は,特定の犯罪について,かつ,特定の実行犯との間でなされたものであることが必要であるが,本件の場合にはこれに該当しないと主張して,原判決の認定を論難する。
しかしながら,共謀が成立するには,実行犯が行う犯罪行為の具体的内容について逐一認識することを要するものではないし,組織的犯罪等のように,主犯格の者において末端の実行犯が誰であるかを知らなくても,共謀の47成立を認めるべき場合もある。
そして,何よりも本件各犯行については,いずれの犯行も,被告人ら及びEの管理・運営するウェブサイトへ,個々の実行犯が無修正わいせつ動画の電磁的記録の送信により投稿・配信するという形態によって実行されたものであること,被告人ら及びEと実行犯らは共に,このような形態によって違法な行為がなされることについて確定的に認識していたこと,被告人ら及びEにとって,個々の実行犯が誰であるかは特段問題ではなかったこと,特定の実行犯が特定の無修正わいせつ動画を投稿又は配信することにより,共謀の対象となる犯罪行為及び共謀の相手となる共犯者が具体的に特定されること,といった特質がある。
このような本件各犯行の特質に照らすと,被告人ら及びEが,個々の実行犯や投稿等された無修正わいせつ動画を,投稿等の時点において,いずれも特定して認識していないからといって,そのことが実行犯との意思連絡ひいては共謀の認定の妨げになるとは考えられない。
所論指摘の前記スワット事件最高裁決定の事案は,実行犯がその所属する暴力団組織の組長を警護するという限られた人間関係の存在が,それ自体として黙示の共謀の間接事実を構成する事案であって,本件とは事案を異にするものであるところ,同最高裁決定は,事前に何らかの人間関係の存在しない者の間における概括的な認識・認容に基づく共謀の成立を否定する趣旨を述べたものとは解されない。
また,以上のように解したからといって,前記3⑶の所論のいうように,違法行為を惹起する相応の危険を伴う社会経済活動(製品やサービスを提供する活動)を行う者が,そのような危険性を概括的に認識・認容していたというだけで,当該製品やサービスを利用して行われた他人の犯罪行為について当然に共犯者として刑事責任を負うことになるわけではなく,共謀共同正犯の概念が不当に広がることにはならない。
さらに,前記3⑷の所論は,因果性を問題としているが,被告人ら及びEによる各サイトの管理・運営が本件各投稿者らの実行行為の大前提であって,本件各犯行に対する物理的因果48性は明白であるし,被告人ら及びEが,不特定多数の者にこの種の投稿等を積極的に行わせるようなシステムを構築し,本件各投稿者らがこれに応じて本件各犯行に及んだものであるから,本件各犯行に対する心理的因果性も明らかに認められ,所論は採用できない。
次いで,前記3⑸の所論が問題とする被告人ら及びEの故意の点についてみても,原判決が的確に認定した事実によると,本件投稿等がなされた当時,Dには,被告人ら及びEの運営方針に従って,多数の無修正わいせつ動画が順次投稿・配信され,サイトの利用者による閲覧及び観覧が可能となっている常況にあったものであり,被告人ら及びEは,Dの管理・運営を行うに当たり,このような無修正わいせつ動画の投稿・配信を事前に個別に認識していたわけではないにせよ,サイトの利用者の中には,被告人ら及びEの管理・運営するD動画アダルトやDライブアダルトのサイトに無修正わいせつ動画を投稿・配信してくる者が多くいること,そのような投稿・配信がなされれば,当該動画が不特定多数人によって閲覧及び観覧が可能な状態に置かれると確実に見込まれること自体は,事前に確定的に認識し,むしろ,それらを予定していたといえ,かつ,その投稿・配信がいつ,誰によってなされるかにかかわらず,犯罪行為に該当するこれらの投稿・配信行為を当然に許容していたとみられるのである。
このような事実関係によれば,本件各投稿・配信がなされた時点において,被告人ら及びEによる本件各投稿・配信行為についての概括的な認識・認容,すなわち故意の存在を認めた原判決の認定は正当というべきである。
原判決は,所論のいうような「誰が何をするかわからない状況」における不特定の者との間での共謀や,不特定の者の行為についての故意を認定したものではない。
所論指摘の前記Winny事件最高裁決定は,開発途上のファイル共有ソフトWinny)をインターネットを通じて不特定多数の者に対して無償で公開,提供し,利用者の意見を聴取しながら当該ソフトの開発を進めてい49た被告人が,同ソフトを入手した正犯者がこれを利用して行った著作権法違反の幇助罪に問われたという事案において,同ソフトの提供行為に幇助犯が成立するための要件の一環として,同ソフトを入手する者のうち例外的とはいえない範囲の者が同ソフトを著作権侵害に利用する蓋然性が高いと認められる場合で,提供者もそのことを認識,認容していたことが必要であるとの一般論を示した上で,ネットワーク上に認められた同ソフトを利用しての著作権侵害のファイル数の割合も参考にしつつ,事案に即した具体的判断を示したものにとどまる。
当該被告人は,ソフトの公開,提供に当たって,当該ソフトがどのように利用されるかについて関知できる立場にあったわけではないし,利用者に対し,著作権侵害のためにソフトを利用することがないよう警告を発していたなどという事情があるのに対し,被告人ら及びEにおいては,現にその管理・運営するウェブサイトに多数の無修正わいせつ動画が投稿・配信されていることを認識し,しかも,管理者としてこれを制限することができるにもかかわらず,その投稿・配信を許容し,これを利用して利益を上げる目的で管理・運営していたのであるから,本件は,Winny事件とは事案が異なり,投稿等の全体のうちで違法なものが例外的とはいえない範囲を占めていたかどうかといった,同事件におけるのと同様の事情を特に問題とするまでもなく,被告人ら及びEの故意を認定することができるというべきである。
前記Winny事件最高裁決定を基にして原判決の判断を論難する所論は,失当といわざるを得ない。
所論は,その主張全体を通じ,従前の裁判例が認めてきた共謀概念を前提とする限り,本件について被告人ら及びEに共謀共同正犯の成立を認めることはあり得ないことであるとし,そうであるにもかかわらず,原判決は,共謀共同正犯の成立要件を明らかにしないまま共謀共同正犯の成立を認めていると批判する(主に前記3⑹)。
しかしながら,共謀共同正犯の成立を肯定した過去の裁判例は,いずれも,当該事件における具体的な事実関係の下で,50実行行為を行った者との明示ないし黙示の意思連絡の存在を基礎としつつ,当該被告人が当該犯罪の実現について果たした具体的な役割等に着目して,相互利用補充関係があると評価できる場合に,当該被告人に正犯としての責任を負わせるのが相当であると判断したものである。
原判決は,共謀共同正犯者である被告人ら及びEと実行犯との間で,インターネット上のウェブサイトを介して意思連絡が行われるといった,本件の具体的な事実関係を踏まえて,共謀共同正犯の成立を肯定したものであって,このような原判決の判断が,一概に従前の裁判例の判断から乖離するものであるとはいえず,上記の批判も当を得たものとはいえない。
所論はいずれも採用することができず,共謀共同正犯の認定をめぐる事実誤認又は法令適用の誤りをいう論旨は,理由がない。
・・・
第5 結論よって,刑訴法396条により本件各控訴を棄却することとし,主文のとおり判決する。
平成30年9月11日大阪高等裁判所第5刑事部(裁判長裁判官 西田眞基,裁判官 五十嵐常之 裁判官 福島恵子)