児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

法禁物

 大麻は法禁物であって、法定の除外事由とか正当事由がないのに大麻を持ってると「所持罪」なんですよ。保護者に渡すと、譲渡罪かも。

 因みに、児童ポルノは現行法でもただの「所持」は禁止されていませんので、ただ持ってるだけでは、検挙されない。法禁物ではありません。押収されたけども没収されなかった児童ポルノは、被告人が所有権放棄しない場合は、被告人に返還されます。
 ネット上の公然陳列罪で有罪になっても、サーバーから被告人なりプロバイダーなりが削除しないと画像は消えません。裁判所がサーバー丸ごと没収するしかない。
http://www.okumura-tanaka-law.com/www/okumura/child/bossyuu.htm
 そんな問題点があって、脅迫メール数通を没収するのにPCごと没収されることもあるんですが、あまり議論されないようです。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040722-00000203-yom-soci
学校側は大麻についての知識がなかったため、「大麻かどうかわからない」として保護者に大麻を返却し、警察に自首するよう勧めたという。

大麻取締法
第3条〔大麻取扱者以外の所持・栽培・譲渡等の禁止〕
大麻取扱者でなければ大麻を所持し、栽培し、譲り受け、譲り渡し、又は研究のため使用してはならない。
2 この法律の規定により大麻を所持することができる者は、大麻をその所持する目的以外の目的に使用してはならない。

第24条の2
大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、五年以下の懲役に処する。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、七年以下の懲役に処し、又は情状により七年以下の懲役及び二百万円以下の罰金に処する。
3 前二項の未遂罪は、罰する。

住居侵入、窃盗、ストーカー行為等の規制等に関する法律違反被告事件
東京高等裁判所平成14年12月17日
判例時報1831号155頁
第一 控訴趣意中、法令適用の誤りの論旨について
 原判決は、その判示第二の事実において、被害者に対する前後五回にわたるファックスや電子メールの送信を内容とするストーカー行為を認定した上、刑法一九条一項二号、二項本文を適用し、主文において、「横浜地方検察庁川崎支部において保管中のパーソナルコンピューター二台(同支部平成一四年領第四九七号符号1及び2)を没収する。」と言い渡した。
 これに対し、論旨は、以下のような法令適用の誤りを主張するものと解される。
(1) 原判決は、上記各パーソナルコンピューター(以下、上記符号1のパソコンを「(1)のパソコン」、符号2のパソコンを「(2)のパソコン」、両者をあわせて「本件各パソコン」という。)に被害者に関する情報が多数含まれていることを没収の理由として説示しているが、このことをもって被告人が本件各パソコンを本件ストーカー行為の用に供する意思を持って直接犯行の用に供し又は供しようとしたとはいえないから、原判決が刑法一九条一項二号を適用したのは誤りである。
(2) 本件各パソコンには、本件ストーカー行為とは関係がない、被告人にとって重要な財産である情報も多数含まれているところ、これらを区別せず、パソコン全体を没収することは、財産権の侵害(憲法二九条違反)であり、罪刑の均衡をも失している(憲法三一条違反)。
 そこで、所論にかんがみ、以下に検討を加える。
一 (1)の点について
 原判決は、主文において、本件各パソコンを没収しているが、その理由については、法令の適用において、刑法一九条一項二号、二項本文を挙示するにとどまっている。
また、罪となるべき事実の記載においても、原判示第二の別紙一覧表2ないし5の記載のとおり、「被告人方の自己の使用するパーソナルコンピューター」から、被害者の使用するパソコンにストーカー行為等の規制等に関する法律所定の「つきまとい等」に該当する電子メールを送信した旨認定しているが、当該電子メールの送信に使用したパソコンと本件各パソコンとの同一性についての説示はない。この点、証拠の標目中に「パーソナルコンピユーター二台(物1、2)」との記載があることに照らし、上記「被告人方の自己の使用するパーソナルコンピューター」が本件各パソコンを指すと解されるから、理由不備にはならないことは明らかであるが、二台ある本件各パソコンのうち、二台とも本件ストーカー行為に係る電子メールの送信に使用されたのか、一台だけなのか、送信に使用されていないパソコンがあるとすれば、それが本件ストーカー行為との関係でいかなる根拠に基づき刑法一九条一項二号に該当することになるのかについて、原判決の判文上、明らかにされていない。他方で、原判決は、量刑の理由において、被害者に関する情報が多数含まれていることを考慮して本件各パソコンを没収することとした旨説示している。そのため、所論は、原判決が、この被害者に関する情報が多数含まれていることから、直ちに刑法一九条一項二号の該当性を肯定したのではないか、という疑義を呈しているものと解される。
 しかしながら、原判決が証拠として挙示する「押収パーソナルコンピューターの解析報告書」二通(原審甲第一一、一二号証)に、当審で取り調べた「メール送付におけるパーソナルコンピュータの利用状況報告書」(当審検第一号証)を総合すれば、被告人は、(1)のパソコンから、ヤフー株式会社のホームページにアクセスし、同社が無料で提供しているウェブメールサービスであるヤフー・メールを利用して、原判決別紙一覧表2ないし5の内容の電子メールを被害者に送信したこと、被害者に送信した電子メールは、ヤフーのサーバー上に保存され、そのままでは被告人のパソコンには保存されないため、被告人は、送信した電子メールを直ちに、ヤフーのサーバー上から(1)のパソコンにコピーし、あるいは、転送機能を利用するなどして(2)のパソコンに保管したことが認められる。
 これによれば、(1)のパソコンは、まさに本件ストーカー行為に係る電子メールの送信に直接使用された物であるから、犯罪行為に供した物に該当することは明白である。また、(2)のパソコンについても、直接送信には使用されていないが、原判示の各電子メールの内容から明らかなとおり、被告人が反復累行した電子メール送信によるストーカー行為は、先に送信した電子メールの内容を前提にしながら、後続の電子メールを送信していることが明らかであるから、(2)のパソコンに被害者に送信した電子メールをファイルとして保管することは、次なる電子メール送信行為の前提となる行為であって、実行行為と密接に関連のある行為ということかでき、この意味において、(2)のパソコンも、犯罪行為に供した物であるということができる。
 なお、所論は、意見書中において、後続の電子メールが先行する電子メールの内容を前提にしていたとしても、それは被告人が自己の記憶に基づいて電子メールを作成しているのであるから当然のことであり、送信済みの電子メールを保管することが、その後の電子メール送信の前提行為であるとか、実行行為に密接に関連する行為であるとはいえず、ファイルが保管されただけに過ぎない(2)のパソコンは、犯行供用物件に当たらない旨主張する。しかしながら、被告人が送信した電子メールには、先行する電子メールの内容の全部又は一部を転載したり、誤記を改めるなど、送信した電子メールの内容が保管されていて初めて可能になる記載が少なくないのであって、単にファイルが保管されていただけに過ぎないとはいえないから、所論は、採用することができない。
 以上によれば、本件各パソコンは、いずれも本件ストーカー行為において果たした役割に照らし、犯行供用物件に当たると認められるのであり、原判決に所論の(1)がいうような違法は認められない。
二 (2)の点について
 所論は、本件各パソコンには、本件ストーカー行為とは関係がない情報も多数含まれており、それが被告人にとっては重要な価値を有するから、これらを区別せず、パソコン全体を没収することは許されない旨主張する。
 しかしながら、上述のとおり、本件各パソコンは、いずれも本件ストーカー行為の犯行供用物件に当たり、かつ、被告人以外の者に属しないのであるから、これらをいずれも没収することかできるというべきである。
 付言するに、没収は、目的物に対する所有権その他の物権を失わせ、これを国庫に帰属させる効果を生じさせるものであるから、有体物のみを対象とし、かつ、独立性を有しない物の一部分のみの没収は観念することができないのであり、ましてや、有体物でない、本件各パソコン中に記録されている電磁記録のうち、犯罪に関するもののみを抹消するなどして、これをもって没収とすることは、現行法上は、法が予定していないというべきである。なお、偽造・変造文書につき偽造・変造部分に限った没収が可能であるのは、当該部分に偽造・変造である旨の表示をすることによって社会的危険性を喪失させることが可能であると共に、その余の部分が独立の効用を有する場合も少なくないことに照らし、法が特に姙めたもの(刑訴法四九八条一項にその執行方法の規定がある)であって、独立性を有しない物の一部や、有体物でない電磁情報の一部に限り没収することを現行法は予定していないと解される。
 そうすると、本件各パソコン中の本件ストーカー行為に関係する情報のみを没収すべきで、その余の没収は許されないとする所論は、独自の見解というべきで、採用することができず、本件各パソコンを没収することが、憲法二九条、三一条に違反する旨の主張も理由がない。
 なお、本件各パソコンを没収することが、本件ストーカー行為に対する附加刑として相当性があるかの問題は、量刑の問題として考えるべきものであるが、被告人の供述にかんがみ検討すると、後述の本件ストーカー行為の緒情状に加え、本件各パソコンは、購入後相当期間使用に供されていると共に、新機種等の登場により陳旧化しており、その財産価値は高くはないこと(当審検第二号証によれば、(1)のパソコンの時価は○円、(2)のパソコンの時価は三万二〇〇〇円相当であると認められる。)に照らし、罪刑の均衡を欠いているとは認められず、また、本件の罪質、態様に照らせば、本件各パソコンを使用して再度犯行が行われることを防止する観点からも、これを没収することが不当とはいえない。被告人は、当審公判廷において、自らパソコンに改良を加えており愛着があるとか、収集した各種情報が含まれているとして異を唱えているが、その点を考慮しても、上記の判断は左右されない。
(裁判長裁判官 仙波 厚 裁判官 高麗邦彦 前田 巌)

東京高裁判例速報3186号
住居侵入,窃盗,ストーカー行為等の規制等に関する法律違反
東京高裁平成14年12月17日被告人上告
○判示事項
トーカー行為に係る電子メールを,ファイルとして保管したパソコン全体を犯罪行為に供した物として没収を認めた事例。
○裁判要旨
1一台目のパソコン(以下,①のパソコンという)を使用して被害者に,送信したストーカー行為に係る電子メールを,ファイルとして二台目のパソコン(以下,②のパソコンという)に保管することは,次なる電子メール送信行為の前提となる行為であって,実行行為と密接に関連のある行為といえるので,②のパソコンも,犯罪行為に供した物であるといえる。
2 本件各パソコン中に記録されている電磁記録のうち,犯罪に関するもののみを抹消するなどして,これを没収とすることは,現行法上は予定していないと解されるので,本件各パソコン全体を没収する。

○備考
本件は,没収に関する規定が制定された当時には全く予想されていなかった事例であり,今後本件と同種の事例(例えば,携帯電話の利用等)が多発するものと予想されるので,犯行に供したパソコン,携帯電話等の没収の根拠,方法等につき,十分検討すべきものと思われる。
なお,研修613号(99/7)の「磁気ディスクの偽造データの入ったファイルの処分について」においても,パソコンのファイルの没収の可否等につき解説がなされている。