児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

刑法学会関西部会における永井善之氏の報告

2条3項の定義は有体物に限定するとしておいて、7条の電気通信回線を通じて電磁的記録を提供する場合には、データという無体物も含めるというのは、立法技術としては適切ではないという指摘がありました。

永井氏の報告から
旧法について
なお、サイバー・ポルノとしてのその規制に特有の問題ではないが、児童ポルノ規制をその保護法益論からみた場合、刑法によるわいせつ物規制の法益がその規制文言上性秩序ないし健全な性風俗という社会的法益と解されざるをえないことと対照的に、児童ポルノ規制では、その客体が、児童の姿態が視覚により象形的に認識されるもの(画像)に限定されていること、ポルノに描写された児童の保護等に関する法15条1項、16条が存在すること、本法の立法者(法案発議者のこと)によっても児童ポルノの描写対象は実在児童であることを要すると解されていること、などからして、その規制の法益は被写体とされた特定児童自身の利益・権利という個人的法益であると解される(7)。そうであるとすれば、現行法が規制対象となる行為類型として、特定少数者への交付や、その受領、単純の製造・所持等を設定していないことは、児童ポルノ規制立法としては徹底性を欠いているともいいうる。


現行法について
両項ともに、後段において、「電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録」を、1項では特定の少数者に、4項では不特定または多数の者に「提供」する行為をも規制対象としている。これは、電子メールの添付ファイルとしての画像データの送信などを対象とする趣旨であると解される。ここにいう「電磁的記録その他の記録」とは、前述のように無体物たるデータ自体ではなくそれが媒体に記録された状態であるので、その「提供」とは相手方のもとでこのような記録状態を作出することであるから、以上のように「提供」概念は、有体物の交付たる「頒布」、「販売」、「業としての貸与」に加え、このような「記録状態の作出」までをも包含する概念となっている。このような「提供」概念に関しては、その不明確さのほか、前述の刑法改正案においては「相手方のもとでの記録状態の作出」をも「頒布」概念で包括する予定であることとの関係上、概念理解についての相当な混乱が予想されるとの批判がある(21)。

現行児童ポルノ法はここにしかない

http://www.ron.gr.jp/law/law/jidou_ba.htm
(定義)
第二条 この法律において「児童」とは、十八歳に満たない者をいう。
3 この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
 一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
 二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
 三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの


児童ポルノ提供等)
第七条 児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
2 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
3 前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第一項と同様とする。
4 児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
5 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
6 第四項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。