児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

<DVD疑惑>刑事官、押収ポルノ複製させ持ち帰る 千葉

 わいせつ図画の特定人への譲渡・単純製造・単純所持も処罰しましょうか?
 これはアメリカがOKだからいいのか。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080315-00000009-mai-soci&kz=soci
関係者によると、DVDは06年9月、船橋市の販売業者が同署にわいせつ図画販売目的所持容疑で逮捕された事件に関連して押収された。元刑事官はモザイク処理などをしていないDVD数本を、捜査を担当した警部補にダビングさせ、観賞用に自分で持ち帰った。ダビングは署内で行われ、複数の警察官が目撃していたが、制止しなかったという。
 第三者がポルノDVDをダビングし、個人で観賞するのは違法ではないとされるが、県警が押収した証拠品は、署内の倉庫などでの管理が本部長訓令で定められ、個人の持ち出しは禁止されている。

ちなみに、これが児童ポルノの場合でも、所定の目的がない複製行為は処罰されてませんね。その付けが3項製造罪(姿態とらせて製造)の「姿態をとらせて」の実行行為性否定説になってます。
 

IPアドレスを専用ソフトで特定したうえで・・・

児童ポルノwinnyで放流・中継した人も特定可能になっていますが、できるんならそっちもやってほしいものです。やっぱり京都府警なんでしょうか?

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080315-00000003-yom-soci
今回の対策は、著作権団体が、違法コピーのやり取りを繰り返している利用者について、ネット上の「住所」にあたるIPアドレスを専用ソフトで特定したうえでプロバイダーに通知。プロバイダーは、このIPアドレスをもとに利用者に警告メールを送信し、従わない場合などには、一定期間の接続停止や利用契約の解除に踏み切る。

 この仕組みであれば、総務省も「プロバイダーが利用者の通信内容を直接調べることにあたらないため問題はない」としている。警察庁もこの協議会に加わる方針で、悪質な利用者の取り締まりを強化する。

福島瑞穂さんの認識

 法文古いですよ。改正したのをお忘れか?

http://mizuhofukushima.blog83.fc2.com/blog-entry-647.html
ポルノ単純所持の処罰は妥当か
2008 / 03 / 10 ( Mon )
児童ポルノに関しては、児童買春・児童ポルノ禁止法ができている。
 18歳未満の子どもが被写体のポルノについては、一定の行為が禁止をされている。
 法律7条は、児童ポルノを頒布し、販売し、業として貸与し、又は公然と陳列した者は、3年以下の懲役又は300万円の罰金に処すると規定をしている。
 児童ポルノには、もちろん反対である。
 被写体になった子どもは、傷つけられたまま成長することになると思うと心が痛む。子どもを食い物にしてと腹が立つ。
 だから、もちろん今の児童買春・児童ポルノ禁止法案の作成をするときは、弁護士として、堂本暁子さんなどと法案作りにがんばってきた。
 しかし、「単純所持」についてまで処罰していいのだろうか。

 「頒布し、販売し、業として貸与し、又は公然と陳列した」なんていう、刑法175条(被害者なき犯罪)から借用してきて法文の体裁を整えようとした姿勢を反省してほしいものです。そのせいで被害児童の存在や権利侵害がマスクされ、被害者なき犯罪として解釈する実務が定着し、被害者救済は後退した。

 その反省で改正したものの、3項製造罪の実行行為の問題、製造罪と性犯罪との罪数処理、外国から日本に通信販売する場合は提供罪か提供目的輸出罪かという問題で、裁判所を悩ませている。


 ちなみに法務省が公報する法文にだまされてはいけません。

http://www.moj.go.jp/KEIJI/h01.html
児童ポルノ頒布等)
第七条  児童ポルノを頒布し、販売し、業として貸与し、又は公然と陳列した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
2  前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。
3  第一項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。

最新版

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H11/H11HO052.html
児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
(平成十一年五月二十六日法律第五十二号)
最終改正:平成一六年六月一八日法律第一〇六号
児童ポルノ提供等)
第七条  児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
2  前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
3  前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第一項と同様とする。
4  児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
5  前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
6  第四項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。

 条文を比較すると、何とか罪を作れば仕事したような気がしますよね。

児童ポルノの流通自体が権利侵害ではなかったのか?

 被告人に保護法益を理解させることが真の反省の一歩だと思うんですが、「提供罪による権利侵害」というのは弁護人にも理解されないようです。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080315-00000912-san-soci
被告には2歳の娘がいるが、良心の呵責(かしゃく)を感じなかったのだろうか。
弁護人「なぜ売ったのですか?」
被告「小遣いが足りなくて売りました」
弁護人「児童ポルノが氾濫(はんらん)することで、小さい子が性犯罪の対象になると思わなかったのですか?」
被告「考えなかった」
弁護人「あなたには小さい娘さんがいますね? 同じ映像を撮られて、ばらまかれたらどうしますか?」
被告「相手を憎みます」
・・・・
自らも幼い子供を持ちながら、被告は「小遣い稼ぎ」という安易な理由で児童ポルノの販売に手を染めた。児童ポルノを製造することも非難される行為だが、流通させることも2次被害を発生させるという点で同じく非難される行為だ。

 製造罪も流布の危険がある場合のみ処罰されてるので、構造上は提供・陳列が第一次的被害で、製造は予備行為です。

撮影型強制わいせつ罪

 こんなの児童ポルノ規制派に言わせれば、児童虐待の極致なんですが、児童ポルノ罪は立てにくい。
 一見すると、「衣服を脱がして胸や下腹部などを触ったうえ、デジタルカメラで撮影した」というのは、強制わいせつ罪にも該当するし、3項製造罪(姿態とらせて製造)にも該当します。
 で、観念的競合で立件しようと「衣服を脱がして胸や下腹部などを触ったうえ、デジタルカメラで撮影し、もって強制わいせつするとともに、児童ポルノを製造した」なんて訴因で起訴すると、同種余罪がかすがいで一罪になる危険があるし、東京高裁h19.11.6は強制わいせつ罪-製造罪併合罪説なので、訴因不特定になる。
 じゃあ、併合罪で立件しようと、
「1 衣服を脱がして胸や下腹部などを触るなど強制わいせつした
2 同日時同場所においてデジタルカメラで撮影し3項製造した」
なんて書くと、今度は弁護人から観念的競合だと主張されて、これも裁判例があるから説得力ある。
 無理して併合罪にしても、併合罪加重された上限付近で処断されることはないわけで、実益ない。だとすれば、検察官は児童ポルノ罪はあきらめて、「衣服を脱がして胸や下腹部などを触ったうえ、デジタルカメラで撮影し、もって強制わいせつした」と起訴するでしょ。
 ところが東京高裁h19.11.6によれば、児童ポルノ罪を立てないとしても、「衣服を脱がして胸や下腹部などを触る」と「同日時同場所においてデジタルカメラで撮影し」は2個の行為なんでしょ。とすれば、「衣服を脱がして胸や下腹部などを触ったうえ、デジタルカメラで撮影し、もって強制わいせつした」は一個の訴因のように見えて併合罪の二個の訴因になりますよね。
 これまで、撮影行為は強制わいせつ罪だったのに、これは困りましたね。
 東京高裁h19.11.6が間違っているんでしょうね。
 そんで製造罪で強制わいせつ数罪がかすがいになるというのは、立法ミスということでいいんじゃないですか。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080315-00000914-san-soci
容疑者は今年1月12日午後3時35分ごろ、埼玉県志木市本町の市道で、塾へ行く途中の同県朝霞市の小4女児=当時(10)=を、近くに駐めてあった乗用車の後部座席に連れ込み、衣服を脱がして胸や下腹部などを触ったうえ、デジタルカメラで撮影した疑い。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080315-OYT1T00393.htm?from=navr
容疑者は1月12日午後3時35分ごろ、埼玉県志木市内の路上で、1人で歩いていた小学4年の女児(当時10歳)を乗用車に連れ込み、衣服を脱がして体を触り、デジタルカメラで撮影するなどした疑い。

 法令適用は混迷していますが、量刑だけは厳しくて、早めに示談しないと、実刑になっちゃいますよ。

 改正法が審議されるのなら、こう質問して欲しいですね

Q「3項製造罪(姿態とらせて製造)に該当する行為というのは、13歳未満だとか、強制がある場合には、強制わいせつ罪として処罰されますよね。」
A「そのとおり」
Q「その場合は、両罪は観念的競合ですか?」
A「そのとおり」
Q「被害者複数の場合は、1名ごとに1罪で併合罪ですよね。」
A「そのとおり」
Q「ところで、製造犯人がダビング繰り返してPCのHDDに記録した場合は製造罪の包括一罪ですね?」
A「そのとおり」
Q「被害者複数の場合は、多数被害者の画像を、製造犯人がダビング繰り返して1個のHDDにまとめて記録し、さらにダビングした場合は科刑上一罪ですね?」
A「・・・・・」
Q「被害者複数の強制わいせつ罪は、写真をとってまとめてダビングしておけば一罪になりますね?」
A「・・・・・」
Q「児童を狙った連続強制わいせつ犯人に、写真をとってまとめてダビングしておけば一罪になるって言って、撮影を奨励してるんですか?」
A「・・・・・」
Q「児童を狙った連続強制わいせつ(撮影)犯人がいたとして、その一部の行為が起訴されて有罪が確定(撮影罪で罰金とか)したら、一事不再理で、他の強制わいせつ事件は訴追できなくなりますね?」
A「・・・・・」(この辺で切れると思います。)

 実務家はこんなことばっかり考えてるんですが、こういう質問に耐える答弁者はいないですよね。